ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い?   作:ark.knight

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鍛冶と道具

私は道行く人に武器屋がどこにあるかを尋ねるとバベルという塔に鍛冶をメインとしたファミリアの店があるらしいのでそこへ向かうことにした。今ある所持金はざっと50万ヴァリスぐらいだ。豊饒の女主人で使い過ぎたみたいで半分ぐらいになってしまったがあれは必要経費だと割り振ろう。バベルに到着するとドワーフの遺跡にあったような昇降機に乗り上へと目指す。昇降機が止まると目の前には武器や防具が陳列している

 

「値段は高いがこれくらいなら私でも打てそうだ。というよりも如何せん高過ぎのような気がするのだが」

 

あっちの世界でも0が2つけば高い部類になるのだが目の前にある装備には0が7,8もついているのだ。エンチャントでもしているのかと思ったがその気配もなくただの武器にしか感じられない

 

「とりあえず中に入って聞いてみることにしよう」

 

店の中に入ると右目を隠した赤い髪の女性が退屈そうにしていた。こいつからもヘスティア同様の雰囲気を感じ神であることが分かった

 

「ん?いらっしゃい仮面の冒険者さん。今日はどんなものをお探しで?」

 

「冷やかしではないがただどのような武器があるか見に来たのだ。如何せん最近こっちに来たのでな」

 

「てことは駆け出し?ならここじゃなくて上の階にある新人が作った装備を見るのをお勧めするわ。ここのは一級品だからね」

 

これで一級品だというのか。凄く値段が高すぎる気がするが一体どうなんだ?

 

「そうか。そういえば名乗り忘れていたな神とやら、私はハイド・クロフィだ。ヘスティア・ファミリアに所属している」

 

「ヘスティアのところの眷属()なの?ようやくヘスティアも2人目を見つけたようね」

 

「知っているのか?」

 

「知ってるも何もつい最近まで私のファミリアに居候してたわよ?さすがに怠惰過ぎて追い出したけど」

 

「大変だったのだな・・・すまんが名前を教えて欲しい」

 

「私はヘファイストスよ、この鍛冶系ファミリアの主神をしてる」

 

鍛冶ということは普通に炉があるのだろう。もしヘスティアに会わなければここに入っていた可能性は十分にあっただろう・・・ちゃんと私自信を見てくれればな

 

「ということは炉があるのか。てっきり商売系だと思ったが」

 

「炉はあるけどなんで商売系だと思ったのよ?」

 

「ここにおいてある装備が異様に高く思えてな。これだったら自分で作った方が安上がりだと感じたまでだ」

 

素材があるのだから自分で作った方が手っ取り早く感じるし強力なものができるのは目に見えて分かっている

 

「ちょっと待って。あなた鍛冶スキルがあるの?」

 

「一応自前の装備は全部自作だ。今度見せてやろうか?」

 

「お願いするわ、さてお喋りはこれくらいにして上の階にあるものを見てきてはどう?」

 

「そうさせてもらう。ではなヘファイストス」

 

店を出てまず思ったこと。鍛冶系ファミリアだということを抜きにしても改宗先は必ずここにしよう。意外とヘファイストスと話すのは楽しいと思うし気楽でいい。またしても昇降機に乗り上の階に行くと露店のように並んでいて私が来るなり騒がしくなる。一つ一つの装備を見てるのは面倒なので片手剣かダガーだけを見ることにした。新人が作ったものだとしても手にしっくりくるものは無くそれに打ち方が甘く感じた。ついにはいいものを見つけることなく奥まったところでひっそりと開いてる場所に行ってみた

 

「ん?客か、適当に見てってくれ」

 

「そうさせてもらう・・・ん?」

 

ふと視界に入ったダガーを見てみると素材は違うにしろ形状はドラゴンプリーストのダガーそのものであった。先ほどまでの新人達とは違く打ち方も切れ味もよさそうに感じ私の手にしっくりと馴染んだ

