比企谷八幡は自転車に乗る   作:あるみかん

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お久しぶりです


比企谷八幡はもう少しで自転車に乗られるが……

人間は毎日食事をし、運動をする。

ここで言う運動とはジョギングや水泳、それこそ自転車ではなく、歩く、物を持つ、座る、立ち上がるといった日常生活のなかの動きのことである。

言い換えれば、人間はなにかしらで栄養を摂取し、それをエネルギーとして身体を動かす。

 

人間は栄養がなければ身体に蓄えられた脂肪を燃焼し、それを動力とする。しかしそれすらもなければ筋肉をも削り身体を動かす素を作り出す。

 

一方運動がない場合、筋肉は萎え、骨は脆くなる。

地球上には重力があり、立っているだけで運動として成り立つらしい。無重力空間にいる宇宙飛行士なんかは毎日ロケットやらの中でトレーニングしてるとかなんとか。

 

 

比企谷八幡も例に漏れず毎日食事をし、運動をする。

基本的には病院のベッド上で過ごすが、一日に数時間はリハビリという名の強度の高い運動をする。

 

基本的に怠惰でひねくれていて怠け者で性根がねじまがっていてシスコンで目が腐っている彼だが、自転車に対してだけは真摯であった。

入院の期間を使い上半身の筋力増加、体幹と柔軟性の強化。

勉強の時間以外はロードレースのDVD(小町に持ってきて貰った)を見てイメトレ。

リハビリ(という名のトレーニング)の前後には食事(やっぱり小町に持ってきて貰った)を摂った。

 

結果、彼の身体は一回り大きくなった上で見事に均整の取れた身体、俗に言う細マッチョになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある一部分を除いて。

 

 

 

 

 

 

「なんじゃあこりゃあ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ギプスを外した彼の脚は鶏ガラのようになっていた。

 

 

 

 

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そりゃあ右足をほとんど動かしてないものだから衰えるとは思っていた。一方でリハビリによるトレーニングの結果ついた筋肉とのアンバランスさが異常さを際立たせていた。

 

 

「骨はもうほとんど繋がってるよ。いやー、若いっていいねえ」

 

とは先生の談。

どうやら普通に生活はできるが、激しい運動、特に脚に強い負荷がかかる運動は暫くは避けた方が良いらしい。

こちらとしてもなおりかけで再び骨ポッキリは勘弁していただきたいものである。

 

また、筋肉については普通の生活の中で戻っていくらしい。とりあえず肉を喰おう。

 

そして、普通に生活できるということ。

それすなわち明日から学校に通うということである。

学校どうするかなー、バス通学めんどくさいなーなどと酷く頼りなくなった右足を擦りながら考える。

 

とりあえずリハビリ室でエアロバイク漕いでこよう。

 

 

 

 

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結論。

 

 

 

ものすごくバランスが悪い。

 

 

 

 

左足に比べて右足は予想以上に弱っているらしい。

右足でのペダリングはとても重く、引き足もろくに使えない。

そして何よりもまずいのは恐怖心だった。

右足に対する不安からか単純にペダルを強く踏むことができない。

彼は本来筋力でペダルを回すことは少ない。自転車競技において仇となるのは筋肉の疲労である。なので彼らは筋力ではなく回転力で前へと進む。1分間に120~140回程もペダルを回すこともザラである。

それでも、ここ一番のスプリントや短距離のヒルクライムなどでは力ずくのペダリングは必要となる。

 

(俺の脚、ホントに治ってるのかよ……)

 

本当のダメージは打撲でも骨折でもなく、心の傷だった。

 

 

 


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