これからも、各章のクライマックスには大型アラガミとの戦闘を組み込もうと考えてます。
良かったら、皆さんも『この話の最後には何が出てくるかな~?』と予想してみてください。
突然出現したサリエルに対し、ネロの言う禁手化をすることになった私。
改めて思ったんだけど…それってオーバーキルじゃない?
(今、初めてアラガミに同情したぞ…)
せめて、一思いに倒してあげよう。
『では、よいか!奏者よ!』
「あ…ああ!」
ええい!もうこうなったらなるようになれだ!
『奏者よ、精神を集中させて、余とドライグに同調するのだ!』
「わかった」
なんて言ってますけど、実際はさっぱり分かりません。
けど一応、精神集中だけはしておこう。
その間にサリエルが襲ってこないのを祈るけど。
「お姉ちゃん…」
「先輩…」
「「マユさん…」」
皆が心配そうに見守る。
そんな顔をされたら、嫌でも頑張りたくなるじゃない!
『む?心なしか奏者の闘気が増幅したように感じたが?』
『確かに相棒の闘気が増しているのを感じる。これならば…』
『うむ!行けるぞ!!』
その時、私の体内から何かが吹き出るのを感じた。
まるで、純粋な『力』そのものが溢れ出るような…そんな感覚だ。
私は、本能に従うように叫んでいた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
そして、その瞬間は訪れた。
【Welsh Dragon Saber Balahce Bleaker!!!】
籠手からいつもとは違う音声が聞こえた後、私の身体は深紅の光に包まれた。
その光は徐々に増していき、同時に体に何かが装着されていく感覚があった。
いきなりの変化に警戒心を増したのか、サリエルは私にホーミングレーザーを撃ってきた。
「マユさん!!」
アーシアの叫びが聞こえるが、それを気にする余裕はない。
深紅の光にレーザーは阻まれて、私にダメージは無かった。
「き…効いてない!?」
原理は分からないけどね。
そして、変化が完了したのか、光が収束していった。
そこから現れたのは……
「こ…これは…!?」
私の身体は深紅のドレスに包まれていた。
胸の部分は大きく開かれていて、籠手はそのまま装着してある。
腹部や二の腕、首の部分も龍の鱗を模した深紅の装甲に包まれていて、緑色の宝玉が埋め込まれている。
それは脚部も同様で、膝の辺りまで覆われた深紅の装甲があり、両膝の部分に他と同様の緑の宝玉が埋め込まれていた。
しかも、耳にはご丁寧にイヤリングまでついていて、勿論緑の宝玉だった。
髪は赤いリボンで結ばれていて、なんでか可愛らしさを演出していた。
だが、問題はそこじゃない。
そう…一番の問題は……
「なんで前が透けているんだ……」
スカートの前方部分が何故かシースルーになっていて、丸見えになっているのだ!
しかも、なんか後ろがスースーするし。
「お…おおおおおおお姉ちゃん!!!」
リアスが滅茶苦茶狼狽えた声を上げている。
ふと、後ろを見てみると……
「はぁ…はぁ…はぁ…」
鼻血を出している皆がいた。
流石にアーシアは出していないが、それでも顔を真っ赤にしていた。
「お…お姉ちゃん!お…お…お…」
お?なによ?
「お尻が見えてるのよ!!」
「なにっ!?」
咄嗟に腰の部分に手を当ててみる。
すると……
「あ……」
確かに、尻が出ている……。
全部じゃないけど、これは半ケツ状態になってる…!
そうと分かると、急に羞恥心がMAXになった。
「ネ…ネロ!これはなんだ!?」
『余が生前着ていた舞踏着と言う名の男装だ』
「「「「「「「「「男装!?」」」」」」」」」
これのどこが男装だ!?
これじゃあ唯の痴女じゃないか!?
『嫌な予感が当たったか…すまん』
いや…今回はドライグに非は無いよ。
こうなるなら、やっぱりあのままで戦っておくべきだった…!
後悔先に立たずとはまさにこの事か…!
