新約、とある提督の幻想殺し(本編完結)   作:榛猫(筆休め中)

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綾波です。

前回は上条提督が呉の皆さんにカレーを振る舞っていました!

今回はすこし重くなりそうです...。

あ、アンケートはまだまだ募集してますから是非参加してくださいね!


初代の秘密...。

side上条

 

 

食堂での一件の後、俺は一人執務室へと戻って来ていた。

 

 

「......不幸だ...」

 

最早何度目ともつかないため息を吐く。

 

現在俺は前任...いや、その前の奴達が残していった書類(実は陸奥や利根が少しづつはやっていてくれたらしい)の処理をしている最中...。

 

どうやら前任は仕事をやりもせずただ毎日遊び呆けていたらしい。

 

それもそのはず、今、俺の目の前には山のように積み上げられた書類が三つほど出来ているからだ...。

 

 

「俺が向こう(深海)にいた時以上に溜まってるって相当だぞ...どんだけ腐った性格してやがったんだか......」

 

そう愚痴っていても書類の山は片づく訳はないわけで...。

 

 

「・・・はぁ...仕方ねえ、とりあえずやるか」

 

俺は終わりの見えない書類整理をしていくのだった。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

「だぁー!!終わりが見えねえ!!不幸だーー!!」

 

書類整理を始めてから三時間ほどが過ぎた頃、俺は絶叫にも近い悲鳴を上げた。

 

時計を確認して見ると、時間はイチゴーサンマルを回っていた。

 

 

「もう三時過ぎてんのか...ちょっと休憩するか」

 

一人呟き、背もたれに思いっきり背を預けて伸びをする。

 

 

「あー...多過ぎて死ぬ...ん?」

 

そこまで呟いておれはあることを思い出す。

 

 

「・・・・・・そういや、この鎮守府って陸奥さん達の他に誰がいるんだ?」

 

昼頃に食堂で怒鳴ってきたあの艦娘も実は誰か分かってなかったりする...。

 

 

「とりあえず所属表でも見てみるか」

 

俺は机の引き出しから所属表と書かれた一冊のファイルを取り出し中に目を通していく。

 

掛かれている艦種はそれほど多くはなく、俺でも覚えられそうな人数だった。

 

 

「そこまで数はいねえのか?さっきはよく見てなかったから気にしてなかったけど...ん?」

 

と、ファイルのページを捲っていると数枚の紙がファイルから落ちた。

 

 

 

「なんだこれ?轟沈艦リスト?」

 

落ちた紙にはそう書かれていた。

 

読み進めていくと今まで沈んでいったであろう艦娘達の名前がビッシリと書き連ねられていた。

 

その中には江ノ島にいる神通の妹である那珂の名前もあった...。

 

それを目にした俺は言葉が出なかった...。

 

 

「・・・・・・なんだよ...これ...なんでこんな大量に沈んでんだ!」

 

俺は以前の電の言葉を思い出していた。

 

 

『昔は深海棲艦に対抗できるのは私達艦娘だけだったのです。でも、学園都市が出来てからは少なくなったのです...』

 

更に言うなら以前の大戦で深海棲艦との戦いは終止符を打っているはずだ。

 

それなのになんでこんなに沈んでる奴がいるんだよ!

 

そこまで考えて俺はハッとして資料の山を見る。

 

書類の中には江ノ島にいた時にはそうそう見ることはなかった出撃任務の書類もそれなりに入っていたからだ。

 

まさか...大本営もグルだってのか?

 

その考えに至って俺は慌ててその考えを振り払う。

 

あの元帥がそんなことをさせるはずがない、恐らく前任、それも初代の奴が大本営にそう話を持ち掛けていたのだろうと結論付けて、俺は再度そのリストを見る。

 

そこでふと不審な点に気が付いた。

 

 

「なんだ?この記号...」

 

そう、そのリストには轟沈艦の名前の端に小さく○や×等の記号が振られていたのだ。

 

よくよく見てみると○と×では×は三個程だが○はかなりの数の数を絞めている。

 

 

「いったいどういう意味なんだ?」

 

きっとこの記号には何かあるはずだ...とても重要な何かが......

 

しばらく考え込んでいると先程見ていたファイルが机の向こうに落ちてしまう。

 

拾い上げようと席を立つが、途中、何故か足がもつれ転びかけながらも机に手を置き倒れまいと踏ん張る...のだが。

 

 

【ガタンッキュルルルル!!】

 

 

「うおっ!?」

 

そんな音がしたと思ったら机が横にズレていく。

 

動くなどと思っていなかった俺は当然そのまま盛大に転げる。

 

 

「痛ってて...なんで机がスライドするんだよ...不幸だ...」

 

なんとか立ち上がり、どうして動いたのかと机の元あった場所を覗くとそこには驚くべきものが姿を現していた。

 

 

「なんだよ…これ…階段…だよな?まさか...」

 

嫌な予感がした俺はその階段を下りていくのだった。

 

 

 

 

 

