神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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アーシア救出回になりますが、そう簡単には行かせませんよ~。

ドライグが言っていた通り、今回もアラガミが登場する予定ですが、

果たして何が出てくるのやら…?


第27話 私が君の希望になる

 アーシアの悲鳴を聞いて、私と白音はダッシュで地下空間へと向かった。

随分と階段が長いが、気にせず走る。

 

「扉があります!」

「蹴破る!!」

 

私達は一緒に足で木製のドアを蹴破った!

 

扉の向こうに広がっていた光景は……

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

「た…助けてくれぇぇぇぇぇェッ!!」

「レ…レイナーレ様ぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

黒いローブを着た連中が大勢いて、オウガテイルに襲われていた。

 

「こいつらは…」

「多分、堕天使を信仰している連中です。アーシアさんの儀式をするために集まったんだと思います」

 

確かに、石畳の床には赤い線で魔法陣のような物が書かれている。

私はそっち方面はからっきしだから、全然分かんないけど。

 

「……!マユさん!あそこに!!」

 

白音が指差した所には、十字架に拘束されたアーシアがいて、その傍には必死にオウガテイルを追い払おうとしているレイナーレがいた。

レイナーレの格好は最初に会った時と同じボンテージだった。

 

「なんなのよ!こいつらは!?」

 

光の槍で応戦しているように見えるが、全然ダメージを負わせられていない。

そりゃそうだ。

そんなもんでアラガミを倒せれば、誰も苦労しない。

 

余程必死なのか、侵入者である私達には全く気が付いていない。

 

「白音、分かっているな?」

「はい、手筈通りに」

 

作戦はシンプルだ。

私がアラガミ達を引き寄せて、その間に白音がアーシアを救出する。

白音の能力なら、アラガミはともかく、下級堕天使に後れを取る事はないだろう。

 

私は原初の火を収納して、神機を再び出す。

組み合わせはロートアイアン(ショートブレード)レイジングロア(アサルト)イオニアンガード(バックラー)だ。

この狭い空間なら、これがいいだろう。

 

「では……行くぞ!!」

 

私は全力で神機を床に叩きつけた!!

 

大きな金属音が周囲に響き渡る。

すると、全てのオウガテイルが一斉にこちらを向く。

 

「数は……」

 

騒ぎのせいで多くいるように見えたが、実際には5匹しかいない。

 

黒ローブの男達は、その殆どが死んでいるか、瀕死の重傷を負っている。

 

「ア…アンタは!?」

「マ…マユさんに白音さん!?」

 

オウガテイルの動きが止まったせいで、二人共こっちに気が付いた。

 

「アーシア!助けに来たぞ!!」

「マユさん……マユさん……」

 

余程怖かったのか、アーシアは外聞も無く泣きじゃくっている。

 

私は神機を銃形態にして、一番近くにいるオウガテイルに照準を合わせる。

 

オウガテイルは息を荒くしてこっちを見ている。

 

そして、オウガテイルに向かってオラクル弾を撃ち放つ!!

 

「行け!!白音!!!」

「はい!!」

 

私の攻撃と同時に白音が全力で走り出す!

 

銃撃はオウガテイルの顔面に直撃し、一発で沈黙する。

それが合図になるようにして、残りのオウガテイルが一斉に向かって来た!

 

「はぁっ!!」

 

進行方向にいるオウガテイルを、猫又特有の高い身体能力で回避していく白音。

その動きは見事の一言だった。

 

いつの間にか、白音の頭には猫耳が、スカートからは二本の尻尾が見えていた。

どうやら、無意識のうちに本気モードになっているようだ。

なら、私もそれに応えなくちゃな!!

 

私は神機を近接形態に変えて、向かってくるオウガテイルを迎撃する。

 

「まずは!」

 

目の前に迫ったオウガテイルに向かって五連撃!

死亡を確認すると同時に、次の獲物を見る。

 

『相棒!!』

「マユさん!!」

 

ドライグとアーシアの叫びが重なる。

 

ふと、私に影が迫っているのを感じた。

見上げてみると、二匹のオウガテイルが大きくジャンプしてこっちに攻撃を仕掛けようとしていた。

涎を垂らしながら大顎を開けるアラガミを見て、私は冷静に次の攻撃を考えた。

 

「そう…来るのなら!!」

 

大きく上半身を捻って、全力で横一閃!!

