神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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体調最悪ですが、ここで頑張らないと後悔するような気がするので、なんとか気合い入れて書きます。

あぁ~…マジで辛い。



第45話 教会からの使者

 球技大会の次の日。

結局、あれから裕斗を発見する事は出来なかった。

こちらが想像していた以上に彼が思い詰めていた為、私達全員が心配していた。

 

幸いなのは、今日も休むことなく学校に来てくれた事だ。

あれで休んでしまったら、こっちの方が落ち込みそうだ。

 

 

時間はあっという間に過ぎて、今は放課後。

 

 

私と白音は一緒に、いつものように部室に向かっていた。

他のメンバーは既に部室に行っている。

 

その途中で校舎の裏側にある裏口付近を通ると、その近くに見た事のあるような人影を見つけた。

 

「あれは……?」

「どうしました?」

 

白音も私に釣られるように、一緒の方を見る。

そこには、白いマントを纏った二人組がいた。

性別は女。

 

『おやおや…随分と懐かしいじゃないか』

 

あ、姐さんも覚えてたんだ。

 

「なんですか?あの人達……」

「行ってみよう」

 

一緒に二人がいる場所に向かってみる。

すると、二人共がこちらに気が付いた。

 

「何をしてるんだ?」

「「え?」」

 

二人して変な声を上げた。

 

「あ…貴女様は!?」

「なんて言う偶然…」

 

それはこっちのセリフ。

 

「久し振りだな……と言いたいが、なんでここに?」

「ここで詳しくは話せないが、今回は任務で日本に来ている」

「同じくよ」

 

任務…ね。

物騒な匂いがプンプンするな。

 

「あの…いい加減に教えてくれませんか?」

「あ…そうだったな」

 

私が二人の事を紹介しようとすると、向こうから進んで自己紹介してきた。

 

「私はゼノヴィア。よろしく」

「紫藤イリナよ。初めまして」

「塔城白音です。マユさんと一緒に暮らしてます」

 

今のところは大丈夫そうだな。

うんうん。やっぱり、仲良きことは美しきかな。

 

「お二人とはどこで知り合ったんですか?」

「一年前にアラガミの討伐をした時に…な」

「あの時は本当に助かりました」

「貴女のお陰でこうしていられる。どれだけ感謝してもしきれない」

 

まだあの時の事を引きずってるのか…。

 

「あの…ここにリアス・グレモリーと言う悪魔が在籍してませんか?」

「リアス…?」

 

なんでリアスの名前が出てくる?

 

「なんで彼女の事を…?」

「詳しくは話せないが、大事な話があるんだ」

「知ってるなら、案内してくれませんか?別に荒事をしに来たわけじゃありませんから」

「あ…ああ…」

 

この二人なら大丈夫…か?

 

「わかった。丁度私達も行くところだったからな。案内しよう」

「ありがとうございます!」

「感謝する」

 

てなわけで、二人を案内する事になりました。

 

また事件じゃあるまいな…?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 旧校舎内に入ると、いきなり私の携帯に着信が来た。

 

「ん?」

 

見てみると、アザゼルさんからだった。

 

「悪いが白音。二人を先に部室に案内してくれないか?」

「わかりました」

 

頷くと、白音は二人を連れて二階に上がっていった。

それを見届けてから、私は電話に出た。

 

「もしもし?」

『あ~…お嬢ちゃんか?』

「お久し振りです。どうしました?」

『あんまり言いにくいんだがな……』

 

ん?このパターンはもしかして…

 

『ウチのバカがまたやらかしちまったようでな』

「やらかしたって…」

 

また事件か…?

 

『…単刀直入に言う。……教会の施設から、聖剣エクスカリバーが盗まれた』

「………はい?」

 

…私の聞き間違いか?

今、エクスカリバーが盗まれたって聞こえたんだけど?

 

『更に言うと、これをやったのがウチの幹部なんだよ』

「幹部って…」

 

こらまたどえらい方が…。

 

『名前はコカビエル。お前さんも名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃないか?』

「まぁ…一応…」

 

確か、聖書にも名前が載っている堕天使じゃなかったか?

 

『犯人が犯人な上に、やった事がかなりの大ごとだ。流石の俺も今回ばかりは動かざる負えなくてな』

「でしょうね…」

 

自分の組織の幹部が犯罪をしたんだし、トップの人…じゃない、堕天使としては自ら動かなきゃ不味いでしょ。

 

「けど、何が目的でそんな事を…」

『今の平和な状態が気に入らなくてな。他の二種族に戦争を吹っ掛けようとしてやがるのよ』

「戦争…」

 

最悪な事を考える奴だな…。

 

『その手始めに、サーゼクスの妹をぶっ殺そうと考えてるらしい』

「と言う事は…」

『ああ。既に駒王町に潜伏している』

 

いつの間に……!

