神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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今回の話のクライマックスはFateのOPとか聞きながら読むと盛り上がるかも?

ようやく、コカビエル戦が決着です。


第51話 甦る聖剣伝説

 アーサー王ことアルトリアから聖剣を授かって、私はコカビエルと改めて対峙する。

 

私の体から黄金のオーラが噴出し、周囲が黄金色に煌いている。

 

「こ…これは聖なるオーラ!?」

「でも…全く痛みを感じませんわ…」

「はい…。それどころか、安らぎすら感じるなんて……」

 

ふとリアス達の会話が聞こえたが、それはどういう事だ?

聖なるオーラは悪魔達にとって害悪になるんじゃ…。

 

『それは単純です』

 

え?いうこと?

 

『エクスカリバーから出ているのは聖なるオーラではなく、この星の生命力だからです』

「生命力……!?」

 

オーラをコントロールしながら耳を傾ける。

 

『既にご存知かと思いますが、このエクスカリバーは人々の祈りと想い、星の命が具現化したものです。エクスカリバーに選ばれるという事は即ち、この星に認められたに等しいのです』

 

ま…マジですか!?

これって、そんなにも凄い物だったの!?

 

『貴女の強靭な肉体ならば、エクスカリバーの全力にも充分に耐えられる筈です!遠慮はいりません!』

「分かった!!」

 

全く…本当にオラクル細胞様様だな!

いつもは忌まわしいとしか感じないのに、戦いの時にはこれ程までに頼もしいとはね!!

 

「赤龍女帝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

コカビエルが漆黒の翼を羽ばたかせ空中に浮き、攻撃態勢になる。

 

「聖剣ごと……死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

右手にコカビエルの二倍はある巨大な光の槍を作り出し、私に向かって投擲した。

だが……

 

「ば…バカなッ!?」

 

光の槍は私から、正確にはエクスカリバーから噴出している星のオーラに阻まれて、一瞬で消滅してしまった。

 

『ふっ……。決まりだな』

 

慢心かもしれないが、私にも勝つと言う確信がある。

理由は不明だが、エクスカリバーを手にした瞬間から心の奥底から勇気が無限に湧いてくる!

お陰で、この戦い…全く負ける気がしない!

 

この一撃さえぶつければ戦いは終わる。

そう思ってエクスカリバーを持って正眼の構えになる。

 

「凄い……なんて綺麗な構えなんだ…」

 

おや、どうやら剣道をやっている裕斗のお墨付きを頂いたようだ。

密かに剣道部の練習を見学したり、時には参加したりした甲斐があった。

 

『マスター!感情を込めて力を上げてください!』

「ああ!!」

 

さっき以上に力を込めてエクスカリバーを握りしめる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

裂帛の気合いを共に声を上げると、聖剣の輝きが更に増した。

 

「ドライグ!!」

『ま…まさか…やるのか!?』

「当たり前だ!やれ!!」

『…分かった!お前の事を信じているぞ!相棒!!』

 

【Boost!】

 

倍化の力をエクスカリバーに込める。

すると、オーラと輝きが二倍に膨れ上がった。

 

「ま…まさか…この状況で倍化をしたの!?」

「な…なんてプレッシャーですの…!」

「空気が…震える…!」

「肌が…ピリピリします……」

 

も…もしかして、皆にも影響が出てる!?

でも…ゴメン!

もうちょっとだけ我慢してくれ!

 

黄金の光越しにコカビエルを睨み付ける。

 

「くっ……!」

 

冷や汗を滲ませながら怯んだコカビエル。

どうやら、精神的にも優位に立ったようだ。

 

けど、そう簡単に物事は終わらない。

 

『あ…相棒!』

「やっぱり来たか…!」

 

もうお約束だよな…!

 

地面の下からいきなり、土煙を上げながら銀色に輝く巨体が出現した。

 

「な…なんだっ!?」

「蠍…?」

 

それは、まるで西洋の鎧を全身に纏った巨大な蠍。

 

「ボルグ……カムラン……!」

 

熟練の神機使いでも苦戦することがある大型アラガミ。

さっきまで気配の欠片も無かったのに、ここにいきなり出現した。

それはつまり……

 

『まさか……!?』

「恐らく…そのまさかだ……!」

 

エミヤの予想通り、こいつは前回倒したハンニバルと同様に、ここで『発生』した個体だろう。

それなら気配の感じようがない。

 

