神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

40 / 82
今回で特訓は終了です。

本格的にリアスの最終フラグが建ちます。

後は回収するだけですね。


第37話 真夜中の女子トーク

 昼食を食べた後の二日目の午後は文武両道の精神にのっとり、座学となった。

 

私達はリビングに集まり、そこにホワイトボードを用意して勉強会の体勢になった。

 

私もある程度は知ってはいるが、これを機におさらいしてみるのも悪くは無い。

 

ホワイトボードの前には、アーシアとレイナーレ、リアスが立っていた。

 

「それじゃあ問題です。神が率いる最高位の天使は熾天使セラフィムですが、そのメンバーの名前はなんですか?」

 

これは比較的簡単な問題だな。

確か……

 

「私、知ってるぞ!」

「はい。じゃあティアちゃん、答えてください」

「ミカエルにラファエル、ガブリエルにウリエルだ!そして、ミカエルが四人の中でリーダー的存在だと聞いたぞ!」

「「「「「おぉ~」」」」」

 

私が考えている以上の答えを言ってのけた…。

やっぱり、龍って凄いんだなぁ…。

 

「正解です。ティアちゃんは凄いですね」

「えへへ……」

 

アーシアに頭を撫でられて、嬉しそうにティアがはにかんでいる。

年相応の可愛らしい笑顔だ。

 

「次は私から出題しようかしら」

「頼む」

 

レイナーレからの問題か。

多分、堕天使に関する問題だろうな。

 

「それじゃあ、いくわよ。私達堕天使の組織の名前が『神の子を見張るもの(グリゴリ)』なのは知ってるわね?」

「ああ」

「なら、その最高幹部の名前はなにかしら?ちゃんと全員答えるのよ」

 

うむ…。

結構いたような気がするが…。

トップにいるのがアザゼルさんだったよな…。

 

「我、知ってる」

「ならオーフィス。答えてみて」

「うん。総督がアザゼル。副総督がシェムハザ。他はアルマロスにバラキエル、ベネムエ、サハリエル、コカビエル。前、薬屋でシェムハザが胃薬買ってるの見た」

「せ…正解よ。シェムハザ様が普段の激務で胃を弱めたって噂で聞いたけど…本当だったのね…」

 

堕天使の副総督がストレスで胃腸虚弱になるって…。

すっごい親近感が湧くんですけど…。

 

「オーフィスちゃんは物知りですわね」

「我も勉強した」

「偉いですわ」

「う…うん……」

 

今度はオーフィスちゃんが朱乃に頭を撫でられた。

普段は表情が少ない彼女も、珍しく照れている。

 

「最後は私ね。私達悪魔を統べる四大魔王の名前、分かるかしら?」

 

それは簡単だ。

けど、流れ的に私は答えられないだろう。

 

「私!私が答える~!」

 

ほらね?

 

「はいはい。急かさなくても大丈夫よ。レドちゃん、答えてくれる?」

「うん!四大魔王の筆頭がルシファーで、ベルゼブブとアスモデウスにレヴィアタン!どうだ?」

「大正解よ。よく分かったわね」

「私は『きんべん』だからな!」

 

『きんべん』の意味、ちゃんと分かって使ってる?

 

幼女組が意外な活躍をして、最初の授業(?)は終わった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 小休止を挟んで、次はアーシアオンリーの授業になる。

 

「では、僭越ながら私が悪魔払いの基本をお教えします」

 

一人で前に出るのは緊張するのか、ちょっとだけ彼女の顔が赤い。

けど、思ったよりも様になっているので、もしかしたらアーシアは教師に向いているのかもしれない。

 

「私が所属していた頃の教会には、基本的に2種類の悪魔祓いがいました」

「2種類?」

「はい。まずは、表側にいる悪魔払いの方々ですね。テレビや雑誌にも積極的に出演して、神父様が聖書の一節を読み、聖水を使用し、人々の体に入り込んだ悪魔を退散させる……これが一般的に『表側』にいる悪魔払いです」

「テレビなどにも出るという事は、その者達の主な仕事は悪魔祓いと言うよりは、布教と言う方が正しいかもしれないな」

「私もそう思います。彼等の一部は悪魔払いの行為を『演出』している時もありますから」

 

私達が普段からテレビを見ていて思った事は本当だったんだな…。

 

