神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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今回で本当にアーシア編は終わりです。

アーシアとレイナーレはどうなるのでしょうか?


第29話 それから

 無事にアーシアを救出し、レイナーレ達も確保した。

今回は、その後の事を話そう。

 

サリエルを撃破した後に私は携帯でアザゼルさんに連絡した。

すると、なんと本人が直接、教会にやって来たのだ。

あれには驚いた。

てっきり、誰か使いの人を出すものとばかり思っていたから。

 

それはレイナーレ達も同様だったようで、本人達の方が私よりも驚いていた。

 

アザゼルさんは非常に申し訳なさそうにしていて、レイナーレ達の頭を無理矢理下げさせていた。

特に被害者であるアーシアにはアザゼルさん自身も頭を下げていた。

アーシアの方が却って困っていたけど。

 

その時に聞いたのだが、彼女達にはそれなりに罰を与えるとの事。

『罰』と聞いた時にドキッとしたけど、少なくとも処刑の類はしないと言っていた。

 

アザゼルさんが三人を連れて行った後、私と白音、アーシアは家に帰った。

 

自宅に帰った私達は、黒歌達にアーシアを紹介し、彼女の事情を話した。

彼女は緊張していたが、オーフィスちゃんとレドに話しかけられてリラックスしたようで、最後には笑顔を見せていた。

 

その後に一緒に夕食を食べて、お風呂にも入った。

 

その晩、アーシアはオーフィスちゃん達の部屋に泊まった。

 

次の日は休みだったので、ゆっくりと眠った。

 

そして、次の日……

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 もうすぐお昼に差し掛かろうとしている時間帯。

リビングにて私達はアーシアの今後について話し合っていた。

 

と言っても、もう殆ど結論は出ていたけど。

 

「あ…あの…本当に良いんですか?」

「ああ。私達は何も問題無い」

「それに、私達も同じようなものだし、今更って感じだにゃ」

「そうです。だから、遠慮をしなくてもいいんですよ」

「みなさん……」

 

かなり嬉しかったのか、アーシアは目尻に涙を貯めていた。

 

「アーシア、一緒に住む」

「そうだ!私もその方が嬉しいぞ!」

「オーフィスちゃん…レドちゃんも…」

 

幼女には流石のアーシアも勝てないのか、半ば覚悟を決めたような顔をしていた。

 

「…御迷惑でなければ、お世話になってもいいですか…?」

「「「「「勿論!」」」」」

「…皆さん、よろしくお願いします!」

 

そんな訳で、アーシアもこの家の一員になった。

 

その直後だった。

 

ピンポ~ン。

 

と、インターホンが鳴った。

 

「誰にゃ?」

「私が出よう」

 

一応、家主だしね。

 

私が玄関に行き、ドアを開けると、そこに立っていたのは……

 

「よっ」

「…………」

 

私服姿のアザゼルさんとレイナーレだった。

アザゼルさんはその手にアタッシュケースを持っていた。

 

「な…なんでここに?って言うか、どうやって…」

「今回はコイツについてな。そして、この家は地道に調べた」

 

意外と普通だな。

 

「レイナーレについて?」

「ああ。ちょっくら中に入らせて貰っていいか?」

「ど…どうぞ」

 

なんか、流れ的に家にあげる事になってしまった。

 

一体にしに来たんだろう?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 いきなりアザゼルさん達がやって来たことに、オーフィスちゃんやレド以外の全員が驚いていた。

 

「な…なんでコイツがいるにゃ!?」

「それに、レイナーレも…」

「レイナーレ様…」

 

二人をリビングに通して、椅子に座って貰う。

私も二人に対面するように座った。

 

「今回はな、二つの用事で来たんだ」

「二つ?」

「ああ。まず一つ目は、お前さんに今回の事の礼をしようと思ってな」

 

そう言えば、そんな事を言ってましたね。

 

「お前さんに、こいつをくれてやろうと思う」

 

そう言うと、彼は手に持っているアタッシュケースをドンとテーブルの上においてから、それを開けた。

 

中には、様々な形をしたアイテムが入っていた。

 

「こいつは全部、俺が開発した『人工神器』だ」

「「「人工神器?」」」

 

それって…文字通り、人工的に作られた神器ってこと?