 

『しかも、アイツはお前さんの事も狙っているようだぞ』

「私も?」

『良くも悪くも、お嬢ちゃんは色んな意味で有名人だ。そんな奴を殺せば、アイツとしても箔がつくと考えてるんだろうさ』

「迷惑な話だ…」

『全くだぜ』

 

そんな理由で殺されてたまるかって―の。

全力で返り討ちにしてやるよ!

 

『ま、今回はこっちからも戦力を出すことにしてるから、そこら辺は安心してくれ』

「戦力?」

『…ある意味、お前さんとは切っても切れない関係の奴だよ』

 

切っても切れない……誰だ?

マジで分からん。

 

『そんな訳だから、注意は怠るなよ!じゃあな!』

「あ……」

 

切れてしまった。

 

「……行くか」

 

取り敢えず部室に行くことにしよう。

 

もしかしたら、普段はバチカンにいる筈の二人が日本に来たのも、今回の事件が関係しているかもしれないしな。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 私が部室に入ると、なにやら緊迫した空気が流れていた。

 

立ち上がっている裕斗が、憎しみを込めた目でゼノヴィアとイリナの事を睨み付けている。

 

「あ…お姉ちゃん」

「これは一体どうしたんだ?」

「実は……」

 

事の顛末はこうだ。

 

自分達の任務の説明をしている時に、彼女達が自分達が所持している聖剣を見せた時、裕斗がいきなり立ち上がり、まるで一触即発のような空気になった…との事だ。

 

「はぁ……」

 

頭が痛い…。

 

「裕斗。取り敢えず一旦落ち着いてくれ。まずは二人の話を聞こう」

「……先輩がそう仰るなら…」

 

渋々と言った感じで裕斗は座ってくれた。

 

「済まなかった。彼にも事情があるんだ」

「いや…私達も軽率だったよ」

「そうね…」

 

ふぅ…分かってくれたか。

これで決闘騒ぎとかになったらどうしようかと思った。

 

私は空いた席に座って、ようやく落ち着いた。

 

「そういえば、聖剣を持っているとはどういうことだ?確か聖剣はコカビエルに盗まれた筈じゃないのか?」

「な…なんで貴女がその事を!?」

「お姉ちゃ…彼女には独自の情報網があるのよ」

「そ…そうか。成る程な」

「伝説の赤龍女帝ともなると、情報収集すらも凄い方法を取るのね…」

 

実際にはアザゼルさんから直接聞いただけだけどね。

ある意味、カンニング。

 

「聖剣エクスカリバーは嘗ての大戦にて折れてしまい、その欠片で七本の剣が作られたんだ」

 

七本の剣…ね。

そのうちの何本かが盗まれたって訳か。

 

「そしてこれが、そのうちの一本。『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』だ」

 

ゼノヴィアが布に巻かれた剣を取り出して、私に見せる。

見た感じは、派手な装飾が施された大剣って感じ。

 

「私のはこれよ。『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』」

 

イリナの懐から細い紐のようなものが出てきて、あっという間に一本の細い剣になった。

 

「ほぅ……」

 

どっちとも、全然『聖剣』って感じがしない。

見た目だけは、何処にでもある普通の剣だ。

 

「彼女が来たため、もう一回説明するが、我々の目的は唯一つ。コカビエルから聖剣を奪取するまで、この町に住む悪魔達の介入が無い事。これだけだ」

「それさえ厳守してくれれば、それ以上は何も言わないわ」

「これもさっき言ったけど…それは私達の事を多少なりとも疑っている…ってことかしら?」

「かもしれないな。我々はそこまで警戒していないが」

 

おろ?

