新約、とある提督の幻想殺し(本編完結)   作:榛猫(筆休め中)

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長門だ…。

前回は呉の補給問題に提督が気づいて動き出したところだったな。

今回はその続きになる、ゆっくり見ていってくれ


幻想殺し動きだス

side上条

 

 

俺達が買い物を終え、鎮守府に戻ってくると門のところに見知った顔が立っていた。

 

近づいてみるとそれは土御門だった。

 

 

「よぉ、カミやん、それに加賀のねーちん待ってたぜい」

 

 

「土御門、どうしたんだよ、また何かあったのか?」

 

俺は若干構えつつ声をかける。

 

加賀姉に関しては軽く会釈を返すだけだった。

 

 

「カミやんに渡すものがあるんだにゃ~ほら」

 

そう言って土御門はある紙を差し出してきた。

 

 

「紙?なんだこれ…っ!?土御門これって…」

 

そう問いかけると土御門はニヤリと笑って話始めた。

 

 

「カミやんに必要になるだろうと思って元帥に具申しておいたのさ、といっても、俺達が用意したのは上の備品や家電だけだ…。下の資材や食糧は全部江ノ島の艦娘達からだ…。その証拠にほら…」

 

その言葉に俺が驚いていると土御門はどこからか色紙を取り出して渡してきた。

 

 

「これは…」

 

そこには江ノ島鎮守府の艦娘達からの応援メッセージが書かれていた。

 

【『上条司令官さん!頑張ってなのです!…電』

 『提督ーファイトにゃしい♪…睦月』

 

 『呉鎮守府でも頑張ってください!応援してますね!綾波』

 

 『提督?天龍ちゃんに手を出したら…許しませんから~♪…龍田』

 

 『呉鎮守府の悪い噂は時折り耳に挟みます…。提督。お気を付けて…神通』

 

 『提督さん、辛くてもファイトです!ふふっ…鹿島』

 

 『呉鎮守府の同朋のこと…お願いしますね…千歳』

 

 『テートクゥ!浮気なんかしたらNO!なんだからネ!…金剛』

 

 『提督、全力で頑張ってください!…榛名』

 

 『そちらの鎮守府はあまり良くない噂が流れている…体に気を付けて…長門』

 

 『空はあんなに青いのに…提督、お元気で…扶桑』

 

 『姉様が心配してるわ…元気にしていなさいよ!…山城』

 

 『私達の力が必要なときはいつでも言ってくださいね、すぐにでも駆けつけます!…翔鶴』

 

 『私達は元気に過ごしています…。提督、加賀さんそちらの艦娘達をお願いします…。…赤城』】

 

 

「まったく…あいつらは…」

 

 

「ふふっ…少し、頭にきました…ね、提督」

 

 

「あぁ、これはへばってなんかいられねえ!ありがとな!土御門」

 

俺は色紙と紙をしまいこみ土御門に礼をする。

 

 

「お礼はいい、お前達にはかなり負担をかけてしまっているからな…。それとカミやん、荷物はもう指定の位置においてある後はカミやん…お前次第だ…」

 

真面目な顔をして話す土御門に俺も真剣に頷く。

 

 

「あぁ、何から何まで助かる…。元帥にもお礼を言っといてくれ」

 

 

「分かった、伝えておく…それじゃあな」

 

そう言って土御門は帰っていった。

 

見えなくなるまでそれを見送ると俺は門を潜り中へと入って行くのだった。

 

 

sideout

 

 

 

 

side間宮

 

 

補給時間が近くなり、私は準備をするため食堂へと向かっていました。

 

すると、どこからか香ばしい香りがしてきたのです。

 

 

「…良い匂い…これは…カレー?」

 

この付近にカレーの飲食店などはない、あるのは海と水平線のみ…。

 

匂いの原因を探るため、私は鼻を頼りにその場所を探すのでした。

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

匂いをもとに辿り着いたのは食堂でした。

 

(いったい誰がこんなことを…?)

 

不審に思いながら中へと入っていきます。

 

しかし中には誰もいませんでした。

 

まさかと思い厨房を覗いてみると、そこには今朝方出会った

提督と見知らぬ艦娘の方が何かをしていました。

 

(今朝伝えたばかりだと言うのに…)

 

私は呆れて提督に声をかけます。

 

 

「あの、何をしているんですか?」

 

 

「ん?何って食事作ってんだよ。もうじき食事時間だろ?」

 

『当然だろ?』とでも言いそうな顔でそう言う提督。

 

私は呆れてものも言えません…。

 

(しかし今言っておかないと)

 

 

「提督、今朝も申し上げた筈です。私達は兵器…人間と同じ食事なんて…「うるせえよ…」え?」

 

私の言葉に被せるように提督の言葉に私は驚きを隠せませんでした…。

 

(まさか遮ってまで口を開くなんて…)

 

 

「事情だの命令だのは知ったことじゃねえ、俺はお前達を助けるためにここに立ってんだよ…お前達は世界でたった一人しかいねえだろうが!勝手に決めつけんじゃねえぞ…」

 

 

「…ッ!?」

 

それきり提督はなにも言わずただ料理に集中していました。

 

