そして、ようやくフリードの初登場。
果たして、マユとフリードはどのような邂逅をするのでしょうか?
アーシアとレイナーレと再会した次の日の放課後。
私と白音は予定通りにリアス達に相談することにした。
場所はオカルト研究部の部室。
いつものように皆でソファーに座っている。
「……と、言う事なんだ」
「例のシスターが堕天使と……」
「そうなんです」
私達は可能な限り事細かに昨日の事を報告した。
「そのシスターっ子と遊んだのは、まぁ…百歩譲っていいとして…」
「またあの子を逃がしてしまったんですのね…」
「申し訳ない…」
あんな感じで来られたら、誰だって普通に対処しちゃうって。
「過ぎた事を言っても仕方がないわ。問題は、その二人が一緒だったって事よ」
「ですね。これで、今までの情報の信憑性が一気に増しましたね」
黒歌の情報や、オーフィス達の言っていた事か。
「これはあくまで私の私見なのだが……ここら辺で動いた方がいいと思うんだ」
「それは……歴戦の戦士としての勘って事かしら?」
「そう思って貰って構わない」
歴戦って言うのはちょっと大げさだけどね。
「この場合は、『女の勘』と言った方が正しいかもしれませんわね」
「どちらにしても、先輩の勘なら信じられます」
裕斗からの信頼は絶大だなぁ~。
そこまで大層な存在でもないって思うんだけど。
「そうね。それに、そろそろ傍観は終わるべきだと私も思ってたしね」
「リアス……」
「行きましょう。その教会に」
リアスの言葉に、全員が頷いた。
「行くなら早い方がいい。何かがあってからでは遅い」
『その意見には俺も賛成だ』
「ドライグ?」
今までだんまりを決め込んでいたのに、急にどうした?
「どういう事ですか?」
『例の教会の方角から僅かにアラガミの気配を感じた』
「なんだって?」
マジかよ…!
『しかも、今回は複数の気配を感じる。内一体は中々に大きい気配だ。恐らく…』
「大型……」
『多分な。あのシスターがいなくても、どっちみちあの教会には行く羽目になったようだな』
皮肉なもんだ…!
どうしてこうもトラブルが続くんだ?
今朝の星座占いで私が12位だったからか?
それとも、ラッキーアイテムのピ○チュウのぬいぐるみを持っていないせいか?
「どうやら、教会に行く理由が増えたようね?」
「ああ」
「勿論、私も行きますからね」
「分かっている」
白音としても、前回のリベンジをしたいだろうし、最悪の場合は私がアラガミや堕天使を引き付けて白音や裕斗にアーシアの救出を頼むかもしれない。
スピードに優れた裕斗や、猫又故に身体能力が高い白音ならば適任だろう。
「皆……行くぞ!」
「「「「はい!!」」」」
こうして、オカルト研究部による、謎の教会侵入作戦が敢行された。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
既に黒歌には今日の事は伝えてある為、皆と一緒に真っ直ぐに教会へと向かった。
当然、移動手段は転移で。
「ここですね…」
「想像以上に古いわね…」
「殆ど廃墟に等しいですわね」
「確かに、この立地条件ならバレにくいかもしれませんね」
私達は教会の近くの場所に転移した。
遠目でも少しだけ教会が見える。
「ここまで近くまで来れば、嫌でも堕天使の気配が分かりますわね」
「人数は……四人?」
「一応、念には念を入れていこう」
全員が私の言葉に頷いてくれた。
教会の近くは林になっていて、隠れたりトラップを仕掛けたりするには丁度いい環境だった。
「私が先頭を行く」
「なら、僕が殿をします」
そして、その間にリアス、朱乃、白音が位置する。
当然、常に周囲を見渡して警戒しているが。
もうすぐ教会の入り口といったところで、上の方から二つの気配がした。
「あれ~?こんな所に悪魔どもがいるんですけど~?」
「大方の予想はしていたがな。まさかこのタイミングで来るとは思わなかったぞ」
そこにいたのは、金髪ツインテールのゴスロリを着た堕天使と、黒のボディコンスーツを着た青いロングヘア―の堕天使だった。
性別は両方とも女。
「出たわね!堕天使!」
キッ!とリアスが二人を睨み付けて、臨戦体制をとる。
「ん?そこのお前…」
「な…なんだ?」
なんか、青髪の堕天使が私の方を見てるんだけど…。
「もしかして、あいつがレイナーレ様が言っていた人間ッスか?」
「間違いない。アーシアの話とも一致する」
アーシアの名前が出た…。
これはもう確定事項だな。
「ま、確かに強そうではあるが…」
「所詮は人間。堕天使である私達に勝てるわけ無いって!」
お二人さんは完全にこっちを見下している。
さて…どうするか。
相手が油断している隙に気絶でもさせるか?
それとも、ここをリアス達に任せるか…。
そんな事を考えていると、堕天使達の後ろに見たことがあるような影が見えた。
って、このパターンって前にも無かったか?
