【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様)   作:アニッキーブラッザー

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第2話『怒涛の皇帝』

 真田弦一郎の究極奥義・風林火陰山雷。

 幾多の修羅場を残り超え、多くの猛者たちを蹴散らしてきた技。

 しかしそれが、

 

「疾きこと風の如し!」

「追いついてやるわ!」

 

 目にも止まらぬ超高速スイングから放たれる高速ショット。

 だが、その一撃必殺の風の動きにアスナは対応した。

 

「大したスピードですね。彼、恐らく居合の達人ですね。居合抜きのような切れ味です」

「だが、それについていってるアスナ殿も流石でござる。伊達に魔法世界の修羅場をくぐり抜けてないでござる。もはや、常人レベルの達人では、アスナ殿には敵わぬでござる」

 

 目にも止まらぬ? いや、既に一部の人間にはボールがまったく見えなかった。

 

「ちょ、ちょー、どういうこと!?」

「音はしてるのに、全然ボールが見えないやん!」

「おーい! これはテニスだろ、テニス! 相手の男は一般人だろ!? せっかく魔法世界の非日常から現実に帰って来て、テニスなんて現実万歳のスポーツで、何でこんな異次元の戦いを繰り広げてんだよ!」

「千雨ちゃん、落ち着いて」

「でも、アスナもすごいけど、相手の真田くんもすごいよね」

 

 普通の人には、コートで男女が向かい合って、素振りをしているようにしか見えない。

 そんな高次元な戦いをするアスナについていける真田に、麻帆良の生徒は驚き、逆に・・・

 

「信じられん。弦一郎の風の速度に完全に追いついている」

「あのスピードでなんつうパワー・・・まるで青学の河村が使ってる波動球並みだ」

「まずいですね。ここは一度緩急をつけて、体勢を整えた方が・・・」

 

 絶対の信頼を置く、皇帝・真田と真正面からやりあっているアスナの存在に、立海メンバーは驚きを隠せなかった。

 さらにアスナは真田の動きについていってるのではない。徐々に、アスナのスピードの方が上回っている。

 

「ほらほら、どーしたのよ、ゲンイチロー!」

「たわけ、気安く名前で呼ぶな!」

「そんなの気にしてらんないでしょ! くらえ!」

 

 両手打ちバックハンドから、バズーカーのような轟音が鳴り響く。

 真田の全身の鳥肌がたった。

(なんという威力!? こんなものを正面から食らえば・・・・・・ぐっ、だが!)

 

 当たればひとたまりもないかもしれない。

 だが、真田は逃げない。

 

「だが、この俺は一歩も引きさがらん! 侵掠すること火の如く! ぬりゃあああ!」

「えっ・・・こ、今度は火!? でも!」

 

 遠心力で威力を上乗せしたショットで真っ向から迎え打つ。

 怒涛の火のような打球。

 だが、一瞬アスナは面食らったものの、

 

「その程度じゃ侵略させないわよ!」

「何!? 俺の打球を打ち返したか・・・面白い! ぬりゃああ!」

「せい!」

「ぬりゃああ!」

「この!」

「ぬああああああ!」

 

 火の勢いは止まらない。怒涛の攻撃は、アスナを防戦一方にする。

 だが、しつこかったのか、アスナは急にラケットをブンブン振り回した。

 

「ぬりゃぬりゃ、うるっさいわよ!」

「ッ!?」

「アスナホームラン!!」

 

 その時、ビッグバンがテニスコートに起こった。

 何が起こったかは分からない。だが、眩しい閃光と爆発が起こり、爆炎が舞い上がる中・・・

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「真田副部長!!??」

「弦一郎!?」

「真田!」

「あの女・・・化けもんかよ・・・」

 

 誰がこんな光景を想像しただろうか。

 中学テニス界最強の一人、皇帝・真田が同年代の女子にふっとばされるということを。

 真田はテニスコートの柵を超え、天高らかに飛ばされて校舎の壁に激突した。

 そして、壊れた人形のように受身も取れぬまま落下し、鈍い音と共に地面に叩きつけられた。

 

「げっ、やば、やりすぎちゃった!?」

「アスナさん、何やってるんですか!? 手加減しないと!?」

「あーん、アスナのアホー! 相手は普通の人間なんやから!」

「殺してしまったらどうするんですか!? お嬢様、急いで真田くんを治療してください」

「ゲンイチロー、ゴメン、やりすぎた! 大丈夫!?」

「真田くん、しっかりしい! 今、ウチが治したるからな」

「真田くん、しっかりしてください」

 

 呆然として一歩も動けない立海メンバー。これは、夢か? 幻か?

