二年振りぐらいの更新になりますが、この作品自体をお忘れの方も多いと存じます。
取り敢えず、これからはこれを機に、スローペースでもいいから進めていこうとは思います。
これからもどうか、よろしくお願いします。
「随分とド派手にやったわね……お姉ちゃん……」
リアスが呆れ顔で室内に入って来るが、こればかりは仕方がなかったと言わせて貰おう。
どうも個人的に、あんな発言をする輩が苦手というか嫌いなのだ。
男女平等主義……ではないが、女性軽視をするアホに遠慮はいらないと思っている。
「あらら。見事に頭が天井に突き刺さっていますわ」
「あんな事……現実に起きるんだね」
「まるでギャグ漫画みたいですぅ~……」
朱乃と裕斗は完全に苦笑いで、ギャスパー君はしれっと毒を吐いている。
もしかして、あの子がグレモリー眷属の中で一番の曲者なんじゃないのか?
「流石は赤龍帝と白龍皇、見事な一撃でした」
「サイラオーグも褒めないの! はぁ~……」
にしても、なんか珍しく感情任せで体を動かしてしまったな。
偶にはこんなのも悪くはないか。
(いや~! 見ていてスッキリするようなパンチだったじゃないか! あっはっはっ!)
(白龍の小娘もいい拳を持っておる。此度の二天龍は中々に面白い事になりそうだの!)
ドレイク姐さんと先生に褒められた。
つーか、姐さんはまた酒飲んでないか?
「少しはスッキリしたわね。最近はどうも運動不足だったし」
「その割には全力で殴っているように見えましたけど?」
「………フン」
ガブリエルさんもヴァーリの扱いが上手になってきたな。
髪色とかから見ても、二人はまるで少し歳の離れた姉妹みたいだ。
「おい! グラシャラボラスの眷属! 早く貴様たちの王を天井から出して治療してやれ!」
サイラオーグさんの一喝で私達がぶっ飛ばしたチャラ男の眷属らしき連中が急いでやって来て、奴を必死に天井から出そうと四苦八苦していた。
なんだか、ギャグ漫画の裏事情を見ているような気分だな。
「お怪我などはありませんでしたか?」
「え? あ……はい……」
私はさっきチャラ男に暴言を吐かれていた女性が心配になり、彼女の元まで行って話しかけた。
けどさ、どうしてコッチの顔を見た途端に頬を朱色に染めるの?
「あの……もしや貴女様は、あの伝説に謳われている赤龍女帝様でございますか?」
「三大勢力間ではそう呼ばれているようですね。自分で名乗った事は一度もありませんが……」
「やっぱり! 私、ずっと貴女様のファンなんです! こうしてお会い出来て光栄の極みです!」
「そ…そうですか……」
すっごい目をキラキラさせてこっちを見つめてくる……。
もう何度言ったかは分からないが、もう一度だけ言わせて貰おう。
サーゼクスさん。貴方はこの冥界の地にて私の事をどんな風に吹聴したんですか?
「またお姉ちゃんが堕としてる……」
「あらあら。しかも今度はあのシークヴァイラ様」
「もうこの光景にも慣れてきたね……」
「リアルハーレムですね……」
そこ。ちゃんと聞こえてるんだからな。
・・・・・
・・・・
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・・
・
あの後、すぐに駆けつけてくれたスタッフの方々の魔力によって、すぐに大広間や家具の数々が元通りに完全修復され、改めて若手たちの挨拶が始まった。
私達はそれぞれに用意されたテーブルに着席し、挨拶の順番を待っている。
因みに、スタッフが来る直前にソーナ達も到着したのだが、案の定、部屋の惨状を見て驚き、リアスからそうなった事情を聞かされてからは、私の方を見て目を輝かせていた。
彼女はもう少しノーマルな方だと思っていたんだがな……。
「先程はご挨拶が遅れました。私の名は『シークヴァイラ・アガレス』。大公であるアガレス家の次期当主です」
まず最初に挨拶をしたのは、さっき助けた眼鏡の女性。
大公の血筋だったとは驚きだ。
「私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主になります」
「ソーナ・シトリーと申します。シトリー家の次期当主です」
次に挨拶をしたのはリアスとソーナの二人。
テーブルには当主である者だけが座り、その眷属達は後にて屹立して待機をする。
どこも同じようになっていて、私達もそれに習って座っていた。
私だけが着席し、ヴァーリとガブリエルさんが後方にて待機をする。
ヴァーリは嫌そうな顔をしていたけど、これまたガブリエルさんに何か挑発でもされたのか、渋々といった感じで立つ事を了承してくれた。
「俺の名は『サイラオーグ・バアル』。大王であるバアル家の次期当主だ」
大王か……。
サイラオーグさんは現時点でも十分な程の威厳があると思うが、それでもまだ『次期当主』なのか。
「僕は『ディオドラ・アスタロト』。アスタロト家の次期当主です」
あの優男……どうも気になるな。
アイツからは、嘗ての大車と同じ匂いがする。
注意を払っておいて損は無いかもしれない。
後で皆にも言っておこう。
「本来なら次はグラシャラボラス家が挨拶をする所だけど、彼は二天龍の逆鱗に触れてぶっ飛ばされてしまったからねぇ~」
さっき私とヴァーリが愛と友情のツープラトンでぶっ飛ばした男は『ゼファードル・グラシャラボラス』といって、少し前に起きたお家騒動にて本来の次期当主となるべき人物が死去してしまった為、仕方なくアイツが繰り上がるような形で次期当主に抜擢された経緯があるらしい。
これ全部、挨拶をする前にサイラオーグさんが教えてくれたんだけど。
「最後は、この冥界の英雄に御挨拶願いましょうか」
それって私だよね。はい、分かってますとも。
挨拶をするのは別に構わないんだけど、どうして私の時だけ皆して拍手をするの?