『奏者よ!恥ずかしがっている場合では無いぞ!』
「え?」
どうやら、このコントに痺れを切らしたらしく、先程まで様子見を決め込んでいたサリエルが本格的な攻撃態勢に移行していた。
「くっ…!」
こうなったら、格好に拘っている場合じゃないか!
少なくとも、水着よりはマシだ!
私は咄嗟に構えて神機を出す。
組み合わせはオウガテイルと戦った時と変わっていない。
『よし!ここで余のスキルを使うぞ!』
「スキル?」
そう言えば、さっきもそんな事を言っていたな。
何をする気なんだ?
『【皇帝特権】である!!』
ネロがいきなり叫んだかと思ったら、背中に違和感を感じた。
ちょっと見てみると、背中から三対の黒い羽が生えていた。
「え…えええっ!?」
「お姉ちゃんの背中から…」
「堕天使の翼が生えた!?」
なんじゃこりゃ…!?
『これが余のスキル『皇帝特権』である!』
「皇帝特権?」
『余が主張すれば、それだけで本来持ちえない能力を短時間のみだが獲得出来るのだ!』
「チ…チート…!」
なんだよ!?その化け物染みたチートスキルは!?
幾らなんでも反則だろ!?
『今回はそこにいる堕天使の娘達が持つ飛行能力を拝借した!』
「それでお姉ちゃんに翼が生えたのね…」
『何故三対になったかは分からんがな!はっはっはっ!』
何処からツッコめばいいのやら…。
『相棒!サリエルのレーザーが来るぞ!』
そうだった!
いつまでもネロとコントをしてる場合じゃなかった!
「皆!出来る限り離れてくれ!こいつは毒の鱗粉を使用する!下手に近づいたら危険だ!」
『毒』と聞いた途端、一気に皆が離れた。
うん、素直な事はいいことだ。
「ならば…!」
私はやって来たレーザーを神機で切り裂いた。
「行くとしようか!」
漆黒の翼を羽ばたかせて、空中に浮いた。
人生二度目の空中戦があるとは思わなかった…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
こちらが空中に浮いた事を見たサリエルは、私に向かって直線突進をしてきた。
だが、こちらの機動力は大幅に向上している。
そんな直線的な攻撃に当たる道理はない。
私もサリエルに突撃し、すれ違いざまに三回斬った。
「は…早い!」
裕斗から見ても早かったのか、声を上げて驚いている。
自分的には普通にしているつもりなんだが。
私達は移動の終わりと同時に振り向き、攻撃態勢に入る。
サリエルはレーザーを撃とうとし、私は神機を銃形態に変形させた。
サリエルのホーミングレーザーが複数飛来するが、それを回避しながら銃撃戦を演じる。
教会の中で、私達はまるでSF映画さながらの空中戦をしていた。
アサルトの銃身は連射機能に優れている為、こういった時にはうってつけだ。
事実、こうして縦横無尽に飛んでいても、かなりのバレットが命中している。
勿論、Oアンプルで回復することも忘れない。
互いに攻撃が一旦途切れた瞬間、私は神機を近接形態にしてから切り込みを掛けた。
だが、サリエルはそれを読んでいたのか、すぐさま高速光壁を展開した。
奴があれを展開している間は、私もサリエルも身動きが取れない。
だが、光壁の威力で教会の天井が完全に破壊され、空が丸見えになった。
光壁が消えるまでの間、私は息を整えながらスタミナを回復させていた。
「な…なによ…あれ……」
「あれが…赤龍女帝の戦い…!」
「凄すぎっス…!見た目は完全に私達と同じ堕天使なのに…次元が違いすぎるっすよ…」
なんか…堕天使三人娘が驚いてるんですけど。
私の戦いを始めて見る人って皆こんなんだよなぁ~。
光壁が消えると、サリエルは大空へと飛び出した。
「ちっ!面倒な事を!」
『任せろ!』
阿吽の呼吸と言うべきか、ドライグはすぐさま周囲に認識阻害の結界を張ってくれた。
これで、思う存分に戦える!