「そこまで行くと、もう悪魔祓いと言うよりは、単なるエンターテイナーにゃ」

「完全に形無しですね」

 

ボコボコだな…悪魔祓い。

 

「それと相反しているのが、所謂『裏』と呼ばれる悪魔払いの人達です」

 

裏…か。

これはもう、説明するまでも無いな。

 

「アーシア。その『裏』の連中とは、以前に教会で会った男のような奴等の事か?」

「はい。彼もその一部です」

 

やっぱりか…。

 

「でも、アイツはもう悪魔祓いですらないわ」

「どういう事?」

「どうやらアイツ、色々とやり過ぎてしまって、教会を追放されたらしいわよ?」

「そう言った方々を『はぐれ悪魔祓い』と言います」

「はぐれ…ね」

 

追放されてしまったら、悪魔祓いも野良犬同然…か。

 

「次に、聖書や聖水の事をお教えします」

 

アーシアが、いつも持っているバッグから分厚い聖書と聖水の入った小瓶を取り出した。

 

「この瓶に入っているのが聖水です。もうお分かりとは思いますが、悪魔の方々が触れれば、火傷をしてしまいます」

 

見た感じは普通の水にしか見えないが、不思議なものだ。

 

「聖水、美味しい?」

「ふふ……舐めてみますか?悪魔でなければ体内に入れても問題無いですから」

 

意外と消費者の事を考えてるんだな…。

 

オーフィスちゃんがアーシアから聖水を受け取って、蓋を開けて小指にチョコンと聖水を付けてから舐める。

 

「ど…どうだ?オーフィス。美味しいのか?不味いのか?」

「…………」

「オーフィス?」

 

レドとティアがオーフィスちゃんに詰め寄る。

当の本人は全く無反応だけど。

 

「味…しない。水と一緒」

 

あぁ~…なんとなくそう思った。

 

「わ…私も舐める!」

「私も!私も!」

 

レドとティアも一緒に聖水を舐める。

 

「おぉ~…確かに味がしない」

「あははははは!これじゃあ、普通の水と一緒だな!」

 

なんでテンションが高いの?ティアちゃんよ。

 

「次は聖書です。幼い頃からずっと読んでました。私の愛読書です」

 

聖書が愛読書って…。

もうちょっと娯楽を覚えましょう。

 

「ここで読んでしまっては、部長さん達にご迷惑をお掛けしてしまうので、読めませんが…」

「そこら辺は勘弁して頂戴…。それって想像以上に痛いのよ…」

「悪魔も難儀な生き物ね」

 

レイナーレ、堕天使が言っても大して説得力無いぞ。

 

その後も、アーシアの授業が続き、午後の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 その日の夜。

ふいに目が覚めた私は、再び眠気が来るまで体を動かすことにした。

 

皆を起こさないようにジャージに着替えた後に部屋を出て、そのまま外に出る。

 

そのまま、私は逆立ちの状態で片腕で腕立てをした。

 

「998…999…1000…。よし、腕立て終わり」

 

私は体勢を元に戻して、持ってきたタオルで汗を拭く。

 

『逆立ちで腕立てって……。相棒はどこまで女離れする気だ…』

「どこまでと言われても…」

 

そう言った質問は返答に困る。

 

『で…でも…そう言った姿勢って…素敵だと思うわよ?』

『あんまり煽てるな。別に鍛える事を悪いとは言わんが、もう少し慎みを持って欲しい。って…これは前にも言った気がするな…』

 

神機使いに慎みを求められてもなぁ~。

記憶の中でサクヤさんも言っていたが、アラガミと戦う身で女らしさって必要か?

 

「ま、いいか」

 

ここで気にしたって仕方がない。

今は目の前の戦いに集中したい。

 

「ふぅ……。ちょっと喉乾いたな…」

 

私は水を飲むために、別荘の中のリビングに行くことにした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 リビングまで行くと、明かりがついているのが見えた。

 

(誰かいるのか?)

