神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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ようやくセラフォルーが再登場です。

第一話からこっち、満を持しての登場です。

でも、そんなにも出番があるかな…?






第57話 魔王少女?との邂逅

 色んな意味で大変だった授業参観が終わり、今は昼休み。

途中で合流した白音やアーシア、裕斗とゼノヴィアと一緒に食堂で食事をし、我々は食堂に隣接している自動販売機コーナーでジュースを飲んでいた。

 

「「はぁ……」」

「せ…先輩?一体どうしたんですか?部長まで一緒に溜息を吐いて…」

「あ……うん。ちょっとね…」

「あんなにも疲れる授業は生まれて初めてよ…」

「同感……」

 

我々の家族自体は何にもしてはいない。

そこはいい。

けど……

 

「特にこれと言った事をしていないのに、あんなにも目立つなんて…」

「完全に予想外だったわ……」

「あらあら…」

 

朱乃はいつものように笑っているが、君だって同じような立場だっただろ?

どうしてそんなにも平気そうなんだ?

 

「どんな感じだったんですか?」

「とにかく、滅茶苦茶目立っていたとしか…」

「それしか感想は無いわね…」

 

だって、ルシファーさんもヤハウェも普通に若いんだもん!

あれで四人の子供を産んでますとか、誰が信じるんだよ!

しかも、その内の一人は現役の女子高生だぞ!

 

「そっちはどうだったんだ?」

「男子達が姉様をいやらしい目で見てましたけど、それ以外には何も」

「それはそれで大変なんじゃないか?」

 

確かに黒歌は同性から見ても美人だ。

年頃の男子達が気になるのも無理は無い。

 

「レイナーレ様もなんだか注目されてました」

「うむ。授業中に後ろをチラチラと見る男子が続出してな、しょっちゅう怒られていた」

「ははは……まぁ、そこは仕方ないんじゃないかな?」

 

レイナーレもモテてるな~。

何気に、普通に女子高生として通っていても違和感ないしな。

 

そんな感じで、いつものように話していると、何やら廊下の向こうが妙に騒がしかった。

 

「…なんだ?」

「ちょっと静かにしてください」

 

白音がそっと騒ぎの方に耳を澄ませて目を閉じた。

きっと、ここから向こうの声を聞こうとしてるんだろう。

なんでも、猫又モードにならなくても、これぐらいの事は余裕で出来るらしい。

 

「これは……?」

「どうしたの?」

「なんか…意味不明な事を言ってます」

「意味不明な事?」

「はい。『魔女っ子』とか『魔法少女』とか……そんな感じの言葉です」

「ま…魔法少女…!?」

 

ま…まさか……ミルたんじゃあるまいな!?

だとしたら非常に不味い!

もしも彼がここに来ていたら……

 

(昔、私がまどマギのコスプレをしたのがばれてしまう!!)

 

ど…どうする!?

 

いや…待てよ?

なんでミルたんだと決めつける?

もしかしたら違うかもしれないじゃないか。

 

そもそも、ミルたんには私の素性は一切話していない。

お互いに本名すらも知らないんだ。

彼に私の居場所が分かる筈が無い!

 

(あいつだと、野生の勘とかで分かりそうだな…)

 

こ…怖い事を言わないでよ!ドライグ!

 

でも…実際にあり得そうで怖い。

って言うか、もしかしたら人間誰しもが秘めている『第七感覚』とかに覚醒してそうだ。

いや、下手したら『第八感覚』まで行っている可能性も…。

 

(クハハハハハハハハハハハ!!!!!お前がそこまで動揺するのは珍しいな!ええ?雑種よ!)

 

面白がるな!

私は必死なんだよ!

もう少しで終わる高校生活の全てが掛かってるんだから!

 

「ど…どうしたの?お姉ちゃん?」

「お顔が真っ青になってます。気分でも悪いんですか?」

「い…いや、大丈夫だ、問題無い」

「フラグですね。マユさん」

 

言わないで…。

自覚があるから…。

 

「と…とにかく、まずは現場に行ってみないか?」

「そうですわね。まずはこの目で確かめないと」

「そう…だな」

 

もしも本当にミルたんだったら、なんとかして私の手で誤魔化さないと!

