神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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めっちゃ久し振りな更新です。

お待たせして申し訳ありません。

これからは機を見てちょくちょくと更新していきたいと思います。






第72話 冥界再び

 学校が夏休みに突入し、全ての準備を事前に終えていた私達は、早速リアスの実家がある冥界に行くことに。

 

どんな風にいくのかな~…と思っていたら、意外な場所に連れて行かれた。

 

「ここは……」

「普段から私達もよく利用している駒王駅だにゃ……」

 

構内には様々な土産物屋を初めとしたお店が沢山並んでいて、駅としてだけでなく、ちょとしたショッピングモールとしての機能も持っている駒王駅。

用事がある時はよく学校帰りや休みの日などに来る、勝手知ったる場所だ。

 

「意外な場所過ぎて、なんだか拍子抜けだな…」

「私なんか、また魔法陣などを利用して行くものだと思ってました…」

 

教会組の二人がそんな感想を抱くのも無理は無い。

私だって同じことを想像したし。

 

因みに、私達学生組は夏休みだと言うのに制服姿だ。

リアス曰く、学生である私達には制服こそが正装……なんだそうだ。

確かに、私が持っている制服って言えば、学生服を除けばフェンリル専用の制服しかないし。

 

黒歌やレイナーレを初めとした学生以外の面々は、各々で涼やかな服装をしている。

一番新しい同居人であるガブリエルさんは純白のワンピースに麦わら帽子と言った感じで、見た目からして『THE・清純派』オーラが全身から滲み出ている。

そのせいか、道行く男共がガブリエルさんを横目で見る見る。

 

「冥界に行くのに駅に行く…か。もうあっちも俺が住んでた頃とはすっかり様変わりしてんだな……」

「そりゃ、あれから数百年経過してるしね。冥界だって現世に合わせて近代化ぐらいするでしょ」

「だよなぁ~…」

 

ルシファーさんは感慨深いのだろうか。

なんせ、彼にとっては本当に久し振りの里帰りみたいなものだし。

 

「リアス、なんで駅来る?」

「ふふ…。ついて来れば分かるわよ、オーフィス」

「「「???」」」

 

幼女組は揃って疑問符を浮かべてる。

思わせぶりな言い方が、またなんともよく似合ってる。

 

「それじゃ、行きましょ」

 

リアスを先頭に、私達は揃って駅の中に入る事に。

つーか、もう完全に大所帯になってるよな…。

明らかに目立ってるし。

 

そのままついて行くと、見えたのは構内にあるエレベーター。

確か5人乗りで、仮に乗るとしても、一度じゃ乗り切れない。

 

「それじゃあ、まずは私にお姉ちゃん、アーシアにゼノヴィア、それから……」

「リアス。オーフィスちゃん達は一度に二人以上乗っても大丈夫なんじゃないかしら?」

「それもそうね…。じゃあ、一緒に行きましょうか?」

「「「うん!」」」

 

そんな訳で、最初に乗るのは私とリアスとアーシア、それとゼノヴィアと幼女組の三人になるみたいだ。

 

リアスがボタンを押すと、扉が開き揃って中に入る。

 

「朱乃、裕斗、二人は他の皆をお願いね」

「分かりましたわ」

「了解です」

 

扉が閉まる前に眷属二人に頼みごとをするリアス。

二人じゃないとダメなのか?

 

扉が閉まった後、リアスが徐にスカートのポケットから真っ赤なカードを取り出した。

 

なんだあれ?エレベーターでクレジットカードの類を出すわけないし……。

 

「お~…なんだそれは?」

「これはね、こうするのよ」

 

レドの好奇心に溢れる瞳に応えるように、リアスはエレベーターの中に設置してある電子パネルにカードを翳し、同時に電子音が鳴る。

すると、いきなり……

 

「えっ!?」

「きゃっ!?」

「これは……」

 

本来なら上がる筈のエレベーターが下降し始めたのだ。

 

「ど…どういうことだ?駅は二階建てで、構内の見取り図にも地下の存在は書かれてない筈だが……」

「表向きはね。でも、この駒王駅の構内には秘匿されている階層が存在するのよ」

「そんなものが……」

「驚くのも無理ないわ。だってこれは悪魔専用のルートですもの」

 

その一言で納得してしまう辺り、私も完全に『そっち側』にどっぷりと浸かってるんだろうなぁ~…。

 

「これ以外にも、街中には設計段階から悪魔専用のルートとして確立している場所が結構あるのよ?」

「知らなかった……」

 

私、もう駒王町に住んで3年近く経つんですけど?

