【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様)   作:アニッキーブラッザー

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一度消したものでしたが、要望も戴いておりましたので、再びやり直します。


第一試合:皇帝・真田VS黄昏の姫巫女・アスナ
第1話『テニス界の威信』


それは、世界で一番熱い夏休み終了直前の出来事だった。

 

「冗談じゃないっすよ、真田副部長! 何で俺たちが女子なんかと試合しなくちゃなんないんすか!」

「騒ぐな、赤也。相手の男子部が全員逃げ出したのだ。仕方あるまい」

「だったら中止ってことで、練習しましょうよ。女子と試合なんかしたって、面白くもなんともねえ」

 

全国に轟くテニスの名門校、立海大附属中学テニス部。

昨年は惜しくも全国準優勝に終わったものの、彼らのテニス人生は始まったばかり。

三年生も部の公式戦は終わったものの、個人戦やジュニアでの大会があるうえに、エスカレーター式の学校であるために受験の心配もあまりない彼らは、変わらず部活三昧の日々だった。

そんなある日、全国大会には出場しなかったが、様々なスポーツで実績を残している麻帆良学園と練習試合が決まった。

だが、立海大の名前に臆したのか、相手チームが直前に全員ボイコットという事態が起こった。

わざわざ麻帆良にまで遠征してきての仕打ちに憤りを隠せない立海メンバーだったが、何と麻帆良は謝罪と、せっかく来てくれた立海メンバーのため、逃げた男子の代わりに急遽女子生徒を用意し、彼女たちに試合の相手をさせるから許してくれと言ってきたのだ。

それは逆に失礼だとばかりに、立海大の二年生エース、切原赤也は騒いでいた。

だが、副部長の真田は毅然とする。

 

「逃げた相手に興味はない。ただし、立ち向かってくるのであれば、相手が誰であろうと全力を尽くすのみ。それが我ら立海大の精神だ!」

 

あまりの気迫に、赤也も言葉をつまらせる。

だが、それでもまだ納得していないのか、グチグチと小声で文句を言っている。

 

「しっかし、それにしても対戦相手は逃げるわ、女子と試合はするはのわりに、ギャラリーだけは多いな」

「ああ、しかも何か賭けているのか? 妙な空気だぜ」

「ふむ、あまり好ましくない空気ですね」

「ぷりっ」

「試合で対戦したことがないので、麻帆良のデータはあまりないが、これがこの学園の校風か?」

 

実際、文句があるのは赤也だけではない。

学園のテニスコートで、対戦相手が来るまで軽いストレッチをこなしている立海メンバーたちの周りには、大勢のギャラリーが既に集まっていた。

「俺は兄ちゃん達に」「いやいや、俺たちは女子に食券30枚」などと場違いな声が聞こえる。

これには、立海メンバーの、丸井ブン太、ジャッカル桑原、柳生比呂士、仁王雅治、柳蓮二は、騒ぎはしないものの少し不満そうな顔を浮かべている。

真田もまた、赤也を叱ってはいるものの、不機嫌そうな様子は隠せていない。

するとその時だった。

 

「ご、ごめんなさーい、お、おそくなりましたー!」

 

幼い子供の声が聞こえてきた。

 

「えっと、こんにちは。立海大附属中学テニス部の皆さんですね! あの、今日はウチの学校の男子部がご迷惑をおかけしました! 僕は、この学園の女子中の担任のネギ・スプリングフィールドです! 今日は僕のクラスの生徒たちが試合をさせていただくことになりました! みんな、テニスは初心者ですけど一生懸命やります! 精一杯やりますので、よろしくお願いします!」

 

礼儀正しく頭を下げる幼い子供。

立海メンバーの目が点になった。

 

「な、なあ、副部長・・・俺はどっからツッコめばいいっすか?」

「データにない・・・」

「これは流石の俺にも予想外ぜよ」

 

子供、教師、女子中? ・・・その時、腕組んで無言だった男がついに口を開いた。

 

 

「麻帆良たるんどる!!!!」

 

「ひい!?」

 

 

真田の激怒に、ネギがビビった。

 

 

「王者立海大になんという仕打ち! いや、これが王座から陥落した報いだというのか!? だが、それでも無礼千万! 子供に謝罪させ、女子と戦わせるなど、恥を知れ!!」

 

 

学園内に響き渡る怒声に、空気が揺れる。

その気迫に、ネギも少し涙目だ。

だが、それでも真田の怒りは収まらない。

しかし・・・

 

「ちょっとちょっと、あんたうるさいわよ! ネギ、怖がってんじゃない」

「うは~、びっくりしたえー」

「ユエー、やっぱりネギ先生以外の男子は怖いよ~」

「あなた方、私たちのネギ先生に何をしていますの!」

 

