最初見た時、思わず『ふぇっ!?』って言っちゃいました。
本気で驚きましたよ…。
最近…どうもおかしい。
何故か、昔の事を段々と忘れていって、それとは逆に覚えのない記憶が頭に流れてくるのだ。
その記憶とは…『神機使い』としての記憶だ。
極東支部に配属されて、神機使いになって、第一部隊の皆と過ごす日々の記憶…。
そんな経験なんてあるわけが無いのに、鮮明に覚えている。
流石におかしいと感じた私は、足長おじさんに相談してみることにした。
すると……
『ああ。それは、君が『君』になりつつあるって事だよ』
「………は?」
『ちょっとわかりにくかったかな…?簡単に言うと、君の中に流れてきている記憶は、『その体』の記憶だよ』
「体の…?」
『そう。君は転生して、生まれ変わったんだよ?前世の記憶なんて邪魔なだけでしょ?だから、君の前世の記憶が徐々に消えていって、その代わりにその『アバター』の記憶が上書きされていってるのさ』
つまりはこう言う事か?
生まれ変わって別の人間になった私は、少しづつ昔の事を忘れながら、本当の意味でこの『キャラクター』になろうとしていると。
「……なんとなく、理屈は解った」
『今はそれでいいよ。君が本当の意味で『神機使い』になるには避けられない事だ』
「しかし…意外だった」
『記憶が消えていくことがかい?』
「ああ…」
もうちょっと怖がったり、動揺したりするかと思ったら、自分でも不可思議なぐらいに前世の記憶が消えていくことを受け入れている。
確かに、こうして転生した以上は昔の記憶なんて不要なのかもしれない。
事実、前世の記憶で忘れたくない事なんて数えるぐらいしか無い。
寧ろ、忘れたいと思っている事の方が多い。
それなら、私にとっては都合がいいのか…?
『相棒…』
「ん?どうした?」
『お前も…苦労してるんだな』
「そう?」
『ああ…。こうしてお前と一体化したことで、ふとした時にお前の記憶が流れ込んでくるときがある』
そんな事が…。
『お前は…戦いながら、出会いと別れを繰り返してきたんだな…』
「まぁね……」
神機使いの戦いは常に命懸けだ。
戦場での死者なんて珍しくも無い。
記憶の中には、エリック以外にも目の前で死んだ人機使いが沢山いた。
その一瞬一瞬をとても鮮明に『記憶』している。
『最初は唯の好奇心からだったが、俺も覚悟を決めた。こうなったら、お前の命が尽きる瞬間まで共に戦ってやろう』
「…ありがとう。ドライグ」
頼もしい限りだ。
私は…幸せ者だな。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
冥界にあるとある森の中。
黒い着物を着た黒い髪の少女と、白い着物を着た白い髪の少女が互いに手を繋いだ状態で息を切らせながら走っていた。
二人は…姉妹だった。
姉の名は黒歌、妹の名は白音。
この二人はある場所から逃げてきたのだ。
元々、この姉妹は人間ではない。
猫又と言われる猫の妖怪で、元から潜在能力は高い。
特に能力が高い黒歌の仙術の力に目を付けた貴族悪魔が、白音を人質のようにして無理矢理自分の眷属にしたのだ。
だが、悪魔は白音にも高い能力がある事を知り、彼女すらも自分の眷属にしようと企んだのだ。
しかし、自分が眷属になれば妹には手を出さないと言う約束を破られた黒歌は、白音を守る為に主である悪魔を殺害。
その後、悪魔の元を二人で逃亡したのだが、その途中で追手の悪魔達が追いかけてきた。
二人は追いつかれて、今にも捕まりそうになった時、いきなり茂みの中から見た事も無い怪物が現れて、追手の悪魔達をあっという間に食い殺してしまったのだ。
まるで大猿のような風貌の怪物…コンゴウ。
余りの恐怖に、二人は再び逃げるが、一度獲物を見つけたアラガミが逃亡を許すわけがない。
特に、聴力に優れたコンゴウからは、そう簡単に逃げられない。
逃亡の途中に白音が石に躓き、こけてしまう。
すぐに戻って白音を抱える黒歌だったが、その間にコンゴウに追いつかれてしまう。
咄嗟に白音を抱きしめて、庇うようにする黒歌。
精神、肉体共に限界だった二人は、あろうことかコンゴウの目の前で猫の姿になってしまう。
もう駄目か…!そう思った、その時だった。
「何を…やっている…!」
深紅の鎚を構えた少女が、目の前でコンゴウに立ち向かっていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
おいおいおい……一体何をやってるかな?