 

「これでぇぇぇぇぇっ!!!」

 

空中で真一文字に斬られたオウガテイル二匹は、真っ二つになりながら床に叩きつけられた。

 

『奏者よ!ラス1だ!』

「分かっている!!」

 

最後のオウガテイルが破れかぶれと言わんばかりに突撃してくる。

けど、最早そんな攻撃には当たらない。

 

アドバンスドステップで回避し、攻撃終わりの隙を狙ってライジングエッジ!!

 

「邪魔だっ!!」

 

顔を斬りつけられながら吹っ飛ぶオウガテイル。

そのまま壁に激突し、息絶える。

 

最後の奴を倒したことを確認した後、白音の方を見る。

 

どうやら、無事に白音はアーシアの所についたようで、呆けているレイナーレを他所にアーシアを十字架から降ろしていた。

 

ホッと一息ついた私は、三人の元に行く。

 

「怪我は無いか?アーシ「マユさん!!」…!?」

 

私が言い終わる前にアーシアが私に抱き着いてきた。

 

「怖かった……怖かったです……」

「アーシア……」

 

こうして触れているとよく分かる。

彼女の身体は物凄く震えている。

堕天使によって命を奪われそうになり、しかも、そこにアラガミの強襲。

怖くない方がおかしい。

寧ろ、今までよく頑張ったと褒めてあげたい。

 

私は神機を仕舞って、優しく彼女を抱きしめた。

 

「もう大丈夫だ。私がいる」

「はい……はい……」

「これから先、例え何があっても、必ず私が君を助けるよ」

 

まだ泣き止もうとしないアーシア。

恐怖心が取れるには、それなりの時間が掛かるか…。

 

「私が……君の『希望』になる」

 

神機使いは、人類の守護者であり、希望そのものだからね。

 

私は次にレイナーレの方を見る。

 

「な…なんでいるのよ……」

「話は外の二人に聞いた」

「…!カラワーナとミッテルトね…?」

「ああ。だが、私はお前の言葉で聞きたい」

「……っ!?」

 

なんでそんなに驚く?

私は単純に事情が聴きたいってだけじゃん。

 

「わ…私は…私は……」

 

俯いて体を震わせるレイナーレ。

どうやら、今まで溜め込んでいたものが吹き出ようとしているな。

 

「私は!あいつらを…私達を見下してきた連中を見返してやりたかったのよ!!アンタに解る!?下級堕天使ってだけで馬鹿にされて!暴力を振るわれて!迫害までされて!力の無い私達はこうでもしないとやっていけないのよ!!!」

 

レイナーレ……お前は…。

 

「こうでも…こうでもしないと!あの方の…アザゼル様の寵愛なんて永遠に受けられないじゃない!!!」

 

いつの間にか涙まで流していた彼女を見て、流石に説教染みた事は言えなくなった。

 

「お前の気持ちはよく分かる……なんて、安易な慰めは言わない。けど、アザゼルさんは決してお前達の事を見ていない訳じゃない」

「嘘言うんじゃないわよ…」

「嘘じゃない。今回の一件、彼は私に解決を依頼してきたんだ」

「な…なんですって!?」

 

見事なリアクション、あざーす!

 

「あの人はすぐにお前達の動きに気が付き、私に言ってきたんだ。なんとかして欲しい…とな。ここは悪魔であるリアスが管理している土地だ。アザゼルさんは『悪魔に借りを作りたくはない』と言っていたが、きっと本音は、君達の事をなんとかして助けたかったんだと思う。もしも、お前達がこのまま悪魔達に捕縛されれば、間違いなく殺されるだろう。だから、可能な限り犠牲者を出さない為に中立である私を頼って来た…という訳だ」

 

もう犠牲は出ちゃったけどね。

主にこの黒ローブの連中が。

けど、こいつらはある意味因果応報でしょ。

だって、金髪美少女を狙う大勢の黒ローブの男達なんて、私的にも死刑だし。

ま、私の場合は直接殺すんじゃなくて、『男の尊厳』を殺すけどね。

 

「ア…アザゼル様が……私達の事を…?」

「確かにお前がしたことは許されない。だが、だからこそ、生きて罪を償うんだ」

「あ…ああぁ……あぁぁぁ……」

 

とうとうレイナーレはその場に座り込んでしまった。

 

「白音。アーシアを頼む」

「分かりました」

 

アーシアを白音に預けると、私はゆっくりとレイナーレに近づき腰を低くした。

 

