神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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これまでの話でも言いましたが、マユは料理が得意です。

それは前世と今世で一人暮らしをしていた影響もありますが、純粋に料理が好きだったりもするんですよね。

さて、これまで色んな連中を『料理』してきたマユは、今回はどんな『料理』をするのでしょうか?




第48話 怒る心に火をつけろ

 いきなり私の家に現れた、見た事の無い堕天使。

一目見ただけで分かる。

こいつ……めっちゃ偉そう。

 

「コ…コカビエル様…!」

「こいつが…!?」

 

レイナーレが狼狽えたように呟く。

 

この野郎が例のコカビエルか…!

 

「ほぅ?まさか堕天使を侍らせているとはな。天下の赤龍女帝様は一味違うな」

 

明らかに皮肉を込めた一言だ。

なんかムカつく。

 

「その通り。俺がコカビエルだ」

「なんでここが分かったの…?」

「ここには認識阻害の結界が張られている筈…!」

「確かにな。この家には俺ですらも易々と欺けるほどに強力な結界は張られている。だが、結界の効果はあくまでも『認識』を『阻害』するのみ。何らかの方法で認識さえ出来てしまえば、結界の意味は無くなる」

「まさか……」

 

誰かに私がこの家にはいる所を見られていた…?

 

「俺ちゃんの仕業で~す!!」

「フリード…!」

 

声がした方を見ると、家の傍にフリードがいて、こっちに手を振っていた。

 

「こいつが貴様の事を密かに後ろから付けていて、この家を発見したのだ」

「う…後ろから?」

「それって……」

「完全にストーカーにゃ……」

「とうとう、お姉ちゃんにもストーカーがつくようになったのね…」

 

こんなキチガイがストーカーって…。

 

「なんか生理的に嫌」

「ちょっと酷くね!?あと、俺様は別にストーカーじゃねぇしッ!?」

「必死に否定するところが怪しいにゃ」

「顔も赤くなってますし」

「ある意味、堕ちるところまで堕ちたわね…」

「そんな目で見んなよ!!」

 

今度からは後ろにもちゃんと気を付けよう。

 

「まさか、このような場所で貴様とまた会えるとはな。今回ばかりは運命と言うものを信じてしまうな」

「また…?」

「そうか。貴様には俺の存在など眼中にすらなかったという事か」

 

え…?私ってばこいつと前にどこかで会った?

マジで分からん…。

 

「数百年前にあった三大勢力の戦争の最終局面。突如として出現した謎の怪物どもに後れを取り、俺は絶体絶命の危機に陥った」

 

私が転生してから初めて戦闘をした時の事か…。

 

「だが、空からいきなり現れた貴様は、我等が手も足も出なかった連中を…まるで雑魚の様に殲滅していった!!」

 

実際に雑魚だったし。

 

「俺はとてつもない屈辱を味わった!!堕天使である俺が敵わなかった存在に、人間である貴様が勝利した事実に!!その後で知った。お前が歴代で最強の実力を持つ赤龍帝であったことを」

 

厄介な奴に知られたもんだ。

 

「あれ以来、お前は歴史の表舞台に現れなかった。だから、貴様を再び戦場に出す手段を思いついた。それが……」

「聖剣(擬き)を盗んだ理由か…!」

「そうだ!サーゼクスの妹がいるこの町で暴れて、その上で教会に保管されている聖剣を盗み出す。更にそこにいるリアス・グレモリーや教会からの使者である聖剣使いを抹殺すれば、より大きな影響を与えられるだろうな!!」

 

この男は……!

 

「貴様は…戦争を望むのか…!」

「当然だ。どいつもこいつも戦争が終わった途端に腑抜けになってしまった。しかも、悪魔共や天使共とは相互不干渉を貫く始末」

「それの何が悪い?」

「ふざけるな!!いくら干渉しないとは言え、ついこの間まで敵対していた連中が傍に居るのだぞ!!戦わない理由があるか!!」

「だが、今の状態では色々なしがらみがあって戦えない。だから、それを正当化する為に……」

「『戦争』と言う状態が必要な訳だ」

 

この男の頭の中は…数百年前から全く変わっていない!

コイツの中ではまだ戦争は終わっていないんだ!

