神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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こちらではお久し振りです。

まさか、記念すべき50話でこのサブタイトルとは……。

なんか、運命の様な物を感じますね…。


第50話 約束された勝利の剣

 禁手によってアーチャーの力を解放したマユの手によって無限の剣製(アンミリテッド・ブレイドワークス)が展開。

それにより、駒王学園の校庭は無数の剣が屹立する荒野へと変化した。

 

その一角で、裕斗とゼノヴィアがフリードと対峙していた。

 

「僕はもう…絶対に先輩の事を裏切らない。あの人の想いに報いるために、必ず勝つ!」

「……そうかい」

 

完全に過去を振り切った裕斗とは違い、フリードは何時のも感じではなかった。

まるで、ここにいる事すらも気怠いと言わんばかりに。

 

「まぁ……仕事だしな。やれと言われればやりますがな」

 

フリードはその手に持った融合された剣を構えた。

だが、お世辞にも覇気があるとは言えなかった。

 

「僕は今度こそ皆の…先輩だけの剣になる!!だから、今こそ僕の想いに応えてくれ!!魔剣創造(ソード・バース)!!!」

 

裕斗の手から眩い光が発せられ、そこから闇と光を放つ不可思議な剣が出現した。

 

「お前……それは……」

「これが僕の禁手(バランス・ブレイク)…。その名も『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』だ!!」

 

相反する二つの属性を兼ね備えた剣からは、今まで以上のオーラが発せられていた。

 

「ここで禁手かよ…。こりゃ、ますます……」

 

盛大な溜息を吐くフリードを無視して、裕斗は果敢に斬りかかる。

 

「はぁっ!!」

「ちっ!」

 

互いの剣が激しくぶつかり合う。

火花が散ると同時に、フリードの持つの剣から聖なるオーラが消えていく。

 

「……やっぱりか」

 

何かを納得したのか、フリードから増々やる気が失せる。

それを見て、バルパーは激昂した。

 

「何をしているフリード!!その剣ならいかなる相手であろうとも……」

「耄碌ジジイは引っ込んでろ!!!」

 

今までとは違う剣幕でバルパーに叫ぶフリード。

そこからはこれまでの飄々とした感じは無かった。

 

裕斗から一旦離れて間合いを取るフリード。

しかし、次の瞬間、彼は構えを解いてしまった。

 

「どうしたんだい?いきなり構えを解いたりして…」

「単純に飽きちまったんだよ」

「飽きた……だって?」

 

いきなりフリードは剣を地面に投げ捨ててしまった。

 

「ほらよ。欲しけりゃやるよ」

「き…貴様!何をしているのか分かっているのか!?」

「別にいいだろ。こんなパチもん」

「な…なんだとっ!?」

「フリード……君は……」

 

フリードが地面に落ちている剣を見つめる目は、どこまでも冷ややかだった。

 

「なんとなく、そんな気はしてたんだよ。最初にこの剣を握った時からな」

「ならば……何故……」

「一応、ビジネスだからな。やるべき事はこなすっつーの。けど、それもここまでだ」

 

バルパーの方を見るフリードだったが、その顔にはもう上司を見るような表情は無かった。

 

「大体、マジもんの聖剣が壊れるとか、普通は有り得ねぇだろ。それに……」

 

今度は裕斗の方を見るフリード。

 

「因子を埋め込んだ程度で聖剣が扱えれば、誰も苦労しないだろ」

「それはそうだが……」

「なんでこれが世に聖剣として出回っているのかは分かんねぇが、少なくともこれだけは言える。本当のエクスカリバーはどこかにまだ存在している。そうとしか考えられねぇよ」

 

遠くにてコカビエルと対峙しているマユの事を見つめるフリード。

 

「多分、その在り処はあの嬢ちゃんが知ってるんじゃねぇか?」

「先輩がだって…?」

 

急に地面に座り込み、完全に脱力するフリード。

その姿からは、もう完全に戦闘意欲が抜けていた。

 

「ほれ、教会の嬢ちゃん。この剣を取り戻しに来たんだろ?とっとと持っていけ」

「そうだが……この剣はもう、私が知っている剣じゃない。多分、破壊した方がいいだろう」

「けど、どうやって?いくら偽物でも、強度は本物だ」

「大丈夫だ。こんな時こそ、私の切り札の出番だ」

「は?」

 