私もサリエルを追って空に飛びだす。
ここからが本番と言わんばかりに、サリエルもホーミングレーザー撃ち、その後に間髪入れずリフレクトレイを発射した。
ホーミングとは違い、何回も軌道を変化させるため、かなり避けづらい。
しかも、今回はホーミングのおまけ付き。
だが、今の私は自由に動ける翼がある!
回避は容易に出来る!
レーザーが命中する直前に起動を逸らし、同時に来る他のレーザーは剣で斬ったり装甲を展開したりして防ぐ。
そのままの勢いで突進、スカート部分を斬りつけた。
すると、その一撃でスカートの部位破壊に成功した。
「よし!」
『油断するな!活性化するぞ!』
んな事は分かってるつーの。
大きく体を広げ、活性化をアピールするサリエル。
すると、いきなり5本の光線を光線を拡散して発射するスプレッドレイを発射した。
下手に避ければ却って危険だ。
ここは堅実にガードでやり過ごそう。
装甲を展開し、光線を防ぐ。
だが、防御の衝撃が止んだ途端、サリエルが再び突進してきた。
そのままガードで防いだが、その勢いに負けて後退してしまった。
「くっ…!」
反射的にサリエルを蹴飛ばして間合いを取る。
同時に銃形態にしてからバレットを発射。
空中では受け身が出来ない為、そのまま命中した。
そして、再び空中での射撃戦が始まった。
だが、今回は前回とは違った。
サリエルも知恵を絞ったのか、動くと同時に所々に光球を設置している。
「あれは…!」
時限式の光線発射装置。
しかも、あれの破壊は不可能と来ている。
着実にダメージは与えてはいるが、なんだか追い詰められている感が否めない。
「ならば!」
私はバレットを連射しながら突貫、身動きを封じていく。
そして……
「はぁっ!!」
サリエルに近づいた途端、近接形態にしてから両足を切り裂いた!
更に、サリエルを追い越した後で振り向き、再び銃形態にして後ろからバレットを連射してやった!
この連続攻撃で両足の部位破壊も成功した。
「あと1か所…!」
最後は頭部だ。
だが、安心したのも束の間、先程まで設置してあった無数の光球から一斉に光線が発射された!
しかも、サリエルまで同時にホーミングレーザーを撃ってくる始末。
「くそっ!」
流石に、この光線の雨を躱しながらの攻撃は難しい為、私は回避に専念することにした。
刀身で斬ったり、装甲で防いだりしてなんとかダメージは受けなかったが、いつの間にかホーミングレーザーの一本が私の背後に迫っていた。
「しまっ…!」
言い終わる前にレーザーは私の背中に命中。
細いレーザーとは言え、アラガミの攻撃故にその威力は高い。
たとえ慣れていても、痛いものは痛い。
だが、今更叫び声をあげるようなことはしない。
「く…くそっ!!」
瞬時に籠手から回復剤を取り出して口に入れ、神器を銃形態に移行、そのままの流れでサリエルに狙いを定める。
「お返しだ!!」
奴の頭部を狙って全てのOPを使い切る勢いで撃ちまくる!
最後の一発を撃ったところで頭部が破壊された。
「これで止めだ!」
OPが無くなったから、当然近接形態に変形させる。
お約束のように突撃、だが、サリエルはそれを迎撃する為にスカートを広げて毒鱗粉を放った。
「今更!そんなものが効くか!!」
こんな事もあろうかと、密かに毒無効の強化パーツを装着していたのだ!
故に……
「私に毒は効かない!」
という訳である。
ダメージはあるが、そのまま毒鱗粉の中をくぐり抜けて、サリエルの胴体部に刀身を突き刺す!
「終わりだ!!」
そこから捕食形態にしてから、一気に牙を突き立てる!
そして、その場で全身を大きく回転させて勢いをつけてから、地面に投げつけた!
「落ちろ!!」
眼下にある教会の床に叩きつけられたサリエルはファンブルを起こしてふらつく。
そこに急降下して神機をその頭にブッ刺した!