そーゆーのって無駄にプレッシャーが掛かるんですけど!
「人類代表組織『クレイドル』リーダーの闇里マユです。この度は私達をご招待いただき、誠にありがとうございます。本日はどうか、よろしくお願いします」
まるでどこかの会社に面接に行ったような気分になりながら、電車の中で必死に考えた挨拶を言った。
定型文バリバリだが、これでよかった……よな?
パチパチパチパチパチ!
また急に拍手っ!?
「流石は伝説の赤龍女帝。見事なご挨拶でした。このサイラオーグ、感動に打ち震えております」
どこに感動する部分があったんだよ。
地上では会社員とかが普通にする挨拶だろうが。
って言うか、冥界でも使われていると思うけど?
彼はもしや天然キャラなのか?
「ん?」
「………………」
何やらイヤらしい視線を感じたので、目だけを動かして探ってみると、それはさっき挨拶をしたディオドラ・アスタロトのものだった。
まるでこっちを値踏みしているかのような目。
もっとハッキリとした言い方をすれば、アイツは私の事を『女』として見ている。
(注意レベルを上げておくか……)
他の皆とかはともかく、戦闘力が皆無なアーシアとかは危ないからな。
怖がらせるかもしれないが、言っておいて損は無いだろう。
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挨拶の後にやって来たスタッフに案内されてやって来たのは、まるで劇場のような荘厳とした場所。
目の前には円を描くように席が並べられ、ふと上の方を見ると、そこにもVIP席のように特別な席が設けられていて、そこには既にお偉いさんと思わしき人達が着席している。
その更に上には魔王だけが座る事を許されていると思われる四つの席があり、そこにはサーゼクスさんとセラフォルーさんの他に、見知らぬ二人の男性がいた。
あの二人こそが、残りの四代魔王であるベルゼブブとアスモデウスなのだろう。
皆はそれぞれに指定された席に座っていくが、私はどうしたらいいのだろう?
そう思って周囲を見渡すと、席が二つ程空いているのが見えた。
一つはさっきのチャラ男だとして、もう一つはもしや……。
【赤龍女帝殿】
………名指しじゃないけど、あれは間違いなく私の席ですね。はい。
結局、私はリアスとソーナの間に設けられた席に座る事にした。
今更だが、場違い感が半端じゃないんだが。
(あの視線……嫌だな)
二段目の席に並んで座っている老人共の目は、明らかにこっちを見下している目だ。
人間である私が見下されるのは別に構わない。
けど、同族であり自分達の実質的な後継者でもある若手の皆を見下すのは胸糞悪い。
サーゼクスさん達が魔王になる前は、あんな老害共が冥界を好き放題にしていたと思うと反吐が出そうだ。
それは私の後ろにいるヴァーリとガブリエルさんも同じ様で、ヴァーリは明らかな怒りを見せて眉間に浮き出た血管をピクピクとさせているし、ガブリエルさんも表情だけはニコニコ笑顔を崩してはいないが、その瞳の奥は怒りの炎が燃えている。
「よくぞ集まってくれたな。若手悪魔の諸君」
まずは挨拶のつもりなのか、老害共の一人が無駄に威厳タップリに声を出す。
全員を見渡した直後に、私の事を数秒間だけ凝視しやがった。
「今回は望外のゲストも交じっているようだが、これはこれでいい趣向となるであろう。よくぞ参られた、赤龍女帝殿」
「お招きいただき、ありがとうございます」
少しも感謝の気持ちなんて混めずにお礼を言っておいた。
そっちだって私の事を気持ち悪い目で見てたんだから、お相子だろ。
「着いて早々に問題を起こした愚か者もいたようだが、それは二天龍によって制裁を与えられたようだな」
「全く……これではグラシャラボラス家も危ういな」
その意見には同感だけど、危ういとはどういう意味で言ってる?
文字通りの意味でないと思いたいが……。
「それでは、これより会合を始めよう」
老害達の言葉を遮るかのように、サーゼクスさんが半ば強制的に会合を開始させた。
さて……今からどんな話が始まるのだろうか?
悪魔ではない人間の身である私には、全く想像がつかなかった。
まずはリハビリってことで短めに。
次回はいつになるかは不明ですが、可能であれば今月中にもう一回更新したいと目論んでいます。