神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

3 / 82
いつの間にか、お気に入り登録が21、UAが490になってました。

正直言って、我が目を疑いました。

こ…これは、期待をされているのか…?

ゔ…胃が……。


序章 ~チュートリアル~
第1話 赤い龍と魔王


 遠い昔、天使と悪魔、堕天使の三大勢力は、果ての無い戦いを続けていた。

悠久の昔から続いている戦いの発端はなんだったのか。

それを記憶している存在は、最早いない。

唯一つ確かなのは、このままの状況が継続したならば、犠牲者は増える一方で、確実に三者とも絶滅を免れないと言う事実だけだった。

 

そんな中、三大勢力の戦争にある転機が訪れた。

戦場に突然、赤い龍と白い龍が乱入し、互いに戦いを始めてしまったのだ。

その強大さから、二天龍と呼ばれた二匹の龍……ドライグとアルビオン。

二匹の戦いの余波は、それぞれの勢力に甚大な被害を与えた。

 

流石にこの状況を静観出来るほど、三大勢力も愚かではなかった。

彼らはすぐさま、即席の停戦協定を結んで、二天龍を食い止めるために行動を開始した。

 

だが、そんな彼らの決意は、本来なら居ない筈の第4の勢力の出現によって覆される。

 

突如として戦場に出現した謎の存在。

三大勢力の戦士達だけのみならず、二天龍にも無差別に襲い掛かる異形の怪物。

これによって、彼らの戦場は未だ嘗て無いほどに混乱していくのであった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「くそっ!本当に何なんだよ!?」

 

攻撃を仕掛けながら、堕天使の総督であるアザゼルは悪態をつく。

 

彼の放つ光の槍は、眼前にいる異形……ザイゴートに命中するが、全く効いていなかった。

それもその筈。

細胞結合が非常に強固なアラガミに、通常の攻撃が効くはずがない。

それは、例え人外の攻撃であっても例外では無かった。

 

反撃と言わんばかりに、アザゼルに向かって空気の弾を放つザイゴート。

それを避けて、少し距離をとるアザゼル。

 

「そっちはどうだ?サーゼクス」

「駄目だ…!最初はなんとか倒せたが、二回目以降は何故か僕の『滅びの魔力』も通用しなくなってしまった…」

 

全てを文字通り消滅させる『滅びの魔力』。

だが、アラガミ達はそれすらも学習し、それに対する耐性を付けてしまった。

もう…彼の力は通用しない。

 

「ミカエル…そちらは?」

「こちらも被害が甚大です…!しかも……」

 

黄金の翼を背に持つ大天使『ミカエル』。

彼の背後には、二天龍の一角である赤龍帝『ドライグ』がいた。

 

ドライグは、その龍爪の一振りで天使達を一掃し、そのテイルアタックで大地を吹き飛ばした。

 

「畜生…!『前門の虎、後門の狼』とはよく言ったもんだぜ…!」

「全くだね…!」

 

苦い顔で冷や汗を掻くサーゼクス。

その顔には焦燥が浮かんでおり、内心で焦っているのを感じさせた。

 

複数存在ししているザイゴート達は、彼らを包囲して、攻撃態勢に入ろうとする。

 

その時だった。

 

「着地成功」

 

全身黒ずくめの、歪な形の剣を持った少女が、あろうことかドライグの頭の上に降り立ったのだ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 魔法陣に入った直後、私はいつの間にか何故か空の上にいた。

現在絶賛落下中。

 

風でちょー髪が逆立ってます。

 

そんな中、相変わらず冷静な頭で、色んな事が気になっていた。

 

まず一つ。

 

「空……紫だ」

 

どう考えても普通じゃない。

一体ここはどこやねん。

 

そして…

 

「いつの間にか靴…履いてる」

 

下らないとか言わない。

私的には気になってるんだから。

 

魔法陣に入ったのは室内。

勿論、靴なんて履いてない。

なのに、気が付けば私の足には靴が装着されていた。

ヒールが高い黒い靴。

なんとも女性的だ。

 

細かい所にも気を使う。

何気に私の中で足長おじさんに対する好感度が上がった。

 

最後に、私にとって一番重要な事。それは…

 

「全然…怖くない……」

 

