新約、とある提督の幻想殺し(本編完結)   作:榛猫(筆休め中)

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榛名です。

新たに着任した呉鎮守府の執務室に案内してもらった上条提督...。

しかしそこはとんでもない作りになっているのでした。

今回はその部屋を改装してもらおうと工廠に向かったところから話は始まります。


呉鎮守府の現状......

side上条

 

おっす~上条さんです。

 

あのキチガイ部屋(執務室)を後にした俺は陸奥さん達と別れ、

加賀姉と工廠に向かっていた。

 

 

「着いたな」

 

 

「そうね」

 

工廠らしき建造物の前に着くと、早速中へ入っていく。

 

しかしそこで俺は違和感を覚えた。

 

 

「・・・あれ?」

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「いや、いつもなら明石がすぐ出てきてくれるだろ?それがないからちょっとな...もしかしてこの鎮守府には居ないのか?」

 

しかしその問いに加賀姉は首を横に振って否定する。

 

 

「それはありえないわ、彼女の艤装がない鎮守府は多いでしょうけど、明石本人がいないことは絶対にないわ...。彼女たちはどこの鎮守府にもいるはずなのだから」

 

それを聞いた俺は嫌な予感を感じ取り、足を少し早める。

 

 

「明石~入るぞ~?」

 

 

【ガチャッギイィィィィ…】

 

扉を開け、工廠の奥へと入っていく。

 

 

「!......提督、あれを見て」

 

 

「ッ!まさか!」

 

奥に入るといの一番に視界に飛び込んできたのは奥の方で転がっている足だった。

 

それを見て俺の脳裏にインデックスが倒れていた時の記憶がよみがえる。

 

 

「おい!大丈夫か!」

 

慌ててその足の元に駆け寄る。近づいてみると、やはり足の正体は明石だった。

 

その姿は傷だらけで今にも死んでしまいそうなほどに衰弱していた。

 

そんな中俺の事に気づいた明石が弱々しくつぶやいた。

 

 

「...て...とく...すみ...ませ...すぐ...仕事...します...から...」

 

 

「もういい!動くな!すぐ入渠ドッグに連れ行くからな!」

 

そう言うと俺はすぐさま明石を抱き上げると走った。

 

 

「提督、入渠させるのいいけれど、ドッグの場所は分かるの?」

 

後ろからついてきている加賀姉がそう問いかけてくる。

 

 

「大体の見当はついてる!今はとにかく行ってみるしかない!」

 

そう言いながら明石に負担が掛からないよう気を付けつつ全力で走るのだった。

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ここか...」

 

あの後、ただ走って何とか入渠ドッグへとたどり着いた俺達。

 

しかし、そこで俺達を待っていたのは...。

 

 

「......なんでだよ!どうして閉鎖してやがるんだ!」

 

そう、目の前の入渠ドッグは閉鎖されていてとても使える状態ではなかった。

 

 

「前任の奴は何処まで腐ってやがったんだ...こんなことして何が楽しいんだだよ...」

 

 

「.........」

 

すると、悲壮に暮れる俺達に声をかけてくる奴がいた。

 

 

「ん?そこにおるのは提督と加賀じゃないか?どうしたのじゃ?」

 

声のした方に向くと、そこにいたのは利根さんだった。

 

俺は簡単に事のあらましを利根に話した。

 

妖精さんに部屋の改装を頼もうと工廠に行ったら明石が倒れていたこと、

 

明石の状態がただ事ではないので急いで入渠させなければならないこと

 

利根さんはそれを聞いておもむろに口を開いた。

 

 

「そういうことじゃったか、それなら確か前に司令室でドッグの鍵を見た記憶があるぞ」

 

 

「っ!それは本当か!」

 

 

「うむ、じゃが随分前の事だから今もあるかは分からんぞ?」

 

 

「何もしないよりずっとマシだ!加賀姉、それに利根さん、悪いけどちょっと明石を頼む」

 

 

「分かったわ」

 

 

「うむ!任された!」

 

そう言って加賀姉に明石を渡すと、俺は即座に司令室に向けて走り出すのだった。

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

あの後、俺はキチガイ部屋(司令室)の中を探し回っていた。

 

 

「ない...ここにもない...ここにも!いったいどこにあるんだよ!」

 

部屋にしまえそうなところを隈なく探しているのだがいっこうに見つからない...。

 

すると、そこで声がかけられる。

 

 

「あら、提督じゃない、どうしたの?何か探し物?」

 

 

「?あぁ、陸奥さんか...いや、入渠ドッグの鍵を探しててさ...」

 

 

「ドッグの鍵?あぁ、それなら私が持ってるわよ」

 

 

「・・・え?」

 

帰ってきた答えに一瞬よく理解できなかった。

 

 

「だから、ドッグの鍵なら私が持ってるって言ってるの」

 

 

「えぇぇぇぇぇぇェェェ!!??」

 

あまりにも予想外な返答が帰って来て俺は絶叫を上げる。

 

 

「そんなに叫ぶほどの事?」

 

 

「いやいやいや!陸奥さん!?なんでアンタがその鍵を持っているんでせう?」

 

 

「なんでって、前任の提督を殺ったときにアイツが持っていたものを拝借したのよ」

 

 

「あまりにも唐突なカミングアウトに上条さんはどうツッコめばいいかわからないですよ...」

 

長門ってここまで飄々としてたっけ?

 

 

「と、とにかくだ、鍵があるなら話は早い。その鍵を渡してくれないか?」

 

 

「いいわよ?ほら」

 

そう言って鍵束についている二つのカカギを渡してくれた。

 

 

「サンキュー、急がねえと!」

 

俺は鍵を受け取るとすぐさま部屋を後にするのだった。

 

 

 

__________

 

 

 

鍵を手に加賀姉達の所に戻ると、二人に先程と変わった様子は見られなかった。

 

二人は俺に気づくと声をかけてくる。

 

 

「鍵は見つかったの?」

 

 

「あぁ、陸奥さんが持ってたみたいでなんとかなった」

 

 

「陸奥が持っておったのか?やはり部屋にはなかったのか」

 

 

「あぁ、どうも前任の奴が持ってたらしい」

 

そう答えながら俺はドッグに近づく。

 

 

「さて、じゃあ早速ドッグを解放しなくちゃな」

 

俺は鍵を使い二つのドッグを開放する。

 

中は入渠ドッグの妖精さん達が整備していてくれたようで綺麗だった。

 

 

「さあ、早いとこ明石を入渠させねえと...あ」

 

と、そこで俺はあることに気がついてしまう。

 

入渠ドックは謂わば風呂だ、となれば服を脱がせなきゃならないわけで......

 

しかし相手は女...従って俺が脱がせばそれは端的に言ってセクハラに当たる...。

 

底に思い至った俺は加賀姉に声をかける。

 

 

「あのぅ...加賀さん?」

 

 

「姉さんと呼びなさい...。それで、何かしら?」

 

 

「いや、明石さんを風呂に入れてあげて欲しいのでせうが......」

 

 

「なんじゃその『せう』と言うのは...」

 

 

「利根、これは提督の口癖みたいものだから気にしたら負けよ...それと、明石の件だけれど、了解しました」

 

その返答を聞いて俺はホッと胸をなでおろした。

 

危うくセクハラで憲兵にお縄になるところだった...。

 

そんなことを考えながら俺は一人入渠ドックを後にするのだった。

 

 

 

 




ドックを後にした俺が次に向かったのは食堂だった。

しかしここでも問題が発生しており...


次回、新約、とある提督の幻想殺し

補給と食事...。

幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる

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