「お前もお前で今まで大変だったんだろう。今ぐらいは思いっきり泣け」

「あああぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁあああぁぁぁ~~~~!!!!!」

 

近づくや否や、すぐさまレイナーレは私に抱き着いて来て思いっきり泣いた。

 

私は敢えて、そのままにしておいた。

 

「なんでよ……ひくっ……なんで…アンタはそんなに優しくて……強いのよ……」

「マユさんが強いのは当たり前です。だって、この人は現代の赤龍帝にして、伝説の戦士『赤龍女帝』なんですから」

「「えええぇぇぇぇええぇぇぇっ!?」」

 

なんでここで言うかな…。

黙ってれば、唯の優しいお姉さんで通せたのに…。

 

「マ…マユさんがあの教会に伝わる救世主様なんですか!?」

「きゅ…救世主?」

 

一体、教会には何て伝わっているんだ…?

 

「天使様達が危機に陥った時、何処からともなく空から降りてきて、赤い龍を従えて異形の怪物達を倒した…と」

 

あ~…そう言えば、あの時ってサーゼクスさんやアザゼルさんの他にも、なんか天使っぽい人がいたっけ。

もしかして、あの人が色々とある事ない事を布教していったのかな…。

 

『…ある意味、正解だな…』

「今の状況はね」

 

実際、私は赤龍帝になってるし。

 

「堕天使側も似たようなものよ。今や貴女は、全ての堕天使達の恩人的な立場になってるわ」

 

そう言えば、さっきの二人組もそんな事を言ってたな…。

くそ…!私が知らない所で、伝説だけが独り歩きしていく…!

 

「ところでマユさん。その髪は一体…」

「ああ。これは……」

 

私がこの髪について説明しようとした時、白音が割り込んできた。

 

「説明もいいですけど、そろそろ行きませんか?部長達を待たせているかもしれません」

「そうだな」

 

裕斗もあの神父と戦っていたしね。

まだ戦り合っているのなら、助太刀しなくては。

 

「じゃあ、行こう」

 

私は条件反射的にレイナーレを横抱きにしてしまった。

 

「ちょ…ちょっと!?私は一人で歩けるわよ!」

「ついでだ」

「ついででなんでお姫様抱っこなのよ!?」

 

いいじゃん別に。

なんとなくだよ、なんとなく。

 

「お姫様抱っこ…」

「なんであの人が……」

 

こらそこ、恨みがましくこっちを見ない。

 

こうして、無事にアーシアを救出出来た私達。

 

だが、この時の私は完全に失念していた。

 

教会に来る前にドライグが言っていた言葉を……。

 

そう、ここにいるアラガミはアイツ等だけではなかったのだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 上に上がると、疲れた様子の裕斗が出迎えてくれた。

 

「先輩!無事だったんですね!」

 

自分も疲れているだろうに、元気よくこっちに駆け寄ってくれるなんて。

嬉しいじゃないの。

 

こっちに来た裕斗は、アーシアとレイナーレを交互に見た。

 

「…終わったんですね?」

「ああ」

「よかったですよ。本当に…」

「木場先輩。さっきの神父は何処に?」

「自分が不利になると、閃光弾を使って逃げてしまったよ」

「そうか…」

 

ちゃんと引き際を弁えているあたり、性格に反してただ者じゃないようだな。

 

「あのバカ…!雇い主の私より先に逃げるって有り得ないんですけど!」

「雇っていたのか?」

「そうよ。あの男とはギブアンドテイクの関係でしかないわ」

 

結構サッパリとしてるのね…。

 

「あ!お姉ちゃん!」

「御無事でなによりですわ」

 

どうやらリアス達も来たようで、入口の所に立っている。

傍には、さっきの堕天使娘達もいた。

 

「って!なんでお姫様抱っこなんてしてるのよ!?」

 

あ、ヤベ。

 

本能的に危機を感じた私は、咄嗟にレイナーレを降ろした。

その際、ちょっとだけ寂しそうにしていた。

 

「二人の元に行ってやれ」

「う…うん」

 

レイナーレは二人の元に走って行った。

 

それと入れ替わるようにしてリアス達がこっちに来た。

 

「その子が例のシスター?」

「そうだ」

 

リアスがアーシアと向き合う。

 

「初めまして。リアス・グレモリーよ」

「は…初めまして…。アーシア・アルジェントです…」

 

完全に畏まっているな。

ま、初対面なんだから、仕方ないか。

 

「で?あの三人はどうすればいいのかしら?」

「そうだな……」

 

なんとかしてあの三人をアザゼルさんに引き渡さないといけないけど……。

電話でもするか?

