次からは本当に気を付けようと思います。
色々とイレギュラーな事はあったが、なんとか終わらせる事が出来た三大勢力改め、四大勢力会談。
ルシファーさんとヤハウェの心遣いによってたっぷりと熟睡出来た。
そのお蔭で、今朝はとても心地いい気持ちで起床出来た。
「う~ん……」
カーテンを開き、朝日を浴びながら体を伸ばす。
「さて、行きますか」
久々にウキウキした気持ちでリビングに向かう。
さ~て、今日の朝御飯は何かしら~?
『今日の相棒は妙に明るいな…』
『けど、暗いよりはマシなんじゃないかい?』
『呵呵呵っ!よきかなよきかな!若者はそうでなくてはな!』
『見た目的には貴方だって十分に若いでしょうに。李書文』
『おっと。お主も言うではないか、騎士王よ』
…結構アルトリアもみんなと仲良くしてるみたい。
私的にはそっちの方がよきかなよきかなだ。
まだ時間には余裕があるから、パジャマのままでいいか。
本当にお腹が空いてきたし、そろそろ行こうか。
・・・・・
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・・・
・・
・
「あっ!おはようだにゃ!マユ!」
「ん。おはよう、黒歌」
あんな事があっても、いつもの習慣は抜けないようで、黒歌とレイナーレはキッチンに立っている。
「随分とスッキリした顔をしてるわね。よく眠れた?」
「うん。疲れたせいかな。熟睡が出来たよ」
戦った疲労で熟睡が出来るって、なんか皮肉だけど。
テーブルにはいつもの皆が既に座っている。
どうやら、まだ朝ご飯の準備は出来ていないようだ。
リアスはアーシアと話しているし、ゼノヴィアはテーブルにお皿を並べている。
白音はソファーに座ってティアの髪を櫛で梳いていて、レドとオーフィスちゃんは朝から何故かトランプをしている。しかも、ブラックジャック。
どこで…いや、誰が教えたんだ…?
で、帰ってなかったのか、ルシファーさんは椅子に座って新聞を読み、ヤハウェはキッチンでご飯の支度をしている二人を見てニコニコしている。
そして、昨日新しくこの家の新しい同居人になったガブリエルさんは……
「おはようございます。マユ様」
「お…おはようございます」
実に優雅なお辞儀を私に見せてくれた。
こっちの方が恐縮してしまうな…。
流石に今は翼は仕舞ってあって、見た目は至って普通の金髪のお姉さんだ。
すっごい美人だから、近所からまた注目されちゃうかもな。
この家に住んでいる面々って、いずれも美女や美少女や美幼女ばかりだから、色んな意味で有名になっている。
以前にヤハウェが張ってくれた結界って、もう意味無いんじゃ…。
「あ…あの、私の事は別に『様』で呼ばなくてもいいですよ?」
「そんな!貴女様は嘗てミカエル様を救ってくださった、我等天使達にとっての大恩人!そのような方を失礼な呼び方を呼ぶわけには…」
「君は相変わらず真面目だねぇ~」
「ヤハウェさま!」
アンタがのんびりし過ぎなだけじゃないか?
「大体ね、マユちゃんは女子高生なんだよ?君が外でもそんな風に呼んでいたら、間違いなく変に思われるよ。別に呼び捨てしろとは言わないけど、せめて『さん』って呼ぶことは出来ない?」
「そ…それは……」
ヤハウェにガブリエルさんが論破された。
「はい、じゃあ練習。3、2、1はい!」
「え…えっと……」
……私はどうしろと?
「マ…マユさん……」
「はい?」
顔を真っ赤にしているガブリエルさん、普通に可愛いです。
これが天使の魅力ってヤツか?
「朝っぱらから、またお姉ちゃんがフラグを立ててるわ…」
「節操ないですね。流石はマユさんです」
あれ?私が悪いの?
『あははははは!今朝も愉悦が炸裂しているな!白音よ!』
「ありがとうございます」
またこの二人は……!
「もう種族とか関係無くなってきてるな」
「悪魔に堕天使に天使。今のところはフルコンプにゃ」
別に何も集めてませんよ。
フルコンプってなによ。
『いえ、それだけじゃないでしょう』
「玉藻。それはどういう意味?」
『忘れもしません。あれは今から約一年前…アラガミ討伐に出かけた際に……妖怪の女の子にもフラグを立てた事を!!』
「なっ…!」
あの時の事をまだ覚えていたのか!?
しかもフラグって!