そんなの今の今まで全然知らなかったよ…。

 

「凄いな~!まるで秘密基地みたいだ!」

「我、興奮する」

「私もだ!なんだかワクワクするな!」

「喜んで貰えてよかったわ」

 

子供(?)達は楽しそうでいいなぁ~。

きっと、毎日が新しい発見の連続なんだろうな。

ちょっと羨ましい。

 

少ししてエレベーターが停止して扉が開く。

エレベーターから降りると、そこは上の階と変わらない程の近代的な空間になっていて、見た目だけなら人間達が利用する駅と大差無いと言える。

 

「「「おぉ~!」」」

「ほぅ……」

「まぁ……」

「凄いな……」

 

リアスを除く私達は全員が驚きを隠せなかった。

子供達なんて目をキラキラさせちゃってるもん。

 

少し待つと、後続の皆がやって来た。

 

朱乃と裕斗が先導してきたようで、二人が集団の中心にいた。

 

「マジかよ……」

「ほぇ~……悪魔達もやるね~」

 

昔から悪魔たちの事を知っているヤハウェとルシファーさんは子供達と似たり寄ったりの反応をした。

こんな二人も新鮮で珍しい。

 

「駅の地下にこんな空間が……」

「驚きだにゃ……」

「ブルジョアの成せる技ね」

「レイナーレさん、毒づいてはいけませんよ」

 

猫姉妹は目を見開いて驚いて、レイナーレは思いっきり睨んでる。

で、ガブリエルさんはそれをフォローする…と。

天使が堕天使をフォローするって…。

 

「ひ…広いぃぃぃ~……落ち着きません~!」

「広いだけで落ち着かないってどんだけだよ…」

 

ギャスパー君はぶれないなぁ~。

もう完全に保護者ポジですね、アザゼルさん。

けど、それよりも気になる事が……

 

「はぁ……どうしてここにいるんだろ……」

 

なんでさっきまでいなかった筈のヴァーリがここにいるの?

恰好は完全に私服だけど。

 

「ん?こいつか?」

「えぇ…。なんで彼女がここに?」

「いやな、本当は最初から来させるつもりだったんだが、最後まで渋りやがってな。だから、もしも来なかったら今年一年外出禁止だって言ったら、エレベーターの乗る直前に来たんだよ。どうやら、ギリギリまで悩んだらしいな」

「当たり前よ。何が楽しくて私がこいつ等と一緒に……」

「なんて言って、マユの嬢ちゃんの名前を出した時、嬉しそうにしやがったじゃねぇか」

「そ…そんな顔なんかしてないし!」

「してました~!」

「し~て~な~い~!」

 

………なんでだろう。

すっごい和む光景なんですけど。

 

「まさか、白龍皇を見てほんわかする日が来るとは思いませんでしたわ…」

「ほのぼのオーラ全開ですね…」

 

楽しそうで何よりですこと。

 

「い…意外な人物が合流したけど、取り敢えずはこれで全員集合したわね」

 

リアスも聞かされてなかったぽいな。

明らかに動揺してるし。

 

「じゃ、今から3番ホームに向かうわよ」

「「「は~い!」」」

 

うむ、元気でよろしい。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 またまたリアスの先導の元に進んでいくと、私達の眼前に現れたのは、一両の列車だった。

けど、それはどう見ても普通の車両じゃなかった。

所々に金色の装飾が施されていて、列車自体は真っ赤に染まっている。

トドメに、側面に前に見たグレモリー家の紋章と、もう一つ、見た事があるような無いような紋章が描かれていた。

 

「こいつは……サーゼクスの紋章か…」

 

え?これがサーゼクスさんの紋章?

あの人って個人で紋章とか持ってるの?