ゼノヴィアが何もない空間に右腕を掲げる。

すると、そこの空間がいきなり歪み、その中心部分に手を入れると、そこから凄まじい程の聖なる力を宿した一本のクレイモアが現れた。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我はこれを解放せん!出でよ!デュランダル!!」

「へぇ~……そんなジョーカーがあったのかよ…。増々勝ち目がねぇじゃねぇか」

「ば…バカな!?私の研究では未だにデュランダルを使用できる領域には至っていないぞ!」

「確かに、人工的なデュランダル使いは未だに創れていないだろうな。だが、残念ながら、私は世界的に見ても希少な天然物のデュランダル使いなんだよ」

 

自信に満ちた表情でデュランダルを見せつけるゼノヴィア。

そこから発せられるオーラによって、融合した聖剣擬きは罅割れ始める。

 

「では、遠慮なく壊させて貰おう!」

「や…やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

全力でデュランダルを振りかぶり、思いっきり振り下ろす。

刀身が聖剣擬きに激突し、粉々に砕け散った。

 

「わ…私の聖剣がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!研究の集大成がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

場にバルパーの慟哭が響き渡る。

それに構わず、聖剣擬きの残骸の中からコアを取り出すゼノヴィア。

 

「これで、任務完了だ」

「あ……あああ……!」

 

力無く膝をつくバルパー。

そんな彼を裕斗が迫る。

 

「今度は貴様の番だ…!地獄で皆に償え……!」

 

バルパーの運命は風前の灯火だった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 向こう側での剣戟の音が止んだ。

どうやら、裕斗とゼノヴィアの戦いは決着が付いたようだ。

 

「ほぅ?どうやら向こうは向こうでケリが付いたようだな」

「ならば、こっちもやるか?」

「そうだな。ならば、始めようか」

 

私は近くに刺さっていた手頃な剣を抜いてから構えた。

 

すると、いきなりコカビエルがうっすらと笑いを浮かべた。

 

「……なんだ?」

「いやなに。知らぬが仏とはよくいったものだなと思ってな」

「どういう意味だ?」

 

いきなり諺なんて使いやがって。

違和感凄いんだよ。

 

「その様子から見て、どうやら貴様も何も知らされていなかったようだな?」

「なんですって?」

 

後ろから見ているリアスが怪訝な声を出した。

 

「ならば教えてやろう。お前が介入した先の大戦において、聖書の神と初代魔王は既に『死亡した……なんて言うんじゃないだろうね?』…なんだと?」

「こ…この声は…?」

 

私の籠手から収納している筈のスマホが出てきて、眩しく光りながら宙に浮いた。

 

口調は『あの人』に似ているけど……声が違う。

まるで、年頃の女の子みたいだった。

 

『全く……勝手に僕の事を死亡扱いしないで欲しいよ。聞いててムカついてきちゃったじゃんか』

「そ…その声は……まさか!?」

 

コカビエルが清々しい程に狼狽えてる。

ちょっとだけいい気味って思ってしまった。

 

スマホから発せられる光が段々と増していき、そこから一人の女の子が出現した。

彼女の背には黄金に光り輝く10対の翼が生えていて、全身から神々しさを放っていた。

 

「久し振りだね、コカビエル。こうして会うのは何百年振りかな?」

「ヤ…ヤハウェ!?何故貴様が生きている!!」

 

ヤ…ヤハウェって……まさか、聖書の神か!?

なんでここに!?

 

「嘘…でしょ…!」

「こんなことが……」

「信じられません……」

 

当然の如く、リアス達は驚愕しまくっている。

そして、アーシアは……。

 

「あ…ああ……主よ…。まさかその御身をご拝見出来る日が来るなんて…。もう…何も悔いはありません…」

 

うぉぉぉぉい!?

いきなりのトンデモ発言はやめてぇぇぇっ!?

