一応、今週で収束するらしいのですが、どうなる事やら…。
疲れ果ててしまって、すっかりくたくたです。
一日目の特訓が終わり、レイナーレが作ってくれた夕食を食べ終えた私達は、皆でお風呂タイムと洒落込んだ。
最初に私達女性陣が入り、その後に裕斗が入る手筈になっている。
にしても……
「温泉かよ……」
別荘とは思えないほどに大きな温泉がそこにはあった。
どう考えたって、これは高級旅館とか高級ホテルとかにあるタイプの温泉だ。
流石は魔王の血脈と言ううべきか…。
「ひ…広いです…」
「ブルジョア全開にゃ」
「質素って言葉を知らないのかしら?」
こらこら、そんな事言わない。
一応、全員がバスタオルで身体を隠した状態で浴場に来ている。
勿論、私は普段は左腕を覆い隠している手袋を外している。
「にしても…」
「ん?」
レイナーレが私の左腕を凝視している。
「こうして改めて見ると、すっごい腕よね…。ホントに大丈夫なの?」
「ああ。今の所はこれと言った問題は出ていない」
「そう…。それならいいけど…」
もしかして…心配してくれた?
「お姉ちゃん!すっごく広いぞ!」
「おぉ~…」
「泳げそうだな~」
幼女組は案の定、はしゃいでいる。
「三人共、走ったりしたら駄目だぞ?危ないからな」
「「「は~い!」」」
うむ、よろしい。
「お湯に入る前に、まずは身体を洗ってしまいましょうか?」
「そうだな」
マナーだしね。
「そ…それでね?お姉ちゃん…」
「ん?どうした?」
さっきからずっと顔が赤いけど…マジでどうした?
もしかして、もうリアスは逆上せてしまったのか?
「よかったらなんだけど……御背中流せてほしいの!」
「そんなことか。別にいいよ」
「やった!」
それぐらいなら全然構わない。
家でも白音とかにして貰っているしな。
「ず…ずるいですわ!リアス!私もお姉ちゃんの背中を流したいわ!」
「こういうのは、先に言った者が勝つのよ!」
お前達が喧嘩してどうする。
ちょっとは子供達を見習いなさい。
「ティアちゃん。痒い所は無いですか?」
「うん。大丈夫」
「オーフィス。ちゃんと目を瞑ってるにゃ」
「分かった」
「ほらレド。頭を流すわよ」
「ん」
アーシアがティアを、黒歌がオーフィスちゃんを、レイナーレがレドの頭を洗ってくれている。
そして、白音はその傍で一人で体を洗っている。
「あ…貴女達は冷静ね…」
「そう言えばそうですわ…」
「私達は家でマユさんと一緒にお風呂に入れますから」
「「そうだった!!」」
そう。
もう家の皆全員と一緒にお風呂に入っている。
当然、アーシアやレイナーレも。
「ぐぐぐ…!こうなったらじゃんけんよ!朱乃!」
「望む所ですわ!」
遂に勝負に発展したか。
ま、安全な勝負で安心したけど。
「「じゃんけん……ぽん!」」
リアスと朱乃のじゃんけん勝負の結果は……
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ふふふ……♡」
「まさか…この私が負けるなんて…!」
じゃんけん勝負の結果は、朱乃がパーでリアスがグー。
という訳で、見事に朱乃が勝利した。
体と頭を洗い終わった私達は、皆揃って湯船に浸かっていた。
「ふぅ~…」
一日の疲れが癒えていくようだ…。
やっぱり温泉は最高だぜ!
「明日こそは私が勝つわ!」
「いつでも受けて立つわよ?」
まだやってるのか…。
「醜い争いにゃ」
「三人共、あんな大人になってはいけませんよ?」
「「「は~い」」」
何気にリアスと朱乃をディスったな…。
恐るべし白音…!
「ねぇ…マユ」
「ん?どうした?レイナーレ」
「アンタの訓練風景をちょっと見たけど…私が来る前からずっとあんな事をしてたの?」
「まぁ…大体な」
「はぁ……。いくらなんでも鍛え過ぎよ…。私の力が通じないのも納得だわ…」
そうか?
私としてはあれぐらいは当たり前なんだけど…。
「マユさん…。なんてしなやかで鍛えられた体なんでしょう…。とっても綺麗です…」
アーシアに至っては私の体をさっきからずっと見てるし…。
流石にちょっと気恥ずかしいぞ…。
「って…やめましょうか。温泉ぐらいゆっくりと入りましょう…」
「それもそうですわね…」
あ、元に戻った。
「あ…あの…お姉ちゃん?」
「今度はどうした?」
「ちょっとだけ…その腕を触っていいかしら?」
「わ…私もいいですか?」
「いいぞ」
別に減るもんじゃなし。
こんな腕ならいくらでも触っていいよ。
「じゃ…じゃあ…行きます」
どうしてそんなに緊張する?