 

「でも、私には既に…」

「それは分かってるって。だから、そこにいるお嬢ちゃん達にやろうと思ってな」

「わ…私達に…」

「これを?」

「おう。きっと、こいつが必要な時がやって来るだろうさ」

 

ま、これからも荒事はあるだろうね。

 

「色々とあるが、好きな奴をくれてやるよ。どれがいい?」

「いきなり言われても…」

「どれがいいのやら…」

 

効果を知らない事にはね…。

 

「これ、なんかいいにゃ」

「お?『風神』を選ぶとはなかなかに目が高いな」

「風神…」

 

なんか、強そうだな。

 

「こいつには風の妖精が封印されてるんだ」

「妖精が?」

「昔、悪戯好きの風の妖精がいた。あまり大ごとにはならなかったが、それでも被害は決して無視出来なかった。それで、俺達の手で何とかしようとしたんだが、結局、こっちの説得に全く応じずに、最終的には捕縛する羽目になった」

 

そうか……色々と大変だな。

 

「捕縛した後もなんとかして悪戯をした理由を聞こうとしたが、全くこっちの聞く耳を持たなかった。で……」

「封印した…と」

「そうだ。俺だって苦渋の選択だったがな」

 

ま、可能であれば封印なんてしたくないよな。

 

「こいつを使えば、風を自由に操れるようになる。試しに付けてみな」

「わ…わかったにゃ」

 

風神は、赤龍帝の籠手と同様に腕に固定するタイプで、黒歌は風神を右腕に装着した。

 

「サイズはピッタリのようだな」

 

装着した瞬間、風神の『風』と書かれた宝玉から光と共にフサフサでモフモフな小っちゃい獣が出現した。

 

「お、出て来たな」

「これが?」

「風の妖精?」

 

てっきり、シルフ的な物を想像してたけど、結構可愛いな。

 

『ふぅ…ようやく出られたよ。ん?』

 

お?なんか黒歌の方を見てるぞ?

 

『風神を付けてるって事は、君が僕のご主人?』

「そ…そう言う事になるのかにゃ?」

『やった!可愛い猫耳の女の子とか、僕的に役得じゃん!』

「お前…もしかして今まで黙秘権を使っていたのは…もしかして…」

『髭のおっさんやむさい連中よりは、可愛い女の子の方がいいに決まってるじゃん。どうやら、この家にはカワイ子ちゃんがいっぱいいるみたいだし』

 

あ、こっちの方を見てる。

 

『それに、伝説の二天龍を宿している美人さんまでいるなんて、普通に面白そうじゃん』

 

び…美人…か。

改めて言われると、なんか照れくさいな…。

 

「それじゃあ……」

『うん。僕はこの子を認めるよ。これからよろしくね、ご主人さま』

「よ…よろしくにゃ」

 

そう言うと、風の妖精は神器の中に戻っていった。

 

『基本的には僕はこの中にいるから』

 

あ、そこはドライグと同じなのね。

 

「まぁ…良かったじゃねぇか」

「私もいいですか?」

「おう。好きなのを選んでいいぜ」

 

白音はじ~っとケースの中を見ている。

 

「この指輪は…」

「そいつは『土星の輪』だな。それには大地の精霊『タイタン』の皮膚の欠片が入っていてな、身に付けるだけで力が増す」

 

シンプルだな。

けど、それ故に強力だ。

 

「なら、こいつも一緒にくれてやるか」

 

そう言ってアザゼルさんがケースから出したのは、『鉄』と書かれた鉛色の球だった。

 

「これは?」

「こいつは『鉄丸』。自身の身体を鋼鉄に変えられる」

「おぉ……」

 

けど、見た感じは唯の鉄の玉だよね…。

 

「この指輪はともかく、この球はどうやって使うんですか?」

「体内に取り込む」

「た…体内?」

「端的に言えば、口から飲み込め」

「の…飲む!?」

 

これを飲めと!?

 

「わ…分かりました…!」

「し…白音。別に無理しなくても…」

「大丈夫です。ちょっと固いチョコ○ールと思えば…」

 

それは無理があるだろ…。

 

「い…行きます…」

 

目を思いっきり瞑って、鉄丸を飲み込んだ。

 

すると……

 

「お?白音よ。額に文字が浮かんでいるぞ?」

「鉄…?」

「白音。肌の色が変わってる」

 

オーフィスちゃんの言う通り、白音の肌の色が浅黒くなっている。

 

「早速効果が出たな。試しに体を触ってみな」

 

白音を触ってみると、冷たく感じた。

 

「これは…鉄?」

「この状態で土星の輪で強化された一撃を喰らわせてみろ。かなりの一撃になるぞ」

 