『ど…どうする気だ!?相棒!神機に持ち替えるか!?』

「いや……このままでいい……!」

『な…なんだと!?本気か!?マスター!』

「ああ…!アラガミには体験した事の無い攻撃なら、一回だけ通用する…!それはサーゼクスさんが実証してくれた…!」

 

こうしている間にも、ボルグ・カムランは周囲を見渡していた。

 

「ククク……。この化け物がなんなのかは知らんが、少なくとも、貴様にとっての敵であることは間違いないようだな!」

 

よくお分かりで…。

 

「俺にも風が向いてきたな!ヤハウェ!」

「本当にそうだといいね」

 

ヤハウェ……お前は……。

 

「私はマユちゃんを…ゴッドイーターを信じてる。彼女は…彼女達は、誰かを守る時…無敵の存在になるって」

 

持ち上げすぎだよ…と言いたいが、今はそんな余裕が無い…!

 

「ドライグ!ギアを上げるぞ!」

『ほ…本気か!?これ以上はいくらお前でも…』

「ボルグとコカビエルを同時に倒すには、まだ足りない!だから!」

『くっ…!ならば、一気に行くぞ!』

「おう!」

 

【Boost!Boost!Boost!Boost!】

 

一度に四回倍化した。

これで合計で五回倍化したことになる。

即ち……

 

「32倍……だ…!!」

 

正直、こうして構えているだけでも辛い…!

けど!ここで私が怯むわけにはいかない!皆を守る為に!!

 

一気に増大した力に反応したのか、ボルグが私に気が付いた。

ま、当然か。

 

ボルグがこちらに向かって突撃してくる。

それを見て、今だと思った。

 

「行くぞ…!!」

 

攻撃する。

そう決意した瞬間…私の心は驚くほどに冷静になった。

さっきまでの辛さはどこに行ったのか。

まるで静かな湖面のように心が澄み切っていた。

 

(これなら……行ける…)

 

エクスカリバーを頭上に構える。

すると、黄金のオーラがまるで塔のように直上に上っていった。

そして、一歩だけ足を前に進めると、普通なら地面と足とが擦れる音が鳴る筈が、どう言う訳か水の上に立ったような音が静かに響いた。

 

「この俺の最大の一撃だ!!これで決着をつけてやる!!!」

 

コカビエルはその頭上に今までとは比べ物にならない程の巨大な槍を生成した。

どうやら、あれがアイツの最大の攻撃のようだ。

ならば……!

 

(それを真正面から打ち破る!!)

 

コカビエルが全力で巨大な光の槍の投げつけた。

同時にボルグもこっちに迫ってきている。

普通なら絶体絶命の大ピンチ。

だが、今の私は一人じゃない。

ドライグが…エミヤが…アルトリアが…ヤハウェが…そして、大切な友達や家族がいる!!

 

「今…常勝の王は高らかに…手に執る奇跡の真名を謳う」

 

気が付けば、自然と口が動いていた。

一人の少女から一人の王となった人間の生涯を語っているかのように。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流……」

 

私は全力で聖剣を振りかぶった!

 

「消え失せろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

聖剣が今までで最大級の光を放つ!!

 

約束された(エクス)……」

 

眼前までボルグと光の槍が迫る。

 

勝利の剣(カリバー)ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

超絶的なまでの黄金の光が生まれ、光の槍とボルグ・カムラン、そして…コカビエルを飲み込んだ!!

 

ボルグは獣のような咆哮を上げて消滅し……

 

「この俺が…この俺が人間如きにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」

 

そんな断末魔を響かせながら、コカビエルはこの世から跡形もなく消え去った。

 

その時、誰かが呟いた。

 

「まるで……この世の全てが黄金に輝いて見える……」

 

エクスカリバーの一撃は周囲の結界を簡単に打ち破り、駒王町の空全体を黄金の光で包み込んだ。

 

それはまるで、神話に出てくるような神秘的な光景だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 コカビエルとボルグ・カムランが完全消滅したと同時に、無限の剣製(アンミリテッド・ブレイド・ワークス)も解除された。

目の前には、見慣れた駒王学園の校舎が見える。

 

「うぁ……?」

 

戦いが終わり、急に力が抜けたのか、私はその場に座り込んでしまった。

 

「「お姉ちゃん!!」」

「先輩!」

「「マユさん!!」」

 

皆が心配そうに駆け寄ってくる。

 

どうやら、無事そうだ。

 

「ご苦労様、マユちゃん」

「あぁ……」

 

