ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い?   作:ark.knight

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剣姫と言語

十分に休憩を取りマジカも回復し念のためシャウトのクールタイムも終わった。正直やった後で気付くのもあれだがこの世界では見習い魔法でも十二分に威力が出るのが分かった・・・精鋭レベルや熟練者レベルの魔法なんて使うのが恐ろしいと思う。なぜなら雷撃魔法は灰にしてしまうし炎魔法は燃やし尽くしてしまう、ましてや冷気魔法は読んで字のごとく凍らせてしまう。私は常時手加減をしなければならないということなのか?あの犬っころは除くがな

 

「さて休憩も終わったことだしやるかアイズ」

 

「うん」

 

ティオナは私の腕から離れるとフィン達がいる方に向かって歩いていく。休んでいる間になぜか人が増えているしロキが来ているのには驚いたがな。私は立ち上がりフィン達に背中を向け剣を創造すると距離を置いてアイズが細身の剣を抜き対面する

 

「珍しい魔法を使うな。ハイドの武器はあれなのか?」

 

「違いますよリヴェリアさん。たぶんですけど持ち合わせがなかったからあれを使ってるんじゃないですか?」

 

「ますます興味が出てくるやっちゃな。おーいハイドー!うちのファミリアに改宗せえへんかー!」

 

「前にも言っただろう設備が無さすぎる。御託は置いておいて始めるとしよう」

 

私は両手の剣を構えると同じくアイズも剣を構える

 

「最初から本気で行く、【吹き荒れろ(テンペスト)】」

 

アイズの剣に風が集まり纏われていく。魔法特有の光を出さずにどうやって剣に魔法を付与したのかが気になるところだが今はそれで頃ではなさそうだ

 

「いつでもかかって来い」

 

「そのつもり」

 

アイズは駆け出すと来るだろう剣戟に備え防御の構えを取るが彼女の剣戟は鋭く早い、まるで激しい力のシャウトを使っているみたいに感じた。いくつか攻撃を受けるものの致命傷となる攻撃は無いが力が足りない。小手先で戦ってるように思えた

 

「いっけー!アイズたーん!」

 

「流石の彼も防戦一方、レベル6の実力も伊達じゃないわ。むしろ恩恵を受けてすぐでよくここまで耐えたと思うわ」

 

「僕からはなんとも言えませんね・・・頑張ってくださいとしか言えないです」

 

ベルのそんな言葉を聞くとしみじみそう思う。いくつかアイズの剣戟を喰らうがこんなダメージはなんともなくなんならドラゴンのシャウトの方が強力だと思うのは秘密だ

 

「しっ!」

 

それでも私はどこか油断してたみたいでアイズの剣戟を避けようとしてモロケイに当たり吹き飛ばされアイズだけに素顔を晒してしまった

 

「その顔は・・・」

 

「・・・よくも仮面を剥いだなアイズ。貴様にはそれ相応のものを見せてやろう」

 

私の慢心だがあまり知られたくない物を知ってしまったアイズには声を使うことにする。逆恨みではあるがすまないとは思う

 

「今からみせるのは貴様には到底敵うことのない力だ。拝して受けよ。Tiid(時間)Klo()Ul(永遠)!」

 

 

 

私は防御だけしかしてこない彼にやけになって仮面を弾き飛ばしてしまった。仮面の下に隠れていたのは綺麗で整った女性の顔だった。どうしてその顔を隠したいのかが分かったけど驚きはしなかった、むしろこの後の方が驚きだった。彼が何かを叫ぶと目で追うのがやっとの程の速度で近寄ってきた

 

「ここ!」

 

ある程度の予測をつけて斬りかかるもあっさりと避けられ見えない剣筋で斬られ血が噴き出る。それも1、2箇所ではなく5や6、それ以上と数えるのも馬鹿馬鹿しく感じるほどにやられた。しかし同時ではなくある程度の間隔を置いての攻撃だったがそれでも彼の姿が見えず剣筋も見えない相手にはさすがにどうしようもなくやられる一方だった