そう。

実は私、超がつくほどの高所恐怖症なのだ。

脚立に乗っただけでも足が震えるほどで、こんな状況は、いつもの私なら顔から涙と鼻水、涎を全部出して喚き散らす筈なのだ。

なのに、今の私は全然恐怖心を感じない。

不思議なぐらいに無表情だ。

 

呑気にそんな事を考えていると、段々と地表が見えてきた。

 

見えたのは、宙に浮いている人型の何か。

背中に色んな羽が生えている事から、どうやら人間では無い様だ。

って……それに対して何か言うことは無いのか?私……

 

その近くには白と赤の大きな龍?…みたいな奴がいた。

あれ…龍だよね?

なんか大暴れしてるけど。

 

そして、その周囲には見た事のあるような姿が見えた。

あれは……

 

「ザイゴート…」

 

神機使いにはお馴染みの、序盤の雑魚キャラだ。

けど、腐ってもアラガミ。

通常戦力では到底太刀打ち出来ない。

見た感じ、あの人達は苦戦しているみたいだ。

このままじゃヤバいかもしれない。

 

内心ちょっとだけ焦っていると、いきなり突風が吹いた。

 

「あ」

 

その影響で、私の身体は大きく落下位置を変えて、赤い龍の方へと向かって行った。

このままではぶつかってしまう。

 

「着地……出来るかな?」

 

って言うか、やらなきゃヤバいでしょ。

 

ドンドンと龍が迫って来る。

私はなんとか空中で体勢を整えて、着地の準備をする。

チャンスは一瞬だ…!

 

龍の頭部に最大まで近づいた瞬間、私は両足を上手く曲げて、落下の衝撃を最小限に止めることに成功した。

 

着地したのは、赤い龍の頭だった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 着地に成功した私は、まず状況を確認した。

眼前にはザイゴートが10体。

蝙蝠のような羽を持つ人達と、黒い羽根を持つ人達、白い羽を持つ人達(一人だけ金色の羽を持つ人がいるけど)が大勢。

そんでもって、私の足元には赤い龍がいて、その隣には白い龍がいる。

 

「…………ナニコレ?」

 

思わず呟いてしまった私は悪くないはずだ。

 

「それはこちらのセリフだ!!」

 

お?なんか下から声がするぞ?

 

「もしかして…」

 

今喋ったのって、この赤い龍か?

 

「貴様が何者かは知らんが……我々の邪魔をすると言うのであれば、容赦はせんぞ!!」

 

そう言うと、赤い龍はその大きな手をこちらに向けてきた。

このまま私を潰す気か?

 

「潰れてしまえ!人間!!」

 

キャータスケテー。

なんて言う訳ないだろ。

って言うか、喋るんだね。

 

「に…逃げるんだ!!!」

 

蝙蝠の羽を生やした赤い髪のお兄さんが叫ぶが、気にせず私は目の前の龍の手に向き合う。

私は自分の『左腕』を振り上げて、その大きな手を受け止めた。

その際、『ズーン!』と言う擬音が聞こえたような気がしたけど。

 

「ば…バカな!?俺の手を受け止めだと!?」

「そ…そんな事が……」

 

あ、なんか皆がちょー驚いてる。

そっか、今の私ってば神機使いになってるから、これぐらいはもう楽勝なんだ。

ある意味、私も立派な人外なんだなぁ~…。

 

「はぁ……。これ…邪魔」

 

龍の手を受け止めている左腕を一旦引いて、その後に全力でグーパンチを叩きつける。

するとどうでしょう。

 

「ぐあっ!?」

 

龍の手は勢いよく飛んでいき、私の視界から消えたではありませんか。

これでスッキリ。

 

「俺の手を一撃で払いのけるとは……」

「この人間は…何者だ…?」

 

なんか二匹の龍が大人しくなったぞ?

さっきの大暴れはどうした?

