ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い?   作:ark.knight

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交渉と教授

私は武器庫でヘファイストスに自作の武器を見せてやるために幾つかの武器を持っていこうとしている。ちなみにドラゴンの骨で作られたダガーや片手剣、両手斧と持っていこうと考えている。あそこで見た武器や防具は全て金属製だったので驚くだろうな。ちなみに今日はいつもと違い頭以外ドラゴンスケールでヴォルサングを装備している。武器を見繕ってそろそろ出発しようかと思い外に出るとヘスティアと遭遇するなり驚き始める

 

「うわぁ!?不審者!?」

 

「この家の主を不審者扱いとはよほどこの家から追い出されたいようだなヘスティア」

 

「あ、ハイド君か。全身装備なんて初めて見たけどなんかごついね」

 

「身を守る為の装備だ。ごつくなるのは当然でむしろ頭装備をしていない連中が多くみられるがそいつらの方が馬鹿に思えるほどだ。」

 

幾つか冒険者を見ることができたがそのほとんどが頭に装備をしていないというモンスターやダンジョンを舐めていると思うほどの体たらくだ。そりゃダンジョンでは死ぬはずだ

 

「視界が取れなくなるからあえてしないんじゃないかな?」

 

「だとしても何かは頭に装備してる方が安心できる。人間誰しも頭部を打ち抜かれれば死んでしまうのだからな」

 

実際に対人戦では有効な戦い方で居場所さえ知られてなければ頭部に矢を放てば頭の中身をぶちまけて死んでくれるので非常に楽できる。せいぜい盗賊や人型の敵ぐらいにしか効果が無かったがな。ドラウグルには効果がなかったのは驚きだが

 

「うへぇ・・・そ、それよりもお願いがあるんだ」

 

「なんだ言ってみろ」

 

「ベル君の為に装備を作ってくれないだろうか!」

 

ヘスティアは地面に座り地べたに頭を擦りつけそう言った。お前は何をしてるのだ?

 

「理由を聞かせて貰おう」

 

「今となってはボクのファミリアは6人になったけどハイド君たちが入る前までは2人きりだった。その時からボクはベル君に養ってもらってボクからは何もしてあげられなかったんだ!だからボクはベル君の力になってあげたいんだ!」

 

ベルの装備を整えてやる・・・そうなると少し考えなばならんな1週間でヴェルフのところに素材を持っていかねばならんからな。ん?いいことを考えたぞ

 

「構わんが条件がある。確かに私は武器を自作できるが他人が作った武器も気に入る場合もある。今回はそのことで問題があってゴブリンの爪を1週間以内に3つ手に入れなければならない。それをベルに頼み持ってこさせることができたら考えてやる」

 

「なら今から行ってくるよ!」

 

そういうとヘスティアは立ち上がり走り去ってしまう。ヘファイストスのところで少し鍛冶について勉強でもさせてもらうことにしよう。この世界でのドロップアイテムを使用した鍛冶方法についてな。その勉強料としてついでに面白いものを差し上げようではないか。私はそう考え西棟に赴きあちらの世界で取れたインゴットとドラゴン素材を大きな袋に詰め家を出発した。しばらく歩くが冒険者からは笑われもしたが死ぬよりずっとマシだ。無事バベルに到着しヘファイストス・ファミリアの店に入るとヘファイストスとヴェルフがいた

 

「ヴェルフは良い剣を打てるんだからもう少し頑張りなさい」

 

「うっせぇな、現にこの前作ったドラ吉は売れたんだからいいだろ?」

 

「確かに形状は微妙だったけどいい武器だったのは認めるわ。でもまだまだ椿を超えるまでには至らないわ」

 

うむ、マズい時に店に来てしまったな。仕切り直しでも

 

「あ、いらっしゃい」

 

どうもさせてもらえんようだ

 

「お、ドラ吉を買った奴だぜヘファイストス」

 

「あれを買ったのがあなただったのね。それで今日はどんな用件で来たの?」

 

「今日は昨日言っていたように私が作った武器を持ってきた」

 

「はぁ!?自分で作れるのかよ!」

 

「自分でも作れるが自分の手に馴染まない事がよくあるのだ。それに私の手に馴染む武器だったので昨日のあれはいつも装備させてもらっている」

 