 

「くっ!」

 

「力で剣を振るうな、かといって技だけではダメだ。両方を兼ねそろえた攻撃をしろ。でなければどれだけ努力しようが一生私には勝てんぞ」

 

翻弄されながらも剣を振るうが一向に当たる気配は無く私は攻撃を受けすぎて地に膝をつける。すると彼はそのままの速度で仮面を回収し装着していた

 

「時間ギリギリか。互いにまだまだ甘い剣だな」

 

剣姫と呼ばれるようになってからは称賛されることは多かったけどこんなことを言われたのは初めてだった。どうしてハイドはそこまで強いの?

 

「どうしてあなたはそこまで強いの?」

 

「・・・ここのしきたりで言えばこうなるな。それはお前が私よりもレベルが低いからだろう」

 

そんなことは無いはず。たとえ恩恵が無くてもベートを倒したからといってレベルはみな等しく初期値である1から始まるはずだけどこれは嘘?それとも本当?

 

「嘘やん・・・うちのアイズたんが負けた」

 

「ねぇ白兎君、ハイドのレベルって1じゃなかったけ?」

 

「白兎って僕の事ですか?」

 

「そうだよ、見た目が目が赤くて髪が白くて白兎っぽいし」

 

「なんか不名誉なあだ名だと思いますけど・・・レベル1じゃないんですよね」

 

「え?」

 

ベルは彼の本当のレベルを知っているらしいが教えてくれる気配は無さそう・・・でもどういうこと?さっきのが本当だったみたいだけど信じられない

 

「そこまでだベル。私の事はもう何も言うな後が面倒になる」

 

「ちょい待ち、さっきの魔法はなんや魔力も無しにあんなことができるのはおかしいやろ」

 

「あれは言葉自体に意味がある魔法だ。マジカは必要ない」

 

聞きなれない単語が聞こえてくる。マジカ?魔力の間違いなんじゃないかな?それに魔法的意味を為す言葉って詠唱じゃないの?

 

「おどれほんまに何もんや?さっきティオナから話を聞いたけどモンスターを召喚したり剣の生成と普通じゃできひん事ばかりやで。なのになんで魔力枯渇(マインドダウン)せえへんのや?」

 

確かに私も思った。魔法を使えば使うだけ魔力が失われていつかは魔力枯渇を起こして気絶するはずだけどそんなことは無くまるで無限に魔力を内包しているかのように使い続けた。休憩と称し実際にマジックポーションを使うのでもなくただひたすら座って話していたりしただけだった

 

「ふんそんなことか。貴様らの常識で私を当てはめようとするな、生まれも場所も経験も実力さえも桁違いな私と同じ土俵に立っている思うな」

 

「ならお前のレベルはいくつや。そこまで言えるっつーことは相当高いんやろうな?」

 

「自分で調べろヘスティアに聞くなりしてな。私は帰る」

 

「待って」

 

私はどうしてここまで強くなることができたか知りたい。今の私はステイタスの伸び悩んでいた。どうしたらいいか誰にも分からない問題を彼だったら解決してくれそうな気がした

 

「私を強くしてほしい。私が戦った中で最も強かったあなたに強くして貰いたい」

 

「ほんまかアイズたん!こんな奴やめとき!」

 

「勝手にしろ。私の家がヘスティア・ファミリア拠点だからいつでも来い相手してやる。家は川沿いの大きな家だ」

 

これでたぶん大丈夫だと思いたい。これでまた強くなることができるかもしれない

 

「なら私も行って良いかな?」

 

「勝手にしろ」

 

彼はベルを連れて訓練室を出ていくと団員が不満げな態度を取ったりする人や驚愕する人が出た。不満を持つ人は彼と戦っていないから分からないだけだと思う。フィン達は団員の対応をしておりロキとリヴェリアはポーションを持って私に近づいてくる

 