 

そんな呑気な事を考えていると、急に覚えのあるプレッシャーが私を襲った。

 

「なっ…!この感覚は…!」

『相棒!来るぞ!』

「お…お姉ちゃん?どうしたのよ?」

「来るって…何がですか?」

『決まっている!アラガミだ!!』

 

ドライグが叫んだ瞬間、教会の天井が崩れ去った。

 

「……っ!皆!教会の外に出ろ!!」

 

次の瞬間、全員が弾かれるようにして外に出た。

 

すると、大きく空いた教会の天井の穴からゆっくりと一体のアラガミが現れた。

 

上半身は人型をしているが、下半身が完全に異形と化している。

 

その頭とスカート上の器官から覗く大きな眼がこちらを見ている。

 

「お…お姉ちゃん……まさか…あれも…?」

「ああ。アラガミだ…」

「そんな…!見た目は殆ど人ですのに…!」

 

全く…!教会にこいつが出てくるなんて…!

 

「皮肉と言うレベルじゃないな…!」

 

そうだろう?

 

「サリエル!」

 

私が名を叫んだ途端、全員がこっちを見た。

 

「サ…サリエル!?それって天使の名前じゃ…」

「その通りだ。アラガミは古今東西の様々な神々や神話に登場する存在の名を冠しているんだ…!」

「そうだったんですね…!」

 

オカルト研究部の皆はすぐにでも動けるようにしている。

一方の堕天使達は……

 

「ちょ…ちょっと!?明らかにヤバい雰囲気バリバリなんスけど!?」

「ど…どう考えても、勝てる雰囲気じゃない…」

「で…でも、下手に逃げて追いかけられたらアウトだし…」

 

頼むから、下手な動きだけはしないでくれよ…堕天使三人娘。

 

「って…あれ?なんかアイツ、口に黒い物を咥えてないっスか?」

「なに?」

 

ミッテルトの言う通り、サリエルの口付近を見てみると、確かに何かを咥えている。

あれはなんだ?

なんだか羽っぽく見えるけど…。

 

唐突に風が吹き、サリエルの口から黒い羽らしき物が落ちた。

そのまま風に乗ってこっちまでやって来た。

 

「こ…この羽は!」

「ま…まさか…!」

「ドーナシーク…なの?」

 

ドーナシーク?

誰それ?

 

「周辺の見張りに行ってから姿が消えたと思ったら…」

「アイツに食べられちゃったんスか…?」

 

おいおい…マジですか?

ここに来るまでに堕天使を捕食って…。

 

「マユさん。それってつまり…」

「アイツには…いや、アラガミと言う存在にはもう、『光の力』は通用しなくなった…と言う事になるな」

 

これであいつは光に対する耐性を完全に身に着けた。

奴等は更に賢くなったという事か…!

 

「にしても…空中浮遊するアラガミなんて……」

「お姉ちゃんには圧倒的に不利ですわ…!」

 

普通はね。

けど、あいつとは何回も戦ってる。

攻略法は完全に頭に叩き込んであるよ。

 

『その時こそ余の出番だ!!』

「ネ…ネロ?」

 

いきなりどうした?

 

『余のスキルを使えば、空中浮遊など朝飯前よ!』

「で…出来るのか!?」

『当然であろう!しかし、それには条件がある!』

「じょ…条件?」

『うむ!その条件とは……』

 

もったいぶるなよ!

サリエルが動き出しちゃうよ!

 

禁手化(バランス・ブレイカー)状態になる事だ!』

「禁手化…!」

 

神器の奥の手……あれを使えというのか…。

 

正直言って、使わなくても倒せるけど。

でも……

 

(ネロの好意を無駄にはしたくないしなぁ…)

 

したらしたで拗ねそうだし。

 

仕方ない!

 

「了解した。頼むぞ」

『余に全て任せるがよい!』

『それが不安なんだがな…』

 

ドライグ、分かってても言うなって。

 

『では…ゆくぞ!!』

 

果たして、どんな姿になるのやら…。

 

変な格好じゃありませんよーに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ終わらないアーシア編。

次こそ最後にしたい……と思う。

そして、今回の事で完全にアーシアとレイナーレのフラグを回収しました。

晴れてハーレムの仲間入りです。

では、次回。

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