という事は、必然的にアラガミとの戦闘も非常に少なくなるわけで……
じゃあ、何処で戦うのかって?
そりゃ勿論、クライマックスですよ。
「……と言うことがあった」
夕食時、私は皆に今日の放課後にあった出来事を話した。
すると、黒歌とレイナーレの二人が非常に大きな溜息を吐いた。
「「はぁ~~~~~……」」
「ど…どうなさったんですか?お二人共…」
余りにも大きな溜息に、アーシアが思わず首を傾げる。
「マユはトラブルに巻き込まれすぎにゃ…」
「まぁ…今回のは自分から行ってないだけまだましだけど…」
私ってそんなにもトラブルに巻き込まれてるか?
「この間も、横断歩道で立ち往生しているお婆さんの荷物を持ってあげて、結局隣町まで行ってたじゃないですか」
「それぐらいなんでもない」
困ってる人を放置は出来ない。
私の数少ないポリシーだからな。
「でも、そのライザーとか言う奴もいい度胸にゃ」
「よりにもよって、貴女をナンパするなんてね」
ナンパ……なんだろうか?
あれはもっと違う何かだと思うんだが…。
「黒歌。ナンパって何?」
「見ず知らずの男が初めて出会った女の子を誘う行為にゃ」
「お姉ちゃん、誘われた?」
ティアが黒歌に聞いて、それを聞いてオーフィスちゃんがこっちを見た。
「確かに誘われはしたが……」
「マユさんはあんなチャラ男なんかに靡くような人じゃありません」
なんか、ライザーが去ってからずっと白音はこの調子だ。
怒っていると言うか、やる気になっていると言うか…。
「でも、マユと白音ならきっと大丈夫にゃ」
「レーティング・ゲーム…だったっけ?あんた達二人なら、そんじょそこらの悪魔なんかには絶対に負けないでしょ」
「当たり前です」
自信たっぷりだな…白音。
ま、私も負けるつもりなんて無いけどね。
「お姉ちゃん、醤油を取ってくれないか?」
「わかった」
レドに醤油を渡そうとした、その時だった。
『~♪』
私にスマホに着信が来た。
このタイミングなら、掛けてくる人物は限られてくるが……
「すまない」
私はスマホを持ってから少し離れて、着信に出た。
「もしもし?」
『あ…お姉ちゃん?』
電話の相手はリアスだった。
『こんな時間にごめんなさい』
「いや…それは別に構わないが…どうした?」
『実はね、明日からオカルト研究部で合宿をしようと思うの』
「合宿?」
『ええ。レーティング・ゲームにお姉ちゃん達が出てくれると言っても、それにばっかり頼るわけにはいかないって思って。特訓をすることにしたのよ』
「成る程な…」
それはいい心掛けだ。
向上心は大切だからな。
『既に他の二人には伝えてあるわ。後はお姉ちゃん達だけ』
「そうか」
『で…いいかしら?一応、そっちの都合を優先して貰っても構わないんだけど…』
悪魔なのに遠慮深いんだな。
「私は構わない。多分、白音もな」
『そう。よかったわ』
「だが……」
『どうしたの?』
「流石に数日に掛けて皆を置いて家を離れるのは……」
『だったら、皆も連れて来ていいわよ?』
「い…いいのか?」
『ええ。行く場所はグレモリー家の別荘なんだけど、結構大きいから、問題無いと思うわよ?』
「そうか…。でも、一応皆にも説明してくれないか?スピーカーモードにするから」
『了解よ』
私はリビングに戻り、スマホをスピーカーモードにしてから食卓の上に置いた。
「リアス、頼む」
『ええ』
そこからリアスは、さっきと同じような説明を皆にしてくれた。
『…という訳なの。どうかしら?』
「私は別に構わないにゃ。ちょっとした小旅行と思えば、問題無いにゃ」
「私もいいわ。一応…その…私はアンタの従者なんだから…」
黒歌とレイナーレはオッケーと。
アーシアは……
「私も一緒に行ってもいいんでしょうか…?」
『勿論よ。例え眷属じゃなくても、貴女は立派なオカルト研究部の部員なんだから』
「部長さん…」
はい、アーシアもOK。
そして、幼女龍トリオは……
「合宿、なに?」
「皆で一緒に別の所でお泊りする事にゃ」
「お泊り……」
「面白そうだ!私も行く!」
「私も行きたい!」
「我も!我も!」
…言うまでも無かったね。
「…と言う事らしい」
『ふふ……。賑やかになりそうね』
確かにな。
結果としてかなりの大所帯になるしね。
『じゃあ、明日の朝に迎えに来るわ』
「わかった」
通話が切れた。
「合宿してまで特訓なんてしたら、マユの強さにますます磨きが掛かっちゃうにゃ」
「ライザーとか言う奴に同情するわね。ご愁傷様」
とうとう同情されたぞ、ライザー。
「でも、そうなると今夜中に明日の用意をしなきゃいけないわね」
「ご飯を食べて、お風呂に入ったら早速するにゃ」
この後の予定が決まったな。
皆で一緒に合宿の準備だ。
話が一段落ついて、食事を再開しようとすると、再びスマホに着信が来た。
「またか?」
「今度はなんとなく予想がつきます」
「私もにゃ」
同じく。
試しに出てみると、案の定だった。
『もしも~し!君の足長おじさんだよ~!』
久し振りに聞いたけど、本当に元気だな…。
「だ…誰よ?」
『おやおや~?そこにいるのは堕天使のレイナーレちゃんにシスターのアーシアちゃんかな?』
「えっ!?なんで私の名前を!?」
「私の事も……」
『ふっふっふっ~。僕はなんでも知ってるんだよ~』
「レイナーレ、アーシア。気にするだけ無駄だ」
それが、この人とうまく付き合うコツ。
『酷いなぁ~マユちゃんは。そんな所も素敵だけどね』
「言ってろ」
コイツにそんな事を言われても嬉しくない。
『初めまして、レイナーレちゃん、アーシアちゃん。僕は足長おじさん。マユちゃんの事を密かに支えているお助けマンさ!』
「お助けマンって…」
「はぁ……」
呆れてやるな。
流石に哀れだから。
「信用は出来るが、まともに受けあわない方がいい。疲れるだけだ」
『そんな風に思ってたの!?』
それ以外に何と?