なんて、考えてる場合じゃないっつーの!
「ドライグ!!」
『おう!』
瞬間的に飛び上がり、同時に赤龍帝の籠手と神機を出した。
組み合わせは毎度お馴染みの空木レンカ装備だ。
「お姉ちゃん!?」
「部長!堕天使達の後ろに!」
「あれは…まさか!?」
「マユさん!」
皆の叫びを背中越しに聞きながら、私は堕天使達の後ろの出現したアラガミを見る。
そこにいたのは、前と同じようにザイゴートで、大顎を開けて堕天使達を捕食しようとしてる。
「な…なんすか!?」
「き…貴様!?」
必然的に堕天使達も構えるが、私はそれを無視して、二人の背後にいるザイゴート二匹を一閃した。
「はぁっ!!」
当たり所が良かったのか、二匹とも一撃で倒せた。
「う…後ろ…?」
「こいつらは……!」
「噂で聞いた…謎の化け物!?」
大顎を開いたまま絶命したザイゴートの死骸を見た二人は、自分達が死の一歩手前にいた事を察したのだろう。
大きく目を見開いたまま顔中に汗を掻いて、ゆっくりと地面に降り立ち、そのままその場に座り込んだ。
どうやら、腰が抜けたようだ。
「も…もしかして……助けられた…?」
「なんで…そんな事をするッスか…?」
毎度毎度聞くなコノヤロー。
「誰かを助けるのに理由はいらない」
「「なっ……!?」」
驚いてるところ悪いが、それが私だ。
ザイゴートの死骸が霧散していく中、リアス達が着地した私に近づいてきた。
「もう…いきなりジャンプするからびっくりしたわよ?」
「すまん…」
「お姉ちゃんらしいといえば、それまでですけどね」
それを言われたら、ぐうの音も出ない。
「流石は先輩です。瞬時に対応して見せるなんて」
「凄いジャンプでした」
そう言えば、かなりのジャンプ力が出てたな。
咄嗟の事だったから、加減が出来なかった…。
未だに呆けている堕天使達に、リアスがゆっくりと近づいた。
「貴方達は、喧嘩を売る相手を間違えたのよ」
「ど…どういう事だ…?」
「私達ならいざ知らず、貴方達はあろうことか、伝説の赤龍女帝を敵に回したのよ」
「「せ…赤龍女帝!?」」
あ、やっぱり堕天使達の間でも、その中二病全開の異名で呼ばれてるのね…。
「あ…あの…大戦の最中…アザゼル様を救ったとされる…伝説の戦士…!」
「そ…そんな…!私達は…堕天使全体の大恩人に喧嘩を売ってしまったんスか…?」
ええっ!?そんな事になってんの!?
あのおっさん!この子達に何を吹き込んだのさ!?
堕天使達が私と、私の左腕についた籠手を交互に見ている。
「お前達に聞きたいことがある」
「な…なんでしょうか!?」
「何なりとお聞きください!」
おい、急に態度が変わりすぎだろ。
「レイナーレとアーシアは何処にいる?」
「レ…レイナーレ様はともかく、なんでアーシアまで…?」
「アーシアさんは、私とマユさんの大事なお友達です」
「「ええっ!?」」
さっきから驚きっぱなしだな。
疲れないのか?
「や…ヤバいっスよ……カラワーナ…!赤龍女帝の友達に手を出したとばれたら……」
「成り上がるどころの話じゃない!間違いなく処刑だ!!」
手を出す…だと?
「どういう事だ?」
「じ…実は……」
このゴスロリの堕天使……ミッテルトの話によれば、今まで下級堕天使として虐げられてきたレイナーレは、アーシアの神器を取り出して自分の物として、周囲の連中を見返すと同時に、憧れているアザゼルに少しでも近づこうとしている…らしい。
初めて会った時、自分の事を『至高の堕天使』と言っていたのは、こういう訳だったのか…。
自分が成り上がった暁には、自分の事をそう言う風に呼ばせるつもりだったんだろう。
けど……
(それは単純に黒歴史になるだけだぞ…)
後で悶絶するのは自分だぞ?
『だとしたら非常に不味いぞ!奏者よ!』
「ネロ?どういう意味だ?」
『基本的に神器とは所有者の魂と直結しているのだ!もしも神器を人為的に取り出されたら……』
「アーシアが…死ぬ…?」
『神器を取り出す儀式にはそれなりに準備がいる為、まだ大丈夫かもしれんが、急いだほうがいい事には変わりないぞ!』
くそ…!
流石は神様の贈り物って事かよ!
「リアス!朱乃!」
「分かってるわ、お姉ちゃん!」
「ここは私達にお任せください」
頼もしいよ…全く!
「白音!祐斗!」
「「はい!」」
二人は力強く頷いてくれた。
「カラワーナとミッテルト…だったな?」
「は…はい!」
「赤龍女帝に名前を憶えられた…」
そこ感動するところ?