 

でも……お願いだから、ミルたんじゃありませんよーに!!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 実際に現場に到着すると、カメラを持った連中が大勢群がっていた。

光が沢山光っているのを見ると、どうやら一心不乱で何かを撮影しているようだ。

 

人の波に憚れてよく見えないが、この中心にいるのが例の『魔法少女』なのだろうか?

 

「本当になんなのかしら…?」

「さっぱり状況が分かりません」

「それは誰もが一緒だ」

 

逆に分かったら凄いわ。

 

私達が困惑していると、我々が来た方から匙君がやって来た。

 

「あれ?先輩達?こんな場所で何を?」

「いや…なにか騒がしかったんでな。少し様子を見に…」

「先輩達もですか…」

「も?君もか?」

「はい。俺達生徒会メンバーはさっきから魔王様やリアス先輩のお父さんや、マユ先輩の家族、朱乃先輩の御両親を案内してたんです。で、その途中でなんだか騒がしい場所があるって言う報告があったんで、俺が先行して来たんです。後で会長も来る予定です」

 

ソーナも来るのか。

彼女ならこの状況もなんとか出来るかもな。

言っておくが、決して匙君の力を軽視している訳じゃないぞ?

この騒動を一人で納めるのは難しいと判断しただけだ。

 

「よし!」

 

と気合を入れた匙君が集団の中に入っていった。

 

「ほらほら!こんな場所で撮影なんかしてないで、とっとと解散しろ!ここはコミケの会場じゃねぇぞ!」

 

コミケとか知ってるんだ…。

匙君もアニメとか好きなんだろうか?

 

カメラを持った連中は匙君に言われるがまま、雲の子を散らすかのようにして大人しく去って行った。

去り際に『うぉ!?ロリっ子美少女!?』とか『あの髪が赤い子…いいなぁ~…』とか『背ェ高っ!?でも、超絶美人!!』とか聞こえた気がした。

 

「はぁ……ったく…よりにもよって、授業参観の日にこんな騒動を起こすなよな……」

 

彼も気苦労が絶えないな…。

その心情には激しく同感だけど。

 

人混みが無くなったお陰で、件の魔法少女とやらの姿が見えた。

 

そこにいたのは、日曜の早朝8時30分に放送されているアニメに登場しそうな格好をしている黒髪でツインテールの女の子だった。

って……あれ?この子…前にどこかで会ったような気が……

 

「あっ!?」

 

ん?いきなり大声なんか出して、リアスはどうしたんだ?

 

「そこのアンタも、こんな日にそんな恰好をして騒動を起こさないでくれよ。でも、ここにいるって事は誰かの親族か?コスプレ自体を否定はしないけど、こういった場所ではちゃんとTPOを守ってくれよ」

「えぇ~?そんな事を言われてもなぁ~…。これが私の正装だし~」

 

正装って……。

 

でも…本当に良かった…。

魔法少女の正体はミルたんじゃなかった…。

マジで安心した…。

 

「あ、マユさんの顔色が戻りました」

 

心配事が一つ減ったからね。

 

だが、私の心は裏腹に匙君は聞き分けの無い女の子に対して悔しそうに歯ぎしりしていた。

 

そんな時だった。

廊下の向こうから皆を連れたソーナがやって来た。

 

「何をしているのですか?どんな問題でも速やかに解決するように心掛けろといつも……」

 

そこでソーナの言葉と体が止まった。

そりゃもう、一時停止のようにピタッと。

 

「あ!ソーナちゃん!」

 

コスプレっ子はソーナを見つけた途端、真っ直ぐに向かって抱き着いた。

知り合いなのかな?

 

「ソーナ……この子は…?」

「この方は…その……」

 

口籠っているソーナに変わり、リアスが答えてくれた。

 

「この方は……レヴィアタン様よ…」

「レヴィアタン……」

 

その名前は確か……現在の悪魔達を仕切っている四大魔王の一角じゃなかったか?

