新約、とある提督の幻想殺し(本編完結)   作:榛猫(筆休め中)

45 / 54
翔鶴です。

前回は呉鎮守府にゲームが来たお話でした。

今回は私達に関する重要なお話になります...。


改二改装

side上条

 

 

「不幸だ...」

 

俺は日課となりつつある書類に追われながら深いため息を吐く。

 

と、そこへノックと共に艦娘が一人入ってきた。

 

 

「失礼します、提督、少しよろしいですか?」

 

そう言って入ってきたのは古鷹だった。

 

 

「どうした?何かあったのか?」

 

 

「えっと、如月ちゃんの様子が少し...」

 

そこでなぜか言い淀む古鷹...。

 

如月に何かあったんだろうか?

 

 

「如月?何かあったのか?」

 

 

「口では説明しづらいので提督も来てください!」

 

そう言って俺の手を掴むと立たせようとしてくる古鷹。

 

 

「うおっ!?わ、悪い大淀、ちょっと行ってくるわ」

 

引っ張られながら大淀に軽く謝罪を入れ俺は執務室を後にするのだった。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「ここです」

 

連れてこられたのは演習場だった...。

 

 

「ここに如月がいるのか?」

 

 

「えぇ、あそこに...」

 

そう言ってある方向を指す古鷹。

 

俺も釣られてそちらを見る...。

 

そこには数人の駆逐艦娘に囲まれている如月の姿があった。

 

そこでふと目を引くものがあった。

 

よく見ると、如月の身体が白く輝いているのだ...。

 

 

「おい、古鷹、あれって...」

 

 

「不思議でしょう?私にも何なのか分からなくて...」

 

なるほどな、それで俺を連れてきたって訳か。

 

けど、俺もこんなの初めて見たぞ...。

 

江ノ島でも深海でもこんな現象見たことはない...。

 

とりあえず、詳しいことを聞いてみるとするか。

 

 

「如月、大丈夫か?」

 

 

「あら、司令官、大丈夫なんだけど、ちょっと熱っぽい...かしら?」

 

熱っぽい?体調に影響が出てるのか?

 

 

「きっと質の悪い燃料取ったのよ!」

 

 

「気を付けなさい、爆発するかもしれないわ!」

 

 

『えぇ――ッ!!』

 

爆発って...そりゃねえだろ?

 

 

「お前ら落ち着け、そんな簡単に爆発なんか起きるわけないだろ?不安にさせるようなこと言うんじゃねえよ」

 

 

「あなた...」

 

如月、その物言いは周りから誤解を招くからやめてくれ...

 

 

「どうしたのじゃ?

ん?提督よ、こんなところでなにしておる?」

 

ん?この声は...。

 

 

「おぉ、利根、いや、ちょっと如月の様子がさ...」

 

 

「如月の?ふむ、これは...」

 

利根のこの反応...何か知ってるのか?

 

 

「如月よ、すぐ工廠へ行くがよい、そうすれば解決じゃ」

 

 

「え?はい...」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ利根!あれはいったいどういうことなんだ?」

 

何の説明もないんじゃ分からねえよ!

 

 

「ふむ、なら提督には簡単に説明しておくとしようかの、あの現象は練度が大型改装可能な状態へと至ったときに発生するものなのじゃ」

 

 

「大型改装?なんだそりゃ?」

 

初めて聞く言葉なんだが...

 

 

「ふむ、そこから説明せねばならんか...そうじゃな、提督にもわかる言葉で言うとポ〇モンの進化のようなものじゃな」

 

 

「ぽ、ポ〇モン...?進化って言えばあの?」

 

俺の言葉に利根は小さく頷く。

 

 

「そうじゃ、あの進化じゃ、吾輩達艦娘は練度が一定のものになるとあぁやって身体が輝きだすのじゃ、その状態の時に改装、まあ人工的な進化といったところじゃな。それをすることによって吾輩たちはより強くなれるという訳じゃな、如月はあの様子じゃと改二改装を受けることになりそうじゃな」

 

 

「改二?」

 

 

「うむ、詳しいことは吾輩もよく知らんからの...。

大阪の吉野少将にでも聞いてみたらいいんじゃないか?

何かしら知っておるじゃろう」

 

それだけ言うと利根は去って行ってしまった。

 

吉野さんに聞け、か...。

 

確かにあの人なら色々知ってそうだよな...。

 

俺は改二改装の事を聞くべく、大阪鎮守府へとむかうのだった。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「という訳で来てみた訳だけど...」

 

ここに来ると必ず一回は妙なことが起こるから正直入りたくねえんだよな......