「うわ……固いわ…」
「けど、決して太すぎない腕…。まるで古代ローマの彫刻のようですわ…」
それはちょっと褒め過ぎ。
(確かにな!奏者の肉体は、かの太陽神ソルも嫉妬するような美しさだ!)
あ、ネロが割り込んできた。
多分、『ローマ』の部分に反応したんだな。
「今日のような鍛え方をしていれば、納得ですわ…」
「ええ…。やっぱりお姉ちゃんは凄いわね…」
因みに、二人がさっきから触っているのは、アラガミ化していない右腕の方だ。
少しくすぐったい。
それからも、皆でゆっくりと温泉を堪能して、今日の疲労を解消していった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
私達が湯から上がり、裕斗もお風呂に入った後で、私達はリビングに集合した。
「この間ライザーが言っていた通り、私の元に彼の試合の様子が映ったDVDが送られてきたわ」
「意外と律儀なんですね」
「それだけこっちを下に見ているってことさ」
ま、油断してくれている分はこっちに有利だからいいけどね。
「それじゃ、再生するわよ?」
リアスがDVDレコーダーに送られてきたDVDを入れてから、スイッチを押す。
すると、リビングの中央に位置している大型テレビに映像が映し出された。
テレビには、フィールドを縦横無尽に駆け抜けるライザーの眷属達が映った。
「数で圧倒してるって感じですね」
「質より量…。その考えは分かるけど…」
「ちょっと粗さが目立ちますわね…」
確かに。
見た感じは連携が取れているように見えるが、所々に隙が見え隠れしている。
しかも……
「あ…」
ライザーの女王と思わしき女性が、味方ごと敵を爆撃した。
「サクリファイス戦法…!」
サクリファイス…生贄。
つまり、味方を敢えて犠牲にしてから敵を討つ戦法か。
「私はあんまり好きじゃないわ…!」
リアスは嫌いそうだよな。
こう言った戦法は特に。
「私もあまり好みでは無いな…」
「マユさん…」
味方を犠牲にして敵を討つのは、本来なら最後の手段の筈だ。
いくら死の概念が無いゲームとは言え、それを多用するのは、あんまり褒められたものじゃない。
画面に映っているライザーの眷属達の一挙手一投足をじっくりと観察していると、ライザーの戦闘シーンになった。
相手の攻撃をワザと受けるライザー。
すると、ライザーの体が一部消滅したかと思った瞬間、あっという間に再生してしまった。
「これが…フェニックスの『再生』ですか…」
「確かにこれはチートだにゃ」
「しかも、こいつの性格も相まって、慢心しまくってるわね」
さっきから画面の中で大笑いしてるしね。
……ん?
「リアス…今のシーンをちょっと巻き戻してくれ」
「え?」
「頼む」
「分かったわ…」
リアスがリモコンを使って映像を巻き戻す。
「一体どうしたの?」
「ちょっと静かに…」
私はライザーの姿の注目する。
「コイツ……相手と会話をしているぞ…」
「それがどうかしたんですか?」
「見た感じ、戦闘時のライザーには物理攻撃の類は一切通用しないように見える」
「ええ…そうね」
「なら……なんでライザーは会話が出来るんだ?」
「ど…どういう事?」
私は座り直してから、皆に説明することにした。
「白音。音とはどうやって伝わる?」
「それは…空気の振動が鼓膜に伝わって…そして…」
「その通りだ。そして、空気も立派な『物質』だ。ライザーに物理が通用しないなら、空気の振動もあいつの体を貫通して、全ての音が聞こえない筈だ。なのに…」
「実際はああしてちゃんと会話をしている…」
これはもしかしたら…凄い発見かもしれない…。
「どんな状況であっても、アイツにはちゃんと『音』が聞こえている。つまり、フェニックスの再生能力をもってしても、防げない物が存在するという事だ」
「それって…!」
「空気……もしくは音…ね」
レイナーレが真剣な顔で呟く。
「こんな抜け穴があったなんて……」
「流石はお姉ちゃん…。素晴らしい観察眼ですわ…」
「でも、音や空気の攻撃手段なんて…」
「そこら辺は大丈夫かもしれない」
「しょ…勝算があるんですか?」
「うん」
私は左腕に視線を落とす。
「エリザ…聞こえるか?」
『いきなりどうしたの?子リス』
「次の戦い……君の力を貸して貰うかもしれない」
『わ…私の力を!?』
「正確には、エリザの宝具を…ね」
『私の宝具って……もしかして…』
「君の予想通りだ。多分、あの宝具が勝利の鍵になる」
『そ…そう……私の宝具が……』
ん?んん?
一体どうした?
『こ…子リスがそこまで言うなら、私の力を貸してあげるわ!感謝しなさい!』
「うん。ありがとう」
『ちょっ…!そんなストレートにお礼を言われたら……照れるじゃない…』
最後の方がよく聞こえなかったけど、なんて言った?