ゾロゾロと、真っ白いポロシャツにスカートを履いた可愛らしい女子生徒たちがコートに入って来た。

中には、応援のチアリーディングのスタイルや、制服のままの女子も居るが、総勢30名程度。

ひとクラス丸々来たという感じだ。

 

「うわ・・・ちょっと、ちょっと~、なんか可愛い子が多いっすよ、先輩! やべ、最初はムカついたけど、これって結構おいしくないっすか?」

「むっ・・・侮るな、赤也。・・・よく見ると何名か・・・たたずまいや雰囲気が常人でないものが混ざっているぞ」

 

少し顔を赤らめて浮かれる赤也だが、その隣では立海大の参謀・柳蓮二が鋭い瞳で集まった女子たちを凝視していた。

それは、他の立海メンバーたちも同じだった。

 

「留学生が何人かまざっているか?」

「おいおい、よく見んしゃい。なんかロボットみたいのが混じってるぜよ」

 

なんか普通じゃない。しかし、それを今の冷静さを欠いた真田には分からなかった。

 

「勘違いするな。その子供に怒ったのではない。この学園そのものに俺は憤ったに過ぎない」

「はあ? なによ、せっかくワザワザ来てくれたのに何もしないで帰すのは可哀想だからって、私たちが休日返上して集まったってのに、その態度は何よ!」

「そうですわ! テニスは紳士のスポーツ。あなたのような野蛮なお猿さんがやるものではありませんわ!」

「なっ!? 俺を愚弄する気か!」

「つーか、あんたホントに中学生!? フツーにおっさんじゃない! 何歳なのよ!」

「ぬっ、・・・15歳だ・・・」

「嘘だ! 絶対、30に余裕で見えるわよ!」

 

真田と言い合う、ツインテールの活発な少女と金髪ロングのお嬢様口調の少女。

怖いもの知らずなのか、その堂々とした態度に、立海メンバーは少し感心していた。

だが、口論が激しくなるにつれて、ネギがますますオロオロしていく。

このままではラチがあかない。

すると・・・

 

 

「ふふふ、面白いじゃないか」

 

 

ずっと黙っていた一人の男が口を開いた。

 

「君たちのどちらがキャプテンだい?」

「えっ、あっ、それは・・・いいんちょが・・・」

「あっ、はい、私ですわ」

 

男は穏やかな口調と敵意のない爽やかな微笑みを見せる。

一瞬、あっけに取られて思わず大人しくなる二人。

男はその眩しい笑顔のまま、握手の手を出す。

 

「俺が立海大付属中テニス部部長。幸村だ。今日はお手柔に」

「あっ、はい、ご丁寧に。私は雪広あやかと申します。本日は我が校の不手際でご迷惑を・・・」

「いいえ。・・・そして、君も。今日はよろしく」

「うっ、あっ、うん。私は神楽坂アスナよ、よろしくね」

 

全てを包み込むような絶対的なオーラを放つ選手。

その男の名は、幸村。『神の子』の異名を持つ、最強の選手。

だが、その爽やかな笑の下には・・・

 

「幸村・・・」

「落ち着け、真田。別にいいじゃないか」

「しかし・・・」

「相手が男子でも女子でも変わらない。だって・・・勝つのは俺たちだからだ」

 

その笑みの下には絶対的な自信を持っていた。

流石の真田も彼の前には大人しくなった。

そのカリスマぶりに、女子中の生徒たちから甘い息が漏れる。

 

「はー、なんか、かっこええ人やな~」

「っていうか、全員、よく見たらイケメンじゃない?」

「うん、同じ中三に見えないけど、なんか・・・いいよね~、ハゲが一人いるけど」

「でも何だか怖そうだよ~」

「男性はネギ先生以外は信用できないです」

 

立海大メンバーの容姿に、思春期の女子らしい反応でキャーキャー騒ぐ女生徒たち。

男なら悪い気もしないのだが、彼らは全国最強クラスのスター選手たち。

今更キャーキャー騒がれても、「うるさい」程度にしか感じない。

 

「たるんどる! 今から戦を始めようというのに、その不抜けた態度は何だ! 俺が直々に教えてやろう! テニスコートは戦場であるということを。生半可な覚悟で立てる場所ではないのだ!」

 

もはや空気に耐え切れず、真田がラケットを取り出してコートに立つ。

誰でもいいからかかってこい。そんなオーラが全身から溢れていた。

 

