ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
後日、というよりも翌日、私はベルを連れてヘファイストス・ファミリアのところに向かっていた。ドラゴンプリーストのダガーを制作してもらうための素材を渡すのと、その後にダンジョンで少々探索するためだ。ヘファイストスの店に入るとそこには相変わらずヘファイストスが店番をしていた
「あらお2人さん、今日はどんな用件かしら?」
「ヴェルフに頼まれたものを持ってきた。あやつはいないのか?」
「あー、入れ違いになったわ」
毎度毎度タイミングが悪いな。以前は口論していたところに出くわしたし、今回は当人がいないとはな
「それではこの素材は預けておくから渡しておいてくれないか?」
「貴方が持っていてちょうだい」
同じファミリアの奴が渡すのが一番に決まっている。だがヘファイストスはそうはしなかった。なぜだ?
「まぁいい。また今度来るとしよう」
「ええ、またいらっしゃい」
この店に用がなくなってしまった。さてダンジョンに向かうとしよう
「行くぞベル」
「あ、はい」
展示されている武器を眺めている。武器をやったというのにもう別の武器にうつつを抜かすのか?
「欲しいのか?」
「ただ見てただけですよ。でもやっぱりこういうのが作れるって凄いなって」
「なら作ればいいだろうに、材料や炉は家にあるのだからな」
ベルの防具だって自宅で作ったのだ。まぁそうなると私が作ったのは無駄になってしまうかもしれんが
「いえ、今はハイドさんが作ってくれたのがあるので大丈夫です」
「そうか」
私達はバベルから出てダンジョンへと向かった。そういえば、あの呪文書はいつ渡そうか?今日帰った時でいいか
今日はハイドさんからダンジョンでダガーでの戦い方を教えて貰いながらモンスターを倒していった。倒すときは必ず首を狙うか心臓部を貫くかということ。死角を作らないようにする。まともに攻撃を受け止めないということを実践を交えながら教えて貰った。彼はいつもとは違うダガーを使っていた。聞いてみると買ったものらしいが少し手を加えて切れ味をよくしたらしい
僕たちはダンジョンから出てギルドに行って魔石を換金したら5000ヴァリスになったがハイドさんは換金せずに持って調べることがあるらしい。家に帰り自分の部屋で装備を外し着替えてゆっくりとすることにした
「覚えることって多いんだなぁ」
今日の事を思い出すけど、まだ僕の力は弱い
「魔法でも使えれば変わるのかな?」
そんなことを考えていると部屋の扉がノックする音が聞こえてくる
『私だ』
「あ、はい」
扉を開けると本を持ったハイドさんだった。部屋の中に入ると元から置いてあった椅子に座り、話始めた
「昨日はお疲れさまだったな」
「いえいえ!僕も神様を守る為にガムシャラに頑張っただけですので。それにハイドさんが作ってくれた武器が無ければどうなっていたか・・・」
「そういう風に言うな。頑張った結果でヘスティアもベルもこうして生きているのだろう?」
確かにハイドさんの言う通りだけど、僕がまだ弱いからこうなったというようにも取れる。知らず知らずに暗い顔になっていたようで溜息をつかれてしまった
「やれやれ、貴様が何を考えているかは知らんが、結果が良ければすべてよしだ」
「そうかもしれませんが・・・」
「ベルよ、お前は悲観的過ぎるぞ。
ハイドさんは目を瞑り俯いた。その表情はどこか悲しそうな表情だった。僕にもお爺ちゃんがいたけど崖から落ちて死んでしまったこともあり、その意味は十分に理解できる
「私はお前やそしてヘスティアもエンやヒョウ、ラン、ドレの事を家族だと思っている。だからお前をそして家族を失いたくないのだ」
本当にハイドさんの過去に何があったか分からない。けれど悲しそうな表情を見るに僕と似たような経験をしてきたのだと感じた
「本来であれば冒険者などやめて欲しいところなんだがそうはいくまい。だからその分力をつけてもらう」
ハイドさんは1冊の本を渡してくる。表紙には炎に似た文様が描かれており、その本のタイトルは『
「その本は呪文書だ。それを読めば魔法を覚えられるぞ」
「えぇ!?」
「それはもうお前のものだ。読むか読まないかはベル次第だが、私からするとぜひ覚えて欲しい」
「・・・」
ハイドさんは僕に同じ冒険者として、そして家族として死んでほしくないと言った。その為にこれを読んで魔法を覚えて欲しいとも