 

「こうして君に会うのは初めてだね。マユちゃん」

「その呼び方……やはり……貴方なんだな……。『足長おじさん』」

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」」

 

ただ者じゃないとは思っていたけど、まさか聖書の神が正体だったとはね…。

なんとか冷静さを保っているけど、これが戦闘時じゃなかったら、恥も外聞もなく滅茶苦茶驚きまくっていたに違いない。

 

「うん。今まで黙っていてゴメンね」

「いや……きっと、何か深い事情があったんだろう。気にしてないよ」

(本当は面倒くさかっただけなんだけど…。気にしてないなら黙ってようっと)

 

足長おじさん……否、聖書の神ヤハウェは穏やかな微笑みでこちらを見ていた。

 

「ところで…どうして声まで変えて私に接触したんだ?」

「そうする必要があったからさ」

 

ここで深く問い詰めても、きっと答えてくれないんだろう。

なら、今は状況に身を任せよう。

 

「にしても……どうして君はそこまで争い事が好きなのかなぁ……」

「それが俺だからだ!戦場以外に俺の生きる場所は無い!」

「その為に戦争まで起こすか…。本当に腹立たしいよ」

 

その美しい顔を怒りに歪ませて、ヤハウェはコカビエルを睨み付ける。

 

「僕はあくまで、全ての勢力と仲良くしていきたいのに……」

「聖書の神ともあろう者が、まさかそんな腑抜けた事を言いだすとはな…!見下げ果てたぞ!」

「なんとでも言いなよ」

 

こっちの状況に気が付いたのか、裕斗達がやって来た。

 

「先輩!これは一体……」

「あの方は……もしかして……」

「その『もしかして』だよ。信徒ゼノヴィア」

「やはり……」

 

その場に跪き、両手を合わせて涙を流しながら祈り始めるゼノヴィア。

い…いきなりどうした!?

 

「拝謁出来て光栄の至りです……神よ……」

「あの女性が……神…?」

 

裕斗も驚いた表情のまま涙を流した。

 

「本当なら、最後まで傍観者に徹しようと思っていたけど、君の発言だけは聞き逃せない。流石の僕も、自分が死んだことにされるのは我慢ならない」

「ほぅ?ならばどうする?貴様が俺と戦うか?」

「その必要は無い。お前と戦うのは彼女の役目だ」

 

そう言って、私の方を見る。

 

「ここで僕が彼を倒しても意味が無い。これは、『人間』である『闇里マユ』が倒して初めて意味が生まれる」

「わ…私が……?」

 

私がコカビエルを倒す……か。

 

「その為の、『最高の助っ人』も用意したしね」

「助っ人だと?」

「うん。今までずっと『遠い場所』から君の戦いを見守り続けた英雄だよ」

「英雄……」

「そして、それは英霊エミヤ…君にとって最も縁が深い相手でもある」

『俺に……だと?』

「今から…『彼女』をここに呼ぼう。そして、見るがいい。唯一無二、絶対無敵、史上最強、天下無双の……聖剣を」

 

ヤハウェがその右手を天に掲げると、私の眼前に光の柱が出現した。

 

「な…何を…?」

 

柱の中を通って、天上から一つの人影がゆっくりと降りてきた。

 

それは私の目の前にやって来て、地面に降り立った後、柱が消えた。

 

「あ…貴女は……」

 

そこには、青いドレスを着た、金色の髪を靡かせた美しい少女が立っていた。

その体は半透明で、周囲が煌く粒子によって守られていた。

 

「初めまして、神を喰らう者」

「は…はい……」

「そして…久し振りですね。……シロウ」

 

シロウ?

 

『セ…セイバー…なのか…?』

「はい……」

 

少女は静かに涙を流し始めた。

 

それを見て、急に胸が締め付けられるような思いになった。

 

「ヤハウェ……この女の子は……」

「彼女こそ、かのアーサー王こと、アルトリア・ペンドラゴンだよ」

「な……に……?」

 

なんか、今回は驚いてばっかりな気がする…。

だって、他の皆も絶句して声すら上げてないし。

裕斗に至っては思いっきり目を見開いてるしね。

 

「貴女の事はずっと『英霊の座』で見ていました」

「英霊の座?」

「死後、世界に名を遺した英雄たちの魂を補完しておく場……とでも思っていればいいよ。詳しく話すと長くなっちゃうし」

「わ…分かった」

 

それはなんとなくわかる。

 

「その身が傷つき倒れ、体の一部が変容しても猶、貴女は決して諦めず、その信念を揺らがせることは無かった。貴女はずっと……生きる事から逃げなかった」

 

アルトリアは私の手を握って、ジッとこっちの顔を見続ける。

 

「私は貴女の『夢』を知っている。それに向かって我武者羅に進んでいることも。そして、その『夢』が叶う寸前まで来ていることを」

「私の…夢……」

 

それは……。

 

「そんな貴女だからこそ託せる。否、貴女にしか託せない」

 

アルトリアは私から少し離れた。

すると、先程まで彼女がいた場所に黄金の光が収束し、一本の黄金の剣が地面に突き刺さった状態で現れた。

 

「この剣は……」

「そう。これこそが私の宝具にして、真の聖剣…『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』です」

 

す…凄いプレッシャーをひしひしと感じる……。

これがオリジナルのエクスカリバーか…!