 

「それに目をつけるなんて仮面の旦那もお目が高いぜ。周りからは形状が変だとか失敗作だとか言われたけどよこれはこれで成功作なんだよ」

 

「ではそいつらの目が腐っているのかもな。これはとてもいいではないか」

 

逆手に持ち軽く振るうが本来のものより半分ぐらいの重量で二刀流として扱うには十分な条件の代物だった

 

「ちなみにだがこれはもう1本あるか?」

 

「すまねぇが材料が無いんだ。もし材料を持ってきてくれるのであれば作るがどうする?」

 

「愚問だ。材料はなんだ1週間以内には取って来よう」

 

「お、嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか。これにはゴブリンの爪と玉鋼のインゴットをそれぞれ3つずつだ」

 

この世界の武器にはドロップアイテムを使用するのか。私も一度挑戦してみるか?

 

「分かった必ずや持ってこよう。貴様名前はなんだ?」

 

「俺はヴェルフ・クロッゾだ。仮面の旦那は?」

 

「私はハイド・クロフィだ。とりあえずこの一振りは買うとして値段はいくらだ?」

 

「セットで15000ヴァリスでどうだ?」

 

「交渉成立だな。ではこれだ」

 

一応金はセット価格を支払い後は素材を持ってくるだけか。それにしてもこの造形をよく作れたものだなヴェルフは、私には作ることができなかったぞ?

 

「おいおいなんで10万ヴァリスも出してんだよ?」

 

「これは貴様への尊敬の意を込めての価値とこれからもまた依頼するかもしれないという手付金だ。ただ単純に私が払いたくて払っただけだ」

 

「・・・お前は俺がクロッゾだと知って近づいたのか?」

 

ヴェルフの顔が険しくなり始めた。もしかすると名のある鍛冶屋だったかもしれんが私はそんなことで決めない。個人の価値観を決めるのは個々人だが正直興味ないのだ

 

「貴様なぞ私は知らん。たとえ名のある鍛冶師であろうとな、ただこのダガーが気に入ったからそれだけで十分だとは思わんか?」

 

「・・・変に疑ってすまねぇ。悪かったな」

 

「気にするな。鍛冶ではないが私も似たような経験があるからな」

 

ヴェルフは鍛冶で私は各ギルドの長として同じ経験をしてきている。共感するところは多いだろうな

 

「話は変わるがここらへんでポーションなどにまつわる店は知らんか?」

 

「知ってるぜ。ここからだとミアハ・ファミリアのところがお勧めだ。場所は知ってるか?」

 

「教えてくれると助かる。何せここ最近こっちに来たので右も左もわからんのだ」

 

「へへ、これくらいお安い御用さ」

 

ヴェルフは地図を取り出し私にミアハ・ファミリアの店の場所を教えてくれた。ダガーをしまうとヴェルフと別れを告げバベルを出ることにした。ここから少し離れているがしばらく歩いているとミアハ・ファミリアの店と思われる看板を発見し中に入ることにした。中に入るとあの犬っころと同じように犬耳と尻尾を生やした女性と長髪の優男がいた

 

「いらっしゃい。ようこそミアハ・ファミリアの店へ、今日はどんな用件で?」

 

「少しポーションの材料があるか見に来たのだ。あるか?」

 

「珍しい・・・なんで材料?」

 

「自分で作った方が明確に効果や回復量が分かるからだ。それにポーションを買うよりかは安上がりの場合もある」

 

特に属性耐性をつけるときは自作しなければならないからな。オススメはスノーベリーにマッドクラブの殻、鷹の嘴だ。炎、冷気、雷撃の3種耐性をつけながらスタミナ回復というお得感満載ポーションが出来上がるのだ。値段的にも格安で作れるしあっちではそこら辺で手に入ったからな

 

「それじゃあ君は調合スキルを持ってるんだ。なら見せていいかな」

 

