シリアスに突入するまでは、色々とネタを盛り込もうと思っています。
恐らく、前半と後半では空気が全く違ってくるんじゃないでしょうか?
第43話 騎士の過去
レーティングゲームが終わってから暫く経った。
梅雨の季節はすっかり過ぎ、気温は暑くなってきて、夏がすぐ傍まで来ていることを感じさせていた。
制服も衣替えがされており、私達は夏服になっている。
そして、今日も今日とて私達はいつものように放課後に部室で過ごしていた。
「お姉ちゃん。何をしているの?」
「クロスワードパズル。頭の体操には丁度いい」
私の最近のマイブーム。
これが結構面白いのだ。
家では皆で答えを考えるのが最近の光景になっている。
「そう言えば、そろそろ球技大会の時期ね」
「またか…」
「今年はなんに競技が選ばれるんでしょうね?」
「「選ばれる?」」
朱乃の言葉に疑問に感じたのか、白音とアーシアが首を傾げた。
「ああ…。二人は今年からだから、知らないのも当然だったわね」
リアスが手に持った紅茶を置いてから、二人に説明してくれた。
「この駒王学園は『生徒の自主性を重んじる自由さ』が校風で、こういったイベントも基本的に学校側は干渉せずに、生徒会に全てを委ねて……」
「生徒会は球技を抽選で決めるのですわ」
「な…なんなんですか?その無闇にランダム性が高い球技大会は…」
言うと思った。
私達も一年生の時に全く同じツッコミをしたもんだ。
因みに裕斗も。
「で…でも、選ばれるのは普通の球技なんですよね?」
「ん~……」
「去年は確か…野球とバスケと……」
「蹴鞠でしたね」
「「…………」」
裕斗の一言で、白音とアーシアが沈黙した。
「ウチの生徒会って相当に馬鹿なんじゃないですか?」
「少なくとも、ソーナが生徒会長になるまではバカだったわね」
「「うんうん」」
私と朱乃が同時に頷く。
本当にソーナが生徒会長になってくれて良かったよ。
今年はマトモな競技が選ばれそうだ。
「ん?これは…」
ちょっとこれは解らないな…。
「リアス……ちょっといいか?」
「どうしたの?」
「この『シェイクスピアの真夏の夜の夢に登場する妖精『オ○○ン』』とは、『オッサン』でいいのか?」
「なんでそうなるの!?」
「普通に考えても『オッサン』はあり得ませんわ!!」
リアスと朱乃のダブルツッコミが来た。
「ここの答えは『オベロン』ですよ。先輩」
「成る程…オベロンか」
裕斗は物知りだな。
次は……
「これは楽勝だな。アーサー王が所持していた有名な聖剣。ズバリ、エクスカリバーだ」
「……!!」
調子が出てきたぞ。
え~と…次の問題は……。
「ん?祐斗…どうした?」
「い…いえ……」
「なんか…顔色が悪いが…」
「だ…大丈夫です。ちょっと用事を思い出したので、お先に失礼しますね」
そう言うと、裕斗はそそくさと部室を後にした。
「どうしたんでしょうか?」
「やっちゃったわね…」
「え?」
なんか私の方を見てるけど…もしかして私のせい?
「これに関してはお姉ちゃんも決して無関係じゃないしね…。話した方がいいわね」
「何の事だ?」
急に真剣な顔になったリアスは、ゆっくりと話し出した。
嘗て、『聖剣計画』と呼ばれる、人工的に聖剣の使い手を創造する計画があった。
実は裕斗自身もその計画の実験体の一人で、毎日のように非人道的な実験の毎日を過ごしていた。
そんなある日、彼を始めとした実験体の子供達は『不適応』と言う理由だけで全員が毒ガスで処分されそうになり、他の仲間達の命懸けの助けで彼一人だけが命からがら脱出に成功。
瀕死になりながら必死に逃亡をしていたところに……
「私と出会った…と言う事か」
「そうなるわ。私もお兄様の調査結果を聞いただけだから、それ以上の事は解らないけど…」
「いや…充分だよ」
まさか…『マーナガルム計画』と同じような事をしている腐れ外道な連中が他にもいたとはね。
マジで反吐が出る…!
「それで、エクスカリバーに過剰に反応したんですね」
「多分ね…」
いくら知らなかったとはいえ、なんて無神経な事を言ってしまったんだ…。
「はぁ……」
明日にでもちゃんと謝らないとな…。
「お姉ちゃんは何も悪くは無いわ」
「その通りです。これに関しては誰も悪くないです」
「リアス…アーシア…」
こういった言葉があるだけで、こっちも気が楽になるよ。
なんだか空気が悪くなったので、今日はこれで解散した。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
帰り際、私達は掲示板の近くを通りがかった。
「あら?もう球技大会の競技の候補が発表されてますわ」
「ソーナは仕事が早いわね」
皆でソーナの頑張りに感心しながら掲示板を見る。
【今年の球技大会の球技の候補】
野球
サッカー
ドッジボール
バレーボール
バスケットボール
テニス
フットサル
ラクロス
ホルヌッセン
アスフィップルーパー
インディアカ
ペサパッロ
セパックアピ
etc.…
「「「後半の競技がマイナー過ぎる!!」」」
「やっぱりうちの生徒会って…バカばっか」
「セ…セパックアピ?ホルヌッセン?」
ソーナが付いていながら、どうしてこうなる…?