 

「ま…魔王?この子が…?」

「はい…。彼女こそが…私の実の姉です…」

 

なんと…!

彼女がソーナの姉とな!?

見た目的には絶対に逆だろ。

 

「はは……セラフォルーも来てたんだね」

「勿論よ。ソーナちゃんの為だもの♡」

 

うん、見事なまでのぶりっ子ですな。

オーフィスちゃん達が真似しないといいけど。

 

ふと、セラフォルーさんがこっちを向いた。

正確には私の方を向いた。

 

「セ…セラフォルー様。お久し振りd「赤龍女帝様ぁ~♡」…へ?」

 

挨拶しようとしたリアスを完全に無視して、私にいきなり抱き着いてきた。

 

「あ…あの?」

「逢いたかった……ずっと貴女に逢いたかった!」

「え…ええ?」

 

いきなりそんな事を言われてもな…。

 

「君は覚えてないかい?」

「はい?」

「君が初めて歴史の表舞台に出た日……あの時の戦いで助けた少女が彼女だよ」

「あっ!?」

 

思い出した!

私が転生して初めての戦いで、ザイゴートの群れを蹴散らした時に助けたコスプレ少女!

あの時の子か!

 

「思い出してくれました…?」

「は…はい。お元気そうでなによりです…」

「えへへ…♡」

 

あの時の子が実は魔王ですか…。

どんな冗談だよ…。

 

「私は『セラフォルー・レヴィアタン』って言います!」

「えっと…私は闇里マユ…です」

「マユちゃんね!よし!覚えた!」

 

覚えるの早っ!

 

「おいおい……マユのやつ…俺等の目の前で堕としやがったぞ?」

「流石は僕達の可愛い子供!魔王も彼女にかかればイチコロだね!」

 

それ、どう言う意味で言ってるんだ?

 

「貴女の活躍はずっと聞いてきたの!マユちゃんの噂を聞く度に興奮が収まらなくって!」

「そ…そうですか…」

 

ここまでストレートに好意を表されると反応に困るな…。

 

「お姉さま!マユさんが困っています!早く離れてください!」

「あれ~?もしかしてソーナちゃんもマユちゃんの事が好きなのかな~?」

「そ…それは……」

 

なんでそこでどもる?

この状況で黙るって事は肯定しているのと同義だぞ?

 

「マユ……学校でフラグ建て過ぎにゃ…」

「呆れてものも言えないわね…」

 

そう言われても!

私だって建てたくて建ててるんじゃないよ!

っていうか、私がいつ建てた!?

 

「しかし…セラフォルー殿は随分と奇抜な格好をしていますな。魔王としてそれはどうかと……」

「あれ?おじさまはご存じないんですか?この格好こそがこの国での正装なんですよ?」

「おや、そうでしたか。これは私の方が無知だったようだ」

「いや、流石にそれは違いますから」

 

リアスのお父さんの質問に対して出鱈目を息を吐くように答えるセラフォルーさん。

ここで訂正しておかないと、間違った日本像を植え付けてしまう!

 

私の声に反応して、リアスのお父さんがこっちに来た。

それに合わせてセラフォルーさんがやって離れてくれた。

 

「初めまして。赤龍女帝殿…いや、闇里マユ殿。私がサーゼクスとリアスの父です」

「あ……こちらこそ初めまして…」

 

握手を求められたので、反射的に握手をした。

 

こういった紳士と話すのは初めてだから、柄にもなく緊張する…。

 

「貴女には子供達が何回も助けられたと聞いています。今更ながら礼を言わせていただきたい。本当にありがとう」

「そ…そんな…頭を上げてください」

 

貴方の様な方に頭を下げられると、逆にこっちが困るんです!

 

「私は当たり前の事をしただけです。褒められるようなことは何もしていません」

「謙虚ですな…。そんな貴女だからこそ、伝説にもなったのでしょう」

 

……一回、マジでどんな伝説になっているのか知りたい。

黒歴史になってるかもしれないし。

 

「あ~!貴方は…ルシファー様!?なんで!?」

「ちょっとな。だが、今の俺はマユの父親の闇里セツナだ。ここではそう呼べ」

「は~い」

 

向こうも向こうで話しているみたい。

でも、初代魔王と会った割には反応が普通じゃないか?

