新約、とある提督の幻想殺し(本編完結) 作:榛猫(筆休め中)
前回は提督と加賀さんが謎の建築物、大阪鎮守府に調査に向かうといったものでした。
そこで出迎えたメイド服の艦娘達と髭眼帯のビック○ス風味の提督…。
これから上条提督はどうなってしまうのでしょうか…
side上条
「改めまして、自分が大阪鎮守府の司令長官の吉野です。よろしく呉鎮守府の上条大将」
「よろしくお願いします…。と言っても、大将というのは飾りみたいなものですけどね、それより、一つ聞きたいんですけど…。」
「聞きたいこと?なんでしょうか?」
「どうして俺の名前と所属先を知っているんですか?俺、一言も話してないんですけど…」
にこやかに話ながら俺は疑問に思っていたことを聞いてみる。
吉野と呼ばれ目の前の髭眼帯はふむ、と言いつつ先程のメイド少女とは別の響らしき白髪のアニマルメイド服少女が持ってきた赤いメタリックな缶とその他色々な缶や瓶を持ってきた一つを手にしてそのプルタブを跳ね上げた。
よく見るとそこにある飲み物は、学園都市にもあるような飲み物とは言い難い物ばかりだった…。
「好きなのを取っていいですよ」
そう言いつつ
俺も適当な物を手に取る。
その瓶のラベルには、某宇宙戦争に出てきそうなマシンが描かれており、原色を放つ中身と相まって独特の雰囲気を醸し出していた。
これ、大丈夫な奴なんだよな?
学園都市の自販機にも似たような物が良く売られていたので俺はそこまで警戒はしつつそれを口にする…。
その直後、構内に広がる炭酸とベニヤ板の味…。
あれ?でも以外と普通か…?
警戒していたより普通の味にもう数口飲んでみる。
「か、上条君…?」
その声に振り向くとそこには
「ん?なんですか?」
「いや、何じゃなくてさ…それ、飲めるの?」
そう言う吉野の手はプルプルと俺の手元の瓶を指している。
「え?普通に飲めますよ?ちょっと変わった味はしますけど…」
「ちょっとぉ?そっかぁ…そうなんだぁ…」
「…?なんでそんなプルプルしてんのか知らないですけど、俺の元いた学園都市にはこんなもの日にならないくらいのゲテモノドリンクや食品が普通に出回ってましたよ?」
「ギャラクシー以上のゲテモノだとぅ…!?」
その光景を想像したのか
横を見れば他の少女二人も笑顔のまま固まっている。
そんなに震えるものなのか…?
そうしてしばらく三人が落ち着くまで俺はその飲み物を飲みながら待っていた。
因みに加賀姉は他のドリンクを一口の飲んでその後口をつけることなく驚いたように俺を見ていた…。
悪い加賀姉…。後でちゃんとした飲み物買ってやるから
そう内心で謝りつつ俺は三人が落ちつくのを待つのだった。
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あの後、ようやく落ち着いた三人と、いつの間に来たのか電らしきネココスメイド少女を加えた五人で話し合いを始めた。
「そういえば、どうして君のことを知っているかだったよね?実は君が来る事を耳にしたので失礼だけどこっちで少し調べさせてもらったんだよ」
なるほどな、それで俺の事を知っていたわけか…。
「そういうことだったんすね、それで何か分かりました?」
そう聞くと
「正直、あまり詳しいことは分からなかったよ、分かったことは君が呉鎮守府の提督をしていることと大将だということだけだった…。」
『これでも調べることに関しては自信のある娘にやってもらったんだけどねぇ…』
と、苦笑いを浮かべる吉野さんに対し、俺はあることを考えていた。
大将ってことは分かっているのにどうしてあの大戦の事を知らないんだ?