転移した直後に、何処からか猫の鳴き声が聞こえてきたような気がしたから、急いで鳴き声がした方へと走って行くと、二匹の猫をコンゴウが捕食しようとしているではないか!
私としては絶対に許容出来ない事に、すぐに攻撃態勢に入った。
相手がコンゴウという事もあり、神機は破砕属性に特化したブーストハンマーのリゲルに交換した。
今回の格好はアルーアホルターとコーラルスラックス。
ちょっぴりラフな格好で攻めてみました。
すぐに猫達を庇うようにして前に出て、ハンマーを構える。
「まずは……」
ブースト起動。
ハンマーの後部が展開し、ブースターが一気に火を噴く。
「ぶっ飛べ」
その顔面にハンマーを叩きつけた。
ブースターを加えた一撃は、コンゴウを一気に吹っ飛ばし、同時にコンゴウの顔を部位破壊した。
「よし」
猫達からコンゴウを離せたことでちょっとだけ安心した。
起き上がろうとするコンゴウを追いかけて、その眼前に立った。
「よりにもよって…猫を襲おうとするとは……」
転生してから、私は初めてブチ切れていた。
「絶対に許さん」
コンゴウの破壊可能な部位は、顔と尻尾と胴体だったな。
残りは尻尾と胴体か。
「我は動物愛護団体の使者であり、全ての愛玩動物を愛し、愛でる者なり」
『あ…相棒?』
「可愛い動物に敵対する事とは、この私と敵対する事と同義と心得よ」
『お~い?聞こえてるか~?』
「故に……」
再びハンマーを構える。
「あの小猫達を傷つけることは、この私が絶対に許さない」
『…ダメだこりゃ』
こっちの動きに反応して、コンゴウも攻撃態勢に入る。
「…こい」
私の呟きと同時に、コンゴウがその体についているパイプ状の器官から空気の弾丸を発射した。
背後には猫達がいる為、ここで回避するという選択は無いため、当然のように装甲を展開して防御する。
「くっ……!」
こっちの装甲はバックラーのインキタトゥス。
全ての衝撃やダメージは吸収出来ないが、元々装甲の性能がいいため、殆ど攻撃の余波は無いに等しい。
空気弾の着弾と共に、コンゴウが体を高速回転させて、体当たりを仕掛けてきた。
勿論、これもガード。
「所詮はアラガミ…か」
『だな。あっちから近づいてくるとは、都合がいい』
「ああ…!」
装甲を展開したまま、コンゴウを押し返す。
そして、少し距離が離れたところで攻撃に移る。
「いくぞ…!」
私はジャンプして、その胴体にハンマーを振り下ろす!
森の中ではコンゴウ自慢の機動力も制限される為、攻撃は非常に当てやすい。
甲高い鳴き声と共に、コンゴウの身体にハンマーがめり込む。
それを見て、私は追撃を掛けることにした。
「ブースト…オン!」
再びハンマーが火を噴く。
コンゴウのパイプに罅が入っていき、そして……
「……割れた」
金属が砕けるような音と同時に、コンゴウの胴体が部位破壊された。
そのまま、ハンマーを支点にしてコンゴウの背後に回り込む。
そして、その尻尾を『左手』で掴む。
「逃がさない」
右腕のみでハンマーを振りかぶり、その尻尾に叩き落す。
苦しそうな鳴き声と共に、尻尾も破壊される。
「さぁ…止めだ」
コンゴウは怒りで活性化したが、振り向いた先には私が既にブースターを発動させた状態で待ち構えている。
コンゴウは怒り狂ったかのように横回転しながら突撃してくるが、そこにハンマーの攻撃をぶち当てる。
そのままの勢いでコンゴウは吹っ飛ぶが、それをブーストドライブを利用して追跡、蹲ってその場に倒れるコンゴウに、ブーストラッシュを叩き込む!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
一発ごとに血飛沫が飛び散る。
全身がズタボロになり、瀕死になったところでフィニッシュブローのブーストインパクトを炸裂させる!!