「それよりも、なんで連絡してきた?」
『あ、そうだった。マユちゃんとのお話が楽しくてすっかり忘れてた』
「忘れるなよ」
呆れる奴だ…。
『マユちゃん。そろそろ、部屋が少なくなってきたと感じて来たんじゃない?』
「よく分かるな」
『マユちゃんの事だからね』
「不気味な事を言うな。キモイ」
『それは酷くない?』
今更だろ?
『で、君達が合宿に行っている間に、僕がこの家を広くしてあげようと思ったんだよ』
「……おい」
今、サラッととんでもない事言ったぞ。
「そ…そんな事が出来るのかにゃ!?」
『ふふふ……。僕の辞書に不可能の文字は無いのだよ?』
「ナポレオンか」
本気で出来そうだから、怖いんだよなぁ~。
「皆、今更…だろ?」
「「それもそうですね(だにゃ)」」
「我もそう思う」
「うんうん」
ある意味、満場一致だった。
「……やり過ぎるなよ?」
『分かってるって。そこら辺は僕だって弁えてるさ』
本当だろうか…。
『それじゃ、おやすみ~』
足長おじさんは通話を切った。
「ホントにいつもいきなりですよね…」
「もう慣れたにゃ」
「アンタ達も苦労してるのね…」
改めて食事を再開し、その後にお風呂に入ってから、皆で一緒に合宿の準備をした。
幼女組は凄く楽しみなようで、準備をしている時から既にウキウキしていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
次の日、リアス達が私の家に迎えに来てくれて、一緒に転移で合宿所である別荘に行くことになった。
リアス達が最初に行き、その後にリアス達の魔力を追跡する形で私達が転移するようにした。
因みに、今日の合宿の事は学校側にも伝えてあるらしい。
転移してついた場所は山奥で、目の前には舗装してない長い坂道があった。
「別荘はこの上よ」
これは行くだけで大変そうだ。
いい運動になるな。
私達は皆で上に向かう事にした。
結構なスピードで歩いているが、誰も疲れた様子は見せない。
勿論、私も。
しかも、オーフィスちゃん達に至っては……
「別荘とはどんな場所なんだろうな?」
「我、楽しみ」
「私もだ!なんだかワクワクしてくるな!」
心の底から楽しそうに山登りを満喫している。
まるで、遠足に行っている小学生のようだ。
「小さな子のあんな姿を見ると、なんだか癒されますわね…」
「そうね。無邪気な笑顔ほど、純粋なものは無いわ」
本当は天下無敵の伝説の龍達だけどね。
私達も幼女組を習って、楽しんで歩くことにした。
途中、裕斗が山菜を取って来てくれた。
黒歌とレイナーレが夕飯にすると言っていた。
山菜と言ったら、やっぱり天ぷらかな?
ちょっとだけ夕飯を楽しみにしながら、別荘を目指した。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
山道を歩いて着いた別荘は、かなり大きい建物だった。
確かにこれは余裕だわ。
「「「おぉ~」」」
幼女組は目をキラキラさせていて、黒歌とレイナーレは……
「これだからブルジョアは……」
「金持ちって…嫌いだわ」
こらこら、毒づかない。
意外な事に、一番ばてそうなアーシアが平気そうにしていた。
もしかして、意外と鍛えてるのか?
「それじゃあ、荷物を置いて、一休みがてら着替えてから訓練に入りましょうか?」
「「はい」」
「わかった」
「了解です」
私達は別荘の中に入っていく。
中も結構広くて、これなら訓練をしない時でも寛げそうだ。
「私達は食事の準備をするにゃ」
「私だけでいいわよ」
「レイナーレ?」
いきなりどうした?