「自分達がしたことに後悔はあるか?」
「そ…それは……」
「私は……」
二人は顔を伏せて、悲しそうな顔をしている。
どうやら、罪悪感はあるようだな。
「…早まった真似だけはするなよ」
「「……!!」」
「後悔の念があるのなら、生きて償う事を考えろ。きっと、アザゼルさんもそう望んでいる」
「アザゼル様が…?」
「私はアザゼルさんに今回の事件を『解決』して欲しいと直接頼まれた。その際、彼は一言もお前達を『始末しろ』とは言っていない。この意味が分かるか?」
「それは……」
「アザゼルさんは、お前達に償いのチャンスを与えようとしているんだ。彼の想いを無駄にしないでくれ」
「ア…アザゼル様……」
「すみません……すみません……」
とうとう二人が泣き出してしまった。
これなら大丈夫かもしれない。
私は泣いている二人を他所に、祐斗と白音と一緒に教会へと向かった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
林の中を走って行き、私達は教会に辿り着いた。
林の中を走るのに神機は少々邪魔な為、途中で籠手の中に収納した。
『相棒…』
「分かっている」
ここまで来れば、私にもアラガミの気配が感じられる…!
けど、それと同時に……
「誰かがいますね…」
「私にも分かります。この扉の向こうから、濃密な殺気が漂ってきますから」
まるで、誰かが来るのを待っているかのようだ。
けど、ここで立ち止まるという選択肢は無い。
『奏者よ。分かっておるな?』
「うん」
人に神機は使わない。
だから、やるべき事は一つ。
「頼む」
【Saber!】
籠手から音声が発せられる。
次の瞬間、私の髪が金色に染まり、後頭部に髪が纏められる。
そして、頭頂部からくせっ毛がピコンッと飛び出る。
最後に、私の右手に深紅に染まった炎を模った剣が握られた。
「先輩の髪が…!」
「それに、その剣…。それが、ネロさんの力なんですね?」
『その通りだ!これこそが余の至高の作品!隕鉄の鞴…
これがネロの剣…!
いい具合だ。
私は正面を向いて、手に持った剣でズタボロになった木製の扉を切り裂いた。
扉は相当に脆くなっていたようで、簡単に崩れ去った。
「きっと来ると思ってたぜぇぇぇぇぇぇぇ~?お嬢ちゃぁぁぁぁぁぁん?」
そこにいたのは、白髪に白い服と言った、全身が真っ白な若い神父だった。
年の頃は私達と同い年か少し上ぐらいか?
「テメェらの魂胆は分かってるぜ?可愛い可愛いアーシアちゃんを助けに来たんだろ?けぇぇどぉぉぉぉ……」
神父は素早い動作で私に向かって銃を向けた。
「そうは問屋が卸しませえぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」
すぐさま引き金が引かれるが、私には丸見えだった。
「ふん」
横に一閃すると、銃弾は私に当たることなく真っ二つになった。
「なっ!?そんな両手剣で銃弾を斬るとか有り得ないんですけど!?大人しく撃たれろや!!」
「絶対に嫌」
私はアイツの懐に飛び込むために全力で走った。
神父は近づけさせないように銃を撃ち続けるが、私は『左手』で飛んでくる銃弾を全部掴んだ。
「んなっ!?銃弾を斬った次は掴むのかよ!?テメェ本当に人間か!?」
「一応な!!」
あっという間に懐に潜り込むことに成功した私は、原初の火で彼の銃を破壊した。
「ちっ!ざっけんな!!」
懐から光る剣を取り出して斬りかかって来るが、私は何もしなかった。
何故なら……
「させないよ!!」
「て…てめぇぇぇ!!!」
裕斗が背後からやって来ていて、すぐに攻撃出来るようにに構えていたからだ。
その手には黒い剣が握られていた。
「なっ!?俺様の剣が!?」
「
わぉ……そんな剣を持ってたんかい。
「やるな、祐斗」
「先輩ほどじゃありませんよ」
「戦闘中にイチャついてんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!」
「男の嫉妬は見苦しいよ!!」
なんか生き生きしてるな…。
「ここは僕に任せてください!」
「わかった!頼んだぞ!」
私は白音と目配せをする。
すると、地下から聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。
「キャァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「っ!!この声は!?」
「急ぎましょう!!」
『二人共気を付けろ!恐らく地下にアラガミがいるぞ!!』
よりにもよって、地下空間に現れるとか…!
しかも、そこにはアーシアがいるんだぞ!!
焦る気持ちを全力で抑えながら、私は白音と一緒に地下へと急いだ。
アーシア!今行くぞ!!
セイバーモード初登場。
そして、フリードは今のところはいいとこ無し。
けど、こいつも徐々に……?
さぁ、アーシアとレイナーレの最後のフラグを建てる時が来た!!
では、次回。