新約、とある提督の幻想殺し(本編完結) 作:榛猫(筆休め中)
前回は提督がリコリス棲姫に多対一の戦い方を教わる話だったな...。
今回は前回も出てきた戦艦水鬼の特訓回らしい。
ただでさえ人間離れしているのに提督は何処へ向かうつもりなのだろうか...
side上条
「おおおぉぉぉぉっっ!!」
向かってくる敵に扇状に足払いをかけ、よろめいた内の一人に渾身の左ストレートを叩き込む。
次いで近くに倒れていた奴を抱え上げるとジャイアントスイングの要領で勢いよく振り回す。
その勢いに巻き込まれ俺の周りの奴らが思いっきり吹き飛ぶ。
上の説明からわかる通り俺は今絶賛犯罪艦達に囲まれている。
そう、これはリコリス師匠が課した俺への修行だ...。
港湾姉さんたちに連れられてきてからもう半年が経つ...。
俺は
師匠曰く『頭デ覚エルヨリ身体ニ覚エ込マセタた方ガ早イ、習ウヨリ慣レロ』...だそうだ。
始めた当初は右手も使って相手を消しながらやってたんだが三カ月程繰り返しているうちに右手を使わなくても対処できるようになった。
「これでっ...最後だ!お前らのその歪んだ幻想をぶち殺す!!」
その叫びと共に渾身の左アッパーを最後の一隻に叩き込む。
「ガッ...アガ...」
地面に叩きつけられたソイツは恐怖の顔で俺を見てから倒れた。
俺はそれを見て深い、とても深いため息を息切れと共に漏らす...。
「ぜぇ…ぜぇ…はあぁぁ...なんっとか終わったぁ...」
「ゴ苦労、良くヤッタ...ト言タイトコロダガ、時間ガ掛カリ過ギダ...」
「ぜぇ…無茶言わないでくださいよ...師匠と違って俺、人間ですからね?」
「人間ハ深海棲艦相手ニ勝ツナドアリエナイノダガナ...」
そりゃあんた達にしこたま鍛えられたからだろうが...
それがなきゃ俺は今でも右手だけで戦ってる...。
「とにかく、これで合格って事で良いんですよね?」
「アァ、
......なんだか嫌な予感がするのでせうが...。
「リコリスノ修行ハ終ワッタヨウダナ...次ハ私ノ番ダ...。カミジョウ」
「やっぱりか...不幸だ...」
どうやら俺はまだ戻ることは出来そうにないらしい...。
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「私ガ教エルノハ対人デノ闘イ方ダ」
「対人?リコリス師匠に教わっていたのとは違うんですか?」
すると
「ソレハ対艦格闘ダロウ...私ガ教エルノハ人間ニ対シテノ戦イ方ダ」
「対人戦...ってことですか?」
「ソウイウ事ダ...ト言ッテモ対艦格闘ト殆ド変ワラナイ」
つー事は今までの奴と似たようなモンってことか。
「違うところってのは何なんですか?」
「オ前モ艦娘ヤ我等深海棲艦ト闘ッタコトハアルハズダガ、我等ヤ艦娘には基本的ニ急所トイウモノガナイ...シカシ人間ハ違ウソレハ何カ、ココマデ言エバ頭デモ理解デキルダロウ?」
「......急所ってことですか?」
俺の言葉に
「ソウ、急所ダ人間ニアリ私達ニハナイモノ...私ハコレヲ秘孔と呼ンデイル」
「秘孔...ですか」
「ソウダ、秘孔ダ...。」
オイ!それって〇斗の拳とか蒼〇の拳じゃねえか!
なんで
「えっと...それって突くだけで頭パーンとかその他諸々の部分が弾け飛んだりするアレ...ってことですか?」
流石にそれは無いと思いたいが...。
「アァ、相手ノ断末魔ガ『ひでぶっ!』ト言ッテ爆散スルマデガセットダナ」
「なんてモン教えようとしてんだ!それタダの暗殺拳じゃねえか!!」
「ナニ、チョット派手ニ身体ガ爆発スルダケダ」
「いや常識的に考えて人間の体は爆発しませんから!?」
「常識ナゾドウデモイイ!オ前ハサッサトコノ戦法ヲ身ニツケロ!」
「ちょっ!やめろ!そんな物騒なモン教えようとすんな!ってか近づいてくるなぁ!ぎゃあぁぁぁぁっ!!不幸だぁぁぁぁ!!」
それからさらに三か月後、俺は見事北〇神拳ならぬ棲艦鬼拳を習得することなるのであった...。
こんなの使い道ねえだろ......
はあぁ...不幸だ...。
上条提督が消えてから早数か月...。
自分達は呉鎮守府から応援を頼まれ行方不明の上条君を探すことになるのだが...。
次回、新約、とある提督の幻想殺し
幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる...。