リアス達がなんかいきなりガタッって立ち上がったし。
「よ…妖怪にまで…?」
「と言うか、白音や黒歌も猫の妖怪の類じゃなかったか?」
「そう言えばそうだったにゃ」
「最近密かに忘れつつありましたね」
いや、忘れるなよ。
「はぁ……朝から元気ね、アンタ達」
うぅ…レイナーレが我が家で唯一の常識人になりつつある…。
彼女がいなかったら、きっとこの家はカオスになっていただろう。
「ほら、もう準備できたから、さっさと食べるわよ!」
「「「「「は~い」」」」」
完全にお母さんキャラだ…。
皆で椅子に座って手を合わせて……
「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」
今日の朝ごはんは卵焼きに焼き魚にお漬物。
スタンダードだけど、私は変に凝った食事よりは、こんな風なモノの方が好きだ。
「今日も美味いな。黒歌の嬢ちゃんの飯は」
「そんなことないにゃ。いつもの通りにゃ」
「このレベルを『いつもの通り』って言える時点で凄いよね…」
「姉さま……女子力高いです」
私も別に料理が出来ないわけじゃないけど、この領域には届かないな~。
しかも、レイナーレも同レベルだから凄い。
前にくれたクッキーを食べてから、なんとなく分かってはいたけど。
「本当に美味しいですね…。これが日本の『和食』と言う物ですか…」
「ガブリエル様は和食は初めてなのですか?」
「はい。地上に降りた経験も余り無いものですから。こうして食事をする機会も無かったんです」
確かにそうかも。
頻繁に地上に降りてご飯を食べている天使ってのも面白いけど。
「天界の食事はなんとも味気ないものが多いんです。分かりやすく言ってしまえば『精進料理』を想像して貰えるとよろしいかと」
「しょーじんりょうりって何?」
「精進料理ってのは、主に寺に住む坊主とかが食べる肉とか魚が入ってない、もしくは非常に少ない料理の事だ」
なんで魔王であるルシファーさんが、そんな事を知ってるのさ…。
「おぉ~」
「肉や魚が入ってない料理を食べるなんて、面白いんだな!」
「連中にとっては食事すらも修行の一環になってるからな」
「お坊さんも大変なのね…」
因みに、朱乃は普通の料理を食べてるよ。
どうやら、あそこはそこまで厳しい所じゃないみたい。
「全ての命に感謝をこめて頂く行為。これが本当の食事なのですね。食事の前の『いただきます』と言う言葉も実に素晴らしいです」
そんな事を言うってことは、ガブリエルさんって日本が初めてなのかな?
だったら、いつか機会を見つけて街とか案内したいな。
今朝の食事は、なんだかいつも以上に賑やかに感じた。
こんな日々がいつまでも続けばいいな…。
なんて言ったらフラグな気がするから、口には出さないけど。
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・・
・
学校に行くと、まぁびっくり。
完全に壊れていた校舎が、一晩で見事に直っているではないですか。
これが現魔王の実力ですか?
「いちいち気にしたら負けよ。お姉ちゃん」
「そ…そうだな」
非科学的な事は今更…だよな。
直った事はいいことだし、リアスの言う通りに気にしないようにしよう。
登校してから驚かされたが、それ以降はいつものように過ごした。
で、あっという間に放課後に。
私達はいつものようにオカルト研究部の部室に向かう。
今日は外に出たギャスパー君も一緒だ。
最近は少しづつ授業にも出るようになっているらしい。
一番前にいたリアスが部室のドアを開けた。すると……
「よっ!」
……着崩した背広を着たアザゼルさんがいた。
「な…なななななななななんで!?」
「おいおい、少しはマユの嬢ちゃんを見習って落ち着けよ」
「驚きもするわよ!なんで貴方がいるの!?」
リアスは面白いように驚いていて、他の面々も驚きを隠せないでいた。
唯一、白音だけは冷静だったけど。
「実はな、あれから俺とミカエルとサーゼクスで相談してな、三大勢力の内の誰かが身近な場所でお前等を見ようって話になって、それで俺が選ばれたって訳なんだ」
「なんでアザゼルさんが…」
「三人の中で一番コミュ力が高いからじゃねぇか?」
サーゼクスさんはこの学校の理事長だけど、あんまり姿は見せないし、ミカエルさんは色んな意味で目立ちそうだしな。
私も、あの三人の中で誰かを選ぶならアザゼルさんを選ぶ。
一番仲がいいってこともあるけどさ。
「そんな訳で、俺は今日からこの学園で教師をして、ついでにこの部の顧問も務める事にした。よろしく頼むぜ」
「は…はぁ……」
顧問…ね。
けど、それ以前にシンプルな疑問が…。
「あの、少しいいですか?」
「なんだ?マユの嬢ちゃん」
「……アザゼルさんって……ちゃんと教員免許って持ってるんですか?」
「なんだ?疑ってるのか?」
「なんとなく…ですよ」