私はそんな提督を見て驚きを隠せません…そして、ある記憶を思い出していました…。

 

 

それはこの鎮守府に始めて着任した頃のことです。

 

前任のアイツは快く迎え入れてくれました。

 

ですが食事時間に私は気づかされたのです…。ここの異質さに…。

 

食事時間に私が目にしたものはコップ一杯の重油に皿に乗せられたボーキサイトや弾薬だったのです…。

 

私はすぐさま提督に抗議しました。

 

『こんなことは良くない!すぐに改善すべき』と…。

 

しかし前任が返してきたのはこんな言葉でした…。

 

 

『何を勘違いしている?お前達は兵器だ、兵器なら兵器らしく資材を『補給』していればいいんだよ』と…。

 

私は絶句しました…。人間は皆こうなのかとも疑いました…。

 

その前任の提督が謎の怪死を遂げてから次に来た提督達も同じようなものでした…。

 

最早私には何が正しく、何が間違いなのかすら分からなくっていました…。

 

でも、この人は何もかもが違う…。

 

あの人は私達を兵器ではなく生きている人間だといった。

 

自分が助けたいからここに来たと…。

 

 

(もしかしたら、この人なら…信じてみても良いのかも…)

 

そう思った時には体が勝手に動いていました。

 

 

「提督、なにかお手伝いすること…ありますか?」

 

そう聞くと、提督は一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに笑顔になり指示をくれました。

 

 

「じゃあ、そこのニンジンと玉ねぎの皮剥いて切っといてくれ」

 

その指示に私は笑顔で答えます。

 

 

「はい♪」

 

そうしてもう一人の艦娘(加賀さん)をチラと見ると優しそうに微笑んでいるのでした…。

 

私もなんだか嬉しくなり張り切って料理にとりかかるのでした。

 

 

 

sideout

 

 

_____________

 

 

side加賀

 

 

 

 

食事時間になり、続々と艦娘達が集ってくる。

 

間宮さんはカウンターに立ち、食事を貰いに来る艦娘達にカレーを渡していく…。

 

私が白米を盛り付けてそれを間宮に渡す。

 

隣では間宮が笑顔で戸惑う駆逐艦娘の子にカレーを渡していた。

 

 

「はーい、どうぞ!」

 

 

「え…?あの…これって…?」

 

 

「今日のご飯よ、まだまだたくさんあるから一杯食べてね!」

 

 

「は、はい…」

 

渋々といった面持ちで皿を手に席へと歩いていった。

 

それから少しずつそうして渡し続けていると利根がやって来た…。

 

 

「なにやら良い匂いがすると思うたが今日はえらく豪勢じゃの…」

 

 

「提督が提案したのよ、大事なことだからって…」

 

私は白米を盛り間宮に渡しながら返答する。

 

 

 

「なるほどの、ついに提督も気づきおったか…。うむ、美味しそうじゃ!頂いていくぞ!」

 

そう言ってカレーを受けとると上機嫌で席に向かう利根…。

 

それを見て後ろで並んでいた陸奥がクスリと笑んでいた。

 

それからも艦娘達にカレーを渡し続け、全員が受け取り食べている頃に提督が厨房から出てきて声を張り上げた。

 

 

「んんっ!!食事中に悪い、少し自己紹介をさせてくれ!!俺は上条当麻!本日付けでこの呉鎮守府で提督として着任することになった!元は江ノ島鎮守府に所属していて訳あってここに来ることになった!指揮なんかは軍務をしたことないからさっぱりだけどよ「ふざけんじゃねえ!」ッ!」

 

提督の自己紹介中に叫ぶ声があった。

 

 

「指揮もとれねえ一般人が提督なんかやってんだよ!そんなんでよく俺達みてえな兵器を「…つった?」あ?」

 

今度はその艦娘の言葉を遮って提督が話し出す。

 

 

「今なんつったって言ったんだ」

 

 

「あ?指揮もとれねえ一般人なんかが…「その後だ…」あぁ?」

 

 

「お前…今自分のことを兵器つったよな?」

 

 

「?おぉ、言ったが…なんか文句あんのか?」

 

 

【ガシッ!!】

 

提督は左腕でその艦娘の胸ぐらをつかむと深海棲艦が纏っている殺気のごとき怒気を溢れさせていた。

 

「ッ!?」

 

胸ぐらを掴まれた艦娘は驚きで顔を歪めている。

 

それはそのはず、離れているはずなのにここまで寒気がするほどの雰囲気だ…。

 

それを間近に喰らっているのだからその負担は相当だろう…。

 

掴む手を離し、憤怒の表情のまま提督は一言言った。

 

 

「二度とそんなこと言うな…もしまだそんなことを言うってんなら…そんな幻想は俺がこの右手でぶち殺してやる!」

 

そう言うと提督は足早に食堂を後にするのだった。

 

そして去り際に一言だけこう言い残して…。

 

 

 

 

『お前達はもう戦わなくていい…海は…平和はもう俺達の手にあるんだから…』

 

 

 

 




執務室へと戻ってきた上条当麻…。

そこへある二人の艦娘がやってくる…。

次回、新訳、とある提督の幻想殺し

初代の秘密…。

幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる。

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