慈愛に満ちた顔で私の事を見つめるヤハウェ。

その顔を見ていると、不思議と安心感に包まれる。

 

「君も…よく来てくれたね」

 

そっと視線を向けると、シオが優しく微笑んでいた。

 

「もう…いくね?」

「うん……」

 

シオは私の所にやって来て、握手をした。

 

「ありがとう……シオ。……またね」

「うん…」

 

それだけ言って、シオは光の粒子となって、消えていった。

 

「寂しいかい?」

「いや…いつかまた会えると信じているから。それに……」

 

こっちに走って来る皆の方を向く。

 

「私は……一人じゃないから」

「そう……」

 

満足げな顔をして、ヤハウェは宙に浮いた。

 

「それじゃあ、僕は行くね」

「また…会えるのか?」

「嫌でもね。近いうちに色々と事情の説明とかしなくちゃいけないから」

「そうか……」

「それじゃ、またね」

「あぁ。また」

 

ヤハウェはシオと同様に光の粒子になろうとしている。

が、そこに待ったをかける二人がいた。

 

「「ま…待ってください!」」

 

アーシア…それにゼノヴィア…。

 

「もう行ってしまわれるのですか!?」

「うん。僕はあまり地上に長居は出来ないんだ。僕の力に引かれて、また碌でもない連中がやって来る可能性があるから」

 

神と言うのも考えものだな。

 

「何故…何故に天界から姿を消したのですか!?貴女の存在を知ってしまった私はこれからどうすれば……」

「ゼノヴィア。君は今回の一件で色々と深入りしすぎた。多分、このまま教会に戻ってもいいことは無いだろう」

「そんな……私は……」

「だから、君にはこのまま日本に残って彼女を…マユちゃんの事を支えて欲しいんだ」

「わ…私が赤龍女帝を!?」

「うん。今の彼女には一人でも多くの仲間が…理解者が必要だ。君ならきっとマユちゃんに力になれる。僕はそう信じているよ」

 

ヤハウェ……貴女は……。

 

ゼノヴィアは涙を流しながら、その場に跪いた。

 

「このゼノヴィア。一命を賭して赤龍女帝の支えとなる事を誓います…」

「頼んだよ…」

 

次にヤハウェはアーシアの方を向いた。

 

「今迄色んな連中を見てきたけど、君ほど素晴らしいシスターはいなかった。アーシア・アルジェント、これまでの人生を恥じたり後悔したりする必要は無い。誇りなさい、君は正しい事をした」

「あ…ありがとうございます……」

 

アーシアも跪いて、両手を合わせて祈るように涙を流した。

 

「じゃ、行くね」

「うん」

 

今度こそ、ヤハウェは去って行った。

 

そして、ようやく夜の駒王学園に静寂が戻った。

 

【Reset】

 

音声と共に禁手が解除されて、私の姿が元に戻る。

それを見て、リアス達が傍に寄ってきた。

 

「だ…大丈夫!?怪我は無い!?」

「ああ。問題無い」

 

皆が私の体をまさぐってくる。

ちょっとくすぐったい。

 

「ほ…本当に怪我は見当たりませんわ…」

「よかった…」

 

満足したのか、やっと少しだけ離れてくれた。

すると、今度はゼノヴィアが寄って来て、私に対して跪いた。

 

「神から直々の勅命だ。これからは貴女の傍で貴女の剣となり盾となろう」

「そ…そうか…」

『まるで、昔を思い出す言葉ですね』

『ああ。懐かしいな』

 

え?そうなの?

アルトリアってば昔にこんな言葉を言ったことがあるの?

エミヤも昔を思い出すような事を言って。

 

「でも、いいの?貴女は聖剣(偽)を取り戻す為に来たんでしょう?」

「聖剣自体が偽物だった上に、赤龍女帝が真の聖剣の担い手となった。それをこの目で見てしまった以上、私はもう教会には戻れないだろう」

 

確かに……。

 

「このコアはイリナに持たせて、教会に届ければ大丈夫だろう。少し罪悪感があるがな」

 

そうか…。

今、彼女は私の家で療養しているから、今回の顛末は知らないのか。

 

「彼女には話さないのかい?」

「いずれは話さなければいけないだろうが、今はまだ黙っていた方がいいだろう。心が落ち着くまでな」

「そうだな」

 

今は兎に角、怪我を治すことに専念して欲しい。

健康第一…だ。

 

一件落着。

 