魔王マジパネェっす。

 

「これはグレモリー家が所有している特殊車両よ」

「ブルジョア全開ね」

 

レイナーレは本当に金持ちが嫌いなんだな…。

割とウチも金持ちの部類に入るって思うんだけど。

 

「早く入りましょ。もうすぐ出発する筈よ」

 

ありゃりゃ。そいつは急がないと。

 

んじゃ、とっとと入りましょうかね。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 私達が車内に入って席に座ると同時に、汽笛が鳴った。

 

「生の汽笛とか初めて聞いたな…」

「私もです。電車には汽笛がありませんからね」

「現代人ならではの会話だにゃ」

 

それは言わないお約束だって。

 

現在、私達は中央付近から後ろの車両にいる。

眷属を初めとした面々は中央から後ろ車両に行き、グレモリー家の一員であるリアスは一番前の車両に行った。

行く際にリアスが悔しそうにしていたが、これはしきたりだから仕方が無い事なんだとか。

 

私は白音と黒歌、それと龍神な幼女組と一緒に座っている。

他は、アーシアとゼノヴィア、レイナーレがヴァーリと一緒に座って、朱乃とガブリエルさんが一緒の席にいる。

アーシア達は普段から気が合っているせいか、話に花が咲いていて、それを呆れた目でヴァーリが見ている…と言う図が出来上がっていた。

それは朱乃達も同様で、雰囲気が似ている者同士、妙にウマが合っているみたい。

 

裕斗はギャスパー君と一緒にいて、落ち着かなくて怯えている彼を宥めてくれている。

なんつーか…裕斗は変に貧乏くじを引きやすい傾向にないか?

いつかちゃんと労ってあげないと。

 

そして、大人組であるアザゼルさんと我が両親であるルシファーさん&ヤハウェのバカップルは、意外と普通の話をしていた。

政治的な話でもすると思っていたけど、あの三人も公私をちゃんを分けているみたいだ。

 

「さっき朱乃が言ってたけど、冥界には約1時間ぐらいで着くらしいにゃ。なんでも、この列車は次元の壁を越えて正式な方法で冥界に到着するようになってるって」

「正式な方法……」

 

あれ?それじゃあ、ずっと前に私が冥界に来た時って、不法侵入になっちゃう?

 

「どうしました?」

「え?いや…なんでもない」

 

で…でも、あれは時代的にかなり前の事だし問題無い……よね?

 

「我、冥界初めて」

「私も!おぉ~!早い早い!」

「ははははは!」

 

はしゃいでるな~。

無邪気な笑顔は子供の最大の特権だよね。

めっちゃ癒される…。

 

「しかし、その気になれば魔法陣などで転移は出来るんじゃ?何故に態々列車で…」

「別にそれでも問題は無いんですけど、お姉ちゃんを初めとした方々は、最低でも一回は正式なルートで冥界に入り、きちんとした入国手続きをしなくてはいけませんの。所謂、通過儀礼のようなものですわ」

 

いつの間にか朱乃が傍まで来ていて、丁寧に説明してくれた。

 

「なるほどな…。その辺りは地上の各国と大差ないんだな」

「天界や冥界を初めとした場所と地上は表裏一体。地上で考えられた機能などを逆輸入する事も珍しくないのです」

 

今度はガブリエルさんだ。

二人揃って説明役が板についてる。

 

「じゃあ、あのミカエルさんもパソコンを使ったりするんですか?」

「はい。ちゃんとインターネットも使用可能ですよ」

「天界のイメージが崩れるにゃ…」

 

もうちょっと神秘的な場所を想像してたけど、もしかしたら冥界同様に近代的な場所なのかもしれない。

 

ある程度説明を終えると、二人は私達の後ろの席に移動した。

 

さて、こんな時の為に持って来たお菓子でも食べながら、のんびりとしようかな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 途中、レイナルドと名乗るおじいさんの車掌さんがやって来て、機械で私達をスキャンし、入国手続きが完了した。

手続きも近代的で、拍子抜けしてしまった。

 

発進してから約40分。

アナウンスが流れると同時に次元のトンネルを抜けて、窓から豊かな自然の光景が見えた。

空の色が紫である事を除けば、実に自然豊かな場所だ。

 

最近になって温暖化に悩まされる地上とは大違いだな。

 

「ここがグレモリー領になりますわ」

「ふぇ~…広いにゃ~…」

「領土はどれぐらいあるんですか?」

「分かりやすく言うと……日本の本州と同じぐらいかしら?」

「「「ブッ!」」」

 

ほ…本州と同じとなっ!?

