と言っても、私のアレンジが入っていて、なんじゃこりゃ状態になっていると思いますが。
もしかしたら、今回の話は人によっては不快な思いをするかもしれません。
ですので、見たくないと思った方は途中からでもブラウザバックしてください。
ぶっちゃけ、これを見なくても物語には特に支障は無いと思いますので。
私は唯…助けたかった。
どんな事になろうとも……『彼』のことを助けたかった。
私に大事な事を沢山教えてくれた人だから……。
私の命を救ってくれた人だから…。
そして……
私が初めて好きになった人で、初めての失恋を経験した人でもあったから……。
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・・・
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ふと、目が覚める。
すると、そこは一面が鋼鉄で出来た空間だった。
『ここは……?』
リアスが周囲を見渡すと、会議室にいた全員が揃っていた。
マユを除いて……だが。
『お…お姉ちゃんは!?』
『ここにはいない』
『どう言う事ですか?』
思わずサーゼクスがルシファーに聞き返した。
『ここはマユの記憶の中の世界。当事者であるアイツがいるわけないだろう?』
『ならば……彼女は何処に?』
『現実の世界で眠っているさ。ここに来たのは俺達だけだ』
全員が見慣れない光景に戸惑っていると、白音と黒歌がある一点をジッと見ているのにリアス達が気が付いた。
『あれ……』
『マユ……?』
二人の視線の先……そこには、ズタボロになった状態のマユが自らの神機を杖代わりにして体を支えていた。
白いタンクトップに黒いパンツスーツといった格好だが、全身がボロボロになっている。
頭と口と鼻から血を流し、他にも体中から流血している。
少し離れた場所には上着と思わしき布切れが落ちていて、先程までマユが着ていたが、戦いの末に破れてしまい、そのまま放置されたのだろう。
「はぁ……はぁ……」
『お姉ちゃん!?』
『マユ!!』
『マユさん!!』
リアスを始めとした、マユを慕っている面々が彼女の元に行こうとしたが、ルシファーやヤハウェによって止められた。
『やめとけ。ここじゃ俺達は何も出来ない』
『何を言ってるんですか!お姉ちゃんがあんなにも傷ついているのに!!』
『これを見て』
ヤハウェが自分の手を近くにある鉄の壁に近づけると、ス~…と透き通った。
『……え?』
『これは……』
『言った筈だ。ここはマユの記憶の世界。俺達は物理的な干渉は一切出来ないんだ』
『そんな……』
自分達が何も出来ない。
その事実に愕然とする皆だった。
『ですが、この状況は……』
マユに注目して気が付かなかったが、彼女の眼前には嘗てレーティングゲームの際にマユが戦ったアラガミ……ハンニバルがいた。
だが、その体は漆黒に染まっている。
『あの龍は!?』
『マユさんが倒したはずのアラガミ!?』
『でも…色が違いますわ……』
『黒い……龍……』
黒いハンニバルは横たわっていて、ピクリとも動かない。
『お姉ちゃんが……一人で倒したの……?』
マユの体に刻まれた数多くの傷は、このハンニバルと戦った末についた傷だと、必然的に悟った。
『あの……マユさんの左腕が……』
『うん…アーシアも気が付いていたのね』
『はい……』
『マユの腕が……普通の腕になってる……』
そう、目の前にいるマユの左腕は、アラガミ化しておらず、至って普通の少女の腕だった。
傷だらけである事を除けば…だが。
『じゃあ……まさか……!』
『今から……?』
猛烈に嫌な予感が頭から消えないリアスだった。
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・
「リーダー!!」
人工島エイジス。
そこで行われたマユとハンニバルとの一騎打ちは、辛くもマユが勝利したが、彼女の方も被害は大きかった。
そこに、マユの仲間達である第1部隊の面々がやって来た。
「倒した……のか?」
コウタが驚きと緊張を滲ませながら呟いた。
「マユ!!!」
ソーマがマユの傷を見て、珍しく血相を変えて走って近づく。
彼に続くようにして他の三人もマユの元に寄っていく。
「だ…大丈夫か!?リーダー!!」
「今、傷の手当てをするわ!!」
「私も手伝います!!」
自分の持っている医療キットを使い、マユの傷を一つ一つ手当していくサクヤと、それを隣で手伝うアリサ。
だが、現実は彼女達にそんな暇すら与えてはくれなかった。
「はっ!?」
コウタが何かに気が付く。
なんと、戦闘不能になった筈の黒いハンニバルがいきなり動き出し、蒼い炎と共にゆっくりと宙に浮きだしたのだ。
それを静かに睨み付けるマユ。
その目には恨みや憎しみの類の感情は無く、どこまでも真っ直ぐだった。
「これは……」
「なんなの……?」
他の皆も驚きを隠せない。
だが、それ以上に驚愕すべき事態が、眼前に写った。
その大きな両腕を黒いハンニバルが広げると、その体に埋め込まれいたのは……
「リン……ドウ……?」