 

「リアスも…仲間達も!誰も殺させない!傷つけさせない!!」

「御立派な事だな。だが、これを見ても同じことが言えるかな?」

 

コカビエルはさっきから腕に抱えていた月明かりに隠れて見えていなかった『何か』を部屋の中に投げつけた。

その『何か』は月明かりに照らされて、姿が見えるようになる。

 

「イ…イリナ…!」

 

それは、ズタボロに傷ついたイリナだった。

彼女の体には聖剣擬きは無かった。

きっと、倒されたと同時に奪われてしまったのだろう。

 

「愚かにも我等の根城まで乗り込んできたのでな。丁重に歓迎をしてやったのだ。二匹ほど逃がしてしまったがな」

 

裕斗とゼノヴィアは無事のようだな…。

けど、無傷って訳じゃないだろう。

 

「再び三大勢力間で戦争を引き起こしてやる。その戦場にて貴様に思い知らせてやる。例えどれだけ強くても、人間如きが堕天使を超えるなど有り得ないとな!!」

 

自分の種族に誇りを持つのはいいが、ここまで行くと一種の狂戦士だな…。

 

「今、我等の手には4本の聖剣がある。正義感の強いお前の事だ。この状況を静観は出来ないだろう?」

 

挑発してるつもりか…!!

 

「俺達はこれより、貴様達が通っている学び舎にて聖剣を融合させる儀式を行う。そこから俺が望んだ戦争が始まる!それを止めたければ、遠慮せずに来るがいい!俺は貴様を待っているぞ!!!」

「バイビ~!!」

 

コカビエルは翼を羽ばたかせて飛んでいった。

それに合わせてフリードも転移していった。

 

私はコカビエルの掌で踊らされている自分に、心底腹が立って、思わず拳を握りしめていた。

 

「マユ……行くのかにゃ?」

「絶対に罠に決まってるわよ!」

「だが……ここで行かないと言う選択は無い…!」

 

アイツは私を指名している。

もしもここで奴の事を無視したら、今度は別の誰かを襲うだろう。

もしかしたら、黒歌やレイナーレかもしれない。

それだけは絶対に嫌だ!

 

「リアスに白音…それにアーシア。一緒に来てくれないか?」

「わ…私もですか?」

「ああ。裕斗とゼノヴィアが逃げ切ったとはいえ、無傷でいる可能性は低い。誰かが現場で二人の怪我を治す必要がある」

「わかりました……」

「リアスは朱乃に連絡を。あまり巻き込みたくは無いが、戦力は一人でも多い方がいい」

「了解よ」

「黒歌とレイナーレはイリナの事を頼む」

「……うん」

「無茶すんじゃないわよ…」

「当然だ」

 

私だって今までで学んでいるさ。

 

「この三人はこのまま寝かせといてやってくれ」

「そうね。この子達を起こすわけにもいかないし」

 

私は三人をそっと抱き上げて、そのまま自分のベッドに寝かせてあげた。

そして、そっと頭を撫でる。

 

「……行ってくる」

 

リアスと白音とアーシアが同時に頷く。

 

私達は急いで準備をして、駒王学園へと向かった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 駒王学園に行く途中で、リアスの携帯にソーナから連絡が入った。

どうやら彼女達もコカビエルの出現に気が付いたようで、公園に寄るように言われた。

 

公園に立ち寄ると、そこにはソーナを始めとした生徒会メンバーであるシトリー眷属が勢揃いしていた。

その傍には合流した朱乃の姿もあった。

 

「……と言う訳なんだ」

「成る程…。戦争を起こす為に聖剣を……」

 

聡明なソーナはすぐに事情を理解してくれた。

 

「今は学園全体を大きな結界で覆いつくしています。これによって、余程の事が無い限りは外部に影響は出ないです」

「感謝する」

「いえ……」

 

ソーナが赤くなるが、今はツッコんでいる暇はない為、無視。

 

「けど、これはあくまで被害を最小限にするための結界で、もしも彼が本気になれば易々と結界は破壊されるでしょう。もしもそうなった場合、学園はおろか、この駒王町事態が崩壊するかもしれません」

「この町が……!」

 

洒落になってないな…!

本気であいつを止めないと!

 

「私達はそれぞれに配置について、可能な限り被害を最小限に留める為に全力で結界を張り続けます」

「それは有難いが、無茶だけはしないでくれ」

「それはこちらのセリフです」

 

言われてしまった。

 

「朱乃。お兄様には……」

「もう連絡していますわ。一時間後には到着すると」

「一時間か……」

 

サーゼクスさんが来れば一気に勝率は上がるが、戦場においての一時間とは無限にも等しい時間だ。

それまで頑張るか、それとも……

 

「奴の狙いは私だ。それを上手くつけば勝機はあるかもしれない。それに……」

 

私は自分の左腕を見た。

 

