色々とパワーアップはしても、女子高生の日常は変わらない?
コカビエルと、突然襲撃してきたボルグ・カムランを撃破した後、学園の周囲で結界を張ってくれていたソーナ達が駆けつけた。
皆が必死の形相で、こっちの方が少し驚いてしまった程。
話を聞くと、いきなり謎の空間に飛ばされた挙句、いきなり大きな光の柱が立ち上ったことに驚きまくったようだ。
もしかしたらと思ってはいたが、まさか本当に固有結界に巻き込まれていたなんてな…。
私は謝罪をすると同時に、コカビエルとの戦いの間に起きた出来事をリアス達と一緒に説明した。
私がエミヤの力を使って固有結界を張った事。
裕斗の神器が禁手に至ったこと。
その後に聖書の神ヤハウェが現れて、その直後に英霊の状態でアルトリアがやって来て、私にエクスカリバーを託した後に、他の英霊達と同様に力を貸してくれるようになったこと。
そして、そのエクスカリバーでコカビエルを倒した事。
念の為、シオとボルグの事は伏せておいた。
案の定、皆が顎が外れるほどに驚いた。
私も疲れていたし、もう夜も遅かったので、詳しい事情は明日話すことになった。
そんな訳で、私達はゼノヴィアと一緒に家に帰る事にした。
因みに、エクスカリバーは毎度の如く、籠手の中に収納された。
もう、赤龍帝の籠手が4次元ポケット的なアイテムになりつつあるな…。
家では黒歌とレイナーレが起きていて、私達の事を出迎えてくれた。
お陰で、ちょっぴり泣きそうになっちゃった。
その時、簡単にゼノヴィアの事も説明しておいた。
そして、私は戦いの疲れをお風呂で癒した後、ゆっくりと自室にて床に就いた。
ゼノヴィアは取り敢えず、開いている部屋で寝て貰った。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ふわぁ~…」
欠伸を噛み殺しながら、私は起床してリビングまで降りてきた。
昨日は本当に動きまくったので、かなりお腹が空いている。
リビングまで行くと、黒歌が作ったであろう朝食のいい匂いが漂ってきた。
「お腹空いた…」
食欲が刺激される…。
早く食べよう。
そう思ってテーブルまで行くと……
「あ、マユ。おはようにゃ」
「よく眠れた?」
「おはよう。お姉ちゃん」
「おはようございます」
「昨日はお疲れさまでした」
「お姉ちゃん。おはよう」
「おはよう!」
「おはよう。まだ眠そうだな」
うん。
黒歌やレイナーレ。
他にもリアスや白音、アーシアに幼女達がいるのは当たり前。
「あ、おはようございます!マユ殿!」
ゼノヴィアは別にいいよ?
これから一緒に住むんだし。
「あ……お先に頂いてます」
イリナも問題無い。
彼女は昨日までウチで傷を癒していたし。
けどさ……
「や!疲れは取れたかい?」
「うん。美味いな」
なんでここで普通にヤハウェが一緒に朝食を食べてるんだよ!?
しかも、なんか見た事のないワイルドな色黒な男の人までいるし!
「……なんでいる?確か昨日、こっちには余り長い間はいられないって言ってなかったか?」
「うん。確かにそう言ったよ?けど、もう二度と来れないとは一言も言ってないよ?」
「屁理屈だ…」
そんなの有りかよ…。
「そして、アンタの隣にいる人は…」
「あ、俺と会うのは初めてだったな」
「はぁ……」
なんかフランクな人だな…。
「俺はルシファー。分かりやすく言っちまえば、初代魔王ってヤツだな」
「なんですと……!?」
しょ…初代魔王!?
そんな大物がなんでここに!?