「明日から早速訓練しようと思う。よろしくな」
『ま…任せておきなさい!』
それだけ言って、エリザは急いで引っ込んでいった。
「ふぅ……」
これで、かなり勝率が上がったな。
「お姉ちゃん……」
「リアス?」
どうしてそんなに怒ってる?
「いくらなんでも守備範囲広過ぎよ!歴代の赤龍帝にもフラグを建てるなんて!」
「フ…フラグ?」
「これもある種の才能だにゃ」
才能って…。
「う…んん……」
あらら。
オーフィスちゃん達が眠そうにしている。
「リアス。子供達がおやすみタイムのようですわ」
「そうみたいね。じゃあ、今日はもう休みましょうか?」
リアスの一声で、今日は寝る事にした。
私がオーフィスちゃんを、リアスがレドを、アーシアがティアを抱えて部屋に運んだ。
昼間にたっぷりと体を動かしたせいか、その日の夜は熟睡出来た。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
次の日。
私は早速エリザの力を使った訓練をすることにした。
昨日と同じように、動きやすい格好になってから、皆で別荘の前に出る。
ちゃんと事前に準備運動は済ませた。
「それじゃ、頼んだぞ」
『承知した』
『任せなさい!』
タンクトップにジャージと、動きやすさ重視の格好で、左腕には毎度お馴染みの赤龍帝の籠手。
この場の皆には既にバレている為、腕袋は外している。
【Lancer!】
音声と共に、私の体が変化する。
髪が濃い目のピンク色に染まって、髪型はツーサイドアップに。
そして、頭部からは龍の角が、腰の辺りからは龍の尾が生えた。
尾は先端が二股に割れていて、私の手には身の丈以上に大きな、複雑な形をした槍が握られていた。
「…よし」
この格好になるのは初めてだから、まだちょっと違和感があるけど、それは私が慣れていけばいいだけだ。
「狐っ子の次は龍っ子だなんて…」
「これはこれでマニアックですわ…」
マニアックって…。
「マユさん。尻尾は動かせるんですか?」
「多分」
試しに力を込めてみると、尻尾をフリフリと動かせた。
「おぉ~。お姉ちゃん、我等と同じになった」
「お揃いだな!」
「増々、私達のお姉ちゃんっぽくなったな!」
言われてみればそうかも。
エリザには実際に龍の血が流れていたらしいし。
「さて…始めるか」
私は槍を構えて、精神を集中させる。
「……はっ!」
槍を全力で突き出す!
「ふん!」
次は槍を薙ぎ払うように動かす。
「はぁっ!」
そして、ジャンプしてから槍を地面に叩きつける!
すると、槍が叩きつけられた地面にちょっとしたクレーターが出来た。
「すぅ~……」
息を整えて、体勢を元に戻す。
「やはり、剣とは勝手が違うな…」
チャージスピアも頻繁に使用するが、神機と本物の槍とでは使い勝手が違ってくる。
これは、要訓練だな。
「いや……充分ですよ。先輩…」
『私も同感よ。初めて握った武器であれだけ動ければ上等よ』
「そう言ってくれるのは嬉しいが……」
これでは私が満足出来ない。
この槍一本でライザーの眷属を全員倒せるぐらいにはならないとな。
『相変わらず向上心が強い奴だ。それでこそ赤龍帝だ』
「そうですね。私も頑張ります」
お?白音も気合いが入ってるなぁ~。
「私達も負けてられないわ!二人共、頑張るわよ!」
「「はい!」」
リアス達もやる気満々だ。
「私もちょいと気合い入れるにゃ」
「わ…私も、昨日以上に頑張ります!」
黒歌とアーシアも昨日よりも顔に力が籠っている。
「お姉ちゃん、頑張る」
「私達はここで応援だ!」
「お~!」
そして、妹達の激励のおまけ付き。
姉として、無様な姿は見せられないな。
「よし!飛ばしていくぞ!」
『ああ!』
『空回りしないようにね?』
「分かっているさ」
二日目の午前中は、全てを槍を使った訓練に費やした。
時折、エリザからアドバイスを受けながら、私の特訓は順調に進んでいった。
これなら、当日までにはなんとかなりそうだ。
宝具に関しては、ここでは訓練は出来ないから、ぶっつけ本番になるけど…。
こればっかりはエリザとドライグを信じるしかない。
こうして、あっという間に二日目の午前は過ぎていった…。
今回、劇中でマユが言っていたのは、完全に独自設定です。
でも、原作でも試したことは無い為、有効だとは思うんですよね。
対ライザー戦における切り札はエリザ。
これはサーヴァントを赤龍帝にした瞬間から決めてました。
アサシン先生と迷ったんですけどね。
ここで出番を与えないと、エリザが埋もれてしまいそうなので…。
次回も特訓回が続きます。
では、次回。