あの時の戦果で伸し上がったようなものなんだけど…。
そんなことを考えていたらふと視線を感じ、俺は視線の主を見る。
視線の主はネココスメイドの電であり、不思議そうに俺を見ていた。
「えっと…どうかした?」
「いえ、上条さんは見たところ海兵という感じでもないのにどうして大将なので何故なのかと思ったのです」
おっと、鋭いところを突いてくるな…。
「それもそうですね、それはちょっと訳があるんです」
「訳?」
「はい、今から話すことは全て事実です…。」
そう前置きをして俺は話し出した。
の世界に存在する学園都市という名の科学の町があること…。
俺がその学園都市を追放され、江ノ島鎮守府の提督として着任したこと…。
海軍の人手不足により、一部の一般人が鎮守府で提督として働いていること…。
先の大戦で深海棲艦との戦いは幕を下ろしているということ…。
「と、こんなところですかね」
俺はこれまでの事を一通り話してそう区切った。
「超能力者の住み、科学が二、三十年程進んだ町に深海棲艦との戦いを終えた世界、ねぇ…にわかには信じがたい話だね」
「たった七人で深海棲艦を追い詰めるなんて考えられないことだよね…」
「хорошо…どうやら僕達はとんでもないところに来てしまったようだね…。」
「その大戦の時に活躍したのがきっかけで大将になれたのですね…」
四者四様に様々な反応をしているが、根本的なところは驚いているみたいだ
「俺から話せることは話しました。次はそっちの話をしてくれますか?」
「あぁ、そうだね、自分達のところは…」
吉野さんが話した内容は驚くべき物であった…。
吉野さん達の居たところでは深海棲艦との戦いはまだ続いているという、しかも色々な事情から一部の深海棲艦とは利害関係を結んでいるときた…。
吉野さん率いるここ、大阪鎮守府は人類の代表としてその深海棲艦と取引をしていたという。
更には姫や鬼の一部を仲間に引き込んでいるという…。
「と、ここまでが自分達の世界の現状かな」
言葉がでなかった…。
深海棲艦を配下にしている事もそうなのだが、それ以上に…。
吉野さん達が他の世界から来ているということに驚きを隠せなかった…。
「………」
隣で黙って話を聞いていた加賀姉も言葉が出ないのか固まっている…。
そりゃそうだよな、いきなり自分達は別の世界から来ましたなんて言われたらそりゃ信じられる訳ない…。
俺だって素直には信じられそうにないんだから…。
「とりあえず、吉野さん達がこれからどうするかを決めないとですね」
「そうですね、自分達も海軍である以上そちらに協力したいという考えであります」
そう言ってくれる吉野さん。
「本当ですか!それはこちらとしても助かると思います!でも、その前に一つ確認しておきたいことがあります…。」
「確認しておきたいこと?なんです?」
「あなたの艦隊の錬度です。
さっき深海棲艦との戦いは終わったと言いましたが、希にその残党が表れて暴れ回ることがあるんです…。
基本的には空いている
その時に俺達が代わりに出撃するんですよ。
吉野さんが協力するとなれば、当然吉野さんの艦隊も出ることになります。
なので実力を知るためにテストさせてもらいます」
そう説明すると吉野さんは納得したように頷いていた。
「なるほど、ということは相手はそちらの加賀さんがするんです?」
「いえ、俺です」
「…………んん?」
それを聞いて吉野さんは微妙表情になる
「えっと…自分の聞き間違いかな?間違ってたらおしえてほしいんだけど、今上条君が相手をすると言う風に聞こえたんだけど…」
「なにも間違ってないですよ?俺が演習の相手をさせてもらいます」
「んんんんんんん?」
尚も微妙な表情の吉野さん、どうにも良く理解できていないらしい…。
そこへ今まで黙っていた加賀姉が口を開いて説明してくれる。
「吉野さん、あなたの疑問はもっともだも思います…。けど、提督は並の深海棲艦なら余裕で倒す事が出来るわ、本気を出せば姫級相手でも戦えるでしょうね、現に提督は先の大戦で姫を三隻、そしてあのレ級を倒しているわ」
「レ級を一隻に姫を三隻ぃ!?嘘ぉ!?」
「嘘ではないわ、提督を人間だからと甘く見ないことです…。」
「うーん…姫級やレ級を…そっかぁ…」
それを聞いて何やら深く悩み出す
考え込んでいる
「それとなんですけど相手は艦娘でお願いします。深海棲艦だと恐らく、というか、確実に面倒なことになりますから…」
更に追撃とばかりに加賀姉が口を挟む。
「提督を相手にするなら
「……じ、じゃあ榛名君にお願いしようかな…。それで、その
「はい、俺はそのつもりです」
「…分かった、それじゃ時雨君、悪いんだけど榛名君を呼んできてもらえる?」
「え?うん、分かったよ提督」
「それじゃあ自分達も移動しようか」
こうして俺達も執務室を後にして演習場へと向かうのだった。
sideout
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side
上条君の申し出で
しかしその相手は同伴してきた加賀さんではなく、上条君がやるという...