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『あの人は……!?』
『彼の名は『雨宮リンドウ』。マユちゃんに戦い方のイロハを教え込んだ師匠の様な存在で、そして……』
『マユが目の前で救えなかった人間の一人だ……』
マユの師匠。
それを聞いた途端、全員の目が見開かれた。
『あの龍の腹の中にいる男が、マユの嬢ちゃんの師匠だと…?』
『彼が……』
アザゼルはその飄々とした顔を一気に驚きに染めて、一方のヴァーリは興味深そうにリンドウの事を見ている。
『し…しかし、なぜあんな事に…?』
『それは、オラクル細胞が原因だ』
『それって……』
『お姉ちゃんが体に投与したと言う細胞……』
『そして、アラガミを構成している細胞……ですよね?』
『ああ』
またまたアザゼルが驚いた。
今度はミカエルも。
『ど…どう言う事だ!?あの嬢ちゃんがアイツ等と同じ細胞を体に投与しただ!?』
『説明はして貰えるのですか……?』
『後でちゃんとしてやる。俺等で資料も作ってきてるしな』
『今は兎に角、黙ってマユちゃんの事を見てあげて』
『わかりました……』
ヤハウェの言葉に従うように、全員が再び眼前の光景を見る。
『しっかし……これはどう言う事だ?』
『ん?どうしたの?』
『いやな、本当ならマユの奴の全ての記憶を追体験するつもりだったんだけどよ、なんでこのシーンなんだ?』
『もしかして……これはマユちゃんが無意識のうちに、このシーンを見せたいと思っているのかも』
『かもしれないな……』
・・・・・
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・・・
・・
・
「くそ……!」
覚悟はしていた…だが、実際に目の前にすると、思わず毒づいてしまうソーマ。
「リ…リンドウさん!!目を覚まして!!」
リンドウが埋め込まれた黒いハンニバルの復活に伴い、マユも痛む体に鞭打ちながら立ち上がった。
「ぐ……ぐぅぅ……!」
「リ…リーダー!?無茶すんなって!!」
「そうは……いかない……!」
応急処置が出来ていても、傷が完全に癒えたわけではない。
無理をして体を起こしたマユの傷からは、再び血が噴き出した。
「お…おい!お前…!」
「ソーマ……皆……少し…下がっていてくれ……!」
マユの鬼気迫る顔に気圧されてしまい、ソーマ達は僅かに後ろに下がった。
その時だった。
この空間の時が止まったかのように全てが静止して、いつの間にかマユの隣には謎の少年…レンが立っていた。
「さぁ…今ですよ」
「え?」
レンの手にはリンドウが愛用していた神機が握られていて、マユの事を見上げている。
「このチャンスを逃すと、もう二度と倒せないかもしれない」
「なに?」
レンの言葉に心臓の鼓動が早くなる。
目は見開かれて、汗が滴り落ちる。
「さぁ、今こそこの剣を…リンドウに突き立ててください」
「……………」
そっとリンドウの神機を手に取ろうとするマユ。
だが、その直前で躊躇ってしまい、手を離してしまった。
「私は……」
決意を決めてここに来たはずが、いざ実際に目の前にすると、やはり躊躇してしまう。
この選択に間違いは絶対に許されない。
一つでも誤ってしまえば、その瞬間に全ての可能性は閉ざされる。
マユが迷っていると、リンドウが意識を取り戻したのか、苦悶の声を上げた。
「ぐ……ぐぅぅぅ……!」
「…………っ!」
「俺の事は……放っておけ……」
「リンドウ……リンドウなのね!?」
サクヤが思わずリンドウに近づこうとする。
だが、彼女に見えたマユの背中がそれを制止させた。
「リンドウさん……!」
コウタも悔しそうに呟く。
誰よりも家族や仲間の事を大事に思っている優しい少年には、自分が何も出来ない事が歯痒いのだろう。
「まだ……迷っているんですか?貴女はもう…決意をしてここに来たんじゃないんですか…?」
「それは……」
レンに対して何も言い返せない。
全てが図星だったから。
「ここから…立ち去れ……早く……!」
「嫌……もう…置いて行かれるのも…置いて行くのも……絶対に嫌よ……リンドウ……」
涙を流しながら訴えるサクヤ。
もう、彼女は後悔をしたくはないのだ。
「リンドウさん……例え力尽くでも連れて帰ります…!それが…それだけが……私が貴方に償える、たった一つの方法だから…!」
それはアリサも同様だった。
操られていたとはいえ、リンドウが行方不明になった事件の直接的な引き金を引いた彼女は、ずっとリンドウの事を後悔し続けていた。
マユとの出会いによって過去を断ち斬れた今でも……。
仲間達の言葉がマユの心に少しづつ勇気を与える。
「少しでも決断が遅れれば、余計な犠牲が生まれるだけだ!マユさん、貴女はリンドウに仲間殺しをさせたいのですか!?」
「私は……!」
目を瞑って己の心に問いかけるマユ。
もう、彼女の心は決まりかけていた。
「もう…俺の方は……覚悟は出来ている……」
苦しみながらも、リンドウは微笑を浮かべながらも話す。
無理をしているのは誰の目にも明らかだった。