自分で作るはいいが私の手に馴染まないことがよくあるのだ。その時は付呪でバニッシュを付けて売るのだがなぜあんなにも高価に売れるのかは私にもわからない

 

「そ、そうだったのか」

 

「ああほれ、これが私の中での失敗作だ」

 

袋を床に置き中にある武器をヴェルフとヘファイストスに渡すが両者ともありえない物を見たような顔をしていた。だろうなこれはこっちの世界では取れるかどうか分からない素材、ドロップアイテムなのだからな

 

「な、なんだよこれ金属じゃねえぞ!?」

 

「これがハイドのいう失敗作なの?随分といい出来だと思うけど」

 

「作ってからしかわからんがこれらは失敗作だ。売り物にしかならん」

 

一応全ての種類の武器を各素材で作ったのだがその中にも失敗作が多いのだ。基本的には誰も分かりにくいものだが私のははっきりと分かるのだ。握り心地や重心、左右のバランスと全てを私好みにしたいのだがなかなかうまくいかなかったものだ

 

「ちなみにこれの素材はなんだ?触った感触じゃあ金属じゃないのは、はっきりと分かるんだが」

 

「それはこれだ」

 

更に袋の中からドラゴンの骨と鱗を出す。1つ1つがかなりの重量があるから持ってくるのが大変だったのだぞ

 

「これがその武器の素材となっているドラゴンの骨と鱗だ」

 

「そんな素材初めて聞いたわよ、ちょっと触ってみてもいいかしら?」

 

「別に貰っても構わんが条件がある」

 

そうこれが本題なのだ。私はこいつらからドロップアイテムを使った鍛冶のやり方を聞きに来たのだ。その授業料にこの程度なら安いものだ

 

「何が聞きたいの?」

 

「ドロップアイテムを使った鍛冶のやり方だ。今までは金属やその骨や鱗を使ったものしかやったことが無くてな教えてくれるのであれば更にサービスしよう」

 

私は袋の中に入れたドワーフの金属のインゴットを取り出すがヘファイストスはやれやれという感じで首を振る

 

「少し鈍い色をしてるけどそれって金よね?」

 

「いや違う。金なんて装飾品にしかならないがこれは違う、重量、強度において鉄よりかなり上だ」

 

ただこの金属の精製方法も特殊でなドワーフの遺跡にいたセンチュリオンやオートマトンの部品から精製するが1つ1つの部品が重くて大変だったのは覚えている。なぜあんな苦行をしてたんだろうな

 

「へぇ面白いわね、いいわ教えてあげるヴェルフも一緒についてきなさい」

 

「いやいやいやなんで俺もなんだよ?」

 

「ハイドからドラゴンの素材を使った鍛冶のやり方聞かないの?」

 

「うっ・・・そりゃ聞くけどよでも骨だぜ?たかが骨が金属のようにはならねえだろ。てことはだいたいは削るだけだろ?」

 

と普通は思うだろうがこの骨と鱗はなぜか削れないのだ。加熱しても溶けないという金属もびっくりな素材なんだ、ただ伸びたり薄くなったりはするし加工次第では厚くもできるという優れものなんだ

 

「いやこれも金属と同じように扱う。下手に削ると素材がダメになる」

 

「どんな強度だよ」

 

「まぁいい手本ぐらい見せてやる。炉を貸してくれ」

 

「分かったわ」

 

さて付呪無しでどれくらいのものができるのだろうな。私たちは店の奥に通されると炉がありいつも使っているものは全てここにあるな。ここで打てということだろう。ただこの装備に仮面が邪魔になってくるな

 

「すまんがこの装備を取るが笑ってくれるなよ?」

 

「え?」

 

私は装備を外すが下には適当な服を着ているがなるべくこの顔だけはなるべく晒したくないのだが視界が取れなくなるのはマズいからな。全て装備を外し素材を手に取る。さて何を作るとしようか

 

 

 

ハイドの旦那は全身の装備を取るといたって普通の服を着ていたけど仮面を取るとその下には綺麗な女性の顔だった。声は男のものだったけど見た目が完全に女性にしか見えない。そんな彼は素材を取るなり骨を手に取り炉の中に放り投げ熱し始めたドラゴンの骨は折れず曲がらず熱され続け赤くなると打ち始める。まず4つの骨を1つにまとめた後、骨の形状は少しづつ平べったくなり何回も何回も繰り返しみるみる形を変えやがて大剣に形を変えた。すると黒いインゴットを取り出し大剣の柄の部分を作るが一切の無駄なく完成させてしまった