 

もしかして、レイナーレ辺りが夜食でも作っているのかもしれない。

 

そう思って入ってみると、そこにいたのは……

 

「リアス?」

「お姉ちゃん?」

 

テーブルに座ったリアスがそこにいた。

テーブルの上には色々な本やノート、地図が置いてあった。

 

「もしかして、またトレーニングしていたの?」

「まぁ…な」

「お姉ちゃんの頑張りには頭が下がるわ…」

 

半ば呆れながら微笑むリアスは、妙に真新しかった。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。ここに座って、ちょっとお話しない?」

「そうだな。けど、ちょっと待ってくれ」

 

私はキッチンまで行ってコップを一個取り出して、冷蔵庫から麦茶を出してコップに入れた。

 

「待たせた」

 

リアスの元まで戻って、彼女の対面になるように座った。

 

「ん?リアス…その眼鏡…」

「ああ…これ?」

 

リアスの顔には、珍しく眼鏡が掛けられていた。

よく見ると、私の眼鏡と同じタイプだった。

 

「ちょっとしたリスペクトってやつよ。勉強する時なんかはこうしているの。不思議と集中できるのよね」

 

意外な一面を見たな…。

ちょっとリアスを見る目が変わるかも…。

 

「似合ってるよ。なんだか印象が変わる」

「そう?ふふ…ありがと」

 

なんか、インテリって感じだ。

 

「リアスは…レーティングゲームの勉強か?」

「うん…。でも、こんなのを読んでも気休めにもならないわ…」

 

溜息交じりに持っていたノートを置くリアス。

その顔には落胆が浮かんでいた。

 

「お姉ちゃん達が参戦してくれたお陰で、私にも勝機が見えてきた。しかも、ライザーの意外な弱点にも気が付いて、増々勝利が見えてきた…けど…」

「けど?」

「それは全部、お姉ちゃんがいてくれたから…なのよね…」

 

リアス……。

 

「本当なら、こう言った事は部長であり『王』である私がしなければいけない事…。全く持って情けないわ…」

 

もしかして…出しゃばりすぎたか?

 

「私が未熟者だったから、お姉ちゃん達を巻き込んでしまった…。その上、ライザーがお姉ちゃんに目を付けてしまうなんて…」

「それに関しては気にしてないよ」

「で…でも!」

「でも…じゃないよ。もしライザーが何も言わなくても、私の方から参加したさ」

「なんで…そこまで……」

 

その問いに対する答えは一つしか無い。

 

「…誰かを助けるのに、理由がいるかい?」

「……!」

 

ズバリこれ。

傍から見たら、完全に私の我儘かもしれないけど。

 

「リアスは…自分に自信が持てないんじゃないか?」

「そ…それは……」

「だからそうやって、考えがネガティブになってしまう」

 

どうやら図星だったようで、リアスは俯いてしまった。

 

「…リアスの気持ちは私も分かるよ」

「……気休めはいいわ」

「気休めじゃないさ」

 

記憶の中の出来事ではあるが、私は当時の事を鮮明に覚えている。

 

「私も嘗ては隊長をしていたことがあるんだ」

「お姉ちゃんが…?」

「ああ。いきなりのご指名でさ。あの時は本当に驚いたよ」

 

たかが15歳の小娘になんちゅー事をさせるんだ!ってね。

 

「仲間を率いるって言うのは、タフな仕事だよな…」

「お姉ちゃん…?」

 

リアスが不思議そうにこっちを見るが、敢えて気にせずに話を続ける。

 

「いつの間にか、仲間達全員の命を自分が背負っている気になってしまう」

「うん…そうね…」

「でも、人間や悪魔に限らず、一人で背負えるものなんてのは、たかが知れてるんだ」

「………」

「大概は自分の事で両手が塞がっていてさ、偶に片手が空いている時に、大変そうにしている奴に少しだけ手を貸してやるぐらいの事しか出来ないんだ」

 

私はリアスの顔を正面から見る。

 

「だから……あんまり思いつめないでくれ」

「うん……」

「まだ勝敗は決していない。勝機も見出しつつある。今はそれだけで充分さ……だろ?」

 

私は麦茶を少しだけ飲んだ。

 

「まぁ…その…なんだ。幼い頃に君を助けてからこっち、碌に『お姉ちゃん』らしい事が出来なかったからさ……今更ながら、楽に生きていく為のアドバイスをしてみたくなったんだ…」

 

前にリンドウさんが話してくれた事を言ってみたけど…大丈夫かな?