てっきり悪魔の事を敵視しまくってると思ってた。

 

「意外ね。てっきり私は…」

「出合頭に斬りかかるとでも思ったか?そんな野蛮な真似はしないさ」

「これも、赤龍女帝様のお陰ね」

「私?」

「ええ。貴女との出会いが我々の凝り固まった価値観を変えてくれた」

「感謝します」

「あ…ああ」

 

特に何にもした記憶が無いのに、なんか感謝された…。

 

『ククク……。そのような贋作にすらなれていない代物が『聖剣』…か。世も末だな』

「ギ…ギルガメッシュ?」

 

いきなり籠手が出現し、ギルが喋り始めた。

 

「この声は……この籠手から?」

「それよりも…どういう事?」

『そのままの意味だ。我の記憶が正しければ、有史以来、聖剣が砕けるなどと言った出来事は一度も観測されていない』

「ならば、今この場にある剣はどう説明する気だ?」

『大方、嘗て聖剣を鍔ぜりあった名も無き剣にほんのわずかに付着していた聖剣のカスから発せられた聖なるオーラとやらを感じて、どこぞの馬鹿が聖剣と勘違いしたのだろうよ』

 

そんなことで勘違いするかな…?

でも、確かに聖剣がそう簡単に砕けるとは思えないし…。

 

『大体、たかが戦争に参加した程度で、かの聖剣エクスカリバーが砕け散ると、本当に思っているのか?』

「それは……」

『その考え自体が、聖剣に対する侮辱と知れ』

 

ごもっとも。

だからこその『聖剣』なんだしね。

 

『エクスカリバーとは、全ての人間の『こうあって欲しい』と言う願いが星の内部で結晶、精製されたことによって顕現したと言われている神造兵装であり、全ての聖剣の頂点に君臨し続ける究極の剣だ。一説では神の力を持ってしても破壊が不可能と言われている代物が、戦争で戦った程度で破壊される訳が無かろう。貴様もそうは思わんか?贋作者(フェイカー)

 

フェイカーって…エミヤの事?

 

「なんでそこでアーチャーの事が出てくる?」

『そうか…貴様等は知らなかったな。こ奴は嘗て、あのアーサー王と恋仲にあったのだ』

 

………ふぇ?

 

「「「「「「「「えぇ~~~~~~~~~!?」」」」」」」」

 

ど…どどどどどどどどどーゆー事!?

 

『一応、言っておくが、アーサー王は史実とは違い、紛れもない女性だ』

「女性!?」

「そう言えば、ネロさんやドレイクさんも史実では男性として伝えられていましたけど、実際には女性でした…」

『それと同じようなものだ』

 

歴史の隠された真実ってヤツか…。

多分役には立たないけど、勉強になるなぁ~。

 

『この男は、彼女の傍で最も聖剣を見てきた人間だ。エクスカリバーの強大さは、我以上に理解している』

『まぁ…な』

 

ん?照れてる?

 

『不本意ではあるが、今回は私も英雄王と同意見だ。あの剣が折れるなんて想像も出来ないし、それ以前に君達の剣からはエクスカリバー特有の圧倒的な聖なるオーラが感じられない』

 

詳しいな。

流石は錬鉄の英雄。

 

『仮に本当に砕けたとしても、かの剣の力がそう簡単に消えるとは思わない。もしもそれが本当にエクスカリバーの片割れならば、その場にある時点で悪魔は完全消滅していてもおかしくない』

 

それ程までに凄いのか…。

 

『木場祐斗。別に復讐そのものを否定する気は無いが、聖剣を恨むのはお門違いだ。君が本当に憎悪し、恨みをぶつけるべき相手は、君を始めとした者達を苦しめた連中じゃないか?』

「僕は……」

 

エミヤの言葉が響いたのか、大人しくなった裕斗。

これで早まった真似をしなくなればいいけど…。

 

「俄かには信じられないが…歴代の赤龍帝の言葉なら、もしかして…」

「ちょ…ゼノヴィア!?」

 

まぁ…戸惑うよな。

無理も無いよ。

 

「ところで、今回は君達二人しか来てないのか?」

「そうだが…それが何か?」

「いや…聖書に名を刻まれているという事は、コカビエルはかなり強大な相手だろう。それなのにたった二人と言うのが気になってな…」

 

幾らなんでも無謀すぎる。

ならば、考えられる可能性は二つ。

 

一つ目は、対コカビエル戦に当たって、彼女達に絶対的な切り札がある。

 

もう一つは、この二人は最初から何も知らされていないスケープゴートで、コカビエルの実力を測ると同時に、教会側が堕天使勢力と戦う大義名分を得る事。

 

私としては前者を信じたいが…状況的に考えても……。

 

(後者だよな…やっぱり)

 

どうやら、今回は今まで以上に警戒する必要があるようだ。

家に帰ったら皆にも伝えよう。

 

「心配してくれるのは有難いが、大丈夫だ。私達だって無知じゃない。ちゃんと切り札ぐらいは用意してきてるさ」

「そうか……」

 