「いざと言う時は、また『力』を貸して貰う」

『ふっ…当然だ。相棒』

 

きっと、誰かの禁手を使わないと勝利は難しいかもしれない。

 

『後、アラガミにも注意しておけ』

「うん」

 

前回といい前々回といい、事態が終局に向かおうとした瞬間にアラガミが介入してきた。

今回もまた無いとは限らない。

警戒はしておいて損は無い。

 

私は自分の中の不安を払拭するように皆を顔を見渡した。

 

「皆……いくぞ!!!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 学園の正門から入った私達が最初に見たのは、校庭の中心にて眩しく輝きながら浮いている四本の聖剣擬きだった。

四本の剣を中心にして校庭全体に魔法陣が描かれていて、その中央にはバルパーが現在進行形で儀式をしていた。

 

「あれは……」

「これより四本の剣を一本に統合するのだよ。赤龍女帝」

 

成る程……これが例の儀式とやらか。

 

「ククク……待っていたぞ!赤龍女帝!その女神の様に美しい顔を屈辱に染められると思うと、今からでも昂ってしまいそうだ!」

「お前は……!」

 

この戦闘狂が…!

腕組みしながら校庭の上空で偉そうにふんぞり返っているコカビエルを見ると、嫌でもイラっとしてしまう。

 

「おいバルパーよ。あとどれぐらいで儀式は完了する?」

「もう少しだ。あと5分もかからんだろうさ」

 

五分って…!

タイムリミット短すぎ!!

 

『…マスター。ここは俺にやらせてはくれないか?』

「アーチャー?」

『例えどのような形でも、『聖剣』と言う存在を汚されて黙っていられるほど、俺は呑気な性格をしているつもりはない…!』

 

そうか…聖剣はエミヤとアーサー王の絆の証…。

幾ら偽物とは言え、聖剣をこんな形で戦争に利用されたとあっては、彼も立たないわけにはいかないか…。

 

「分かった。共に戦おう!エミヤ!」

『ああ!』

 

私は赤龍帝の籠手を出して、眼前に構える。

 

【Archer!】

 

音声と共に、私はアーチャーモードに入った。

 

「体が変化しただと…?面白い!」

 

こちらの変化を見たコカビエルは、その手に大きな光の矢を作り出した。

 

「ならば…まずは小手調べだ!!」

 

奴はそれをこちらに向かって投擲してきた!

 

「それなら!」

 

私は咄嗟に眼前に手を翳して、そこに魔力を込めて投影魔術を使った。

 

その瞬間、槍が激突して煙を上げる。

 

「「お姉ちゃん!!」」

「「マユさん!!」」

 

四人が必死に叫ぶ声が聞こえるが、そっちを向いている余裕はない。

何故なら……

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)…!!」

 

投影魔術でガードしていたから。

 

「あの一瞬で防御結界を出しただと?」

「私を舐めるな」

「ククク……ハハハハハハハハ!!そうでなくてはな!」

 

キモイ声で笑ってんじゃねぇよ。

マジでウザい。

 

にしても……

 

「アイアスの花びらが一枚も砕けていないとはな。存外、大したことが無いな」

「なんだと…?」

「かの光の御子と言われた英雄『クー・フーリン』のゲイボルグは、アイアスの盾を崩壊寸前まで追い込んで見せたぞ?」

 

エミヤの記憶で見せて貰ったが、あれはマジで凄かった。

英雄同士のタイマンって凄い迫力だった。

 

「あの一撃を受けても揺らぎもせんとはな。流石は伝説の戦士と言った所か」

 

バルパーが感心したように会話に入ってくる。

ジジイは引っ込んでろ!

 

「この俺を愚弄するか…!それなら……」

 

コカビエルが指をパチンッと鳴らす。

すると、宵闇に紛れて獣臭い匂いが漂ってきて、同時に地響きのような音も聞こえる。

それは段々と近づいてきて、月明かりによってその姿が明らかになった。

 

「これは……!」

 

凶暴な三つの顔に鋭い爪と牙。

そして、巨大な体躯。

アラガミを見慣れている私からすれば大した大きさには感じないが、それでも大きい方だ。

 

「ケルベロス…!貴方はなんてモノを人間界に持ち込んだの…!」

 

リアスが悔しそうに呟く。

あれがギリシャ神話に出てくる地獄の番犬『ケルベロス』か!

 

「これを倒してみせろ!それぐらい出来なくては、俺と戦う資格すら無いぞ!」

 

……いくらなんでも、私を舐めすぎでしょ。

これぐらい、アラガミ共に比べれば可愛いもんだ。

 

「……なんか少し腹が立った。アーチャー、『アレ』を使って一撃で仕留めるぞ」

『ふっ…。俺も丁度同じ事を言おうと思っていたところだ』

 

息ピッタリだ。

ならば…!