もしや、彼女も先代の生徒会に毒されたんじゃ…。
「で…でも、基本的にメジャー競技が2でマイナー競技が1って所じゃないかしら?」
「そ…そうですわね。あのソーナ様が生徒会長をしてるんですものね」
「確かにな。まさか、100%抽選で…なんてことは無いだろう」
しかし、この言葉がフラグになっていたとは、誰も予想出来ていなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
数日後の昼休み。
食堂に行こうとした私達は、昨日と同じように掲示板の前を通る。
すると、早くも抽選結果が出ていた。
【抽選結果】
セパタクロー
ペタンク
チュックボール
以下の三競技とする。
生徒会
「「「微塵も容赦が無い!?」」」
な…なんだこれは!?
一体何でこうなった!?
「セパタクローは兎に角として、ペタンクにチュックボール!?何よそれ!?」
「なんで三つともマイナー競技にしたんでしょうね…」
「こんなの誰が知ってるって言うんだ…」
セパタクローぐらいなら何とかわかるが…。
他の2競技は聞いたことが無い…。
「アーシアさんはペタンクを選ぶといいですわ」
「「「ここに知ってる人がいた!?」」」
なんで朱乃が知ってるんだ!?
どこで知ったって言うんだ!?
「ペタンクとは、狙った場所に球を落としていく投擲競技ですわ。あまり運動が得意じゃないアーシアさんでも充分に上位を狙えますわ」
「確かに…『ペタンク』って平和な響きはアーシアさんのイメージにピッタリですしね…」
それには同感だな。
どんな競技かは知らないけど。
って…なんで朱乃はさっきからジ~っと白音の胸を見ている?
「『ペタンク』と言う響きなら、白音ちゃんも中々に合致しているような気が…」
「どこ見て話してるんですか」
で…出た…朱乃のS属性!
「貴女一人で理解してないで、私達にも教えて頂戴」
「流石にセパタクローは知ってるがな」
「でも、他の二つは全然知りません。わかりやすく教えてください」
「『わかりやすく』と言うのなら……」
あ、嫌な予感。
「と―――――――――っても楽し――――――――――い競技ですわ♡」
「教える気ゼロじゃないのよ~!!」
「おほほほほほ…」
完全にからかってるなぁ…。
ブレーキ役の裕斗がいないとどこまでも暴走するな…。
因みに、今日は裕斗は一緒じゃない。
この間の事を謝罪しようと思ったのだが、どうにもタイミングが悪いらしく、中々会えないでいる。
同じクラスのアーシアの話だと、授業中や休み時間でもボーっとしていることが多いらしく、放課後もすぐに帰ってしまうとの事。
確かに最近は部活にも顔を出していない。
もしかしたら、私の一言が想像以上に彼の心を傷つけてしまったのだろうか?
だとしたら私は……。
「ところで、白音ちゃんはどんな競技がしたいんですの?」
「私はやっぱり、思いっきり体を動かせる競技がいいですね」
「体を動かせる……」
あれは…碌な事を考えてない顔だ。
「なら、チュックボールがと――――――――――――――――っても楽しいですわよ~?」
((あ!あれは何か騙している時の顔だ!))
「分かりました。やってみます」
(騙されちゃったし…)
朱乃との付き合いも長いからな。
これぐらいはすぐに分かる。
「それじゃあ、私とお姉ちゃんと朱乃はセパタクローにエントリーして、アーシアはペタンク、白音はチュックボールね」
「裕斗先輩はどうします?」
「後で連絡しておきましょう」
「それしかないな」
電話に出てくれれば…だけどな。
結局、その日の放課後も裕斗は姿を見せなかった。
私達はそれぞれに決めた競技に出場申請しておいた。
セパタクローか…。
ルールとかは知ってるけど、やるのは初めてだな…。
ちゃんと出来るといいけど…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
その日の帰り道。
リアスとアーシア、白音と一緒に歩いていると、私の携帯に着信が来た。
この状況で私に掛けてくるのは大体二人。
「……もしもし?」
『マユか!?』
「ライザー…」
またこいつか…。
レイヴェルちゃんのお陰で頻度は減ったが、それでも毎日のように掛けてくるのは勘弁してほしい。
『聞いたぞ。今度、球技大会があるらしいな?』
「どこでそれを…」
『ふははは!愛の力だ!』
「はいはい…」
絶対に誰かに調べて貰ったでしょ…。
金持ちとしての力をフルに使いやがって…。
『見に行ければそうしたいんだがな…』
運動会や学園祭とは違い、球技大会は来客をしてないからな。
ま、そこまで大々的にしなくてもいいとは思うけど。
『だから、せめて俺の応援を送ろうと思う!頑張れよマユ!お前ならば必ず優勝出来る筈だ!何故なら、俺の嫁だからな!』
「勝手に嫁認定するな」
まだ付き合ってもいないだろうが。
『ははは!これが巷で話題の『ツンデレ』と言う奴か!』
「違う」
どこまで前向きなんだ…。
こいつってこんなキャラだったっけ?
