基本的に優先するのは他の三つなので、更新速度はかなりスローになると思います。
目が覚める。
『私』は肌触りがいいベットから、自分の身を起こす。
……『私』?
なんで一人称が『私』になっているんだ?
男である筈の自分が自然と己の事を『私』と言うのは、少々おかしい。
別に、自分の事を『私』と言う男性がいないわけではないが、少なくとも自分は自身の事を『私』なんて言ったことは無い。
なのに……
(なんで…違和感が無いんだ?)
ふと、自分の身体を見てみる。
すると、男の身体には無い筈の物が見えた。
「胸……」
そう、胸だ。
私の胸がまるで女性のように膨らんでいる。
と言うか……
(女になってる?)
よく見たら、確かにこの体は嘗ての自分の物ではない。
どう見ても、年頃の女性のモノだ。
しかも……
「…!左腕が……」
自分の左腕全体が、完全に異形の形になっているのだ。
腕の形は保っているが、これは明らかに人間の物じゃない。
鋭い爪に、筋肉が剥き出しになっている。
しかも、肩の辺りからは何やら棘のような物が何本か屹立している。
「これではまるで……」
ゴッドイーターに登場する、雨宮リンドウみたいじゃないか。
その時ふと、昔の事を思い出した。
私は嘗て、ゴッドイーターシリーズにはまっていた。
凄い時は四六時中やっていた事さえある。
そんなある日、とある妄想をしたことがある。
リンドウを救出する際に彼の神機を握った時、もしも、主人公の左腕がアラガミ化から元に戻らなかったら?……と言うものだ。
ま、しがない男のくだらない妄想に過ぎないのだが。
その上……
「腕輪…」
私の右腕には、神機使い特有の赤い腕輪があった。
この体は…神機使いになったのか?
けど、今はそれよりも気になっていることが幾つもある。
まず…
「なんで…裸なんだ…?」
なんでか、全裸でベットに寝ている私。
不思議と羞恥心は無い。
そして……
「ここ…どこ?」
どう見ても、見た事のない部屋だ。
見た目は至って普通の部屋だが、それが逆に不気味だ。
「机にベット…クローゼットに大きめの鏡…そして…」
机の上には、愛用のパソコンとスマホがあった。
この二つがあるのは非常にありがたい。
やはり、文明の利器は必要だろう。
窓の外を見る限りは、ここは日本で、そして、今いる場所は二階のようだ。
ある程度の確認が終わった後、私は自分の全身像を見るために、鏡の前に立った。
鏡には、女性にしては少々背が高い女の子がいた。
首の辺りまで伸びて、外側にふわっと広がっているウェーブのついた黒い髪。
鋭い目と固く結ばれた口元。
ふむ…美人だな。…って。
「これ……私のアバターじゃないか…」
この姿は、私がゴッドイーターリザレクションで使用していたアバターだった。
リアルで見ると、かなりの美人なんだな。
しかし……思った以上に精神的動揺が少ないな…。
その時、なにやら視界が霞んで見えた。
あれ?私ってば目が悪かったかな?
少しだけ周囲を見渡すと、机の上に眼鏡が置いてあった。
試しに掛けてみると、私にピッタリで、視界は良好になった。
…実に今更だが、普通ならこういう場合、滅茶苦茶混乱したりするものじゃないか…?
どういう訳か、私は至って冷静だ。
これはどういうことだ?
そんな時、私のスマホに着信が来た。
「…誰だ?」
もしかして、知り合いの誰かか?
そう思って、私は着信に出ることにした。
「……もしもし?」
『もしも~し?聞こえますか~?』
なにやら、陽気な男の声が聞こえる。
こんな声の男は知り合いにはいない。
「誰?」
『僕?僕はね~……【足長おじさん】とでも名乗ろうか』
「足長おじさん……」
ふざけてるのか?
『まず、自分の姿は見たかい?』
「ああ…。なんか女になってた」
『その姿ね、君が持ってたゲームのアバターを使わせてもらったよ』
やっぱりか。
『単刀直入に言うと、君は転生したんだよ』
「転生って……」
そんな事、本当にあるのか?
いや…こうしてTSしてる時点で本当なのは確定か?
「私…あなたに会った記憶が無い」
『あれ?もしかして、転生の時は神様がどこからともなく現れて、いくつか特典を与えた後に穴から落として転生~……なんてことがあると本気で思ってる?。あれは完全なフィクション。実際はこんなもんだよ』
こんなもんか。
『君は、前世の事は覚えているかな?』
「確か……」
以前の私は、何処にでもいる普通のフリーターだった。
そして、バイトの帰りに工事現場を付近を歩いていたら、突然上から鉄骨が落ちてきて……
「あ……私、死んだのか?」
『その通り!その後、この僕が君を転生させたんだよ!って……なんか君、冷静過ぎない?』
「それは私も思ってた。…なんで?」
『多分…精神が肉体に引っ張られてるんじゃないかな?』
そう言えば、このアバターの声って、かなり口数が少ないやつを選んだっけ。
しかも、あれ系の主人公って基本的に無口だしね。
そうか、納得納得。
「色々と聞きたいことがある」
『なんだい?応えられる範囲でなら、なんでも答えるよ』
「まず……なんで裸?」
『は…裸!?なんで!?』
「それを聞いてる。目が覚めたら裸だった」
『マジで…?僕はそんな事をした覚えはないよ?』
「でも…」
『うん。それは多分、僕の完全なミスだ。本当にゴメン』
口調からして、本当に悪いと思っているようだ。
反省の心は大事。
「別にいい。気にしてない」
『いや…。元男とはいえ、今は女の子なんだからさ、少しは気にしようよ…』
そうは言われても、この格好が本気で恥ずかしいとは思わない。
「この腕は?」
『君の記憶を覗かせて貰ってね。ちょっとキャラにアクセントを付けようと思って』
それだけの理由で、こんなことにしたんかい。
別に怒ってないけど。
「…この家は?」
『僕から君へのプレゼントさ。家賃とか光熱費とかは大丈夫だから気にしないで』
変なところでアフターケアがいいな。
「ここはどこ?」
『そこはね、日本の駒王町って場所だよ』
「駒王……」
なんだろう…。
どこかで聞いたことがあるような気が…。
なんだったっけ?