 あの、真田が、同世代の女子相手に負けた?

 校舎の壁から落下して地面に打ち付けられて倒れる、真田。

 コンクリートの地面に血が流れている。 

 彼の元へ麻帆良の生徒たちが慌ただしく駆け寄る。死んだのではないか?

 だが、真田の心配よりも、この現実に対してどう反応していいか分からない立海メンバーは、ただその場で立ち尽くすだけ

だった。

 しかし、その時だった。

 

「ええい、触るなァ! この俺はまだ負けていないわァ!」

 

 真田が立ち上がった。

 全身青あざと血まみれになりながらも、彼は立ち上がった。

 

「ちょっ、ゲンイチロー、そのケガじゃ無理だって。大人しくしなさい!」

「そうですよ、真田さん。これは練習試合なんですから無理をしないで・・・」

 

 無理をしようとする真田だが、流石に見るに見かねてアスナとネギが止めようとする。

 だが、傷ついてもなおギラつく彼の瞳と闘争心は、まだ終わっていないと告げていた。

 

「これは真剣勝負だ! どちらが敗北するまで終わりなどはない! かつて、俺の宿敵は一生テニスができなくなる覚悟で、それこそ命懸けで戦った。ならば、俺もまたここで引き下がるわけにはいかん!」

「ゲンイチロー・・・」

「さあ、戻れ、神楽坂アスナよ。最後のポイントが取られるか。相手が試合続行不可能になるか。そのどちらかになるまで、試合が終わることはない!

 

 それは意地のようなものだ。ただ、負けたくないという意地。

 

「あんた、馬鹿ね」

「な、何がバカだ!」

「・・・でも・・・」

 

 アスナにとってはバカバカしい。スポーツで死ぬなど意味が分からない。

 だが、それでもどこか気分が良かった。

 

「私、ケッコー、あんたみたいなの好きよ」

「ぬう!?」

「オッケー、じゃあ容赦しないわよ! 続きしよ、ゲンイチロー!」

「無論だ!」

 

 試合は続行になった。

 

「はあ・・・はあ・・・ッ、審判、お願いします」

「真田くん、続けられますか?」

「もちろんです」

「では、続行します。ゲーム、3│2、神楽坂リード!」

 

 その真田のファイトに、麻帆良のギャラリーからも歓声が上がる。

 

「くっ、負けるな! 負けるな、真田副部長! あんたが負けるとこなんか見たくねえ!」

「真田ー、度肝を抜いてみろい!」

「お前が俺たち立海の魂だ!」

 

 切原は涙目になりながら必死に声援を送る。

 それにつられて、正気を取り戻した立海メンバーも、声を張り上げる。

 その声援の後押しを受けて、傷ついた体を引きずりながらも、真田の技巧が冴え渡る。

 

「たとえ相手が誰であろうと、王者が屈服するなどありえん!」

「アスナホームラン!!」

「同じ手はくわん! 静かなること林の如く」

「げっ!?」

 

 アスナのバズーカーのようなショットを手首とボールの回転でいなして、無効化する。

 パワーとスピードでは相手に分がある、ならば、テクニックで勝つ。

 真田はただ勝利のみを目指した。

 

「にゃろ、そりゃあ! エアーA」

「無駄だ、貴様の技は全て受け流す!」

 

 テレビでプロがやっていたジャンピングフォア。

 これもまともに食らえばひとたまりもないかもしれない。

 だが、真田は粘る。

 

「あらゆる技巧を受け流すか。想像より遥かにやるではないか」

「うむ、まるで消力アル」

 

 パワーだけではない。テクニックまで兼ね備えた真田のテニス選手としての完成度に、麻帆良の主要戦士たちも目を見張った。

 しかし、それはあくまで常人レベルでの話。

 

「侵掠すること火の如く!」

「ほいっと」

「ぬりゃあ!」

「ほら、返すわよ!」

「せいいい!」

 

 真田の怒濤の火の攻撃。あらゆるハードヒッターたちもそれを上回る力で打ちのめしてきた。

 だが、これはどうだ?