その切り札が通用すればいいけど……。

 

「ところで、そこに座っているのは『元聖女』のアーシア・アルジェントか?」

「…!は…はい…」

 

あ、やっぱりアーシアの事も知ってたか。

すっかり脅えちゃった。

 

「やはりそうか…」

「貴女が噂に聞いた…。どうして日本にいるの?」

「それは……」

 

一言じゃ言えない深~い訳があるからね。

ここはフォローしときますか。

 

「彼女はこの町にある教会に派遣されてきたんだが、その教会が既に朽ち果てていてね。どうやら情報に行き違いがあったらしい」

「なるほど…。自分で言うのもあれだが、そう言った事は結構いい加減だからな」

「気持ちわかるわ。私達もそれで今までどれだけ苦労したか…」

「もう野宿はしたくない…」

 

…この二人も中々の苦労人みたいだな。

将来がちょっと心配だ。

 

「それで、今は私の家で一緒に暮らしている」

「そうか。赤龍女帝の庇護下にあるのならば、何も言うまい」

「そうね。こっちに来る時も『赤龍女帝の家族や仲間には絶対に手出しはするな』って何回も言われたし」

 

そう言ってくれるのは純粋に嬉しいが、教会内では私がどんな風に言われているのか、マジで気になってきた。

軽くはアーシアに聞いたけど、詳細を聞かなきゃ落ち着かない。

 

「だから、そう脅えないでくれ。確かに君は『魔女』と呼ばれたかもしれないが、赤龍女帝の仲間になったのなら、それだけで『魔女』の汚名を払拭するには充分だ」

 

私の影響力ってどんだけ~。

 

「だから、気にしない方がいいわよ。言いたい連中には好きなだけ言わせておけばいいのよ」

「は…はい…」

 

想像以上に物分かりが良い事に、私の方が驚きだよ…。

ちょっと、教会の連中に対する認識が変わるかも…。

 

「だが、それと同じぐらいに驚いたのが…」

「天下の赤龍女帝が悪魔と同じ学校に通っていた事ね」

 

そんなに驚く事か?

 

「我々は今更気にしないが、他の連中が見たら卒倒するだろうな」

「司祭様とか、驚きの余り気絶するかも」

 

それは大げさすぎ。

 

「種族なんて関係ない。ここにいるのは私にとって大事な友であり仲間達だ」

「お姉ちゃん…」

 

命に色なんて無いんだよ?

大事なのは、種族云々じゃなくて、心を通わせることじゃないのかな?

 

「ふふ……実に貴女らしい言葉だ」

 

私らしい…ねぇ。

 

「ふむ…思ったよりも話し込んでしまったな。そろそろ失礼しよう」

 

二人は踵を返すと、真っ直ぐにドアに向かって行った。

 

「ああ…そうだ。貴女に伝えるべき事があるんだった」

「なんだ?」

「上の情報では……白い龍が動き出したようだ」

「『……!?』」

 

白い龍って…まさか…!

 

(アザゼルさんもそれっぽい事を言ってたけど…)

 

とうとう会うのか……私のライバルとも言うべき…白龍皇に!

 

「では、失礼した」

 

最後にお辞儀をしてから、二人は部室を後にした。

 

「なんか…また厄介な事になってきたわね…」

「一難去ってまた一難…ですわね」

 

溜息交じりに皆で話していると、徐に裕斗が立ち上がった。

 

「裕斗?」

「いきなりですみません。今日はここで帰らせて貰います」

『お前…まさか…』

「大丈夫です。流石に早まった真似はしませんよ。少し…一人で考えたいんです」

「そう……」

「では、失礼します」

 

裕斗も静かに去って行った。

色々と聞いた後だからな…正直言って、嫌な予感しかしない。

 

「大丈夫かしら…」

「心配ですね…」

 

やっと裕斗とも、また前のように話せると思ったんだけどな…。

中々に上手くいかないものだ。

 

その日はもう少しだけ話してから解散になった。

 

聖書に刻まれし堕天使…コカビエル。

十中八九、戦う事になるんだろうなぁ…。

 

今までの相手と同じに考えていたら、ヤバいだろうな…。

 

いざとなったら、また誰かの禁手を使うかもしれない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もうちょっと辛辣にするつもりが、なんだか穏やかな性格になっている教会コンビ。

嫌いじゃないですけどね。

さぁ…コカビエルはどうやって料理しようかな?

では、次回。

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