確かに。

鋼鉄の一撃を喰らえば、ただじゃ済まない。

 

「戻るには頭の中で『戻れ』って念じればいい」

 

白音がそっと目を瞑って念じると、次第に肌の色が戻っていった。

 

「これで、それはお嬢ちゃんの物だ」

「ありがとうございます。有難く頂きます」

 

よかった。

これで二人にも強力な自衛力が出来たわけだ。

 

「んじゃ、次はコイツの事だな」

「は…はい」

 

レイナーレが済まなそうに俯いている。

 

「今回、こいつ等にはある程度の処分を与える事にした」

「処分?」

「まず、ミッテルトとカラワーナにはウチの本部にて働いてもらう事にした。なんでか号泣してたけどな」

 

二人共、単純にアザゼルさんの目に留まったことが嬉しいんだろうな。

 

「レイナーレはちっとばっかし別だ。話を聞いた限りじゃ、お前さんにこいつは二回も命を助けられたらしいな」

「まぁ…一応」

「二回にも渡る命の恩人には、並大抵の事じゃ恩返しにはならねぇ。だから、こっちも色々と考えた」

 

な…何を言う気だ?

 

「こいつ…レイナーレをお前さんの従者にしようと思う」

「「「「じゅ…従者!?」」」」

 

それって……付き人的な事?

 

「ほれ、お前からもなんか言え」

「は…はい」

 

さっきからずっと借りてきた猫状態だったけど、もしかして緊張してた?

アザゼルさんが一緒だったからかな?

 

「わ…私としても貴女には恩返しがしたいと思っていたし……アザゼル様の処分は渡りに船だったというか…その…つまり…」

 

段々とレイナーレの顔が真っ赤になっていく。

だ…大丈夫か?

 

「これからよろしくお願いします!ご主人様!」

 

全国の青少年が言われたいセリフを言われてしまったぞ…。

私、今は女なのに…。

 

「てな訳だ。こいつもこれから一緒にここに住まわせてやってくれ」

「……ん?」

 

なんだ?今、聞き逃せない言葉を聞いたような気が……

 

「従者である以上、常に傍に居続けなくちゃいけねぇだろ?だから、同居させて欲しいんだわ」

「「「「えええぇぇ~!?」」」」

 

マジっすかぁ~!?

 

「大丈夫だ。こいつの戸籍はこっちでちゃんと用意した。詫びのついでにそこのシスターのお嬢ちゃんの入学届けもな」

「わ…私も?」

「まぁな。お前さんもこの嬢ちゃんと一緒の学校に通いたいだろ?」

「い…いいんでしょうか?」

「詫びっつたろ?この程度で割に合うかは疑問だがな」

「そんな!充分過ぎます!」

 

彼女的にはそうだろうな。

アーシアってめっちゃ遠慮深いし。

 

「んな訳で、こいつの事をよろしく頼むわ」

 

なんだろう…丁度いい厄介払いをされた気が…。

 

「んじゃ、そーゆー事で」

 

言うだけ言って、アザゼルさんはそそくさと帰っていってしまった。

 

「あ……」

「行っちゃったにゃ…」

 

自由奔放だな……。

流石は堕天使だ。

 

「え…えっと…それじゃあ……」

 

まず、簡単に自己紹介をした後に、昼食にした。

オーフィスやレド…グレードレッドの事を話した時は滅茶苦茶驚いていたけど。

 

因みに、レイナーレは結構料理が上手で、黒歌と一緒に昼食を作っていた。

 

今後は、黒歌と一緒の家事をしていくと言っていた。

 

図らずも、一気に二人も同居人が増えた事になった。

 

部屋…大丈夫かな?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日の放課後のオカルト研究部部室。

 

「と言う訳で、レイナーレとアーシアが一緒に住むことになった」

「まさか…そんな事になるなんて…」

「アーシアさんはともかく、あの堕天使まで…」

「意外な結果になりましたね」

「けど、一気に賑やかになりましたよ」

 

今日のお弁当も黒歌と一緒に作ってくれたしね。

 

「近いうち、アーシアもここに転入してくる予定だ」

「そうなの。なら、ここにも一度招待するべきね」

「その時はよろしくしてあげてくれ」

「勿論ですわ」

 

皆もアーシアの事を受け入れてくれそうで良かった。

 

家に帰ったら、部屋割りの事を考えないとな…。

 

こうして、私に日々に平穏が戻って来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと体が不調なので、今回はここまで。

次回からはほのぼのとした話が続くかもしれません。

では、次回。


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