 

「いい加減に、決まらぬかー!」

「へへん、決めさせないわよ! もう、その技は私には通用しないんだからね!」

「ッ!?」

 

 大振りのグランドスマッシュが、いとも容易くリターンされる。

 女の細腕、しかも涼しい顔のままで、更に息一つ乱してない。

「さあ、ゲンイチロー、そんなんじゃ私を倒せないわよ!」

 

「ぬう・・・徐々に、林でも受け流せなく・・・押されッ!?」

 

 もっとお前の力を見せて見ろ。まるでそんな笑みでアスナは真田を鼓舞する。

 だが、ハッキリ言って今の真田にはそれを正面から立ち向かえる精神力はなかった。

 

(バカな・・・バカな・・・俺の力が・・・技術が、スピードが、パワーが・・・テニスが通用しない・・・)

 

 相手がうまいとか強いの話しではない。

 

「ゲーム、神楽坂。4-2」

 

 格が違うとかそういうわけではない。

 

(あらゆる修羅場をくぐり抜け、幾多の兵者も平伏してきた、俺のテニスが・・・)

 

 テニスをしている気がしない。テニスという競技をしているのに、まったく違う力で自分のこれまで積み上げてきた全て

を打ち壊される。

 そんな心境だった。

 

「・・・ならば・・・」

 

 ならば、どうする? 諦めるか?

 いや・・・

 

「ならば、俺は今、テニスで勝てぬのならテニスを捨てる。テニスが及ばぬ事態を見たくはない」

「・・・はっ? あんた、何言ってんのよ」

「代わりに、王者立海大を守り抜く」

 勝てないかもしれない。だが、抗う。

「真田弦一郎が守り抜く。母よりもらったこの体、父より与えられたこの名で守り抜く!」

 

 突如真田が見たこともない構えをする。テニスではなく、まるで剣道のような構え。

 王者の威信、そしてテニスというスポーツを守るために取った、真田の答えは・・・

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 真田弦一郎のブンブン剣。腕を伸ばしてとにかくラケットを振り回す。

 休む間もなく、ただただ無我夢中でラケットをブンブン振り回す。

 

「まるで・・・・・・烈海王のグルグルパンチではないが・・・」

「なんとも痛ましい・・・」

 

 真田がテニスの限界から目を背けて繰り出した、テニスを捨てた姿。

 そこに誇り高い皇帝の姿などなく、彼とともに死線を乗り越えてきたチームメートたちも、悔しさで唇を噛み締めた。

 

「ゲンイチロー・・・何よ、もうやけくそになったの?」

「うおおおおおお」

「これくらいで諦めるの? 私たちは・・・ネギは・・・こんな程度のこといくらでも乗り越えてきたってのに」

 

 それがお前の限界か? アスナは不満を顔に浮かべて、真田のヤケクソのボールを打ち返す。

 

「哀れなり・・・弦一郎」

 

 柳蓮二は目の前から目を背け・・・

 

「まあ、常人では頑張った方ではないか?」

 

 あくびをして、試合を見限ったのか急に寝っ転がるエヴァンジェリン。

 もはや誰の目にもこの試合の勝敗は明らかだった。

 だが・・・

 

「んじゃあ、遠慮なくやっちゃうからね? そりゃ!」

 

 その時、真田弦一郎の視界が全てスローモーションになった。

 そして、これまでの自分の歩んできた道のりが全て走馬灯のように流れた。

 一つ一つの試合。激戦。勝利。敗北。

 更に・・・

 

―――俺たちは王者だ 負けることは許されない! それが王者の掟!

 

 難病から奇跡の復活を遂げた幸村の執念。

 

―――お前の覚悟はそんなものか

 

 自分の腕を犠牲にしながらも真っ向からぶつかった、最大最強のライバル、手塚。

 そして・・・

 

―――まだまだだね

 

 その瞬間、真田の瞳が変わった。

 

「みんなよく見るんだ・・・」

「幸村?」

 

 今まで無言を貫いていた幸村が、腕組しながらコートから目を背ける立海メンバーに告げる。

 

「テニスで敵わないからテニスを捨てる? 何を言っているんだ、真田。君からテニスを奪ったら何も残らない。俺と同じ。テニスは真田の全てさ。捨てられるはずがない」

 

 幸村の言葉が合図になったのか、真田がヤケクソの動きから急にキレのある動きへと変わった。

 更に、

 

 

「・・・えっ!? ちょっ、何よ!?」

 

 レーザー光線がテニスコートに放たれた。

 

「あれは!? 柳生先輩の!」

「レーザービーム・・・」

 

 目にも止まらぬパッシングショット。それだけではない。

 

「ちょっ、ぼ、ボールが消えた!?」

 

 あまりの速さでボールが見えなくなることは既にあった。

 だが、目の前にあったボールが急に姿を消した。

 アスナも目を凝らして思わず左右に首を振った。

 

「あれは、千歳千里の神隠し!?」

 

 突如、キレのある動きであらゆる技を繰り出す真田。

 その彼の体には光り輝くオーラが身を包んでいた。

 