 

 

「あれ?上条大将じゃないか、どうしたの?」

 

しまった...迷いあぐねてる間にここの時雨に見つかっちまった...。

 

 

「いや、ちょっと吉野さんに聞きたいことがあってきたんだ」

 

 

「提督に?そうなんだ、じゃあ案内するよ、着いて来て」

 

そう言って先を歩きだす時雨...。

 

こうなったらもう行くしかねえか。

 

俺は半ば諦めるように時雨の後を追っていった。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「ここだよ、提督、上条大将が来てるよ」

 

時雨が執務室と書かれた扉の前でそう声をかける。

 

すると、扉の奥から返事が返ってきた。

 

 

『上条君が?分かった、通してくれるかな?』

 

 

「分かったよ、提督の許可も貰ったし、さ、どうぞ」

 

 

「あ、あぁ...失礼します...」

 

時雨に促されるままに執務室に入っていく。

 

中に入った俺の目には衝撃的な光景が目に飛び込んできていた。

 

 

「やあ、上条君、久しぶりだね、今日はどうしたんだい?」

 

 

「それが提督に聞きたいことがあるんだって」

 

 

「聞きたいこと?どういった事かな?」

 

時雨も特に気にした風もなく吉野さんと会話している。

 

そう、何事も無く話している吉野さんの背後には一人に金髪の艦娘らしき女性が立ち、その立派な二つの山をセットしているのだ...。

 

 

 

 

吉野さんの頭の上に......

 

吉野さんも特に気にした風でもないように振る舞っている...。

 

おかしいからな?当たり前みたいな顔でやられても違和感バリバリだからな?

 

あれ?でも待て...世間一般ではこれが普通なのか?いやいやいやいや!それはないよな?え?ないよね?そうであってほしい......

 

 

「えっと、上条君?どうかしたのかい?」

 

 

「ッ!い、いえ...少し考え事をしてました...」

 

主にあんたの頭上のソレについてをな...。

 

 

「それと、一つ聞いてもいいですか?」

 

 

「ん?何かな?」

 

 

「その...頭の上のソレって、吉野さんのご趣味ですか?」

 

 

「......ん??」

 

 

「いや、だからですね、その頭の上の...」

 

 

「いや違うから!自分がやれって命じてる訳じゃないから!

グラーフ君もなんとか言って!」

 

あの艦娘はグラーフって言うのか、てっきり幽霊か何かかと思った...。

 

 

「あぁ、これは私が勝手にやっていることだ、私は彼の物なんでね」

 

 

「ちょっとグラーフ君!その物言いは誤解を招くからヤメテ切実に!!」

 

 

「ん?そうなのか?」

 

 

「そうなんです。少なくとも提督はそう思ってます」

 

 

「そうか、では、以後気を付けよう」

 

とりあえず、吉野さんの命令でないという事は分かった、けど、艦娘に対して物扱いさせてるという真実と一緒にだけど......

 

これから吉野さんとの付き合い方考えないと...。

 

 

「ゴホンッ...それで、自分に聞きたいことというのは?」

 

あ、そうだったすっかり忘れてた...。

 

 

「ええとですね、改二改装について話を聞きたくて...」

 

 

「改二改装?また唐突だね。何かあったのかい?」

 

 

「実はですね...」

 

俺は呉で起きたことを話した。

 

如月の事、大型改装というポ〇モンの進化の様な事象があるという事等...。

 

 

「ふむ、なるほどね...それで自分に聞きに来たと」

 

その言葉に俺は黙ってうなずく。

 

 

「うん、一つ言わせてくれる?今まで知らなかったのソレ!?

っていうか改二がまだその子しかいないってどういうコト!?」

 

 

「いやそんなこと言われても...そうだったらしいですし...」

 

 

「あれで!?あれでまだ改二じゃないの!?」

 

最早黙ってうなずくしかない......

 

 

「は、ははは...そっかぁ...そうなんだぁ...」

 

そう言うとまるで明〇のジ〇ーのように真っ白になっていく吉野さん。

 

それを見てやれやれと首を振る秘書艦達...。

 

そんな吉野さんが元に戻ったのは三十分ほど経ってからだった...。

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「あーすまないね、待たせちゃって」

 

漸く復活した吉野さんがそう口を開く。

 

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

まあ、本当は大丈夫じゃないけど......

 

 

「改二改装についてだったね、自分もそこまで詳しく知っている訳じゃないけど、分かっていることと言えば、一回目の改装を受けて改となった艦娘がある一定以上の練度になるとその改装が受けられるという事だね」

 

 

「改となった艦娘が...?」

 

という事は如月はもう既に改になっていたという事になる...。

 

でもいったいどこで...?

 

 

「その君の所の如月はどこかのタイミングで一度改になっていて、そしてまた練度をあげていったことで改二へと至ったと考えるのが妥当なところじゃないかな?」

 

 

「そうですね、如月がいつ改になったのかが気になるところですけど、そこは気にしない事にします。貴重なお話ありがとうございました!」

 

 

「お役に立てたようなら良かったよ、用件はそれだけかい?」

 

 

「はい、お忙しいなかありがとうございました」

 

そうして俺は吉野さん達に別れを告げると、イソイソと大阪鎮守府を後にするのだった...。




改二の一件から半年、初の大阪との合同演習を行うことになった呉鎮守府、だがそこに招かれざる者たちも入って来て...


次回、新約、とある提督の幻想殺し

呉と大阪と江ノ島と深海

幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる...。

次回、本編最終回!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。