 

「す、すげぇ・・・」

 

「まだ足りん。研ぐからもう少し待っていろ」

 

魔剣にはならないが分かる。かなりの業物になる。俺の作る武器よりも良いものになるのはなんとなくわかる。どうしてこんないいものを打てる?あいつは大剣を研ぎさらにいいものへと昇華させた

 

「あぁ一応完成はした。ほれヴェルフ振ってみろ」

 

「お、おう」

 

骨でできた大剣はとても重く感じた。質量もそうだが別の何かの重みを感じ全てにおいて違うように俺の直感がそう感じた。俺は一つの武器や防具を丹精込めて作るがハイドの旦那はたぶん違う。こいつを握って感じたが何度も何度も失敗して何度も作り直しやっと成功を掴んでも妥協してこなかった奴が作ったものだ。どうしてここまでしてこれたんだ?

 

「なんでハイドの旦那はここまでいい武器を作れるんだ?」

 

「私は私の為に死なないために武器や防具を作ってきた」

 

確かに武器や防具は自分の命を守り相手を殺すためのものなのは分かるけどただハイドの旦那は自分の命を守る為にとは言わず自分が死なないためと言った。意味は似ているが全然違う。重みが全然違う。他の冒険者が考えることとは全然違い過ぎる

 

「いったいあなたはどんな経験を積んできたのよ?あなたの話は他の冒険者と一線を画するわよ?」

 

「知りたいなら私の家にある図書館に来るかヘスティアに聞け」

 

「な、なぁ旦那。どうしたらこんな剣を作れるんだ?俺にも教えてくれないか!」

 

「別に構わんが私になろうとはするな。なろうとすればその先に待っているのは破滅しかないぞ」

 

破滅?何を言ってるのか分からないけど俺はまるで意味が分からなかったが少なくともヘファイストスは何か悟ったように嫌な顔をする。何か分かったのか?

 

「・・・本当にどんな経験をしたらそんな考えになるのよ」

 

「さてな。おいヴェルフその剣はどうだ?」

 

「ん?まぁいいとは思うけど」

 

「ならそれはくれてやろう」

 

「マジで!?こんないいものを貰ってもいいのかよ!」

 

「手入れはお前に任せるが骨には有限があるが欲しければ譲ってやる。その時は交渉はするがな」

 

随分とちゃっかりしてんなーハイドの旦那。でもこれだけいいものを作れるように励まなきゃ旦那に追いつける気がしねぇ。目の前にできた目標は高くなっちまったからな

 

「必要になったら連絡するわ。さて今度はこっちが教える番ね」

 

ドロップアイテムを使った鍛冶のやり方を教えるが仮面を着けずに話を聞くハイドの旦那は興味深々で聞くが比較的普通の鍛冶に追加で付け足すか素材そのものを加工するかのどちらかなんだ。それを考えるとこの大剣も同じ作り方なんだよな。でもドラゴンの素材なんて取れるなんて俺よりもレベルが高いのか?

 

 

 

私はヘファイストスからドロップアイテムを使った鍛冶のやり方を教えて貰ったがだいたいは普通の鍛冶と同じか少しやり方を変える程度なのかしかしいい勉強になったな。ヴェルフにも私としては付呪装備無しでいいものを作れたと思うがやはりまだ磨く価値ありだな

 

「さて今日は帰るとする。今度はちゃんと依頼されたものを持ってくるとしよう」

 

「そん時は任せてくれよ旦那!」

 

「ああその時はあの造形のものを頼む。それとこの顔の事は誰にも言わないでくれ、見せるのが嫌だから隠しているのでな」

 

今日は柄にもなく仮面を取ってしまったのはあれだが得るものは大きかったとは思う。装備は袋の中に詰め仮面だけを着けて私は帰るとしよう。さて帰りながらベルの装備を考えることにしよう

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

今回登場したドラゴンの骨の加工が一切分からなかったので自分なりにこうしてみました

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