「いきなり真田副部長っすか?」

「やれやれ。弦一郎も全国大会以降は性格にゆとりがない」

「まだまだ高みを彼は目指しているからこそ、今日のような状況が許せないのですね」

「まっ、いいんじゃねえか? 誰がやっても同じなら、順番なんてよ」

 

女子相手に大人気ないという気もするが、真田の気が済むのなら好きにやらせようと、立海メンバーも初戦を真田に任せてコート外に出て行く。

対する麻帆良女子のメンバーも、闘争心むき出しの真田に対し、一部の女子の顔つきが変わった。

それは、麻帆良の誇る主要戦士たち。

 

「いきなり彼が出てきましたか。強豪校の副部長というぐらいですから強いんでしょうか?」

 

サムライガール、桜咲刹那。

 

「検索・ヒットしました。真田弦一郎。立海大付属中三年テニス部副部長。中学三年間、公式戦での敗北は僅か一回。中学テニス界でも五本の指に入る全国トップクラスのプレーヤーです。その正々堂々としたプレースタイル、圧倒的な強さゆえに、中学テニス界の『皇帝』と呼ばれているそうです」

 

真田に関する情報を一瞬で収集した、アンドロイド・絡繰茶々丸。

 

「皇帝でござるか。テニスとは思えぬあだ名でござるな」

 

忍者ガール・長瀬楓。

 

「でも、いい目をしてるアルよ。気迫も十分アル。魔法世界から帰って来て退屈してたが、いい気晴らしになるアル」

 

格闘マスター・クーフェ。

 

「確かに、侍のような目だね。まっ、アマチュアのだが」

 

必殺仕事人・龍宮真名。

 

「で、誰が相手をするのだ? あの思い上がった生意気な老け顔小僧に。なんなら、私が泣かせてやってもよいが?」

 

イヤらしい笑みを浮かべる、最強ロリータ・エヴァンジェリン。

試合に出場予定の選手として、皆同じ、真っ白いポロシャツにスカートという同じスタイルで、コート脇から見物をする。

そして、そんな彼女たちの中からコートに飛び出たのは・・・

 

「じゃあ、私がやってやろうじゃない!」

 

バカレンジャーレッド・神楽坂アスナ。

ラケットを抱えて、ネットを挟んで真田と正面に立つ。

 

「いきなり、アスナか~!」

「アスナ~、ガンバレー!」

「さっきのうるさい女か」

「バカっぽいけど、結構可愛いっすね」

「だが、弦一郎の相手をするとは気の毒だな」

 

様々な声がコートの周りから聞こえるが、コートに立つのはあくまで二人。

今から、二人の試合が始まるのだ。

真田は改めてアスナに忠告する。

 

「試合となれば容赦はせん。逃げ出すなら今のうちだぞ?」

「誰が!」

「よかろう。では、Which?」

 

真田がラケットをコートに立てて、コマのように回そうとする。

だが、アスナはキョトン顔?

 

「はっ? フィッシュ? 何よ、いきなり?」

「アスナさん! それは、サッカーのコイントスみたいなもので、裏か表か当てて、サーブかリターンかを選べるんです!」

「えっ、そーなの?」

 

ただの女というだけではない。本当にルールも知らないようである。

もはやこれには真田も我慢の限界。

 

「ッ・・・・おのれ・・・、俺がサーブをやろう。一瞬で終わらせてやる」

「真田副部長、落ち着いて!」

「黙れ、赤也! 貴様に言われんでも分かっているわ! この程度の屈辱で、俺の精神は小揺るぎもせんわ!」

「いや、揺らぎまくってるっすよ!?

 

ただ速攻で終わらせるだけではない。ワンポイントも与える気は無い。

 

『ワンセットマッチ・真田・トゥ・サーブ!』

「さあ、テニスというものを教えてやろう!」

 

ボールを軽く二三回バウンドさせて、真田がサーブを放つ。

 

「うわっ、速いじゃん!?」

「真田の奴、容赦ねーな」

 

豪快な打球音と共に放たれたサーブは、サービスラインの対角線上のベストポジションに放たれる。

素人に取れるはずもなく、いきなりサービスエースだと、立海は確信していた。

だが・・・

 

「おりゃあ!」

「ッ!?」

 

まるで瞬間移動だった。

真田の放たれたサーブの延長線上に、アスナがいつの間にか待ち構え、楽々とフォアハンドでリターンする。

 

「ほう。やるな・・・口だけではないか。だが!」

 

一瞬驚いたが真田は冷静そのもの。

アスナのリターンはセンターに何の工夫も無く返ってきたため、真田はそのままガラ空きのバックサイドスペースに返球する。

絶対に追いつけるはずが無い。だが・・・

 