「覚えてみます。それで強くなってアイズさんやハイドさんに追いつけるように頑張ります!」
「・・・まぁやれるだけやってみろ。そうだベル、お前の防具を貸してくれ。やらなければならないことがあるんでな」
「やらないといけないこと?」
あの防具はもう完成されてるはずだけど、まだやらないといけないことがあるのかな?僕はハイドさんに防具を渡す
「明日までには完成させるが驚いてくれるなよ?」
「は、はい。何から何までありがとうございます」
「いいんだ。私がやりたくてやっているだけに過ぎないのだからな。それではまた後でな」
そういいハイドさんは部屋を出ていく。僕は手にした
「これを見たら、魔法を使えるようになるんだ・・・」
一旦、神様に報告してから読もうかな
ベルの防具に付呪を付け終わり北棟から出ようとすると扉をノックする音が聞こえてくる
『ハイド様いる?』
「ヒョウか。少し待っていろ」
外から聞こえてきたのはヒョウの声だった。急いで着替えベルの防具を持って北棟から出るとヒョウとランがいた
「どうしたのだ?」
「えっと、ヘスティア様がお呼びになっていましゅ・・・まただ~」
毎度のことながらランの噛み具合は凄いと思う。喋ると必ずと言っていいほど噛み、恥ずかしがるまでが一連となっている
「そうか」
北棟の扉の鍵を閉めメインルームに戻るが、なぜか今日見たヘファイストスとヴェルフがいた
「おうハイドの旦那!」
「ヴェルフではないか。こんな時間にどうしたのだ?」
「それはこっちから説明するわ」
ヘファイストスから説明を受けたがその内容とはヴェルフがヘスティア・ファミリアに異動する、いわば
「おいヘスティア」
「なんだい?」
「私に一言あってもよかったのではないか?」
別に教えるのはかまわないが、私の知らないところで話が展開しているのは流石にいただけない。それにこいつにはいろいろと話を聞かなければならなかったな
「それに貴様が私のレベルをバラしたことも話を聞かせて貰おうではないか」
「うっ・・・」
ヘスティアは徐々に額から脂汗を出しながら、どう説明をしようか考えだす。考えも無しに言ったのか・・・
「はぁ・・・」
「随分と深い溜息ね。そんなにバレるのが嫌なの?」
「当たり前だ。どんな奴が私を狙いに来るかが知れたものじゃないしな」
サルモールの連中から狙われたことのある私も二度とあんなことはごめんだ。何が面倒臭いかっていつまでもいつまでも勝てないのに襲い掛かってくるからだ
「それよりもヴェルフはいいのか?わざわざこんな駄女神のところに来るなんて」
「駄女神!?」
後ろからヘスティアの声がするが無視だ。何の確認もせずに話を勝手に進めるあたりそうだろ。現にヘファイストスは口を押えて笑っているのだからな
「まぁ改宗しようが誰のところで恩恵を受けようが変わんねぇ。それに俺が頼んで貰った結果だからな」
「ならいい、ヒョウにランはヴェルフを部屋と屋敷の案内してくれ。ベルの部屋の隣でいい」
「「はい!」」
私の後ろにいた2人に家の案内を頼み別棟の方に行ってしまった。さてヘスティアには悪いが話してもらうことにしよう
「さてヘスティア、考えは纏まったか?」
「覚えてたんだ・・・」
「こんな短時間で忘れる方がおかしいだろう。なぜバラしたのかを吐け」
「わかったよ。ロキに問い詰められたっていうのと・・・その場のノリでかな?」
呆れたノリで話すようなことでは無いだろう。それとも何か?私のこの態度が気に入らないのか?
「ごめんねハイド君。ボクが話してしまったばかりに」
「なら今度からは気をつけてくれ。次は無いと思え」
「わかったよ!」
ヘスティアは用が終わったみたいで自分の部屋に戻っていった。さすがに自由すぎやしないか?
「なぁヘファイストス。頼みがあるんだがいいか?」
「何?」
「もしヘスティアがまた問題を起こしたら、そっちに改宗していいか?家族と言われこのファミリアに入ったはいいものの、こうも問題を起こされてはたまったものじゃ無いからな」
「・・・考えておくから」
できるだけ前向きに検討はしておいてくれ。なぜこうも昔から問題を起こされ巻き込まれなけらばならないのだろうか・・・
今回もお読みいただきありがとうございます
これで第1章完結となりますが次回から2~5話ぐらい幕間として投稿します