『おっと、もうこんな時間か。ではな!』
通話が切れた。
勝手に掛けて来て、勝手に切りやがった。
「…………」
なんか…途端に球技大会が不安になった。
アイツならこっそりと来そうで怖い。
「またライザー?」
「ああ…。私の携帯の着信履歴はアイツで一杯だ…」
「完全にゾッコンになってますね」
「なられる方は大変だがな…」
正直言って、溜息しか出ない。
「マユさん…」
アーシアだけだよ…。
私を真剣に心配してくれるのは…。
「今のライザーは別の意味で『不死鳥』になってるわね」
「リアス先輩。座布団一枚です」
そこ、笑点をしない。
あぁ~…私の学園生活は悩みがいっぱいだ…。
家に帰ってから子供達に癒されよう…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「へぇ~。球技大会ねぇ~…」
「でも、全然知らない競技ばかりにゃ」
夕食時。
皆と一緒に球技大会の話をしていた。
「どうしてマイナーな競技が一つも選ばれないのかしら?」
「抽選と言っていたが……」
「まさか、意図してメジャーな競技を省いたんじゃ…」
「い…いや…ソーナさんに限ってそんな事は……」
「私もそう信じたい」
と言うか、信じないとやってられない。
「お姉ちゃん。球技大会、何?」
「簡単に言うと、色んな球技で競い合う大会の事だ」
「でも、私達はどれも聞いたことが無いぞ?」
「しかも、可笑しな名前ばかりだな!あはは!」
言われてみればそうかも…。
ペタンクやチュックボールとか、全然想像出来ないし。
ネットで調べれば出てくるかな?
「一応、練習とかした方がいいんでしょうけど…」
「セパタクロー以外は練習のしようがないな…」
「せめて、当日まで体調を整えておくことにします」
「それが妥当にゃ」
今出来るのはそれぐらいか。
『チュックボールにペタンク…か。よくもまぁ…あのソーナとやらもあのような競技を選んだものだな』
「ギルガメッシュ。知ってるのか?」
『我を誰と心得ている。天上天下、全ての英雄を束し英雄王だぞ。その程度の知識は知って当然だ』
「なら、教えてくれませんか?」
『だが断る』
「え?」
『ここで教えてしまっては面白くあるまい?当日に説明があるであろう。それまで精々待つが良い』
んな事だと思ったよ。
この慢心王がまともにこっちの質問に答えるとは思わない。
結局、この日はどんな競技かは分からずに、一日を終えた。
こんなんで大丈夫だろうか…?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「はぁ……」
裕斗の自宅。
ベットに座りながら、彼の心は今、罪悪感に満ちていた。
「何をやっているんだ…僕は…」
マユは決して裕斗を貶めようとは思っていない。
あの発言は完全に偶然の産物だ。
それは裕斗自身もよく分かっている。
それでも、意識せずにはいられなかった。
「先輩は何も悪くない…悪くないんだ…」
裕斗にとって、マユはまごう事なき命の恩人だ。
あの時彼女が助けてくれなかったら、間違いなく裕斗は命を落としていただろう。
だから、可能な限りは彼女の事を裏切りたくはないし、傷つけたくない。
しかし……
「それでも…僕は……」
今の彼を突き動かしている理由の一つにして、最大の目的。
それは…『聖剣』という存在に対する復讐である。
例え愛する女性がそれを望んでいなくても、それだけはどうしても譲れなかった。
「すみません…先輩…。僕は…最低だ…」
今の己は自分の意思で彼女を悲しませようとしている。
その償いはいずれしなくてはいけないだろう。
例えそれでも……
「僕は…この復讐をやめるわけにはいかないんです…。あの時、僕を逃がしてくれた皆の命に報いる為にも…!」
彼の瞳には、決意と復讐の炎が宿っていた。
窓の外から覗く月だけが、静かに彼の事を見守っていた。
今回のネタ…分かりますか?
一応、英霊を出しているという事で、同じシリーズでやってみたのですが…。
この章で裕斗はマユと親密になれるのか?
それとも……?
では、次回。