「お姉ちゃんが驚くのも無理ないわ。私だって最初に見た時は全く同じ反応だったし」
「そ…そうか……」
悪魔であるリアスの方が驚きは大きかったかもな…。
「けど、想像したよりもフランクなお方で、私にも気軽に接してくださったわ」
「一応、俺の後輩の妹だしな」
魔王って言うよりは、仲がいい近所のお兄さんって感じだな。
なんか、リンドウさんやタツミさんを彷彿とさせる人だ。
「昨日の事は僕達からちゃんと説明しておいたよ」
「あ……すまんな」
「気にしないで。これぐらいならお安い御用さ」
ほんと…アフターケアは完璧なんだよな…。
「黒歌とやら、味噌汁のおかわりいいか?」
「はい。大丈夫ですにゃ」
黒歌も馴染んでるなぁ~…。
「マユちゃんも早く座りなよ」
「う…うん…」
ヤハウェに促されるようにして、私は空いている席に座った。
そこにレイナーレが私の分の食事を注いでくれた。
「はい。昨夜はかなり頑張ったんでしょ?沢山食べなさいな」
「ありがとう…」
「べ…別に礼を言われるような事じゃないわよ!アンタの従者として当たり前の事をしてるだけだし……」
そっぽ向いて照れてるのか?
「ふふ……マユちゃんは女泣かせだねぇ~」
「お姉ちゃん、女を泣かせてる?」
「いや、別に本当に泣かせてる訳じゃないよ?オーフィスちゃん」
「言葉の綾ってヤツだ」
失敬な奴だな。
私は誰も泣かせたことはないぞ?……多分。
自分達の分の食事も注いでから、黒歌達も座った。
「それじゃあ…」
「「「いただきます」」」
本当に空腹だった為、まずはパクリ。
「美味しい…」
五臓六腑に染み渡りますなぁ~…。
『うぅ……マスターはなんて美味しそうに食べるんですか…!シロウ!私もお腹が空きました!』
『分かった分かった。今作ってやるから、少し待っていろ』
えっ!?籠手の中で食事とか作れるの!?
『またこの中も騒がしくなったな…』
ドライグもご愁傷様。
『私だけじゃ少々厳しいな…。玉藻!君も手伝ってくれ!』
『えぇ~?仕方ないですねぇ~』
あら、玉藻も料理が出来るんだ。
流石は自称『良妻賢母』。
『はっはっはっ!この感じも久し振りだな!実に懐かしいぞ!』
ギルも楽しそうですね。
「今の聞いた事のない声が、例のアーサー王かにゃ?」
「うん。物腰も柔らかでいい子だよ」
「みたいね。アンタが受け入れてるんだし」
色んな場所で賑やかになってるなぁ…。
「ゼノヴィア。イリナに昨日の事は話したのか?」
「はい。さっきコアも渡しました」
「そうか」
見た感じ怪我も治ったみたいだし、良かったよ。
「話は聞きました。まさか、本当に私達が聖剣と思っていたものが偽物で、貴女が真の聖剣に選ばれたって…」
「聖剣が偽物だったことはともかく、私があの剣に選ばれたのは驚いたよ」
自分がそんなに崇高な人間とは思えないからね。
「これからどうする気だ?」
「もう少ししてから、向こうに戻ろうと思います」
「寂しくなるな」
「大丈夫です!また絶対に来ます!日本は私の故郷ですから!」
故郷…か。
「そうだな。その時を楽しみに待っているよ」
「はい!」
朝から元気だな。
でも、意気消沈しているよりはマシだ。
「ゼノヴィアはこっちに残るんでしょう?」
「ああ。神から賜った使命だからな」
そこまで重要に考えなくてもいいんだけど。
「ついでだから、ゼノヴィアちゃんも皆と一緒に学園に通うといいよ」
「いいのですか!?」
「勿論。そこら辺は僕達に任せといて」
「今はそれぐらいしかしてやれないしな」
「感謝します…!」
朝から神を拝まない。