「潰す…!!」
渾身の一撃がコンゴウの顔に叩きつけられて、グシャリッ!と言う生々しい音が聞こえ、コンゴウの息の根は完全に止まった。
「ふぅ……終わった」
『中型のアラガミが現れるとはな。これからは中型の連中の相手が多くなりそうだな』
「うん」
コンゴウは本来、群れで行動するアラガミだ。
一体でいることは本当に珍しい。
もしも群れで来ていたら、あの小猫達を護れなかったかもしれない。
不幸中の幸いに感謝しながら、私は猫達の元に戻っていった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
猫達の所に戻ると、二匹の猫は気絶しているようだった。
お腹が少しだけ上下していることから、息はまだあるようだ。
だが、凄く衰弱している。
私はそっと二匹の猫を抱き上げる。
「ドライグ」
『なんだ?』
「この子達…連れて帰る」
『そうか…』
…ん?
あれ?
「反対しないのか?」
『なんとなく予想はしていたからな。それに、俺がいくら反対しても無駄なんだろう?』
「その通り」
どうやら、思った以上に私とドライグは意思の疎通が出来ているようだ。
まさか、こっちの意図をすぐに汲んでくれるとは思わなかった。
「まずは家に連れて帰らないと…」
『それがいいだろうな。…ん?』
「あ……」
実にナイスなタイミングで魔法陣が展開した。
今回は、私の腕の中にいる猫達も一緒に粒子化している。
どうやら、足長おじさんも私の意図を理解してくれたようだ。
「まずは…綺麗なタオルを用意して、それから……」
私は、家に帰ってから何をすべきか考えながら、帰路についた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「……あれ?」
着いた場所は、家の近くの公園だった。
『あいつめ…。珍しくミスったな?』
「はぁ……」
なにやってんだか…。
溜息と共に、私は神機を赤龍帝の籠手に収納。
同時に籠手自体も収納した。
「行きますか」
思ったよりも疲労感は無いため、足取り自体は軽かった。
時間帯は夕方。
本来なら部活帰りの学生などがいる筈だが、何故か人通りはまばらだった。
家の近くに差し掛かり、自宅が見えてきた。
その時だった。
玄関の前に、一人の少女がいるのが見えた。
黒いフリルのついた服…ゴスロリ服を着ている黒い髪の少女で、胸の部分は何故か最低限しか隠していなかった。(何故か胸の部分にバッテンのように黒いテープ的な物が張られている)
『ア…アイツは!?』
「知ってるのか?」
『あ…ああ…』
ドライグの知り合いの女の子……誰なんだ?
この狼狽えようも普通じゃないし。
「見つけた」
「え?」
女の子がこっちを向いて、私の事を指差す。
「ゴッドイーター。最強の戦士。そして、最強の赤龍帝」
「いや……。君は誰?」
当然の疑問を言うと、女の子は無表情のままで答えてくれた。
「我、オーフィス。無限の龍」
「オーフィス?」
無限の龍って…もしかして、『ウロボロス・オフィス』の事?
あれ?ウロボロス?
私にとってのウロボロス…もとい、ウロヴォロスは山のようにデカいあいつだけど…。
(似ても似つかないよなぁ…)
少なくとも、あいつはこんなにも可愛くない。
寧ろキモイ。
「ゴッドイーター、我と一緒に来る。そして、グレードレッド倒す」
「…………は?」
いきなり訳の解らない事を言われ、思わず間抜けな声を出してしまった。
一体何者なんだ……この子は?
いつも通りに書いたつもりが、なんでかいつもよりも文字数が少ないと言う不思議。
ま、実際にはこれぐらいが安定してていいんですけどね。
今までとは違い、小猫と黒歌のフラグ…もとい、本人達をそのままお持ち帰り。
オリ主は彼女達の正体をまだ知りませんけど。
そして、オーフィスの登場。
私の中ではオリ主の初期の同居人は既に決まっていて、彼女達もそのメンバーです。
オーフィスが来たという事は、その次は……?
では、次回。