新約、とある提督の幻想殺し(本編完結)   作:榛猫(筆休め中)

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陸奥よ…。

前回までの新訳、とある提督の幻想殺し…。


ブルネイの提督である金城大将の経営するお店『BarAdmiral』へと招待された提督達。

食べたいものを頼めという大将から少しだけ無茶な要求に何を頼んでいいかと困り果てる提督達呉一行。

そんな一行に大将は見兼ねたのか、作っていた自家製キムチを使った料理を振る舞ってくれるのであった。




結婚とケッコン(仮)

side上条

 

 

「んーっ!んんーっ!!(なっ何するんですか二人ともー!!)」

 

口を閉じられ拘束された比叡姉が抗議の視線を俺に向けてくる。

 

アンタに大将のレシピなんか聞かせられるわけないだろうが!

 

前だって名状しがたいカレーのようなもの(カレーモドキ)を食わされてあの世に片足突っ込みかけたってのに……

 

川内も呆れたように比叡姉言う。

 

 

「比叡さんには悪いけど…提督に倒れられたら困るんだよ、だから今回は自重してよね」

 

 

「んー…(コクッ)」

 

川内の言葉に渋々といった様子で頷く比叡姉。

 

ホッ…なんとか納得してくれたみたいだな。

 

 

「じゃあ川内、拘束を解いてやってくれるか?」

 

 

「え?あぁうん、分かった」

 

俺の指示で川内は手際良く比叡姉の拘束を解いていく。

 

 

「ぷはっ…!酷いじゃないですか指令!何も拘束することないでしょう!」

 

 

「陸奥姉の邪魔をしようとするからだろ?それより、まださっきの残りがまだあるじゃねえか、先に食べちまえよ」

 

言われて比叡姉はまだ残っていたアボカドキムチの存在を思い出したようでハッとしていた。

 

 

「むぅ…なんか納得いきませんけど、そうします」

 

そうして残りを食べ始める。

 

ナイス連携だったぜ川内!

 

と、俺は川内に無言のサムズアップを贈る。

 

川内も分かっていたのか、笑いながらサムズアップを返してきた。

 

 

「料理は特にそうだぞ?下拵えにどれだけ手間をかけるかで、出来上がりの美味さは大きく変わる。……好きな男にアピールする料理は、出来るだけ美味い方がいいだろう?」

 

 

「……そうね、肝に命じておくわ」

 

と、そんな声が聞こえてきて二人の話が一区切りついたらしい。

 

ていうか陸奥姉ちゃん、好きな奴がいるのか?こんな美人に好きになってもらえるとか羨ましい奴だ!

 

そんなことより、お嬢様方?どうしてそんな顔で俺を見るのでせうか?

 

 

「「「「「「ハァ…」」」」」」

 

なんか見つめてきたと思ったら急に盛大に溜め息吐きやがった…。部下…つーか、家族に溜め息吐かれるとか…不幸だぁ……

 

俺達がそんなやり取りをしている間に金城大将は次の料理を完成させており、違う料理を出してくれる。

 

 

「はいお待ち、お次は『牛肉のキムチ炒め』だよ」

 

 モクモクと立ち上る湯気が上がるソレを、大将は手早く皿に盛り付けていく。

 

まだ残っている白米と共に頬張ると、口に広がるのはキムチの独特の味と、牛肉とシイタケが合わさり、玉ねぎの甘みとゴマの風味がなんとも言えない旨さを醸し出している。

 

 

「美味い!」

 

 

「本当に美味いのう」

 

 

「だろ?キムチの炒め物ってぇと豚キムチが定番だが、これも中々イケる」

 

確かに、これはこれでアリだ。

 

牛肉とキムチってこんなに合うもんだったんだな……。

 

加賀姉なんか喋ることも忘れて、凄い勢いでキムチ炒めを食べ進めいるくらいだし。

 

 

「提督、これならあなたでも作れそうじゃない?」

 

 

「そうじゃな、どうなのじゃ提督?」

 

陸奥姉と利根姉が聞いてくるが、いやいやちょっと待て待て!

