神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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余裕がある時は、可能な限り頑張りたい。

そんな感じでやっていきます。

正直言って、ちょっと眠いですけど。



第22話 シスター少女との出会い

 私が起き上がらせたのは、見目麗しい金髪美少女だった。

非常に無垢な目をしていて、まるで疑う事を知らないような子だ。

 

「大丈夫でしたか?」

 

白音も心配だったのか、後ろからやってきた。

 

「そうだ、これを」

 

私は、女の子の頭にヴェールを乗せる。

 

「あ……すみません」

 

さっきから謝ってばかりだな…。

 

「あれ?それって…」

「ん?」

 

白音が何かに気が付く。

彼女の目線を追っていくと、そこには旅行鞄があった。

 

そう言えば、この町で彼女のような外国人は珍しいな。

この鞄を見る限りは、どうやらこの子は旅行者のようだ。

冷静に考えると、この町でシスターなんて見た事なかったし。

なんせ、悪魔が管理している土地だしな。

ある意味、当然か。

 

「ここには旅行か何かか?」

「いえ……実はですね、今日からこの町にある教会に赴任することになってるんです。それで、その教会に向かっていたんですけど……」

 

もしかして……迷ったのか?

 

って言うか……

 

「この町に教会なんてあったか?」

「私もよく分かりませんね。この町にはもう一年以上住んでますけど…」

 

だよなぁ~。

私達が知らないだけかな?

 

「情けない事に迷ってしまったようで…。誰かに聞きたくても、私は日本語があまり上手に話せなくて……」

 

ん?今なんつった?

日本語が得意じゃない?

けど……

 

(私も白音も普通に話してるけど……)

 

これはどーゆー事?

 

(フハハハハハハハハハ!!!またまた有難いA・U・Oの説明タイムだ!)

 

またかい。

 

(貴様等がこの小娘と普通に話せているのは、我等の影響だ)

 

影響とな?

 

(最早言うまでもないが、我等は古今東西に名立たる英霊だ。それが赤龍帝の籠手に宿っている以上、貴様も多くかれ少なかれその影響を受けている)

 

つまり……?

 

(今の貴様にとって、英語で会話するなど朝飯前と言っているのだ)

 

けど、白音も普通に話してるけど?

 

(それは、お前の近くにいる事で一時的に影響を受けているに過ぎない。5メートル程離れれば元に戻る)

 

マジかよ…。

もう本気でとんでもない事になってるな…。

私は自動翻訳機か。

 

(いいではないか。戦いだけが全てではないぞ?)

 

正論だけに言い返せない……。

 

「一応、地図は持ってるんですけど……上手く読めなくて…」

 

困り顔で肩にかけているポシェットから折りたたまれた地図を取り出した。

 

「貸してみてくれ」

「はい」

 

彼女から借りた地図を広げて見てみると、そこには駒王町の拡大された地図が書かれてあった。

 

「ふむ……」

「この〇が書かれてある場所が教会ですかね?」

「はい。そこに行きたいんですけど…」

「ここは……町外れの方角だな」

 

これは私達にも分からない筈だ。

私も白音も、この方角には今まで行ったことが無い。

思ったよりも駒王町って広いんだなぁ~。

 

「マユさん…」

「分かっている」

 

ここで会ったのも何かの縁。

旅は道連れ世は情け…だ。

 

「困っている者を放ってはおけない。私達で良かったら連れて行ってやろう」

「え…ええ?よろしいのですか?」

「構わない。途中までなら道も知っているし、このままでは日が暮れてしまう」

「その通りです。困った時はお互い様です」

「ああぁ……ありがとうございます!これも主のお導きですね……」

 

首から下げているロザリオを握りしめながらお礼を言う女の子。

気持ちは解るが、大げさだなぁ…。

 

そんな訳で、私と白音でシスターの女の子を教会までエスコートすることになった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 地図を片手に、教会までの道を行く私達。

私が地図を持ち、右側に白音、左側にシスター少女がいる。

 

「わかりますか…?」

「大丈夫だ、問題無い」

「マユさん、それはフラグです」

 

分かってるよ。

場を和ませるための冗談だって。

 

途中で、児童公園の横を通り過ぎる。

その時、子供の泣き声が聞こえてきた。

 

「うあぁぁぁぁぁん!」

 

どうやら、こけてしまい膝を擦りむいたようだ。

母親が駆け寄って、子供をあやしている。

 

私的には何気ない光景だったのだが、彼女にとってはそうではなかったらしい。

 

「ちょっとすいません」

「「あ……」」

 

シスターっ子が子供に駆け寄って、近くに座り込む。

 

「男の子なら、簡単に泣いてはいけませんよ」

 

そう言いながら、優しく子供の頭を撫でる。

言葉は通じていないだろうが、その気持ちは伝わったようで、子供はいつの間にか泣き止んでいた。

 

それを見た彼女は、自分の手を子供の怪我に向けてそっと添えた。

すると、彼女の手から淡い緑の光が発せられ、子供の怪我に照射される。

その瞬間、子供の怪我が見る見るうちに治癒していき、数秒後には完全に完治していた。

 

「マユさん……あれって…」

「ああ。間違いないだろうな…」

 

気のせいか、左手が疼く。

 

(ほう…?あれは……)

(あれは……)

(はははっ!随分とレアなヤツを持ってるじゃないか!)