演習場にて向かい合う上条君と榛名君。
「本当にあれでいいんですか?今からでも変えられますけど...」
人間が戦艦に...そもそも、艦娘に勝つというものが想像できないのだ...。
「大丈夫です、そんなに心配なら試しに見せてあげます。響さん、少し提督に向けて砲撃してみて」
「え...?それは危なくないかい?」
「大丈夫よ、問題ないから...。」
「でも...」
加賀さんがここまで言うという事はそれだけの自信があるという事なのだろう。
なら、その上条君の実力を見る為にも試してみる価値はあるか......
「響君、許可するからやってみてくれるかな?」
「...司令官がそう言うなら」
響君は艤装を展開し、榛名君と向かい合う上条君に副砲を撃ち放った。
【ドゴンッ!!】
砲弾は真っすぐに上条君めがけて飛んでいく...。
上条君はそれに気が付くと...
「ッ!!」
バッと砲弾に向けて右手を突き出した。すると......
【パキィィィィィンッ】
そんな甲高い音と共に砲弾が消え去ってしまったのだ。
思わず自分の目を疑った...。
だが確かに響君の撃った砲弾が消えた
「っ!今のは...」
「あれこそが提督の力、あの右手で触られた深海棲艦は存在そのものが消し飛ぶんです...。これで分かりましたか?提督が何故艦娘に指定してきたのかを」
「えぇ、とてもよく理解しました...」
しかし疑問も残る、深海棲艦が触られただけで消えるのなら艦娘が触られた場合はどうなのか...
深海棲艦同様消えるのか、それともただの人間に戻るのか...
考え出したらキリがない...。
「あまり二人を待たせるわけにもいきませんし、それじゃあ始めてください!」
自分の合図と共に榛名君と上条君の模擬戦が始まるのだった。
sideout
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~~三人称~~
「それじゃあ始めてください!」
吉野の合図と共に戦いの火蓋は切って落とされた。
「ッシ!」
最初に動いたのは榛名であった。
高速艦ならではの機動力を生かし、瞬時に上条との距離を詰めていく。
その勢いを乗せ、強力な突きを繰り出す。
凄い速度で放たれる拳、しかし上条はそれを身体を横に少し反らせて難なく回避する。
そしてすかさず左腕でカウンターをお見舞いする。
「おぉぉっ!」
通常、常人が戦艦の艦娘を殴ってもその頑丈さ故に大したダメージは受けることはない。
だが深海棲艦達にあらゆる艦の対処法、戦い方をみっちり教え込まれた上条の拳は例え戦艦だろうと空母だろうと関係なしにダメージを与えることが出来る。
「かはっ...」
カウンターをモロに食らい吹っ飛ぶ榛名、なんとか空中で体勢を立て直すと上手く着地する。
しかし、それを狙っていたかのように同じく距離を詰めてきた上条が左腕を勢いよく振りぬく。
今度は榛名がその攻撃をしゃがむように躱し、その無防備な足に足払いをかける。
「ハッ!」
「うおっ!」
バランスを崩し転がる上条、追撃をかけるように榛名の肘内が迫る。
「っ!...ふぅ、あっぶねえ...」
すぐさま体を横に転がし肘内を回避する。
艦娘の榛名と違い、人間の上条は一撃でも貰えばアウトだ...。
立ち上がり次の一手に警戒する。
対する榛名は躱された肘が地面に着く前に身体を捻りなんとか自身へのダメージを何とか回避し体勢を立て直す。
「おぉぉぉぉっ!!」
上条は次で決めるつもりなのか右手を振りかぶり榛名へと距離を詰めていく。
「っ!はあぁぁぁぁぁっっ!」
榛名も負けじと渾身一撃を叩き込むため右腕を振りかぶり、振りぬいた。
【バッキィッ】
【パキィィィィィンッ】
拳のぶつかる音と甲高い衝撃音が演習場に響き渡る...。
そこにはなぜか衣服が消し飛ばされ体を両手で覆い隠している榛名と少し離れた場所にて倒れて動かない上条の姿があったという......。
模擬戦での傷を癒した俺は再度吉野さんとの対話の移る。
だがそこでとんでもない提案が飛び出てくることになる...
次回、新約、とある提督の幻想殺し
艦娘トレード
幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる