さてはて、彼はマユにどんな感情を抱いているのでしょうか?
第32話 生徒会の男の子
ティアマットことティアが私の使い魔となり、そして我が家の一員となってから数日が経過した。
オーフィスちゃん達のお陰でティアはあっという間に家にも馴染み、すっかり家が賑やかになった。
けど、私としてはこういう賑やかさは大歓迎で、今の家の雰囲気はとても大好きだ。
やっぱり、家族はこうでなくちゃね。
因みに、白音とアーシアの使い魔達もすっかり仲良くなったようで、白音がアモルを抱きしめた状態でうたた寝をしていたり、アーシアが蒼雷龍の鱗の手入れをしている様子が度々見られる。
その時に気が付いたのだが、アモルの体って思ったよりも暖かいんだね。
寒い日には丁度いい湯たんぽになりそうだ。
寒がりな白音にはいいかもしれない。
他の皆にもすっかり懐いていて、白音が学校に行っている時は、黒歌の後ろをついて回るという。
想像してみると、なんとも微笑ましい光景だ。
まさか、アラガミに癒される時が来るとは思わなかった。
もしかしたら、これがサカキ博士が目指した世界なのかもしれない。
そう思うと、なんだか未来に可能性を感じてしまう。
この可能性を潰さない為にも、私が頑張らなくちゃな!
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てな訳で、毎度お馴染みオカルト研究部でございま~す。
今日も今日とて、部活と称したくつろぎタイムを楽しんでいる。
「お姉ちゃん。あの子…ティアちゃんはどうしてるの?」
「すっかり皆と仲良くなったよ。もう立派な家族の一員だ」
「よかったですわ。やっぱり、同じ龍のオーフィスちゃんやレドちゃんがいるのが大きいのかしら?」
「かもしれないな。あの二人とはすぐに意気投合していたし」
同じ種族と言うのは大きいよな。
これはきっと、クラス替えの際に同じクラスの人間がいると安心する心境と同じだろう。
「この間は一緒にお風呂に入りました」
「ティアちゃんもオーフィスちゃん達と同じで髪がサラサラなんですよね~」
龍の髪は皆キューティクルなんだろうか?
髪の悩みと無縁とは…女として、なんとも羨ましい限りである。
「でも、流石に部屋が足りなくなってきたんじゃないんですか?」
「そうだな……ティアは小さいからオーフィス達と同じ部屋に住んでいるから問題無いが、これ以上は無理だろうな。まぁ…もう同居人が増えることは無いと思うが」
だって…ねぇ?
今までの事だって充分にご都合主義満載だったのに、これ以上は流石にないでしょ?
「そ…そう…もう部屋が無いのね…」
ん?どうしてそこでリアスが落ち込む?
「どうした?」
「い…いえ、なんでもないわ」
そう言われると、却って気になるのが人間と言うもの。
ま、これは人間だけじゃないか。
「マユさんは相変わらず鈍感さんですね」
「……?」
白音にジト目で言われたが、どういう意味だ?
感覚的には寧ろ、最近は鋭くなってきたと自負してるんだけど。
(哀れな……。今初めて、この雑種達に同情したぞ…)
ギルガメッシュまで?
マジで何なのさ?
紅茶を飲みながら小首を傾げていると、部室のドアがノックされた。
「失礼します」
この声は……
部室にいる全員がドアの方を向く。
すると、ゆっくりと部室のドアが開かれた。
「あら」
入って来たのは現在、生徒会長をしているソーナだった。
それと一緒に見慣れない男子生徒が一緒にいた。
「どうしたの?ソーナ。貴女がここに来るなんて珍しい」
「いえ。実はマユさんに私の眷属を紹介しようと思いまして」
眷属を?
でも、ソーナの眷属の子達とは既に顔見知りだけど?
なんでか皆、私と会う度に顔を真っ赤にするけど。
ソーナは部室を見渡し、私を見つけると真っ直ぐにこっちにやって来て、私の手を握った。
「リアスから話は聞きました!なんでも、あの伝説の龍王を使い魔にしたとか!」
「あ…あぁ…」
「素晴らしいです!流石は伝説の戦士ですね!」
柄にもなく興奮してるな。
ちょっと意外な面を見れたかも。
「あ…あの…ソーナ様?後ろの彼が棒立ちになってるんですけど…」
「あ……」
裕斗の指摘でようやく我に返るソーナ。
どんだけ興奮してたねん。
「ゴ…ゴホン!」
あ、咳払いで誤魔化した。
「マユさん。この方が部長が言っていた悪魔さんなんですか?」
「そうだ。彼女はソーナ・シトリー。学校では支取蒼那と名乗っている」
私が軽く説明すると、白音とアーシアが立ち上がった。
「初めまして。マユさんと一緒に暮らしている塔城白音と言います」
今、【一緒に暮らしている】と言う部分に過剰に反応してなかったか?
「お話は聞いてます。猫又だそうですね?」
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ふむ…二人の初めての邂逅は中々に良好なようだ。
「わ…私はアーシア・アルジェントと申します。よろしくお願いします」
「貴女の事も聞いてますよ。色々と大変だったようですね」
「はい…。けど、マユさんのお陰で今はとっても幸せです」
「そうですか…………羨ましいです…」
ん?今、最後になんて言った?
「では、こちらも紹介します。匙、自己紹介を」
「はい」
後ろにいた彼が前に出た。
「えっと……こうして面と向かって会うのは初めてっすね。どうも、新しくシトリー眷属になった『
「そうか…君が……」
なるほどねぇ~。
「あの…俺が何か?」
「いや…以前にソーナが嬉しそうに話していたんだ。中々に有能な眷属が入ったと」
「ゆ…有能っすか…」
「ああ。生徒会でも頑張ってると聞いている」
「いや…俺なんかまだまだっすよ」
おや?もしかして照れてる?
「謙遜するのはいいが、あまり卑下になりすぎないようにな?君はそれだけソーナに期待されているという事なんだから」
「先輩……」
まぁ…偶にはね。
先輩らしいこともしないと。
「やっぱ先輩は凄いっすね…。赤龍帝で、伝説にもなっていて、学校でも人気者だし…」
凄い…ねぇ?
いつも言われるけど、全然自覚無い…。
もうちょっと客観的に自分を見た方がいいのかな?
と言うか……
「私の事を知っているのか?」
「いや…この学校で先輩の事を知らない奴はいないでしょう。逆にいたら、そいつは相当なモグリか、やって来たばかりの転校生ぐらいですよ」
そ…そんなにも有名なのか…。
私としては普通に暮らしているつもりなんだが…。
「マユさんは三大勢力内でも一二を争う程の有名人ですよ?」
「ま…マジか…」
「噂では、マユさんの事を描いた本や映画などがあるとか……」
「ほ…本に映画!?」
いつの間にそんな事に!?
私の許可は取ったのか!?
肖像権は私には無いのか!?
「リアス…言ってなかったのですか?」
「その…私は既に知ってるものとばかり…」
いやいやいや!全然知らないからね!?
たった今、初めて聞いたからね!?
「確か、リアスもソーナ様も冥界で発売しているブルーレイは全て購入してますわよね?」
「あ…朱乃だってそうじゃない!」
一体どれだけ出てるんだ…。
と言うか、誰が企画したんだ?
「監督はサーゼクス様でしたよね?」
おいこら魔王~~~~~!!!
仕事せずに何をしとるんじゃ~~~~!!!
「じ…実は俺もこの間買いました…」
君もか!?匙君!?
「俺もずっと先輩に憧れてたんですよ…。ここに入学して、一目見た時から凄いって感じました」
いつの間に見られてたんだ?
「なんか…他の生徒達とは雰囲気が違うって言うか……顔つきが違うって言うか…。とにかく!いつかこの人みたいに大きな人間になりたいって思いました」
それはどういう意味での『大きい』かな?
もしも背の事だったらちょっと怒るよ?
「本当にお姉ちゃんはファンが多いわね」
「それだけお姉ちゃんが凄い証拠ですわ」
「やっぱりマユさんは凄いです…」
ファン…ねぇ?
別に悪い気はしないけど…。
それとアーシア?
そのキラキラした目はやめてね?
ちょっと気恥ずかしいから。
「と…とにかく、これからよろしく。何か困ったことがあったら、なんでも言ってくれ。喜んで協力しよう」
「ありがとうございます。その時は頼りにさせて貰います」
私と匙君は握手をした。
うん、彼とは仲良くなれそうだ。
今までは裕斗しか学園内で気軽に話せる異性がいなかったからな。
これは貴重だ。
「匙君…か。彼が僕の最大のライバルかな…!」
んん?なんか裕斗から変な闘志を感じるんですけど?
何をそんなにやる気になってるの?
と言うか、匙君を睨むのやめなさい。
彼ちょっとビビってるから。
その後、少しだけ二人とも話してから、その日は解散になった。
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・・・
・・
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次の日の昼休み。
私はリアスに朱乃、アーシアと白音と一緒に食堂に来ていた。
一緒の席にいるが、今いるのはリアスだけ。
朱乃は自分の注文を取りに行って、白音とアーシアは飲み物を取りに行っている。
「はぁ……」
さっきからずっとリアスは溜息ばかりをついている。
何があったのかは知らないが、そう言う姿はこっちも見ていて辛い。
「何があった?」
「え?…あぁ…ちょっと…ね…」
どう見ても『ちょっと』じゃないでしょうよ。
「ねぇ…お姉ちゃん…」
「ん?どうした?」
妙に真剣な顔でこっちを見るリアス。
「お姉ちゃんは……………結婚の事を考えた事はある?」
「結婚?」
いきなりどうした?
「結婚…か…」
「うん。やっぱり、結婚は愛し合う者同士がするべきよね?」
結婚と聞くと、やはり真っ先に想像するのは、リンドウさんとサクヤさんの事だ。
「そうだな…。私もその方がいいと思うよ」
「そ…そうよね!?」
お…おぅ?いきなり乗り出して来てどうした?
「お姉ちゃんは将来、自分が結婚することを考えた事はある?」
「自分が結婚…か…」
もしも私が結婚するとしたら……
『リーダー。背中は預けたぞ』
「………!?」
「ど…どうしたの?」
「い…いや…」
なんで急にソーマの事を想像したんだ!?
「お姉ちゃん…顔が赤いわよ?」
「そ…そうか?」
ヤバい……ソーマの事が頭から離れない…!
「な…なんで急にそんな話をしたんだ?」
今は兎に角話を逸らせよう!
「色々とあって……」
色々…ね。
もしかして、グレモリー家に関する事なんだろうか?
もしもそうだとしたら、私が深く関わるわけにはいかないな。
ちょっと悔しいけど。
「……リアス」
「お姉ちゃん?」
「私に出来る事なんてたかが知れているかもしれないが、話を聞く事ぐらいは出来る。この間、匙君にも言ったが、困ったことがあったのなら、なんでも相談してくれ。私はリアスの悲しそうな顔は見たくない」
「お…お姉ちゃん…」
「リアスにはいつでも笑顔でいて欲しいから…」
これは紛れもなく、私の本音だ。
「それは……完全に殺し文句よ…」
いきなりリアスが自分の胸を両手で押さえだした。
「本気に…なっちゃうじゃない……」
本気って何?
「あらあら?またお姉ちゃんが何かを言ったんですの?」
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
ちょっと驚きすぎじゃない?
「何かあったんですか?マユさん」
「いや…普通に話していただけだが…」
「本当ですか?」
「何故疑う?」
「マユさんの『普通』は普通じゃありませんから」
どーゆー意味?
「あわわわわ……部長さんが……」
アーシアもどうして慌てる?
その後も朱乃達に色々と聞かれながら昼食を食べた。
昼休みの間、ずっとリアスの顔が真っ赤だったけど。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
その日の夜。
私はいつものように寝る前に軽いストレッチ(腕立て100回。腹筋100回。背筋100回。スクワット100回。これをそれぞれ3セット)を終えて、シャワーを浴びた後にベットに横になった。
『ご主人様は相変わらずトレーニング中毒ですねぇ~』
「中毒言うな」
これぐらいでもしないとアラガミとは互角には戦えないっつーの。
休日にはいつもこれの数十倍はしてるけど。
『けど、そんな努力家なご主人様も素敵です♡』
「ありがとう」
相変わらず玉藻はあざといな。
それにもすっかり慣れたけど。
いい具合に身体も疲労したので、今日もぐっすりと熟睡出来そうだ。
『まるで、触れただけで色んな物を爆弾に変えられるサラリーマンな殺人鬼みたいですねぇ』
失礼な事を言うな。
誰が殺人鬼やねん。
就寝前に玉藻と望まぬコントをしていると、部屋にいきなり見た事のある魔法陣が出現した。
『あら?この魔力は…確か…』
この深紅の魔法陣は……グレモリー家のヤツか?
この家に掛けられている結界はあくまで認識阻害だけだから、普通に家の中に転移は出来るけど……。
なんでこんな夜中に?
いきなりの魔法陣を怪訝に思っていたら、そこから見た事のある人影が現れた。
それは……
「お姉ちゃん……」
ネグリジェ姿のリアスだった。
セクシーな肢体にスケスケのネグリジェの組み合わせは、同性から見ても非常に煽情的に見える。
リアスは私の方にやって来て、そのまま抱き着いてきた。
「リ…リアス?」
「お願い……私とセックスをして…」
「『はぁっ!?』」
いきなりどうした!?
熱でもあるんじゃないのか!?
『な…何を言いやがるですか!?この女悪魔は~!?ご主人様は私の物なんですぅ~!』
そこ、ちょっと黙る。
だが、リアスは玉藻の言葉を無視して話を続ける。
「もう……お姉ちゃんしかいないの…」
「いや…その……」
あ~~もう!
どうしろって言うんだよぉ~!?
何がどうしてこうなったぁ~!?
誰か私に教えてくれぇ~!!
この展開から分かるとは思いますが、次回から本格的にフェニックス編突入です。
果たして、焼き鳥さん(笑)の運命はいかに?
では、次回。