 

「皆、少しだけ離れていてくれ」

「な…何をする気!?」

「お姉ちゃん一人では危険ですわ!」

「皆で力を合わせれば……」

「大丈夫だ」

 

皆を安心させるために、敢えて笑顔で応える。

それを見た皆は、渋々と言った感じで距離を取ってくれた。

 

「…ありがとう」

 

私は脳内でイメージを固める。

 

「……トレース…オン!!」

 

魔力が集積し、私の右手には黒い弓が、左手には一本のねじれた剣があった。

 

その間もケルベロスは着実に近づいてくる。

 

「おいおい、そんな弓と剣で何をする気だ?」

「こうするんだよ!!」

 

私は思いっきりジャンプして、ケルベロスを下に捕らえた。

オラクル細胞の恩恵で、コカビエルのいる場所までジャンプ出来た。

 

「なっ!?」

 

それに驚いているコカビエルだけど、ここは無視。

 

私は空中で弓に剣をつがえる。

それを全力で引き絞る。

弓が私の力に悲鳴を上げているが、気にせずに力と魔力を込める。

そしてそれを……

 

「我が骨子はねじれ狂う……」

 

全力で放つ!!!

 

偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!!」

 

カラドボルグは真っ直ぐにケルベロスへと向かって行き、ヤツに直撃した。

ぶち当たった瞬間、凄まじいまでの爆発が起きて煙が巻きおこる。

そして、風が吹いて煙が無くなると、そこには……

 

「ば…バカな…!?」

 

ケルベロスの姿は無く、その代わりに大きなクレーターが出来ていた。

 

「あのケルベロスを一撃で……しかも、跡形も無く消滅させただと…!?」

 

驚いているコカビエルを横目に、私は地面に着地した。

 

「す…凄い…!」

「お姉ちゃんの強さには限界は無いのかしら…!」

 

少しだけスッキリした感じ。

なんかかんだ言って、やっぱりエミヤも立派な英雄だ。

じゃなきゃ、こんな攻撃出来ないよ。

 

「マユさん!後ろです!!」

 

白音が私に向かって叫ぶ。

ふふん。もう一匹が隠れていた事ぐらい御見通しなのだよ。

 

「大丈夫だ。何故なら……」

 

私に向かって来たもう一匹のケルベロスは、Xの形に切り裂かれた。

切り裂かれたケルベロスは塵となって消え去った。

 

「この二人がいるからな」

 

私の後ろにいたのは、いつの間にか来ていた裕斗とゼノヴィアだった。

二人の手にはそれぞれに剣が握られている。

 

「お待たせしました、先輩」

「遅れて済まない。だが、その分はちゃんと働かせて貰おう」

「ああ。頼む」

 

ここで二人の増援。

実に心強い。

 

「お姉ちゃん!もう一匹いますわ!」

 

またか…!

 

面倒くさくなった私は、向かってくるケルベロスに向かって全力全開の殺気を放った。

 

「消えろ……!!!!!」

 

すると、ケルベロスは急に子犬のような声を上げて、泡を吹いて倒れてしまった。

 

「地獄の番犬と言われたケルベロスを殺気だけで圧倒しただと…!?」

 

アラガミと戦っていれば、嫌でもこういった技術は磨かれるつっーの。

ほんと、私ってばとことんまで戦う事に特化してるなぁ…。

 

全部のケルベロスを倒して、次はコカビエルかと上を向くと、いきなりバルパーの声が校庭に響いた。

 

「……完成した」

 

ヤバッ!ケルベロスを倒している間に儀式が終わってしまったか!?

 

魔法陣の上に鎮座している四本の剣が眩しく光り出すと、一つに融合していく。

光が収束した後に残ったのは、一本に融合した剣だけだった。

 

「エクスカリバーが一本に融合し、その影響で下にある術式も無事に完成した。これで後少しでこの町は崩壊するだろう。タイムリミットは約20分と言ったところか。それまでにこの俺を倒さなければ、全てが無に帰すぞ?」

 

こうして、私達とコカビエルとの戦いは一気に佳境に向かって加速するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




取り敢えずのプチ無双。

次は裕斗とゼノヴィアにちょっと頑張って貰って、

マユには今までの鬱憤を晴らすかのような大活躍をして貰いましょう。

そして、まさかの新キャラが……?

では、次回。

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