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地下は暗く、辺りはよく見えない。

 

俺は携帯の明かりを頼りに奥へと進んでいく

 

少し進むと、目の前にある扉が見えてきた。

 

その扉には電子ロックや普通の鍵穴と何重もの厳重なロックがなされている。

 

 

「電子ロックにドア鍵、さらに鎖付き南京錠とか...いったい何の部屋だよ...」

 

そう言って明かりを扉の上に向けるとそこには大きく監禁室と書かれたいた。

 

 

「やっぱりか...おーい!そこに誰かいるかぁ!」

 

少し大きめに扉の向こうに声をかけてみる。

 

すると、微かに脅えるような声が聞こえてきた。

 

 

『ひっ…!こ、来ないで…もう…やめて…』

 

これで確定だな、前任の奴はここに轟沈したと表記した艦娘を監禁してやがったんだ。

 

どこまで腐っったことをすれば気が済むんだ、艦娘だって生きてんだぞ!

 

怒りで拳を震わせつつも俺は極力優しく中にいる艦娘たちに声を投げかける。

 

 

「脅えないで聞いてくれ、俺は上条当麻、ここに新しく着任してきた提督だ、お前らの知る提督はもういない...本当は今すぐにでもそこから出してやりたいんだけどもう少しだけ待っていてくれ!近いうちに必ずお前たちを助けてやるから!」

 

それだけ伝えると俺は扉から背を向け、執務室へと戻っていった。

 

その最中、小さくだがしっかりとした返事が返ってきたのを俺は聞き逃さなかった。

 

 

『待ってます...』と......。

 

 

 

 

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戻ってきた俺は机をもとに位置に戻し、書類整理を再開していた。

 

頭の中は地下の艦娘達をどう助け出すかばかりだ。

 

南京錠は最悪壊せばなんとかなる...けど、ドア鍵や電子ロックは壊しようがない......

 

書類整理をしつつウンウン考え込んでいると、不意に戸が叩かれ、二人の艦娘が入ってきた。

 

利根さんと利根さんによく似た背服を着ている黒髪ロングの女性だった。

 

 

「あぁ、利根さんどうかしたのか?それにそっちは...」

 

そこまで言うと利根さんは思い出したように言った。

 

 

「そう言えば提督はまだ顔を合わせていなかったの、こっちは吾輩の姉妹艦の筑摩じゃ!」

 

 

「初めまして、筑摩と申します...」

 

 

「ど、どうも!私、上条当麻と申しまする!」

 

 

「おーい、何を言っとるのか分からなくなっとるぞ?」

 

ペコリと挨拶をしてくる筑摩に慌てて挨拶を返す。

 

それを聞いていた利根さんが即座にツッコミを入れてきた。

 

 

「ゴホンッ!で、どうしたんだ?」

 

仕切り直すように俺は再度問いかける。

 

 

「うむ、実は筑摩の奴が提督に渡したいものがあるらしいのじゃ」

 

 

「渡したいもの?」

 

 

「はい、実は...」

 

女性から男性に渡すもの?ハッ!まさかチョコレート!?

 

って、バレンタインでもねえのにある訳ねえだろ!

 

と、内心で一人漫才やっていると、筑摩さんは懐から二つの鍵を取り出すと俺に差し出してきた。

 

 

ん?鍵?

 

 

「えっと...これは?」

 

 

「その鍵は初代の提督が死んだ時に持っていたものです」

 

 

「「え?」」

 

思わず利根さんと声が重なった。

 

というか、初代が持っていた鍵って...まさか!

 

俺は鍵を受け取って一つを見てみる。

 

そこには頭の部分にK6538と書かれていた。

 

 

「初代の提督の死体をはじめに見つけたのは私なんです...」

 

そういって筑摩さんはその当時のことを話してくれた。

 

事の発端はある高速戦艦娘が大破して帰投してきたことからで、

 

事情を説明を求められ、呼び出されたその戦艦娘はボロボロの体を引きずりながらも執務室に向かって言ったという。

 

それから数時間が経ち、執務室に向かった戦艦娘が中々戻ってこないので、心配になった筑摩が様子を見に行くと、そこにその戦艦娘の姿はなく、首が胴から分かれて血を撒き散らして倒れている初代提督の姿があったという。

 

 

「それはその時に提督の懐から拝借したものです...」

 

 

「そうか、サンキューな筑摩さん話してくれて、これで希望が見えてきたかもしれない」

 

 

「「え?」」

 

俺の言葉にキョトンとしている二人。

 

もし、俺の考えが正しければこれはあの扉を開けるための鍵と暗証番号だ。

 

これならあそこで捕まっているアイツらも助けられるかもしれない

 

思わぬところから希望の光が差してきて俺は笑みをこぼさずにはいられなかった




筑摩に渡された鍵で捕らわれた艦娘達を助ける作戦を練る上条。

その様子に不審に思った加賀は目を付け...


次回、新約、とある提督の幻想殺し

人質救出作戦

幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる

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