ま、私的には都合がいいけど。

 

「おい…赤い龍」

「ドライグだ」

「…え?」

「俺はドライグ。こいつらは赤龍帝と呼んでいる」

「ふ~ん…」

 

ドライグ…ね。

どっかで聞いたことがあるような…。

別にいいか。

 

「今からあの宙に浮いている丸い奴を仕留めるから、ちょっとだけジッとしてて」

「なんだと?貴様…あれがなんなのか知っているのか?」

「一応」

 

説明したいのは山々だけど、今は急いでこいつらをなんとかしたい。

私は神機を肩に担ぐと、ドライグの鼻先まで歩いて行った。

すると、ザイゴートに囲まれている人達が叫びだした。

 

「おい!お前が何者かは知らねぇが、今はそこでじっとしてろ!」

「それより、早く彼女をあそこから降ろさなければ!」

「だが…このままでは身動きが出来ない…!」

 

あ、やっぱりピンチなのね。

けど、アラガミ相手に神機使いでもないのによく持った方だよ。

いや、マジで。

 

「大丈夫」

「「「え?」」」

 

初めての戦闘で、まさかの空中戦だけど、なんとかなるでしょ。

実際、やるしかないんだし。

 

私の出現に、ザイゴート達は一斉に私の方を向いた。

どうやら、何にもしていないにも関わらず、私にヘイト値が集中しているようだ。

これは都合がいい。

 

「…よし」

 

大きく足を曲げて、跳躍の体勢をとる。

今更ながら、ちょっとだけ助走をした方が良かったかも、なんて思ったりもしたが、なんかカッコ悪いため、そのまま飛ぶことにした。

 

「はぁっ!!」

「「「と…飛んだ!?」」」

 

全力で大きくジャンプ。

目指すは一番近くにいるザイゴート。

 

オラクル細胞によって大幅に強化された私の脚力は、想像以上のジャンプ力を見せてくれた。

 

かなりの距離があった筈だが、なんとかギリギリでザイゴートに届いた。

そのままザイゴートにしがみつき、神機を全力で突き刺す!

 

「消えろ」

 

血飛沫と共にザイゴートは獣のような断末魔を上げ、息絶えた。

 

「た…倒した!?」

「んなバカな!?俺等がどんだけ攻撃しても碌にダメージを与えられなかったんだぞ!」

「それを…たったの一撃で…!」

 

なんか言ってるけど、今は無視無視。

 

「まずは一体」

 

次のターゲットを視界に入れて、ザイゴートの死骸を足場にして再び飛ぶ。

その直後にザイゴートが空気弾を撃ってきたが、ジャンプ直後だった為、丁度いいタイミングで回避出来た。

 

「くらえ」

 

次は着地もせずに、そのまま両手持ちで斬撃を浴びせる。

再び血飛沫が私の身体にかかる。

 

「二体目」

 

死骸が消え去る前に、また足場代わりにして、次の目標へと飛ぶ。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

               サーゼクスSide

 

 

 

 突如、空から降ってきた謎の少女。

気配から人間であることは分かるが、それにしては異常な力だった。

ドライグの掌底を片手で受け止めるだけではなく、その手を拳の一撃で払いのけた。

しかも、信じられないような跳躍力で飛んで、我々が倒せなかった謎の怪物を、その手に握った歪な形の青い剣の一撃で仕留めてみせた。

彼女の全長と同じぐらいの大きさの剣を、まるで手足のように扱うその姿は、最早私の知っている人間から完全にかけ離れていた。

 

少しでも足を滑らせれば、地面に叩きつけられて確実に死ぬ。

なのに、彼女は全く怯むことなく敵へと向かって行く。

 

その姿が、僕には何故か美しく見えてしまった。

 

「なんなんだよ……あの嬢ちゃんはよ…」

「まさか…天から遣わされた戦士とでも言うのでしょうか……」

 

アザゼルとミカエルも驚きを隠せないでいるようだ。

僕と同様に、その目は大きく見開かれていて、気が付けば戦場にいる全員が彼女の勇姿に魅了されていた。

そう…あの二天龍すらも。

 

「あの小娘は……」

「何者だ……」

 

先程から、二天龍はピクリとも動かない。

本来ならば、またとないチャンスの筈なのに、何故か彼女の方を見続けていた。

 

その時だった。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

いきなり、悲鳴が聞こえた。

それは、同じ悪魔の友人であるセラフォルーのものだった。

彼女は、先程から少女が倒している化け物の一体に襲われてた。

なんとか反撃をしてはいるが、全くと言っていいほど通用していない。

 

その時だった。

少女がセラフォルーを襲っている奴へと向かって行き、見事に仕留めてみせたのだ。

 

一瞬だけセラフォルーの方を見たが、すぐさま次の獲物に飛んでいった。

 

僕は急いで彼女の元へと駆けつける。

 

「大丈夫だったかい?」

「う…うん…」

「…?どうした?」

「あの子…私の横を飛んでいく時に一言言ったの…」

「え?」

「『よかった』って…」

 

セラフォルーは茫然としていて、何故か目の焦点が合っていない。

まさか…?