「いや~…やっぱり日本の朝食はご飯に味噌汁。焼き魚に納豆で決まりだよねぇ~」
「これぞ日本の朝って感じだよな」
「分かります。これこそ故郷の味!黒歌さん!ありがとうございます!」
「恥ずかしいからやめるにゃ…」
恥かしがる黒歌も珍しいな。
けど、可愛いからいいか。
「って、マユちゃんに話さなきゃいけない事があるんだった」
「忘れてたぜ。久し振りに美味い飯食って夢中になっちまってた」
神と魔王が日本の朝食に舌鼓を打つって…。
かなり神と魔王が庶民的になったな…。
親近感が湧くぞ。
「リアスちゃん。もうそろそろ授業参観があったりするんじゃない?」
「え…ええ。そうですけど…」
「他の子はともかく、マユちゃんには実際に血の繋がった家族は一人もいない…よね?」
「そう…だな…」
色んな意味で私は天涯孤独の身だ。
皆がいなかったら、未だに私は一人で暮らしていただろう。
「お姉ちゃん?」
「いや…なんでもない」
余計な心配は掛けたくない。
ここは静かにしていよう。
「マユちゃんの家族は、彼女が幼い頃に亡くなってるんだよ」
「そ…そうなの…」
「マユさん……」
「マユさんも私と同じで……」
そっか。
アーシアも天涯孤独だったな。
「それに、これからは進路相談の為の三者面談とかもあるだろう。白音ちゃんは黒歌ちゃんがいれば大丈夫だけど、マユちゃんはそうはいかない。だから……」
「俺達がお前の両親になる事にした」
………え?
「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」
ど…どどどどどどどどどどゆことですかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
「ほれ。もう準備は出来ている」
そう言ってルシファーさんが見せたのは、書類に書かれた家系図だった。
そこにはこう書いてあった。
【父 闇里セツナ】
【母 闇里ミライ】
【長女 闇里マユ 】
【次女 闇里オーフィス】
【三女 闇里レド 】
【四女 闇里ティナ】
「「「おぉ~」」」
幼女組が興味を示しているし…。
「これ、なに?」
「これはな、俺達が本当の家族になったって言う証みたいなもんだ」
「ならば、これからは二人が我等の親となるのか?」
「そう言う事。これからは僕がお母さんで…」
「俺がお父さんだ」
「「「おぉ~!」」」
あ~あ~…。
子供達(?)が目をキラキラさせちゃって…。
「この…セツナとミライっていうのは…」
「俺達の偽名。こっちでは俺はセツナって名乗る事にするわ」
「僕はミライね。外ではそう呼んでね?」
「わ…分かった…」
まさか、ここまでするとは……。
完全に予想できなかった…。
「よもや、聖書の神が母となり、初代魔王が父となるとはな…。赤龍女帝は伊達ではないと言うことか…」
「もう、並大抵の事じゃ驚かないつもりだけど……」
「これは流石に驚きました…」
幾らなんでもやり過ぎだ…。
でも、いつかは解決しなくてはいけなかった事なのも事実。
これはこれで良かったのか…?
「俺としても、美人と美幼女達が娘になるのは大歓迎だ」
「僕も~!マユちゃんは色んな意味で僕とルー君の愛の結晶だもんね!」
え?まさか…私を転生させたのって、ヤハウェだけじゃなくて、ルシファーさんもなの?
二人の力で私を転生させたのか?
「因みに、黒歌ちゃんと白音ちゃんはマユちゃんの親戚って事になってるから」
「そして、アーシアとゼノヴィアとレイナーレはこの家にホームステイをしている事にしてある」
ホームステイって……。
そんな言い訳で大丈夫なのか?
