新約、とある提督の幻想殺し(本編完結) 作:榛猫(筆休め中)
前回は提督のマヒした味覚発覚と双方の世界情報の交換。
そして大阪艦隊の武蔵殺しさんとの模擬戦でした...。
近接特化の艦娘に互角に戦えるだなんて...提督は本当に人間なのかしら...。
side上条
「まったく、戦艦相手に無茶をし過ぎなのです!」
そう話すのは大阪鎮守府のネココスメイド電...。
あの模擬戦の後、入渠ドックに放り込まれた俺は模擬戦での傷を癒しその後に医務室へと連れてこられていた。
「いやーそこまで無茶をしてるつもりはなかったのですが...」
「一撃でも貰えば決して軽くないダメージが入るのです、そんな相手とやろうだなんて普通の人は考えないのです!」
「いや、でも当たらない自信ありましたし...」
「そう言う問題じゃないのです!」
まるで子供を叱る母親の様な叱り方をするネコズマ。
そんな姿を見て俺は江ノ島の初代秘書艦である電を思い出していた。
「はは...なんだか母親みたいだな...ババ臭いって言うか...ゲッ!」
そこまで言いかけて俺は後悔することになった。
何しろそこには般若の如き形相をしたネコズマが某龍玉的なオーラを醸し出していた。
「あ、あのぉ...電さん?」
「大阪湾に沈めてあげるのDEATH!」
「んぎゃあぁぁぁぁぁ!!不幸だあぁぁぁぁ!!」
そしてしばらくの間俺は大阪鎮守府内をネコズマに追い掛け回されるのであった。
______________________
「それで、デンちゃんがあんなにお怒りだったんだねぇ...」
「死ぬ...ホントに死ぬ...」
般若のネコズマに追いかけられること数十分...。
必死の抵抗も空しくネコズマに捕まった俺はあちこちを歯痕だらけになって執務室に戻って来ていた。
「普段あまり怒らない彼女があそこまで怒るって上条君、いったい何を言ったの...?」
「黙秘権を行使します...」
もしあのことを下手に口走ってまたネコズマに聞かれでもしたら溜まったものじゃない...。
「そ、そっかぁ...黙秘かぁ...」
何か色々と察したのか
そして沈黙が二人の間に舞い降りる...。
響くのは各々が手にする独飲料を啜る音のみ......
それは大阪秘書と加賀姉が戻ってくるまで続くのであった。
__________________
「さて、それじゃあそろそろ本題に入ろうか」
秘書三人が戻ってきたことで
俺は敢えてそれを口には出さない。
出せば間違いなく面倒ごとに巻き込まれると感じ取ったからだ。
「そうですね、えっと、どこまで話ましたっけ?」
「自分達がそちらの海軍に協力する際に戦力になるかのテストまでだったかな」
「そうでした!じゃあ結果だけ言わせてもらいますね、加賀姉、頼む」
それを聞いて表情が引き締まる
加賀姉は小さく頷き、口を開いた。
「テストの結果...大阪艦隊は合格です」
それを聞いてホッとしていたのは
「金剛型とは思えない戦いぶりでしたが、あの思い切りの良さ、今の海軍にはない斬新なものを感じました...。」
「ウチの娘達は多かれ少なかれ癖のある子達ばかりですからそこは仕方ないかもしれませんね」
加賀姉の戦闘評価に
「それにしても上条君、君の所の加賀さんはしっかりしてるよね、うちの加賀君とは雲泥の差だよ...」
「なんたって自慢の姉っすから!ってか、ここにも加賀さんいたんですね」
「姉なんだ...。
あぁ、一応ね、けど、君の加賀さんを見てしまうととてもそっちが羨ましい限りだよ...」
そう話す
「そ、そんなにですか?なんなら一時的に加賀同士で交換してみます?」
「......へ?今なんて?」
「いやだから、一時的に交換してみますか?って、謂わばトレードって奴ですよ」
「そこは英語に訳さなくても分かるよ!?というかどうしてそんな話になるのかな?」
「え?だって加賀姉が羨ましいんですよね?なら一か月くらい取り替えてみるのも良いかなって...。そっちの加賀さんがどういう方なのか俺も気になりますし」
「へ、へぇ....気になるんだぁ...そっかぁ」
そうしてしばし考え込んだ後、
「上条君はこう言っているけど、加賀さん的にはどうなのかな?」
「私は提督の意見に従うだけです...。」
「そうなんだ、凄い信頼関係だね...。」
「はい、当麻は愛すべき弟ですから...。」
二人の話が盛り上がっている間俺は先程とは別の飲料をあおる。
うん、どれもやっぱちょっと変な味だ...というかこれは呑み物と言えるのだろうか...。
俺の手にあるのはひやしあめと書かれた缶。
見た目だけならそれどこのそばつゆだよ!と言われそうな風体の謎すぎる液体飲料だ。
味はと言えばショウガと水飴が大量にぶち込まれただけのものと言っても過言ではない代物...。
水飴故に甘すぎて液体とも言い難いドロドロしたもの、それこそ某ファストフードのシェイクにでもありそうな一品。
まさか外でもこんな毒飲料が出回っているとはな...。
そんなことを考えながら中身を煽り、二人の様子を見守る。
どうやら二人は話を無事終えたようで、
その時に俺の手に持っている缶を見てギョッとして様な顔をしていたのはなんなんだろうか...。
「えーっと...上条君。加賀さんとの話し合いの結果、先程の提案受けさせてもらうことにするよ」
「つーことはそっちの加賀さんがこっちに来るってことでいいんすよね?」
「そうだね、そっちの加賀さんには許可はもらえたけど、まだこっちの加賀君にも話をしないとならないから今すぐにというわけにはいかない...。けど、近いうちに出来るようにしておくよ」
「分かりました準備が出来たらまた連絡ください。俺の連絡先と呉の連絡先を渡しておくので」
そうして俺は一枚の名刺を
「分かった、それじゃあまた後日連絡させてもらうよ」
「はい、じゃあ俺達はこれで...。時間取らせちゃってすいませんでした...」
「いやいや、中々有意義な時間だったしこっちの事をよく知るいい機会だったよ。そちらの元帥さんにもよろしくね」
「分かりました。それじゃ加賀姉、行くか」
「そうね、それじゃ吉野さん、失礼します...。」
「あぁ、うん、また機会があったら来てね」
そんな吉野さん達に見送られながら、俺達は呉鎮守府へと帰って行くのだった。
sideout
_________________
side吉野
「帰っていったね...」
そう話すのは第一秘書艦である時雨。
「そうだねぇ、なんというか色々な意味で驚かされることの多い子だったな」
「あの毒飲料をものともせずに飲むんだから学園都市ってところは恐ろしいね...。」
隣の響が少し固まりながら話す。
学園都市...。
外より二、三十年ほどか化学が進んだ学生の為の街...か...。
この事が夕張君や明石の耳に入らなくて本当に良かった...
あの二人ならそれこそ『学園都市の技術を超える!』といって変な対抗心を燃やしかねないから...。
「そう内心で吉野はため息を吐く...。だが、それが後に現実に起こりうる事など今の吉野には知る由もない...」
「ちょっ響君そんな不吉なこと言わないで!?」
大阪での一件を終えいつもの日常に戻った俺達。
だがそこに大阪からの刺客が襲来する...。
次回、新約、とある提督の幻想殺し
毒食悪ノリ空母襲来
幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる