神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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今回、ようやく物語が動きます。

そして、ようやくフリードの初登場。

果たして、マユとフリードはどのような邂逅をするのでしょうか?



第26話 堕天使と神父

 アーシアとレイナーレと再会した次の日の放課後。

私と白音は予定通りにリアス達に相談することにした。

 

場所はオカルト研究部の部室。

いつものように皆でソファーに座っている。

 

「……と、言う事なんだ」

「例のシスターが堕天使と……」

「そうなんです」

 

私達は可能な限り事細かに昨日の事を報告した。

 

「そのシスターっ子と遊んだのは、まぁ…百歩譲っていいとして…」

「またあの子を逃がしてしまったんですのね…」

「申し訳ない…」

 

あんな感じで来られたら、誰だって普通に対処しちゃうって。

 

「過ぎた事を言っても仕方がないわ。問題は、その二人が一緒だったって事よ」

「ですね。これで、今までの情報の信憑性が一気に増しましたね」

 

黒歌の情報や、オーフィス達の言っていた事か。

 

「これはあくまで私の私見なのだが……ここら辺で動いた方がいいと思うんだ」

「それは……歴戦の戦士としての勘って事かしら?」

「そう思って貰って構わない」

 

歴戦って言うのはちょっと大げさだけどね。

 

「この場合は、『女の勘』と言った方が正しいかもしれませんわね」

「どちらにしても、先輩の勘なら信じられます」

 

裕斗からの信頼は絶大だなぁ~。

そこまで大層な存在でもないって思うんだけど。

 

「そうね。それに、そろそろ傍観は終わるべきだと私も思ってたしね」

「リアス……」

「行きましょう。その教会に」

 

リアスの言葉に、全員が頷いた。

 

「行くなら早い方がいい。何かがあってからでは遅い」

『その意見には俺も賛成だ』

「ドライグ?」

 

今までだんまりを決め込んでいたのに、急にどうした?

 

「どういう事ですか?」

『例の教会の方角から僅かにアラガミの気配を感じた』

「なんだって?」

 

マジかよ…!

 

『しかも、今回は複数の気配を感じる。内一体は中々に大きい気配だ。恐らく…』

「大型……」

『多分な。あのシスターがいなくても、どっちみちあの教会には行く羽目になったようだな』

 

皮肉なもんだ…!

 

どうしてこうもトラブルが続くんだ?

今朝の星座占いで私が12位だったからか?

それとも、ラッキーアイテムのピ○チュウのぬいぐるみを持っていないせいか?

 

「どうやら、教会に行く理由が増えたようね?」

「ああ」

「勿論、私も行きますからね」

「分かっている」

 

白音としても、前回のリベンジをしたいだろうし、最悪の場合は私がアラガミや堕天使を引き付けて白音や裕斗にアーシアの救出を頼むかもしれない。

スピードに優れた裕斗や、猫又故に身体能力が高い白音ならば適任だろう。

 

「皆……行くぞ!」

「「「「はい!!」」」」

 

こうして、オカルト研究部による、謎の教会侵入作戦が敢行された。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 既に黒歌には今日の事は伝えてある為、皆と一緒に真っ直ぐに教会へと向かった。

当然、移動手段は転移で。

 

「ここですね…」

「想像以上に古いわね…」

「殆ど廃墟に等しいですわね」

「確かに、この立地条件ならバレにくいかもしれませんね」

 

私達は教会の近くの場所に転移した。

遠目でも少しだけ教会が見える。

 

「ここまで近くまで来れば、嫌でも堕天使の気配が分かりますわね」

「人数は……四人?」

「一応、念には念を入れていこう」

 

全員が私の言葉に頷いてくれた。

 

教会の近くは林になっていて、隠れたりトラップを仕掛けたりするには丁度いい環境だった。

 

「私が先頭を行く」

「なら、僕が殿をします」

 

そして、その間にリアス、朱乃、白音が位置する。

当然、常に周囲を見渡して警戒しているが。

 

もうすぐ教会の入り口といったところで、上の方から二つの気配がした。

 

「あれ~?こんな所に悪魔どもがいるんですけど~?」

「大方の予想はしていたがな。まさかこのタイミングで来るとは思わなかったぞ」

 

そこにいたのは、金髪ツインテールのゴスロリを着た堕天使と、黒のボディコンスーツを着た青いロングヘア―の堕天使だった。

性別は両方とも女。

 

「出たわね!堕天使!」

 

キッ!とリアスが二人を睨み付けて、臨戦体制をとる。

 

「ん?そこのお前…」

「な…なんだ?」

 

なんか、青髪の堕天使が私の方を見てるんだけど…。

 

「もしかして、あいつがレイナーレ様が言っていた人間ッスか?」

「間違いない。アーシアの話とも一致する」

 

アーシアの名前が出た…。

これはもう確定事項だな。

 

「ま、確かに強そうではあるが…」

「所詮は人間。堕天使である私達に勝てるわけ無いって!」

 

お二人さんは完全にこっちを見下している。

 

さて…どうするか。

 

相手が油断している隙に気絶でもさせるか?

それとも、ここをリアス達に任せるか…。

 

そんな事を考えていると、堕天使達の後ろに見たことがあるような影が見えた。

って、このパターンって前にも無かったか?

 

なんて、考えてる場合じゃないっつーの!

 

「ドライグ!!」

『おう!』

 

瞬間的に飛び上がり、同時に赤龍帝の籠手と神機を出した。

組み合わせは毎度お馴染みの空木レンカ装備だ。

 

「お姉ちゃん!?」

「部長!堕天使達の後ろに!」

「あれは…まさか!?」

「マユさん!」

 

皆の叫びを背中越しに聞きながら、私は堕天使達の後ろの出現したアラガミを見る。

そこにいたのは、前と同じようにザイゴートで、大顎を開けて堕天使達を捕食しようとしてる。

 

「な…なんすか!?」

「き…貴様!?」

 

必然的に堕天使達も構えるが、私はそれを無視して、二人の背後にいるザイゴート二匹を一閃した。

 

「はぁっ!!」

 

当たり所が良かったのか、二匹とも一撃で倒せた。

 

「う…後ろ…?」

「こいつらは……!」

「噂で聞いた…謎の化け物!?」

 

大顎を開いたまま絶命したザイゴートの死骸を見た二人は、自分達が死の一歩手前にいた事を察したのだろう。

大きく目を見開いたまま顔中に汗を掻いて、ゆっくりと地面に降り立ち、そのままその場に座り込んだ。

どうやら、腰が抜けたようだ。

 

「も…もしかして……助けられた…?」

「なんで…そんな事をするッスか…?」

 

毎度毎度聞くなコノヤロー。

 

「誰かを助けるのに理由はいらない」

「「なっ……!?」」

 

驚いてるところ悪いが、それが私だ。

 

ザイゴートの死骸が霧散していく中、リアス達が着地した私に近づいてきた。

 

「もう…いきなりジャンプするからびっくりしたわよ?」

「すまん…」

「お姉ちゃんらしいといえば、それまでですけどね」

 

それを言われたら、ぐうの音も出ない。

 

「流石は先輩です。瞬時に対応して見せるなんて」

「凄いジャンプでした」

 

そう言えば、かなりのジャンプ力が出てたな。

咄嗟の事だったから、加減が出来なかった…。

 

未だに呆けている堕天使達に、リアスがゆっくりと近づいた。

 

「貴方達は、喧嘩を売る相手を間違えたのよ」

「ど…どういう事だ…?」

「私達ならいざ知らず、貴方達はあろうことか、伝説の赤龍女帝を敵に回したのよ」

「「せ…赤龍女帝!?」」

 

あ、やっぱり堕天使達の間でも、その中二病全開の異名で呼ばれてるのね…。

 

「あ…あの…大戦の最中…アザゼル様を救ったとされる…伝説の戦士…!」

「そ…そんな…!私達は…堕天使全体の大恩人に喧嘩を売ってしまったんスか…?」

 

ええっ!?そんな事になってんの!?