そう思って、ふと夜空を見上げる。

 

すると、次の瞬間……

 

「なっ…!?」

 

いきなり、『気配』が現れた。

 

「はぁ…。まさか、コカビエルが跡形もなく消滅するなんて。流石に予想外だわ」

 

全身を覆う純白の鎧を纏い、その背には月光に輝く光の翼が存在している。

鎧自体は丸みを帯びており、女性的な感じを伺いさせる。

 

それを見た途端、頭の中に『それ』の名前が流れてきた。

 

「白龍皇……その神器…白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)…」

「へぇ~……そこまで知ってるんだ…」

 

白龍皇はその手を腰に当てて、呆れたように頭を振る。

 

「全く…見事に私の仕事を奪ってくれちゃって」

「どう言う意味だ?」

「アザゼルから聞いてないの?派遣するって」

 

そう言えば、電話でそんな事を言っていたな。

って、まさか……

 

「お前が…アザゼルさんが言っていた増援か…?」

「正解。でも、その必要は無かったわね。まさか、コカビエルが盗んだ聖剣が偽物で、しかも貴女が真の聖剣に選ばれるなんて。誰にも予想できないわよ」

 

そう言われると、なんか急に罪悪感が…。

 

「コカビエルが死んだ以上、私の仕事はこの事を報告する事なんだけど…」

 

ん?もしかして…こっちを見てる?

 

「ちょっとぐらい、遊んでもいいわよね?」

 

白龍皇から殺気が放たれる。

コカビエルとは比較にならない程に濃密な殺気。

だけど、これじゃあ私を怯ませるには遠く及ばない。

他の皆は一瞬で身体を強張らせたけど。

 

「なんて、冗談よ」

 

急に殺気が霧散する。

今のが冗談って…。

 

「戦いたいのは紛れもない本音だけど、今の疲弊した貴女と戦っても面白くないもの。それに、私より貴女の方が圧倒的に強いのは明白だわ」

 

み…認められた?

って言うか、褒められた?

 

「特に、さっき放った聖剣の一撃。見事としか言いようがなかったわ。あんなのを喰らったら、私でもタダじゃ済まない」

「お前は…あの空間にいたのか?」

「まぁね。あれも貴女がやった事なんでしょ?どこまで強いのよ」

 

どこまでと言われてもな…。

 

「さて、私はそろそろ行くわ。早く戻らないと、アザゼルに何を言われるか分からないし」

 

溜息を吐きながら白龍皇が空中で踵を返す。

すると、いきなりドライグが話し出した。

 

『俺の事は無視か?白いの』

 

白いの?

 

『いや…今はまだ話しかけるべきではないと思っただけだ』

 

この声は…あの時の白い龍…確か…アルビオンだったか?

 

『久しいな。そいつがお前の宿主か』

『ああ。かなり優秀な奴だ』

『そのようだな』

『だが、あの時の小娘がお前の宿主になるとは思わなかったぞ』

『俺もだ。だが、後悔は無い』

『らしいな。今のお前からは昔感じた戦闘欲が全く感じられない』

 

懐かしの再会だからか、盛り上がってますねぇ~。

 

『その小娘…最初に見た時よりも桁違いに強大になっているな。一体何があった?』

『一概に一言では言えない。だが、これだけは言える。俺の相棒の成長率は俺でも計り知れない。過去にも未来にも、相棒以上の赤龍帝は現れることは無いだろう』

『ふっ……。まさか、お前がそこまで人間を評価するとはな』

 

あの~…いい加減に私を褒めるのをやめてくれませんかね?

かなり恥ずかしいんですけど。

 

「じゃあね。麗しの赤龍女帝さん。今度会う時は是非とも手合わせ願いたいわ」

 

そう言うと、白龍皇は凄いスピードで空の彼方へと消えていった。

 

「嫌な言葉を残していって……」

 

またトラブルの予感がする…。

 

トラブルの事前予約はお断りです…。

 

こうして、コカビエルとの戦いは終わった。

 

先程までいた筈のフリードはいつの間にかいなくなっていて、彼がいた場所には砕けた聖剣擬きだけがあった。

 

そして、私の手には黄金に煌く聖剣が静かに光を放っていた。

 

あぁ~…長い一日だったぁ~…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長く感じたコカビエル戦もやっと終わりました。

そして、聖剣ゲット!

これでまたマユの強さに磨きがかかる事に…。

お次は後日談です。

では、次回。

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