幾らなんでも広すぎだろ!?

思わず吹いちゃったよ!

 

「冥界の広さ自体は地球と同じぐらいなんですけど、地上とは違って人口はあまり多くなくて、しかも海がありません。ですから、いくら領土が広くても、その殆どが手付かずの状態で放置されているに等しいんです」

「冥界も冥界で色々と問題を抱えてるんだな……」

「きっと、そこは天界冥界地上問わず、どこでもある事でしょう」

 

ガブリエルさんが言うと説得力絶大です。

 

「ん……」

「マユさん?どうしました?」

「もしかして、眠いのかにゃ?」

「あぁ……」

 

この程よい列車の揺れが急に眠気を誘ってきた…。

 

「到着まであと少しありますから、少し仮眠したらいいですわ」

「そう…させてもらおうかな……」

 

やばい……自覚したら一気にきた…。

 

瞼が徐々に重くなってきて、私は睡魔に逆らわずに、そのまま目を閉じた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「マ…さん。…ユさん」

 

ん……?この声は……。

 

「マユさん。起きてください」

「白音……?」

 

なんだろう……上の方から聞こえる…?

 

ゆっくりと目を開けると、顔に柔らかい感触があった。

 

「起きましたか?」

「え……?」

 

目の前には黒歌の膝がある。

と言う事は、この感触は……。

 

「す…すまない…」

「気にしてません。寧ろ、眼福でした」

「え?」

 

どうやら、いつの間にか私は白音に膝枕をしてもらっていたみたい。

悪い事をしちゃったな…。

 

「白音が羨ましいにゃ~…」

「ふふ……自分の席順を恨んでください」

 

何の話をしてるんだ?

 

「それよりも、もう到着したにゃ」

 

到着って……冥界に着いたって事?

 

「部長達はもう下車する準備をしてます。私達も急ぎましょう」

「分かった」

 

私のせいで迷惑は掛けられないからな。

 

「あれ?アザゼルさん達は降りないのですか?」

 

急いで荷物を持って出口に急いでいると、大人組が変わらず座ったままだった。

 

「おう。俺はこれからサーゼクスと会談をしなくちゃいけねぇからな。一時的に別行動になる」

「僕とルー君も一緒に行く予定だよ」

「一応、クレイドルの運営をするって言ったからな。お前の親としてやるべき事はしないとな」

「ほんと、思った以上に様になってやがるよ、お前等は」

「そのセリフ、そのままアザゼルに返すよ」

「うっせ」

 

実際、アザゼルさんみたいなお父さんだと、毎日が賑やかで楽しそうだけど。

 

「ほれ。俺等の事はいいから、とっとと降りろ」

「あ…はい」

 

今はリアス達を待たせてるんだった。

モタモタしてたら運転手の人やレイナルドさんにも迷惑を掛ける。

 

「それじゃ、私達は先に行きますね」

「あぁ。ゆっくり休めよ」

 

少し早歩きで私達は列車を降りた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「済まない。待たせた」

「別にいいのよ。気にしてないわ」

「そ…そうか?」

 

それならいいんだけど、なんで皆して顔がホコホコしてるの?

 

(ふふふ……♡お姉ちゃんの寝顔を携帯で撮れたんですもの。ちょっとぐらいの事なら余裕で許しちゃうわ♡)

(でも、意外でしたわ。まさか、ヴァーリさんも一緒になってお姉ちゃんの寝顔を撮るなんて)

(べ…別にいいでしょ!?減るもんじゃなし!)

 

ヴァーリ……なんか照れてない?

 

「さて、お姉ちゃんたちも来たことだし、行きましょうか」

 

駅のホームに降り立ち階段を下りていくと、構内に沢山の人だかりがあった。

中には兵隊っぽい人達もいる。

なんだろうと小首を傾げていると、次の瞬間……

 

「「「「「お帰りなさいませ!!!リアスお嬢様!!!!」」」」」

 

いきなり、全員が揃って大声を上げた。

反射的にビクッってなってしまった。

 

 

 

 

 

 




久し振りの更新、いかがでしたでしょうか?

プロット自体は出来上がっていたので、殆ど迷う事無く指は動いたんですけど。

次回更新は未定ですが、可能な限り早くしたいと思います。

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