 

「もしかして…励ましてくれたの?」

「うん…。一応…な」

 

自分の言葉じゃないけど。

 

「ありがとう…。少しだけ気が楽になったわ…」

「そうか…」

 

こんな言葉でも、役に立ったのならよかった。

 

「確かに私はまだまだ未熟者。でもね、そんな私にも夢があるの」

「どんな夢だ?」

「私の事を唯の『リアス』として見てくれる人と一緒になりたい。ささやかかもしれないけど、それが…私の夢…」

 

リアスとして見てくれる人と一緒になりたい…か。

女の子らしい夢だな。

 

「きっと叶うよ。少なくとも、私はリアスの事を『グレモリー家の一員だから』と言う色眼鏡で見たことは無いしね」

 

私にとっては、リアスは大切な友であり、掛け替えの無い仲間だ。

だからこそ、全力で守りたいと思う。

 

「本当に……お姉ちゃんは……」

 

え…ええ?

なんで泣きそうになってるの?

なんか悪い事言った?

 

私があたふたしていると、リアスが急に顔を上げて、私の麦茶を奪い取ってしまって、そのまま一気飲みしてしまった。

 

「あ……」

 

間接キスになっちゃった…。

 

「私…やるわ。全力で頑張って、お姉ちゃんに相応しい女になって見せるわ!」

「お…おう……頑張れ」

「自分の道は自分の手で切り開いて見せる!それぐらい出来なきゃ、お姉ちゃんの隣には立てないもの!」

 

なんか…急に気合いが入ってるんですけど!?

いきなりどうしたのさ?

 

「まずはゆっくりと休まなきゃね!おやすみなさい!お姉ちゃん!」

「う…うん。おやすみ…」

 

鼻息荒く、リアスはリビングを後にした。

 

「…何がどうしてこうなった?」

『雑種よ。鈍感も度が過ぎると、唯の害悪だぞ』

「えぇ~…」

 

なんでそこまで言われなきゃいけないのさ~?

 

私はリアスの急変が分からないまま、部屋に戻って就寝した。

 

 

次の日から、リアスが今まで以上に気合いを入れていて、私と同じ筋トレメニューをしだした。

流石にそう簡単にはいかなかったが、それでもめげずに頑張っていた。

他の皆はポカ~ンとしていたが。

 

そうして、あっという間に猶予期間である10日間は過ぎていった。

合宿終了時、リアスが筋肉痛で泣きそうになっていたが、アーシアに治されていたのが印象的だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 因みに、合宿に行く前に足長おじさんが言っていた、家のリフォームだが…。

 

「「「「なんとっ!?」」」」

 

たった10日間で、私達の家は三階建ての高級住宅になっていた。

横幅は変わっていないが、奥行きが大幅に広がっていて、全体からセレブ臭が漂っていた。

 

「た…試しに入ってみるにゃ!」

 

急いで中に入ると、中も凄かった。

 

「今までとは大違いじゃない…」

「ぱっと見、家具も全部高級品ですよ…」

「凄いですね……」

 

幾らなんでもやり過ぎだ…!

私が言えた立場じゃないが、限度ってものを知らないのか!

 

「あはははは!広~い!」

「ピカピカしてる…」

「このソファーもふわふわだぞ~!」

 

…子供達はご満悦のようだけど。

すっごいはしゃいでる…。

 

「なっ…!これを見るにゃ!」

 

黒歌がリビングにあるテーブルに置いてある紙をこっちに見せた。

どうやら、この家の見取り図のようだ。

 

「この家…地下室があるにゃ!」

「よく見ると…地下二階までありますよ…」

「って事は…五階建てって事?」

「家の中を把握するだけで一苦労しそうだ…」

 

もうすぐレーティングゲームだと言うのに…。

なんでこうなる?

 

「はぁ…。取り敢えず、自分達の部屋を見つけて、荷物を置こう…」

「賛成です…」

「それが妥当ね…」

「この家に慣れるまで、苦労しそうにゃ…」

 

想像の斜め上を行ったリフォームに、胃を痛くしながら部屋に向かった。

 

こんな状況でゲーム本番を迎えて、大丈夫なんだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




合宿終了!と同時に、家のリフォームも完了しました。

これで、同居人が増えても大丈夫ですね。

とうとうお次はレーティングゲーム本番です。

さてはて、焼き鳥君はマユに一矢報いる事は出来るのでしょうか?

では、次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。