あのおっさん!この子達に何を吹き込んだのさ!?

 

堕天使達が私と、私の左腕についた籠手を交互に見ている。

 

「お前達に聞きたいことがある」

「な…なんでしょうか!?」

「何なりとお聞きください!」

 

おい、急に態度が変わりすぎだろ。

 

「レイナーレとアーシアは何処にいる?」

「レ…レイナーレ様はともかく、なんでアーシアまで…?」

「アーシアさんは、私とマユさんの大事なお友達です」

「「ええっ!?」」

 

さっきから驚きっぱなしだな。

疲れないのか?

 

「や…ヤバいっスよ……カラワーナ…!赤龍女帝の友達に手を出したとばれたら……」

「成り上がるどころの話じゃない!間違いなく処刑だ!!」

 

手を出す…だと?

 

「どういう事だ?」

「じ…実は……」

 

このゴスロリの堕天使……ミッテルトの話によれば、今まで下級堕天使として虐げられてきたレイナーレは、アーシアの神器を取り出して自分の物として、周囲の連中を見返すと同時に、憧れているアザゼルに少しでも近づこうとしている…らしい。

 

初めて会った時、自分の事を『至高の堕天使』と言っていたのは、こういう訳だったのか…。

 

自分が成り上がった暁には、自分の事をそう言う風に呼ばせるつもりだったんだろう。

けど……

 

(それは単純に黒歴史になるだけだぞ…)

 

後で悶絶するのは自分だぞ?

 

『だとしたら非常に不味いぞ!奏者よ!』

「ネロ?どういう意味だ?」

『基本的に神器とは所有者の魂と直結しているのだ!もしも神器を人為的に取り出されたら……』

「アーシアが…死ぬ…?」

『神器を取り出す儀式にはそれなりに準備がいる為、まだ大丈夫かもしれんが、急いだほうがいい事には変わりないぞ!』

 

くそ…!

流石は神様の贈り物って事かよ!

 

「リアス!朱乃!」

「分かってるわ、お姉ちゃん!」

「ここは私達にお任せください」

 

頼もしいよ…全く!

 

「白音!祐斗!」

「「はい!」」

 

二人は力強く頷いてくれた。

 

「カラワーナとミッテルト…だったな?」

「は…はい!」

「赤龍女帝に名前を憶えられた…」

 

そこ感動するところ?

 

「自分達がしたことに後悔はあるか?」

「そ…それは……」

「私は……」

 

二人は顔を伏せて、悲しそうな顔をしている。

どうやら、罪悪感はあるようだな。

 

「…早まった真似だけはするなよ」

「「……!!」」

「後悔の念があるのなら、生きて償う事を考えろ。きっと、アザゼルさんもそう望んでいる」

「アザゼル様が…?」

「私はアザゼルさんに今回の事件を『解決』して欲しいと直接頼まれた。その際、彼は一言もお前達を『始末しろ』とは言っていない。この意味が分かるか?」

「それは……」

「アザゼルさんは、お前達に償いのチャンスを与えようとしているんだ。彼の想いを無駄にしないでくれ」

「ア…アザゼル様……」

「すみません……すみません……」

 

とうとう二人が泣き出してしまった。

これなら大丈夫かもしれない。

 

私は泣いている二人を他所に、祐斗と白音と一緒に教会へと向かった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 林の中を走って行き、私達は教会に辿り着いた。

林の中を走るのに神機は少々邪魔な為、途中で籠手の中に収納した。

 

『相棒…』

「分かっている」

 

ここまで来れば、私にもアラガミの気配が感じられる…!