 

「お…おおおおお!!!」

「え?」

 

なんか、向こうから興奮を隠せない状態のバルパーが走ってきた。

凄く鼻息が荒い。

 

「エ…エクスカリバー!!私の…私だけのエクスカリバー!!!」

 

バルパーが剣に触れようとした瞬間、剣から物凄いオーラが噴き出して、それに触れたバルパーが断末魔すら上げる暇もなく完全消滅した。

 

「愚かな男……」

『当然の末路だな』

 

辛辣かもしれないが、それは私も同感だ。

 

「こ…これはどういうことだ!?あの剣が本当のエクスカリバーだと!?ならば、あの剣は……」

「偽物に決まってるでしょう。聖書に刻まれた堕天使の癖に、その程度の事も分からないの?」

「くっ……!」

 

お~…悔しそうに顔を歪ませやがって。

ざま~みろ。

 

「これが……本当の聖剣……」

 

裕斗も驚きを隠せないか。

それにゼノヴィアも……

 

「う…美しい……」

 

この始末。

もう完全にキャラ崩壊してます。

 

「貴女にならこの剣を抜ける筈です。貴方もそう思いませんか?シロウ」

『ああ…。英雄王も言っていたが、君には間違いなく『王』としての素質がある。きっと大丈夫だ』

 

二人共……。

 

「聖書の神ヤハウェ。貴女にお願いがあります」

「なにかな?」

「私も…彼女の力になりたい。いいですか?」

「君ならそう言うと思っていたよ。…目を瞑って」

「はい」

 

アルトリアが目を瞑った瞬間、彼女の体が光に包まれ、そのまま赤龍帝の籠手に吸い込まれていった。

 

「お…おぉ~…」

『ぬお!?余と同じ顔の女が入ってきたゾ!?』

『また貴方に会えた……シロウ』

『セイバー……いや、アルトリア。俺も嬉しいよ』

 

うん。籠手の中でイチャイチャするのはやめて。

 

『うぅ~……リア充爆発しろ~!』

 

そして玉藻は五月蠅い。

 

『さぁマユ!いえ…マスター!今こそ聖剣を!』

 

思わず皆の顔を見渡してしまう。

すると、全員が頷いてくれた。

 

いつの間にかシオが近くまで来ていて、私の手を取って聖剣の柄を握らせた。

 

「だいじょうぶ」

「……そうだな」

 

私は先程まで握っていた剣を捨てて、自由になった両手で聖剣を握りしめた。

すると聖剣は、まるでそうなることが当然のように、いとも簡単に引き抜けた。

 

引き抜いた途端、聖剣から金色の光が放たれ、視界を覆いつくす。

 

「ま…まさか……貴様がエクスカリバーに選ばれたというのか!?」

「マユちゃんなら当然だよ。お前のような戦闘狂とは格が違うんだから」

「ヤハウェェェェェェェェェ!!!!」

 

激昂すんじゃないよ。

みっともない。

 

「これが…聖剣エクスカリバー……!」

 

見た目は黄金に輝く、装飾が派手なブロードソード。

けど、刀身からは考えられない程の力を感じている。

その上……

 

「凄く軽い……」

 

まるで竹刀を握っているかのような軽さだ。

これなら自在に操れる。

 

私はエクスカリバーを両手で構えて、コカビエルを見据える。

 

「さぁ……覚悟はいいか」

「おのれ…おのれ……」

 

コカビエルは冷や汗を掻きながら、こっちを睨み付ける。

 

「おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!赤龍女帝ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」

 

この一撃で全ての決着をつける!!

エクスカリバー!今こそ私に力を貸してくれ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やばい……自分で引くぐらいブランクがある…。

これからも週一で更新するようにして、頑張らないと…!

しかも、決着が先送りになってしまったし…。

今度こそ…今度こそは!

では、次回。

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