「はぁ…はぁ…はぁ…」
それが文字通りの止めとなったようで、サリエルは呻き声を上げながら地に伏した。
「倒した…」
サリエルの死骸から降りて、いつものようにコアを回収を行う。
「これでよしっ…と」
コアが無くなったサリエルの死骸は、あっという間に霧散していった。
戦闘が終わったと判断した皆は、走って私の所にやって来た。
「お姉ちゃん!色々と言いたいことはあるけど、まずは……」
「背中は大丈夫ですの!?思いっきり命中してましたが…」
「心配無い。あれぐらいなら怪我の内に入らないよ」
「で…ですが……」
白音が今にも泣きそうな顔でこっちを見る。
そんな彼女を慰めるために、そっと頭の撫でてあげた。
「うぅ……このタイミングはずるいです…」
そうか?
私にはよくわからん。
「私に任せてください!マユさん!」
意気揚々と私の後ろに回ると、アーシアが私の背中の怪我を聖女の微笑で癒してくれた。
暖かい光が私をリラックスさせてくれる。
「これで大丈夫です」
「ありがとう、アーシア」
「い…いえ…。マユさんがしてくれたことに比べたら…」
いやいや、マジで有難いよ?
「これが怪我を癒す神器…」
「回復能力の神器とは珍しいですわね…」
「彼女らしい能力と思いますけどね」
私も激しく同感。
きっと、アーシアの生来の優しさ故に、この神器が宿ったんだろうね。
ほんと、マジで天使だわ、この子。
ホッと安心したら、堕天使の翼が消えた。
『どうやら時間切れのようだな。時間内にサリエルを倒せて何よりだ』
結構時間はギリギリだったのね。
中々に新鮮な体験だったけど。
「さて、これからどうする?」
「まずはアーシアを保護しないとな」
「じゃあ、ウチに来て貰ったらどうですか?」
「いいの?」
「いいですよね?マユさん」
「勿論だ。断る理由が無い」
「だ、そうです」
私と白音はアーシアを見ながら話した。
「い…いいんですか?」
「勿論と言った。今日は本当に色んな事があった。ゆっくりと休んで、心身共に回復してから今後の事を決めていけばいい」
「あ…ありがとうございます…」
あらら…また大粒の涙を流しちゃったよ。
ま、今まで溜め込んできた分、たっぷりと泣けばいいさ。
それが生きてるって証拠なんだからね。
「この3人はどうする気?」
「まずはアザゼルさんに連絡しようと思う」
「もう完全にご近所さんね…。相手は堕天使の総督なのに…」
そうかもしれないが、私的には女好きで酒好きなおっさんでしかない。
だからこそ親しみが持てるんだけど。
「3人は先に帰ってくれて構わない。報告は後日するよ」
「分かったわ。お姉ちゃんなら大丈夫だものね」
リアスは転移の為の魔法陣を展開した。
「それじゃあ、お言葉に甘えるわね」
「ああ。お疲れ様」
「それはお姉ちゃんの方ですわよ?」
呆れられながら3人は転移していった。
「さて、それじゃあ早速…」
携帯を出してアザゼルさんに掛ける。
その様子を、3人娘ははらはらとした様子で見ていた。
ようやく全ての事件が終わりを告げ肩の荷が下りた気分の私だったが、まさかこの時、遠くで密かにこの光景を見ている者がいるとは、思いもしなかった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「へぇ~……あれが現代の赤龍帝…か」
『話には聞いていたが…凄まじい強さだな』
「ええ。悔しいけど、今の私では彼女の足元にも及ばないわ」
『ならば、どうする?』
「決まってるじゃない。もっともっと戦って、今以上に強くなるのよ」
『そう言うと思っていた』
「それじゃあ、行くわよ」
『わかった』
(初めての禁手化でありながら、あれ程までに自在に戦うなんて……天才なんて言葉すらも生温いわね…)
「見てなさい。必ず貴女を超えてみせるわ。この…白龍皇がね」
『ドライグよ。次に会う時を楽しみにしているぞ』
ようやく最初のイベントが終了です。
次は第一章のエピローグ。
アーシアはなんとなく予想出来るかもしれませんが、レイナーレ達はどうなるのでしょうか?
では、次回。