「自分のケツぐらいは……自分で拭くさ……」
リンドウの口の端から血が流れる。
それに構う事無く、彼はマユ達の事を見続ける。
「さぁ!この呪われた血生臭い連鎖から…彼の事を解放してあげてください!!」
レンの口調に焦りが含まれていく。
もう余り時間が無いのだろう。
すると、黒いハンニバルの体が地面に降り立つ。
「ここから……早く逃げろ…っ!!これは……命令だ…!!」
リンドウの必死の言葉と共にハンニバルが咆哮を上げる。
完全に臨戦態勢は整っていた。
「マユさん!!早く!!この剣でリンドウを刺すんだ!!!」
「私は!!!」
カッ!とマユの目が大きく見開かれ、全力でリンドウの神機を『左手』で握った。
すると、次の瞬間……
「あああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁああああぁぁぁああぁぁぁ!!!!!!!!」
マユの左腕全体の内側から異形の硬質の皮膚の様な物体が無数に突き出して、夥しい程の流血と一緒に、普段は口数が少ないマユが大声を上げて叫んでしまう程の超絶的な激痛が左腕全体に走る。
「なっ……!?」
「リ…リーダー!?」
「じょ…冗談だろ!?」
「そんなっ!?」
激痛は一向に止まらない。
だが、それを全身全霊で我慢して、マユはその異形と化した左腕でリンドウの神機を振るった。
「に…げるな……!逃げるな……!」
また吐血をして、更に両目からも血涙を流すが、それでもマユの瞳からは全く闘志は消えていない。
寧ろ、今までで最も闘志に溢れていると言ってもいいだろう。
「逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
マユの絶叫が木霊する。
「生きる事から……逃げるな!!!!これは……命令だ!!!!!」
ハンニバルに向かって全力で走るマユ。
その速度は人類の走行速度を遥かに凌駕し、一瞬のうちにハンニバルの懐に入り込む。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!」
だが、向こうも黙ってやられる訳ではない。
ハンニバルはその籠手のついた右腕を振るってマユを攻撃しようとするが、それをジャンプして回避、そのままリンドウの神機でハンニバルの口を切り裂き、そこに自分の神機を突き立てる。
「ぐ…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
そのまま梃子の原理で二つの神機を使ってハンニバルの口から首にかけて無理矢理開く。
すると、その内部に一つの球体……アラガミのコアが露出した。
「こぉぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
リンドウの神機を離し、アラガミ化した左腕でコアに向かって直接拳を打ち付けた。
すると、全てが光に包まれた。
・・・・・
・・・・
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・
「はっ!?」
気が付くと、そこは先程まで会議をしていた会議室だった。
「戻った……の?」
「みたい…ですわね……」
マユとハンニバルとの壮絶な戦い。
その光景をまざまざと見せつけられたリアス達は、未だに手に汗を握っていた。
「そうだ!お姉ちゃんは……」
「す~…す~…」
当の本人は、椅子に座ったまま静かに眠っていた。
「ね…寝てる?」
「そりゃそうだ。夢は寝てなきゃ見れないだろうが」
「確かにそうだけど……」
御尤もな意見に何も言えなくなる全員だった。
「あれが……お姉ちゃんがあんな左腕になった原因…なのね……」
「そういうこった」
仲間を助ける為とは聞いていたリアス達だったが、まさかあれ程までに凄まじい事だったとは予想もしなかった。
魔王として数多くの苦難を乗り越えてきたサーゼクスも、幾多の戦いを経験してきたアザゼルも、様々な人間達を見てきたミカエルも、誰もが言葉を無くしていた。
「……御二方は彼女の事について知っているんですよね?」
「そうだ」
「なら、いい加減に教えて貰おうじゃねぇか」
「私も知りたいですね。闇里マユと呼ばれる少女が一体何者なのかを……」
「分かってる。さっき約束したしね」
「勿論、あのアラガミとか言う連中についてもな」
「心配しなくても、ちゃんと説明してやるよ」
そして、ルシファーとヤハウェは静かに語りだした。
こことは違う異世界において、荒ぶる神々と人類が残してきた戦いの軌跡を。
闇里マユと言う一人の神機使いの事を……。
はい、今回のは例の主人公が初めて喋るシーンの奴ですね。
前書きにも書いたんですけど、本当に文字数がえらい事になりそうで、もしも全部書いていっていたら、間違いなく完成前に私の心がボッキリと折れそうだったので、一番重要そうなシーンだけ描きました。
他のシーンは省略した形でなんとかするか、もしくはどこかで小出しにすると思います。
……なんか、あんまりストーリーが進まない……。
一応、かなり先までプロットは完成してるんですけど……。