 

そんな事を考えている間にも、彼女は次々と仕留めていく。

 

そして、遂に最後の一体になった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 危なかった~。

なんか魔法少女のコスプレをしている女の子がザイゴートに襲われそうになってて、咄嗟に進路を変えて駆けつけたけど、間に合ってよかった。

 

正直なところ、実は不安だった空中戦だが、思ったよりも順調で、とうとうラスト一体になった。

 

ま、小型のアラガミならこんなもんだろう。

 

最後のザイゴートに組み付き、神機で叩き斬る。

急所に当たったのか、大量の血を噴き出して尽きた。

 

その時、私は重要な事を思い出した。

 

(戻る時の事をすっかり忘れてた…)

 

ザイゴートの死骸はすぐさま落下を開始する。

ドライグまではかなりの距離がある。

どうする?ダメ元で飛んでみるか?

てか、それしかないじゃん。

 

「よし」

 

沈みゆく体に気合いを入れて、思いっきりジャンプする。

けど……

 

「あ…」

 

案の定、届きませんでした。

 

う~ん…上手い事着地出来れば何とかなるか?

 

頭を切り替えて、すぐに次の事を考える。

すると…

 

「え?」

 

誰かに空中で抱きかかえられた。

なんでかお姫様抱っこだったけど。

 

見てみると、さっきの赤い髪のイケメンのお兄さんだった。

 

「ありがとう」

「それはこちらのセリフだよ」

 

お兄さんは爽やかな笑顔で微笑みかけた。

これは…そこらの女の子ならイチコロだな。

ってゆーか、私の身体、血塗れなんですけど…いいの?

 

「君のお陰で我々は助かった。もし君が来てくれなかったら、僕達は全滅していたかもしれない」

「そう」

 

あ、なんか気にしてないっぽい。

本人が気にしてないなら、それでいいけど。

帰ったらシャワー浴びないとな。

 

「ところで、君は一体…」

「私は…」

 

名前を言おうとしたが、咄嗟に思いとどまる。

安易に名前を言っていいのか?

そもそも、なんて名乗ればいい?

前世の名前か?

いやいや…流石にそれは無いだろう。

ちゃんと転生したのだから、生まれ変わったと言う意味も込めて、別の名前を名乗るのが筋ってヤツだ。

けど、なんて名前にしよう?

やっぱり、アバターの名前をそのまま名乗るか?

 

ある意味、戦いの時以上に頭を巡らせていると、いきなり私の身体が光り出した。

何なのかと思っていると、私の足元に来た時と同じ魔法陣が形成されていた。

 

「こ…これはっ!?」

「もう時間か…」

「時間!?もしかして、行ってしまうのかい!?」

「ああ」

 

こればっかりは仕方がない。

どうやら、ミッションは無事にクリアーしたみたいだし。

 

「せめて…せめて名前を教えてくれ!」

 

そんな事言ってもな…。

もうすぐ消えちゃうし…。

 

心の中で慌てた私は、咄嗟にこう名乗った。

 

「私は…神を喰らう者(ゴッドイーター)

「ゴッド…イーター…」

 

つい名乗ってしまったが、これって個人名じゃなくて職業名じゃね?

ま、いいか。

どうせ、もう会うことなんてないんだろうし。

 

「…さよなら」

 

最後に一言だけ挨拶をしてから、私の身体はその場から消えて、元の場所へと戻っていった。

 

あ、そう言えば、あのお兄さんの名前を聞いてない。

一期一会なら、せめて聞いておけばよかったかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思考錯誤しながらの執筆でしたが、これで本当に良かったのかな…?

なんか、不安で一杯です…。

まだまだ原作前の話は続きます。

では、次回。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。