 

「こうしてみると、魔王も千差万別にゃ」

「不思議と、今の悪魔達に同情しちゃったわ…」

 

分かっていても、そんな事を言うもんじゃないって。

心の中に仕舞っておこうよ。

 

「「「おぉ~…」」」

「あれ?君達…これに興味があるのかな?」

「「「うん!」」」

「じゃあ、特別に持たせてあげる!」

 

あ、とうとう幼女組がセラフォルーさんの格好に興味を示してしまった。

オーフィスちゃんが彼女が持っていたステッキを持っているし。

 

「あの子達もあんな物に興味を持つようになったのか…」

「本当に、歳相応の女の子にしか見えなくなってしまいましたね」

「でも、あの子達はその方がいい気がするわ」

「ですね。あの子達の様な子供達を未来を守る為にも、『僕達が頑張らなくては』と言う気持ちにさせてくれますから」

 

あの子達の笑顔を曇らせるような事はしたくないな…。

いや、オーフィスちゃん達だけじゃない。

皆の笑顔を守る為にも、絶対に負けられない。

 

「……いい家族を持ちましたな」

「はい……」

「私も妻子を持つ身。愛する家族を守りたいと言う気持ちは誰よりも分かります」

 

リアスのお父上が見せる目は、とても慈愛に溢れていた。

この人が悪魔とかって言われても、信じられないな。

 

「どうですか父上。彼女の印象は」

「ああ。こうして実際に話すとよく分かる。誠実な姿勢に信念に満ちた力強い瞳。噂に違わぬ美しさ。伝説に名を遺す勇者として申し分無しだ」

 

とうとう勇者認定ですよ。

どこまで私の称号は大きくなるんでしょうか?

 

「当然です。だって、私のお姉ちゃんなんですから」

「ははは……リアスもすっかり彼女に懐いたな」

 

リ…リアスさん?

いきなり腕に抱き着かれると…その…胸が当たりますよ?

 

「少しよろしいですかな?」

「おや?貴方方も彼女に?」

「はい。我々も彼女に救われた身です」

 

今度は朱乃の御両親か。

本当に仲睦まじいな。

 

「こうして会うのは十数年振りですな。ご壮健そうで何よりです」

「そうですね。そちらはいかがですか?」

「貴女が助けてくれたお陰で、こうして家族水入らずで暮らしていけています。本当に…どれだけ感謝しても感謝し足りないわね」

 

朱乃の様子からなんとなく予想はしていたけど、夫婦仲はいい様だ。

 

「あれから、アザゼルに事情を話して色々と便宜を図ってもらい、その後は堕天使達が襲撃してくることは無くなりました。聞いた話だと、君もアザゼルと知り合っているとか」

「まぁ…一応……」

 

状況に流された結果…だけどね。

 

「何か困ったことがあったらいつでも仰ってください。我々に出来る事などたかが知れているかもしれないが、それでも全力で手伝わせて貰います」

「その気持ちだけで充分です」

 

そういや、いつまで私に対して敬語を使うの?

私ってそんなにも畏まるようなキャラだっけ?

 

それからも、私達は昼休みの間中ずっとご両親組と話していた。

 

ああいった大人と話す機会は滅多にない為、結構新鮮な気持ちだった。

 

オーフィスちゃん達はとうとう魔法少女に興味を持ってしまった。

芋蔓式に私の持っているソウルジェム擬きの事がばれないようにしないと…。

 

セラフォルーさんはソーナと話していて、恥ずかしさの限界に来たのか、ソーナはこの場から走って去って行ってしまった。

 

やがて昼休みも終わりに近づき、私達はそれぞれの教室に戻っていった。

 

家族組は予定が空いている教員にソーナ達が役目を引き継いで、そのまま学校の中を見学していった。

 

こうして、騒がしい一日は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったよりも出番がありましたね。

今回初めてフラグが建ったように見えるセラフォルーですが、実は既に建っていたりします。

では、次回。

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