(傷を癒す神器と言えば、アレしかあるまい)

 

ん?皆は知ってるのか?

 

(ああ。あれは【聖女の微笑(トワイライト・ヒーリング)】と呼ばれる神器だ)

(効果は見ての通り、対象の怪我を治癒するのさ)

(使い手次第だが、大体の怪我は治してしまうぞ)

 

治癒能力か…。

シンプルだが、それ故に凄い能力だな。

 

「はい。もう大丈夫です」

 

少女は子供の頭を一撫でした後、こちらに戻ってきた。

 

「すみません。お待たせしてしまって」

「気にするな」

「そうです。人助けをしたんですから、謝る必要は無いです」

 

彼女がこっちに合流した途端、子供が立ち上がってこっちを見ていた。

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

子供が元気よくお礼を言う。

だが、この子には分からないだろう。

 

「ありがとう…だ、そうだ」

 

私が翻訳すると、嬉しそうに微笑んだ。

 

「ところで、その能力は…」

「はい。この治癒の力は物心ついた時から使えるようになったんです。神様から頂いた素敵な力です」

 

嬉しそうに説明するが、一瞬だけ表情が暗くなったのを私は見逃さなかった。

もしかしたら、能力の事で過去に何かあったのかもしれない。

けど、私達にそれを悟らせないように、必死に笑顔を作っている。

きっと、私達の事を気遣っているんだろう。

 

「君は……優しいな」

「は…はぅっ!?」

 

ふと、無意識のうちに彼女の頭を撫でていた。

髪がサラサラだ。

実にいい触り心地だ。

 

「……この人ばかりズルいです」

 

あ、白音が拗ねてしまった。

 

「白音も優しいよ」

「あぅ……」

 

もう片方の手で白音の頭も撫でる。

うむ、白音もサラサラだ。

 

「それじゃあ、行こうか」

「「は…はい…」」

 

二人とも、顔が真っ赤になってるけど、大丈夫か?

 

(フハハハハハハハハハ!!!雑種のフラグ建築技術は留まるところを知らんな!)

 

うっさいわ。

いい加減、その称号で言うのやめてよね。

 

私達は再び、教会に向けて歩き出した。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 公園からしばらく歩くと、眼前に古ぼけた教会が見えてきた。

地図が正しければ、間違い無くあの教会がそうなのだが、あまり人が住んでいるようには見えない。

 

そもそも、悪魔の管理している地に教会があれば、リアスの方でも何か言っている筈だ。

という事は、リアスも知らないか、もしくは、ここは既に教会として機能していないかのどっちかだ。

リアスはしっかりしているから、前者は考えにくい。

ならば、残る答えは後者しかない。

 

「あ!あそこです!間違いないです!」

「そ…そうか」

 

マジでここだったよ…。

三匹の子豚ではないが、ちょっとした嵐でも吹けばあっという間に倒壊しそうだ。

 

「あの!本当にありがとうございました!」

「さっきも言ったが、困った時はお互い様だ」

「無事につけて良かったです」

 

役目が終わり、踵を返そうとすると、彼女が引き留めてきた。

 

「待ってくれませんか!せめてお二人にお礼を……」

「謝礼目的にしたわけではないから、別にいいよ」

「それに、早く帰らないと姉様達を心配させてしまいますから」

「そうですか…。ご家族を御心配させるわけにはいきませんよね…」

 

分かってくれたか。

この手のタイプは、変なところで強情だったりするからな。

ちょっと安心した。

 

「だが、互いに名も知らぬと言うのは、流石に気が引けるな」

「それもそうですね」

「え……?」

 

私達は最後に振り返って、自己紹介をすることにした。

 

「私は闇里マユ。好きに呼んでくれていい」

「塔城白音です。苗字は呼ばれ慣れてないので、白音でお願いします」

「わ…私はアーシア・アルジェントと言います!」

「アーシアか。いい名前だな」

 

改めて踵を返して歩き出した。

 

「あ…あの!今日は本当にありがとうございました!いつかお礼をさせてください!」

「ああ。その時を楽しみに待っているよ」

「それじゃ、失礼します。また会いましょう、アーシアさん」

「はい!マユさんも白音さんもお元気で!」

 

こうして、シスター少女こと、アーシアとの初めての出会いは幕を閉じた。

 

しかし、この時の私達は、彼女が今回の一件に深く関わっている事に全く気が付いていなかった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 家に帰る頃には、夕闇が深くなってきていて、予想よりも遅くなったことが分かった。

 

「ただいま」

「ただいまです」

「お帰りにゃ。二人とも、今日はちょっと遅かったけど、どうしたんだにゃ?」

「ああ。実は……」

 

私は、帰りの途中で会ったアーシアを教会まで案内して遅くなったことを伝えた。

 