暗示とかして来ているのかと思ったから。
「心配すんな。ちゃんとこの通りだ」
そう言うと、アザゼルさんは懐から一枚の免許証と思われるものを取り出した。
「こう見えても、俺は地上に来てから色々と資格を取ってるんだぜ。勿論、自力でな」
「意外と勤勉ですのね」
「意外ってなんだ、意外って」
「お父様が言ってましたもの。アザゼルは昔から仕事のサボり癖があるって」
「バラキエルの野郎…!」
日頃の行いのせいですね。
「と…とにかく!お前等も将来の事を真剣に考えるなら、資格は取っておいて損は無いぞ」
早速、教師っぽい発言いただきました。
少し話した後に皆はソファーに座って朱乃の紅茶を味わう。
うん、今日も美味しい。
「そうだ。ヴァーリは大丈夫でしたか?」
「あのバカ娘なら心配無用だ。軟な鍛え方はしちゃいないからな」
「よかった…」
女の子の体に大きな怪我をさせたりしたら大変だしね。
「つっても、今はまだベットの上で療養中だけどな」
「あれだけの攻撃を真正面から受けて、それだけで済んでいる時点で白龍皇も充分すぎるぐらいに規格外よね…」
「二天龍の名は伊達じゃないって事だ」
私の宿命のライバルは凄いって事だな。
「アイツに関しては少し考えてる事もあってな。だから、心配すんな」
「分かりました」
普段はのらりくらりとしているアザゼルさんも、ヴァーリの事になるとマジになるからね。
この人にとってヴァーリは実の娘に等しい存在なんだろう。
「そうそう。俺もクレイドルに参加するつもりだからな」
「それは有難いですけど、いいんですか?そちらの方は…」
「心配すんな。『神の子を見張る者』の方はシャムハザに任せてあるからな」
あれ?その人って前にレイナーレやオーフィスちゃんが言っていた人じゃ…。
「ん?どうした?」
「いえ、前にもその人の名前を聞いた事があって……」
「そうなのか?」
「はい。レイナーレがシャムハザと言う人が普段の激務のせいで胃痛で苦しんでいたって言ってました」
「え?マジ?」
「オーフィスちゃんも、そのシャムハザという方が薬局で胃薬を購入しているのを見たって言ってましたね」
「………………」
あ、目線を逸らして急に黙った。
「ま…まぁ……あいつには今度ちゃんとした休暇をやるよ…」
「是非ともそうしてあげてください」
じゃないと、少し可哀想だ。
過労で倒れる堕天使って結構洒落になってない。
それはもう堕天使じゃないでしょ。
「でも、なんで教師として来ただけじゃなくてクレイドルにも?」
「そいつは単純だ。お前等を鍛えるためだよ」
「鍛える為?」
「そうだ。禍の団っていう明確な敵対勢力が出現した以上、間違いなくこれから戦いは激化していく。その時はお前等にも戦ってもらう事にもなるだろう。その時になって困らないように、俺がコーチ役をすることにしたんだよ」
それは重畳。
これまではずっと自主練が主だったからな。
明確な指導役がいるだけでトレーニングの効率も段違いだ。
「俺は神器の研究をしてるから、それぞれの神器に合わせたトレーニング方法を熟知している。別に今の状態でも駄目とは言わねぇが、強くなっておいて損は無い筈だ」
アザゼルさんの言う通りだ。
強さの上限を決めていたら、後々後悔することになる。
「つっても、マユの嬢ちゃんは問題無いだろ。って言うか、現時点で俺等とほぼ互角に等しいんだ。寧ろ、どんなトレーニングしたらそうなるのか、こっちが知りたいぐらいだぜ」
「そう言われても……」
普通に筋トレしていただけだよ。
ちょっと量が多いだけで。
(あのハードトレーニングを『ちょっと』で済ませるのか…)
え?ちょっとじゃないの?
「いずれ見る機会はあるだろうから、そん時に取っておくか」
「それがいいわ……」
「ですね……」
なんでそこで苦笑いをするの?
こうして、私の生活に想像以上の変化が訪れて、また日常は続いていく。
この後、皆で話し合った結果、ギャスパー君もウチで一緒に住むことに決めた。
今まではずっと、あの旧校舎の部屋で寝泊まりしていたらしくて、外に出られるようになった以上、いつまでもあそこにいるのは精神衛生上もよくないと判断して、私の家に招待したのだ。
裕斗がなんとも複雑な表情をしていたけど。
荷物自体は廊下まで運び出せば、後は転移用の魔法陣で家に送れば問題無いので、そこまではよかった。
予め家に連絡をしておいて、向こうで黒歌やレイナーレ達に任せた。
部屋は適当に空いている部屋を用意すれば大丈夫だろう。
荷物運びでは男性陣に頑張ってもらったっけ。
と言っても、主に裕斗とアザゼルさんにだけど。
ギャスパー君には無理っぽいし。
ウチに来ることが決まった時のギャスパー君の笑顔が印象的だった。
もうすぐ、私にとって高校生活最後の夏休みが始まる。
いい思い出を残せれば幸いだ。
戦いの後の日常回。
もうお約束ですね。
長かったですが、これでこの章も終了です。