「あれは・・・気・・・でござるか?」

「いや・・・違うのでは・・・エヴァンジェリンさん、アレ、何だか分かります?」

「・・・ほう・・・あの小僧・・・どうやら、常人の極みに達しているようだな」

 

 誰の目にも確認できる、真田から放たれるオーラ。その現象に観客もざわつき出すが。

 しかし、真田は更に加速していく。

「ちょっ、いきなりなんなのよって・・・えっ!?ラ、ラケットが見えない壁に・・・」

 

 アスナが真田から打たれた球を返そうとしたら、スイングの途中で目に見えない何かにラケットが弾かれてボールを返せなかった。

 

「おい、ジャッカル! あれって確か」

「ああ、イギリスで見た・・・ジェミニだ! 確か、目に見えない気で球を作り出し、先に気のボールを打ち相手のラケットを弾く技・・・真田の野郎・・・」

 

 そう、止まらない。その姿に興奮を隠せない立海メンバーは・・・

 

「ぷりっ、イリュージョン」

「仁王先輩、急にどうし・・・うおっ、イリュージョンで青学の監督になって、どうしたんすか?」

「・・・あやつめ・・・進化しおった」

「仁王くん。それをやりたいがためにイリュージョンで竜崎先生になるとは・・・まあ、気持ちは分かりますがね」

「おい、お前ら、真田の野郎、まだ何かやろうとしてるぞ!」

 

 気で作り出したボール。更に、その気を巨大化させ・・・

 

「な、なに!? 空気が・・・何だかビリビリして・・・」

 

 空気が変わった。真田が溜め込んだ気が一気に解放される。それは、ジェミニとは比べ物にならない超大型の気で作った球。

 この中でその技の正体を知っているのは、切原だけだった。

 

「あれは、イギリスでキースとかいう奴が使ってた、万有引力!?」

 

 先程はアスナにテニスコートを飛び越えるほどぶっ飛ばされた真田だが、今度はアスナが大きく飛ばされて、何十メートルも先にある校舎の壁に激突した。

 

「ちょっ、アスナさん!」

「えっ、あれなんなん!? いや、アスナは無事やろうけど、真田くん急に凄すぎやん!? 」

「テニスと気を融合した技・・・でござるか?」

「すごいアルね。ちょっと見くびってたアル」

「やるな」

「ほほ〜、生意気な小僧だと思っていたが、言うだけはあるな。・・・無我の境地とやらだな・・・」

「あの、エヴァンジェリンさん、むがのきょーちって何?」

 

 覚醒した真田に、麻帆良生徒たちが身を乗り出した。

 

「ゲーム・真田・3│4・チェンジコート」

 

 ぶっ飛ばされたアスナより、真田に注目が集まるところが、立海メンバーとの違いではあるが、そんな状況でもこの男だけは冷静だった。

 

「真田も俺も、無我の力は使えるけど、通常使わない。体力の消耗が激しい上に、自分の技で戦ったほうが強いからね。でも・・・テニスを捨てようとした真田に対し、彼の細胞と本能が真田を無理やり無我の境地に引きずり込んで、テニスを手放させなかった。いや、テニスが真田を手放さなかった」

 

 誰もが唖然として、幸村に対しても真田に対しても言葉が出ない。

 アスナもぶっ飛ばされたものの、大して怪我はしていないが、急に動きが変わった真田に対して言葉を失った。

 すると、無我のオーラを纏った真田は、アスナを見ながら呟いた。

 

「まだまだだな」

「ッ!?」

「やはり、俺にはテニスしかない。だからこそ、とことんテニスに身をゆだね、俺は更なる高みへと行く」

「ゲンイチロー・・・へへ、すごいじゃん。これがテニスなのね?」

「ああ、これがテニスだ!」

 

 全てを吹っ切ったかのように迷いのない表情、集中しきった瞳。

 真田は今、テニスプレイヤーとして大きく進化した。

 だが・・・ついに我慢の限界に達した女生徒が叫んだ。

 

「いや・・・・つか・・・・・・・・・テニスじゃねえじゃん!!?? 何でテニスやって校舎に穴が空いたり人がぶっとんでんだよ!? しかも、元気玉まで打って神楽坂ぶっとばして、どこがテニスだっつーの!!」

 

 常識人・長谷川千雨。

 しかしその叫びは誰からも無視され、いよいよ真田とアスナの決着が近づく。

 

 ・・・・だが、その決着は、仁王が気づいた意外な出来事が原因で、思わぬ形で迎えることになるのだった。

 

「あの女。今の万有引力の衝撃で・・・・・・パンツが破けとんだぜよ・・・気づいてないのか?」

 

 アスナも真田もスカートの下の異常事態に気づいていなかった


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