「そうだったのかにゃ。それは大変だったにゃ」

「しかし、この町に教会があるなんて初めて知った」

「私もです」

「噂で聞いた事ぐらいはあるけど、私も実際に見たことは無いにゃ」

 

だよな。

もし知っていたら、話の話題に上がりそうなもんだし。

 

「早く二人共着替えてくるにゃ」

「うん」

「わかりました」

 

私達は自分達の部屋で着替えてから、リビングに向かった。

 

既に黒歌が夕食の準備をしていて、私と白音は慌てて手伝った。

 

そして、夕食の時間。

 

「そう言えば、教会の事で思い出したことがあったにゃ」

「なんですか?」

「今日、買い物に行った時、近所の猫達が『町外れの古ぼけた教会に人が出入りしている』って噂してたにゃ」

「人が出入り?」

「うん。なんでも、その教会は長い間放置されていて、それまでは野良猫や野良犬達が雨風を凌ぐために使っていたらしいけど、今じゃ人が出入りするようになって使えなくなったって愚痴ってたにゃ」

 

猫でも愚痴ることがあるんだな…。

 

「我も感じた」

「私も感じたぞ!」

「二人も…?」

「「うん」」

 

龍神だから、そう言うのは敏感なのかもな。

 

「町の端の方から、微弱だけど魔力感じた」

「魔力の質的に、あれは恐らく堕天使だな」

「なら、教会に出入りしているのは堕天使って事ですかね?」

「かもしれないな」

 

これは……段々と話が繋がってきたな。

って…あれ?

 

「じゃあ、なんでアーシアはあそこに行ったんだ?」

「言われてみれば変ですね…。情報だけで言うなら、アーシアさんは堕天使の仲間と言う事になりますが…」

「彼女は人間のようだった。少なくとも、彼女からはレイナーレから感じたような魔力は感じなかった」

「ですね。神器を所持している事を除けば、普通の人間だと思います」

「性格的に悪事をしそうじゃないし…」

 

これは一体どういうことだ?

 

「なんか……却って謎が増えてしまいましたね」

「ああ。もうちょっと情報が必要だな」

「まるで推理小説みたいな展開になってきたにゃ」

「「コ○ン?」」

「「「それはアニメ」」」

 

ふむ……明日にも早速リアスに報告するべきだな。

情報が不足しすぎて、行動に移せない。

 

「皆も、出来る範囲でいいから、情報を集めてくれるか?」

「任せるにゃ!」

「わかりました」

「我、頑張る」

「うむ!お姉ちゃんの為だからな!」

 

頼もしい限りだ。

私はどうも、こういった情報収集は苦手だからな。

やっぱり、体を動かしている方が性に合う。

 

黒歌の食事を味わいながら、その日は食事を終えた。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日の放課後。

早速、私と白音は部室にて昨日の事をリアスに報告した。

 

「町はずれの古い教会にシスターが赴任した?」

「ああ。年の頃は私達と同じぐらいだ。何か聞いてないか?」

「いえ……そんな報告は受けてないわ」

「私も知りませんわね…。そんな事があれば、真っ先にリアスの元に情報が来るはずですもの」

「そうか……」

 

リアスも知らないとなると、増々怪しいぞ…。

 

「あと、姉様が教会に人が出入りしていると言う情報を聞いたと言っていました」

「それに、オーフィス達も教会がある方角から堕天使達の魔力を感じたと言っていた」

「人が出入りしていて……」

「堕天使の魔力を感じた……」

「部長。これは……」

「ええ。間違いなく、堕天使達がその教会を根城にしているんでしょうね」

 

やはり、そこに辿り着くか。

 

「だが、そうなると先程言ったシスターの存在が気にかかるんだ」

「どういう事?」

「さっきも言った通り、彼女は神器を持つ以外は普通の人間だった。性格も悪事を出来るような感じじゃなかったし…」

「お姉ちゃんが言うなら間違いないんでしょうけど…」

「戦闘が出来ない神器持ちのシスターと、目的が不明の堕天使……」

「なんか、三歩進んで二歩下がるって感じですね…」

 

裕斗が言った事は実に的を得ていた。

 

皆が悩んでいると、朱乃の携帯に着信が来た。

 

「すみません」

 

一言謝ると、朱乃は一旦部室を出た。

 

「とにかく、私達は使い魔を町に放って、少しでも情報収集するわ」

「私達も可能な範囲で調べてみる」

「無茶しないでくださいね」

「それはお互い様だ」

 

こうして、一応の今後の対策が決定したところで、朱乃が戻ってきた。

 

「あら?話し合いは終わりましたの?」

「一応ね。そっちはなんだったの?」

「ええ……実は……」

 

ん?なんか真剣な顔をしているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大公から、はぐれ悪魔討伐の依頼が来ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーシア本格的に登場。

そして、安定のフラグ建築。

もう秒殺でしたね。

次は原作での初戦闘シーンですが、勿論原作通りにはいきません。

私の事だから、次回は戦闘シーンだけで終わりそうだなぁ~。

では、次回。

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