けど、それと同時に……

 

「誰かがいますね…」

「私にも分かります。この扉の向こうから、濃密な殺気が漂ってきますから」

 

まるで、誰かが来るのを待っているかのようだ。

けど、ここで立ち止まるという選択肢は無い。

 

『奏者よ。分かっておるな?』

「うん」

 

人に神機は使わない。

だから、やるべき事は一つ。

 

「頼む」

【Saber!】

 

籠手から音声が発せられる。

次の瞬間、私の髪が金色に染まり、後頭部に髪が纏められる。

そして、頭頂部からくせっ毛がピコンッと飛び出る。

最後に、私の右手に深紅に染まった炎を模った剣が握られた。

 

「先輩の髪が…!」

「それに、その剣…。それが、ネロさんの力なんですね?」

『その通りだ!これこそが余の至高の作品!隕鉄の鞴…原初の火(アエストゥス・エストゥス)である!』

 

これがネロの剣…!

いい具合だ。

 

私は正面を向いて、手に持った剣でズタボロになった木製の扉を切り裂いた。

 

扉は相当に脆くなっていたようで、簡単に崩れ去った。

 

「きっと来ると思ってたぜぇぇぇぇぇぇぇ~?お嬢ちゃぁぁぁぁぁぁん?」

 

そこにいたのは、白髪に白い服と言った、全身が真っ白な若い神父だった。

年の頃は私達と同い年か少し上ぐらいか?

 

「テメェらの魂胆は分かってるぜ?可愛い可愛いアーシアちゃんを助けに来たんだろ?けぇぇどぉぉぉぉ……」

 

神父は素早い動作で私に向かって銃を向けた。

 

「そうは問屋が卸しませえぇぇぇぇぇぇぇん!!!!」

 

すぐさま引き金が引かれるが、私には丸見えだった。

 

「ふん」

 

横に一閃すると、銃弾は私に当たることなく真っ二つになった。

 

「なっ!?そんな両手剣で銃弾を斬るとか有り得ないんですけど!?大人しく撃たれろや!!」

「絶対に嫌」

 

私はアイツの懐に飛び込むために全力で走った。

神父は近づけさせないように銃を撃ち続けるが、私は『左手』で飛んでくる銃弾を全部掴んだ。

 

「んなっ!?銃弾を斬った次は掴むのかよ!?テメェ本当に人間か!?」

「一応な!!」

 

あっという間に懐に潜り込むことに成功した私は、原初の火で彼の銃を破壊した。

 

「ちっ!ざっけんな!!」

 

懐から光る剣を取り出して斬りかかって来るが、私は何もしなかった。

何故なら……

 

「させないよ!!」

「て…てめぇぇぇ!!!」

 

裕斗が背後からやって来ていて、すぐに攻撃出来るようにに構えていたからだ。

その手には黒い剣が握られていた。

 

「なっ!?俺様の剣が!?」

光喰剣(ホーリー・イレイザー)。文字通り、光を喰らう剣だよ」

 

わぉ……そんな剣を持ってたんかい。

 

「やるな、祐斗」

「先輩ほどじゃありませんよ」

「戦闘中にイチャついてんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!」

「男の嫉妬は見苦しいよ!!」

 

なんか生き生きしてるな…。

 

「ここは僕に任せてください!」

「わかった!頼んだぞ!」

 

私は白音と目配せをする。

 

すると、地下から聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。

 

「キャァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

「っ!!この声は!?」

「急ぎましょう!!」

『二人共気を付けろ!恐らく地下にアラガミがいるぞ!!』

 

よりにもよって、地下空間に現れるとか…!

しかも、そこにはアーシアがいるんだぞ!!

 

焦る気持ちを全力で抑えながら、私は白音と一緒に地下へと急いだ。

 

アーシア!今行くぞ!!

 

 

 

 




セイバーモード初登場。

そして、フリードは今のところはいいとこ無し。

けど、こいつも徐々に……?

さぁ、アーシアとレイナーレの最後のフラグを建てる時が来た!!

では、次回。

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