 

 

「ムリムリ!俺にこれは真似できねえよ」

 

モドキは作れるかもしれねえけど、そもそもキムチを手作り出来る時間も体力の余裕もねえよ……。

 

 

「なんじゃ、つまらんのぉ…」

 

そう言って膨れる利根姉に俺は内心で呆れていると。

 

 

「そういや上条君、キミはケッコンしてるのか?」

 

 

「ブフォッ!?…ゴホゴホッ」

 

 盛大にノンアルコールカクテルを吹き出された。

 

「ゲホゲホッ……けけけ、結婚!?いいいいやあのあの!俺まだ未成年ですし、そういうのはまだ早いんじゃないでせうかと思いますことよ」

 

「まあ、落ち着けチェリーボーイ、口調がおかしなことになってるぞ」

 

 

 

「何か恥ずかしい断定されたんだけど!?!?」

 

チェリーボーイってなんだよ!

 

 

「結婚じゃねぇよ。ケッコン……艦娘の能力を引き出すケッコンカッコカリの話だ」

 

 

「ケッコン…カッコカリ…?」

 

そういや、前の世界の時にそんな資料があったのを見たような、見てないような……。

 

というか、こんなことをいきなり聞いてくるってことはこの人はそれを既にしているってことだよな?

 

カッコカリって付くくらいだし、まさかとは思うけど……

 

 

「ち、因みに大将は……その、ケッコン人数とか」

 

 

「あ~……何人だっけか?金剛。多すぎるとイマイチ正確な人数の把握がなぁ」

 

 

「え~と、今日の時点で93人デスね。もうすぐ3桁越えデスよー!」

 

 

「いよっ!このハーレム大王!」

 

 

「夜のホームラン王!」

 

 

「女の敵!」

 

 

「……女の敵は酷くねぇか?もう少し良い呼び名があるだろ」

 

大将のとこの艦娘達が囃し立てて盛り上がるなか、俺は心底ドン引きしていた。

 

 

いや、その呼び名以上にしっくり来る名前なんて無いと思うんだけど……。

 

開いた口が塞がらないってのはこういうことなんだろう。

 

 

「ん、どした?鯉の真似かそりゃ」

 

金城大将、そんなことをしたいわけじゃないです……。

 

 

「い、いや、だって嫁さんが90人以上って……」

 

 

「あのな、ケッコンったってカッコカリだぞ?カッコカリ。大本営がややこしい名前付けるからそんな妙な気分になるだけでな」

 

それにしたってもう少し限度ってものがあるだろ!

 

そんなの名前を言い訳にして逃げてるようなものだ。

 

 

「でも、提督が事務的にケッコンしたとしても、艦娘の側からしたら意識するんじゃ……」

 

川内が恐る恐るといったように口を開く。

 

 

「そんなのは互いの意識の問題だろ。話し合いで解決すりゃ良い話だ」

 

 

「でも……」

 

 

「いいか?独身の野郎だけが提督になるワケじゃねぇ。当然、妻帯者が提督として着任する場合だってあるだろう。そんな相手に対してもケッコンしたからって愛情を求めるか?違うだろ」

 

求めるだろうな…。と俺は思う。

 

じゃなきゃ、俗に言う『浮気』なんて言葉だって生まれることすらないだろう。

 

とりあえず、金城大将のとこの事情を聞いてみるか。

 

 

 

「……じゃあ、金城提督はどうしてるんです?」

 

 

「ウチか?ウチは基本自由恋愛だぞ」

 

自由…恋愛…?そりゃつまり……。

 

 

「つまり艦娘達が他の人との交際も許可しているってこと?」

 

 

「えっ、そうなんですか!?」

 

 

「あぁ。法律上は何の問題もないしな」

 

あ、そうなのか…こっち来てからそんな時間なかったから知らなかった……。

 

 

「1人目とケッコンする前にルールを明確にしとけば、後は何人とケッコンしようが問題なんてほとんど起きねぇさ……まぁ、後は本人の努力次第だろ」

 

 

「はぁ……そんなもんスかねぇ」

 

世の中そんな簡単にはいかない気がするけど、大将が言うんならそうなんだろうな……。

 

というか、姉ちゃん達、なんで俺を見てるんだ?早く食わねえと折角の料理が覚めちまうぞ?

 

そう言ってやるとまたも盛大に溜め息を吐かれた……。

 

なんで二度も溜め息を吐かれなくちゃいけねえんだよ…不幸だ……。

 

 

 


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