「させないわよ!」

「なにっ!?」

 

ガラ空きだと思っていたバックサイドに、気付いたらアスナが追いついていた。

これには立海メンバーも身を乗り出す。

 

「あの女、何て守備範囲だ!?」

「いや、それよりも・・・はええ! なんつう運動神経だよ!? 本当に女か!?」

「不動峰の神尾・・・四天宝寺の忍足・・・いや、沖縄の縮地法か!?」

 

相手は素人かもしれない。フォームはメチャクチャだ。しかし、それでもこの驚異の運動能力。

そしてもう一人・・・

 

「ありえんぜよ。あの女・・・」

 

立海大で最も恐ろしいと言われるコート上の詐欺師が震えていた。

 

「あの女、スカートの下は、生パンぜよ」

 

彼の目は誤魔化せなかった。

 

「って、アスナ、パンツ丸見えやん!」

「アスナさん、なにやってますの!? スパッツとかどうしたんですの!」

「アスナー、クマパンがー!?」

 

アスナの間違ったスタイルに、クラスメートたちも慌てて注意を叫ぶ。

いくら何でも、男子と対決しているのに、ソレはないと。

 

「えっ? なに?」

 

だが、試合中ゆえにあまり周りの声が聞こえないアスナは構わず大股移動、風でスカートがなびこうがなんのその。なんだったらジャンプだってする。

パンモロに気づかずに強烈なストロークを放っていく。

 

「ぐっ、バカな・・・なんというスピード・・・そして、重い打球!? ぬうあああ! ネットを超えんかー!」

 

そして、真田もパンツなどを気にしている場合ではなかった。

女の細腕ではありえぬほど強烈なハードショットに、真田の表情が歪む。

真田も意地で返すものの、ボールの威力に押されてリターンが甘くて弱い。

 

「チャンスボール、いただき! アスナスペシャルスマッシュ!!」

 

ネットを超えたものの、中途半端に浮いたボールに向かってアスナが飛ぶ。

力強い跳躍とともに繰り出される、バズーカーのようなスマッシュが真田の真横を通り過ぎる。

 

「すごいやん、アスナ!」

「よっしゃ、一ポイント先取!」

 

麻帆良側の歓声が上がる。だが・・・

 

 

「えっ!?」

 

 

今度は麻帆良側が驚く番だった。

今、まぎれもなくボールは真田の横を通り過ぎたというのに、その真田がアスナのスマッシュの正面に立っていた。

 

「うそ!?」

「ほう。まるで瞬間移動のような・・・瞬動でござるか?」

 

そして次の瞬間、落雷がテニスコートに轟いた。

 

「動くこと雷霆の如し!!」

 

弾ける閃光。

 

「破廉恥女め、アンスコを履かんかー!」

「ッ!!?? なにこれ!? でも、返してやるッ・・・え・・・が、ガットが・・・」

 

光が消えた時には全てが終わっていた。

ラケットを振り抜いた状態のまま固まる、アスナ。

そのラケットのガットには大きな穴が開いていた。

 

「ウソだろ!? あんな女に、真田副部長がいきなり究極奥義を使うなんて!」

「いや、だがあの女はとんでもねえ、運動能力だった・・・」

「しかも、それだけじゃねえ」

「今まで返球しようとしても相手のラケットごと吹き飛ばした、真田君の雷の力を、ラケットを持ったまま振り抜いたのですから」

「刹那、今のは見えたか?」

「は、はい。エヴァンジェリンさん、今の」

「ああ・・・あの黒帽子・・・なかなかいい動きをするではないか」

「ええ、瞬動のごとき速度。雷の魔法を纏ったかのような強烈な一撃でした」

 

たったワンプレーだった。しかし、そのたったワンプレーで、全ての者たちの度肝を抜いた。

そして、両校揃って同じことを相手に思う。

 

 

「「「「「「「「「「(こいつら一体何者!?)」」」」」」」」」」

 

 

と。

 

「15-0!」

 

審判のカウントと同時に、サーブの定位置に戻る真田と、構えるアスナ。両者の心中も穏やかではなかった。

 

(馬鹿な・・・なんだというのだ、この女は・・・あのデタラメな動き、そしてパワーとスピード)

(えっ、っていうか、今の何? これ、テニスよね? 何で、テニスの選手が瞬間移動したり、雷みたいなショットを打つのよ?)

 

只者ではない相手に、お互い表情が変わる。

いつになく真剣味あふれる瞳でお互い向き合っていた。

 

そして今日、テニス界の威信を賭けた戦いが繰り広げられるのだった。

 


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