「偶にはアンタだって
「それはしたいけど……いいのかにゃ?」
「それぐらいは出来るわよ」
レイナーレの家事スキルは凄いからね。
黒歌にも負けてない。
「それじゃ、お言葉に甘えるにゃ」
「そうしなさい」
そんな訳で、レイナーレは食事係になった。
私達は二回にある部屋で着替えて、裕斗は一階の浴室にて着替えた。
皆の格好はジャージで、アーシアも着替えていた。
レイナーレは真っ直ぐにキッチンに向かって、それ以外の皆は外に集結した。
「皆、特訓の前にはちゃんと準備運動をしよう」
「そうね」
「特訓で身体を壊したら、元の木阿弥ですものね」
「基本ですよね」
「分かりました」
皆は思い思いの場所で屈伸や柔軟をしていた。
「お姉ちゃん。私達はどうしたらいい?」
「ああ……そうだなぁ……」
オーフィスちゃん達か……。
出来れば危険な場所には行ってほしくは無いし…(大丈夫だと思うけど)
「邪魔さえしなければ、遊んでていいよ」
「わかった」
「「うん!」」
元気でよろしい。
私も準備運動を始めますか。
まずは他の皆と同じように屈伸などをしていく。
次に、体操選手のような柔軟をこなしていく。
「お…お姉ちゃん。身体が軟らかいのね…」
「まるで体操選手のようですよ、先輩」
そう、私は身体が凄く柔らかい。
立った状態でも普通に両手が地面につくし、両足も真横に広げた状態で座れる。
しかも、そこから上半身を地面につけることが出来るし。
因みに、黒歌や白音も体が柔らかい。
流石は猫又だ。
ある程度、準備運動が終わって体が温まると、本格的に特訓を開始する。
まずは基礎的な事から。
「マユさん。まずは何をします?」
「最初は筋トレだな。専門的な事はそれからすればいい」
「そうですね」
てなわけで、私はいつもと同じメニューをすることにした。
『お…おい、相棒?』
「どうした?」
『まさかとは思うが……また、あの滅茶苦茶な筋トレをする気か?』
「いや……私は至って普通の筋トレをしているつもりなんだが…」
『相棒の『普通』は普通じゃないんだ!ほんの少しでいいから、女らしさを身に着けてくれ!』
そこまで必死になる事か?
気にせずに私は筋トレを開始する。
まずは右腕の片腕立て。
「そうだ。オーフィス、レド、ティア。こっちに来て私の背中に乗ってくれないか?」
「いいのか?」
「構わない」
「わ~い!」
嬉しそうに私の背中に乗る三人。
「では…いくぞ」
最初はゆっくりと、徐々にペースを上げていく。
「ゆ~れ~る~」
「「あはははは!」」
うん、やっぱりこれぐらいが丁度いいな。
「マ…マユさんが凄い事をしてます…」
「いつもの事にゃ」
「見慣れた光景ですよね」
暇な休日はいつも似たようなことをしてるしね。
「だ…大丈夫なの?お姉ちゃん」
「問題…無い。寧ろ…丁度いい…」
「こんな事を苦も無く出来るから、お姉ちゃんは強いんですのね…」
「流石です、先輩」
こっちを見るのはいいけど、ちゃんと訓練しようね?
回数は数えずに、ある程度自分で納得がいったら左に移る。
左腕でもある程度腕立てをすると、背中に乗っている三人の方を向く。
「降りていいぞ」
「「「わかった」」」
三人は名残惜しそうに降りて、近くの草むらに座った。
「皆を見てる」
なるほどね。
他を見ると、皆も腹筋や背筋などをしていた。
「よし、次は…」
立ち上がってからタオルで汗を拭きながら周囲を見渡す。
すると、程よく大きな木が見えた。
「あれがいい」
木に近づいてから、上に登る。
そして、枝に足を掛けてからぶら下がる。
「よし…!」
腹筋開始だ。
「1…2…3…4…5…」
このペースなら、あっという間にノルマ達成かな?
「スピード早っ!?」
「汗が散ってますわ…」
こっち見てないで、ちゃんとしようね?
私が目で訴えると、皆も筋トレを再開した。
アーシアも頑張って自分なりに体を動かしている。
その姿勢は本当に立派だ。
体力があるに越したことは無いしね。
ノルマを達成すると、私は木から降りた。
その後も、スクワットや神機を持った状態での素振り。
更には足に重りを付けた状態での運動。
結局、午前中は筋トレだけで終わってしまった。
それは皆も同じのようで、全員が程よく汗を掻いていた。
「みんな!昼食が出来たわよ!」
お、もうそんな時間か。
皆がやって来たレイナーレの所に集合する。
「ごめんなさいね。貴女に全て任せてしまったようで」
「気にしないで。こっちは好きでしてるんだから」
ツンデレ乙。
「食べる前に汗を流してきたら?」
「それもそうね」
私達は一緒に浴室とは別にあるシャワー室に向かった。
勿論、オーフィスちゃん達も一緒に。
裕斗は私達の後に入る事になった。
さてはて、レイナーレはどんなご飯を作ってくれたのかな?
今回から特訓開始ですね。
まずは筋トレの風景から。
次からは原作通りに皆と一緒の訓練になります。
では、次回。