「私と姉様がマユさんの親戚…」
「言い得て妙だけど、それが妥当なのかもしれないにゃ」
「そうね。ホームステイって言うのはどうかと思うけど…」
だよね~。
その後も朝食を食べながら今後の事や昨日の事を話し合った。
そして、丁度いい時間になったので私達学生組は学校に行く準備を、イリナも帰る準備をした。
ヤハウェとルシファーさんは去って行き、用事がある時に定期的にやって来ると言い残していった。
流石に今日は行かせるわけにもいかないので、ゼノヴィアは家にいてもらう事に。
オーフィスちゃん達のいい遊び相手になるだろう。
イリナを見送った後で、私達はいつものように学園に向かった。
ようやく日常が戻って来たことを実感した私だった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
いつものように授業をこなして、今は放課後。
私達はオカルト研究部の部室で昨日の疲れを癒していた。
「どうぞ、お姉ちゃん」
「ありがとう、朱乃」
ふぅ……こーゆー時は紅茶でも飲んでゆったりまったりするのが一番ですなぁ~。
「で、ゼノヴィアさんもここに転入する事になったんですの?」
「みたいだ。ヤハウェがそう言っていた」
「あの方ならば不可能なんて無いでしょうしね。生徒一人を転入させるぐらい朝飯前でしょうね」
時折思う。
万能な力と言うのも考えようだなって。
悪用しないだけかなりマシだけど。
「イリナさんはコアを持ってバチカンに帰りました」
「妥当な判断だね」
ちゃんと飛行機の時間には間に合ったかな?
久方振りの平穏を堪能していると、部室のドアが開かれた。
「あら?」
「ごきげんよう。リアス、皆さん」
「ソーナ。どうしたの?」
「昨日の報告をしようと思いまして」
報告?
私が小首を傾げていると、ソーナが私の隣に座った。
その瞬間、リアスと白音、朱乃の目が鋭くなったような気がする。
アーシアは逆に慌てていたけど。
「昨日の事件はアザゼル総督を通じて、他の三大勢力のトップにそれぞれ真相が伝えられたそうです」
「アザゼルさんが……」
意外と仕事をしてるのな。
唯の飲んだくれのオヤジじゃなかったのね。
「あの偽の聖剣の強奪は完全に彼の独断で、他の幹部連中は一切関与していないとの事です。本当なら彼を捕縛してから地獄の最下層であるコキュートスにて永久冷凍の刑に処す予定だったそうですが……」
「先輩がエクスカリバーで完全に消し飛ばしてしまった」
「はい。その件に関しては気にしていないそうです」
アザゼルさんが気にしていなくても、あの白龍皇が気にしている可能性があるよな…。
だって、彼女の仕事を奪ってしまったわけだし。
あの時のあの子って、完全に骨折り損のくたびれ儲けだよな。
「そして、教会側からは『堕天使側の動きが上手く掴めない為、不本意ではあるが近いうちに連絡を取り合いたい』と申してきたとの事。同時に、件のバルパーを逃した事と聖剣が偽りだったことを謝罪してきたそうです」
謝罪…ね。
それが本音かどうかは疑問だけどね。
「近日中に三大勢力の代表を集結させて会談を行う予定だそうです。その際、マユさんを初めとした貴女と一緒に暮らしている方々も出席して欲しいそうです」
「当事者である私や白音は分かるが、どうして他の皆も……?」
「そこまでは流石に…。それに関しては会談の時に直接聞いた方が早いでしょう」
「それがいいか…」
ここであれこれ考えても意味無いしな。
今は目の前の平和を噛み締めよう。
報告が終了した後、少しだけ話してからソーナは生徒会室に戻っていった。
なんかこっちを見て頬を赤らめていたけど、まだ疲れが残っていたのかな?
こうして、また一つの戦いが幕を閉じた。
けど、まだアラガミの脅威は去った訳じゃないから、油断は出来ない。
でもさ、今ぐらいは皆と一緒に笑い合っても…いいよね?
またまた長く感じましたが、これでコカビエル戦及び聖剣の話は終了です。
次からはまた新章突入です。
遂に吸血鬼の男の娘が登場?
では、次回。