「大丈夫かアイズ。手酷くやられたな」

 

「強かった・・・でも気になることはいくつかある」

 

「もうあいつのことはええやん。忘れてしまわへんか?」

 

「無理・・・強くなりたいから」

 

そう聞くとロキは寂しそうな表情になりリヴェリアはやれやれと言い首を振った

 

「アイズたん改宗はせえへんよな?」

 

「しないよ?」

 

「うちはそれだけ聞ければ満足や。でもハイドに何かされたら言うんやで!」

 

アイズはロキが何を言ってるのかあまりわからなかったがとりあえず頷くのであった

 

 

 

僕はハイドさんに連れられ適当に昼食を取ることになった。今日のあの戦いを見て改めて僕の掲げた目標は遥か高みにあることを再確認することができたけどどんな経験を積んだらここまでできるようになるんだろう?

 

「それにしてもハイドさんのあの魔法は何だったんですか?とても早くて目で追いつけなかったんですけど」

 

「あれは(シャウト)と呼ばれる言語魔法だ」

 

「言語魔法ですか?詠唱とは違うんですか?」

 

「詠唱とは違う。それぞれの単語に意味がある。そもそもの起源が違うのだがな」

 

僕には魔法なんてさっぱりわからないけどアイズさんが言っていたあれが詠唱だというのは分かったけど単語に魔法的な意味を為すなんてありえるのかな?

 

「私がアイズにしたのは時間、砂、永遠の言語を言っただけだ」

 

「時間、砂、永遠ですか?どうしてその3つの単語であんなに速くなるんですか?」

 

「遠からずも近からず少しは考えてみろ。この3つはちゃんと繋がっている」

 

「それじゃあ後で考えてみますね。それよりもこれを見てくださいよ!」

 

僕はベートさんの事で謝罪され使わなくなったショートブレードを貰っていたのである

 

「武器を貰ったのかよかったではないか。大事に使えよ」

 

「分かってますよ。それにしてもハイドさんはいろんな魔法が使えるんですね、見てて驚きましたよ!」

 

「試しにベルも魔法を覚えてみるか?楽しいぞ」

 

魔導書(グリモア)を持ってるんですか!?」

 

1つ1000万ヴァリス以上の値段が付く魔導書も持っているなんて・・・もしかして異世界の魔法なのかな?

 

「もしかしてですけどそれもハイドさんのいたところのですか?」

 

「そうだぞ、本は無いが面白い魔法があってな鉄を銀に変え、銀を金に変える魔法があったな」

 

なんですかその出鱈目な魔法は!?金銭的に無限に増殖できそうじゃないですか!

 

「一時期それで荒稼ぎしたものだ。今となっては全てヴァリスに変換されたみたいだがな」

 

「付かぬことを聞きますけどどれくらい持ってたんですか?」

 

「そんなの当の昔に忘れた。それでも数えるのが面倒な位には持っていたぞ」

 

「一度ハイドさんのいた世界に行ってみたいと思いました」

 

「辞めておけあっちはとんでもない魔境だ。むしろこっちの環境が天国だと思えるほどにな」

 

どういうことなんですかそれは?こっちも相当大変な環境なのにそれを天国だと思える世界って・・・

 

「変なことを言ってすみません」

 

「別に構わんさ。他の世界に行けること自体異常なのだからな」

 

「僕もそう思いますよ。話は変わりますけどこの後はどうしますか?」

 

「この世界の武器や防具を見てみたいと思っている。ベルはどうするのだ?」

 

「僕はダンジョンに潜ろうと思います」

 

「そうか、では金は置いておくから先に出るぞ」

 

そういうと僕の分も一緒にテーブルに置いて店を出ていく。堂々としていてどこかかっこいいんだよなーあの仮面を除くけど。さて僕は少しでもハイドさんに近づくためにダンジョンで頑張ってこよう!そう意気込みお金を払いダンジョンに向かうことにした

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

ヒロインどうしようか問題発生中

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