「勝手に決めないで・・・私はナァーザ・エリスイス、あなたは?」

 

「私はハイド・クロフィだ。所属はヘスティア・ファミリアだ」

 

「ん?てことはベル君と同じファミリアか。あ、僕はミアハ。このファミリアの主神だよ」

 

「・・・ついでに女誑し」

 

「ん?何か言ったかいナァーザ?」

 

「何も」

 

多分だがナァーザはミアハに惚れているのだな、少しばかり顔が赤くなっているし。とりあえずそんな茶番は置いておくとして早く錬金素材を見せてくれるとありがたいのだがな

 

「夫婦漫才はいいから早く見せてはもらえないだろうか?」

 

「め!?」

 

ナァーザはさらに顔を赤くし俯くとミアハはにこやか顔でこちらを見てくる

 

「別に僕とナァーザは夫婦なんかじゃ、って痛い痛い!なんで蹴るの!?」

 

「鈍感」

 

「・・・」

 

なんだこの空気。とてつもなく甘い甘すぎるぞ?それはともかく素材を見せてくれ。でないと今後のスタイルを決めることができないのだ。私1つ咳ばらいをすると一言謝罪されナァーザに店の後ろにある倉庫に入れて貰った。ここにはちゃんと錬金台が設置しており棚にはポーションの素材が陳列されていて山の青い花や青い蝶の羽などモンスターから採取されるものと毒となるもの以外の回復用の素材しかなかった・・・スノーベリーが無いのが残念だ

 

「ここでは回復用の素材しかないようだがここはそういう店なのか?」

 

「うん、毒は作らない・・・もしそれで死んだら嫌だから」

 

個人の意見であって私にはあまりわからないものだ。私は使えるものは全て使う、そうでもしなければ初めてドラゴンと戦った時は矢が足りず殺されていたかも知れんかったしな

 

「ふむでは質問するがスノーベリーという木の実とマッドクラブの殻を知っているか?」

 

「どっちも知ってる、でも前者は寒い土地でしか育たないから希少・・・後者は害獣指定を受けてる・・・それがどうしたの?」

 

私は鷹の嘴があるところまで歩きそれを手に取る

 

「この鷹の嘴とスノーベリー、マッドクラブの殻を素材にして錬金台でポーションを精製すると素晴らしい物が出来上がるぞ。無論これは毒ではないから安心しろ」

 

「ちなみに効果は?」

 

「炎、冷気、雷撃耐性が上がりスタミナ回復・・・要は走ったりする武器を振るう時に出る疲れを癒す効果を持つポーションが精製できる」

 

「冷気・・・氷?本当なの?・・・それだけ聞くと凄いポーションに思えるけど」

 

「効果に関しては実証済みだ。私もこのポーションには世話になっていた」

 

ドラウグルや魔術師を相手にするときは大概このポーションに助けて貰っていたのだ。効果は1時間だがあるのとないのでは天と地の差がある。各属性破壊魔法の攻撃を受けるとこちら側もじり貧になりかねんのだ。弓や剣を使えばまた話は変わるのだがな。私とナァーザは錬金もとい調合について語り合った。この世界では錬金台ではなく調合台といったり素材の入手ルートをある程度教えて貰ったりとためになる話を聞かせて貰った。その代わり毒以外のポーション精製を教えてやった。ちなみに副作用として出る毒の調和ができるそうだ

 

「今日はいい話を聞けた。もしかしたら素材を購入することがあるやもしれんがその時はよろしく頼む」

 

「こちらこそ良い話だった・・・この店を御贔屓にね」

 

「そうせてもらう、今日はもう帰ることにする」

 

私は倉庫から出るとミアハに別れを告げ店を出ると夕暮れ時になっていた。さて今日も家に帰るとしよう

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

さりげなく異世界の武器を作るヴェルフとモンスタードロップのアイテムで錬金しようとするハイドさんの図

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