ま、いいや。
「ゴッドイーターのアバターを使用したという事は、私は神機使いに?」
『まぁね。確かに君の身体には例の【オラクル細胞】が入ってるよ』
「そうか……」
この腕輪を見た時から、なんとなくそんな気はしてたけど。
「…神機は?」
『それは今から用意するよ。その間にこの家を見て回ったら?』
「…服は、この中に?」
『ゲーム内で使用していた服装が全部入ってるよ』
「そうか…」
まずは服を着ないと。
私はクローゼットを開いて、中を見る。
中には、ゲーム内で見た事のある服が沢山あった。
その前に、下着を着ないとな。
私は下の棚の部分から下着を取り出して着た。
なんでか、自然とブラを付けられたけど。
これも転生の影響か?
下着を着た後、ティンバータンクを着た後にリーパースーツを着た。
下にはスイーパーオールを着用。
鏡で見てみると、中々に様になっている。
因みに、肩の突起物は引っ込むように念じたら、何故か引っ込んでくれた。
実にご都合主義だ。
その後、左腕には腕全体を覆うサイズの手袋を付けた。
流石に、この腕を丸出しには出来ないから。
勿論、ポケットにスマホを入れることも忘れない。
「行くか」
服を着た私は、そのまま部屋を後にした。
廊下は板張りになっていて、何処にでもありそうな感じのものだ。
隣にも部屋が一つあって、覗いてみると、何もなくガランとしていた。
二階はそれだけで、私は一階へと向かう。
一階はそれなりに広く、リビング、キッチン、バスルームなどを見て回った。
キッチンやバスルームは最新式になっていて、ハイテクな感じがした。
こんな所だけ贅沢になってるな。
リビングにも色々と揃っていて、大型の液晶テレビに綺麗なソファー。
何故か大人数座れそうなほどの広さを持つテーブル。
…私一人には勿体ないな。
その後もある程度見て回った後、最初の部屋に戻った。
戻ると、部屋の真ん中に真っ黒なアタッシュケースが置いてあった。
かなり大きく、今の私の全長と同じぐらいの大きさがあるんじゃなかろうか。
その時、再び私のスマホに着信があった。
出てみると、先程の『足長おじさん』だった。
「…もしもし」
『もしもし~?お家はどうだった?気に入ってくれたかな?』
「正直言って、私には勿体ない。一人で住むには家が広すぎる」
『そんなことないよ~。これから、同居人が増えるかもしれないでしょ?』
「それはないだろう…」
私みたいな奴と一緒に住みたがるなんて酔狂な人間、いるとは到底思えない。
どんなもの好きだ。
「このケースは?」
『開けてみて』
言われるがまま、ケースの傍に座ってから開けてみる。
すると、中には……
「神機……」
ゲーム内で私が愛用していたカリギュラ装備が入っていた。
組み合わせは、ディテクター(ロングブレード)、カストルポルクス(ショットガン)、インキタトゥス(バックラー)。
『手に取ってみて』
持ち手を持ってから持ちあげてみる。
なんだか、思った以上にしっくりとくる。
『どう?』
「問題無い」
全然重く感じない。
まるで、鉄パイプを持っているような感覚だ。
『ちょっと、頭の中で他の近接武器の事を想像してみて』
「わかった」
そうだな……部屋の中だし、ショートブレード辺りが丁度いいだろう。
他の近接武器だと、大きすぎて壁を傷つける可能性があるからな。
前世での記憶を手繰り寄せながら、頭の中で想像してみる。
すると、ディテクターが光り出し、それが無くなった時には近接武器がクラウディア(ショートブレード)に変わっていた。
「おお~…」
『頭の中で想像するだけで、近接武器や銃身をいつでも換装出来るようにしておいたよ』
「ご都合主義…」
『別にいいじゃん。所詮、
「身も蓋もない…」
『それぐらいで丁度いいの』
辛辣だな、足長おじさん。
なにか、嫌な思い出でもあるのか?
でも…なんでこの人の言葉に疑問を感じないんだろう?
どう考えたって普通じゃないのに。
そんな事を考えた直後だった。
頭に軽い頭痛を感じたかと思った瞬間、彼に対する疑惑は消えていた。
『どうかした?』
「いや…」
『そ。ま、
「ああ…」
なんでだろう…?
不思議と、
『そうそう。今の君はかなりのチートボディになってるから』
「…具体的には?」
『君の頭と体に、今までのゲーム内のアバターの経験がそのまま反映されてる』
「わぉ…」
分かってるのか?
私、リザレクションは全部のミッションをクリアーした上に、ランク14の武器は殆ど持ってたぞ?
今でもプレイすれば、一人でスサノオ二体ぐらいなら倒せる自信はある。
「それ…相当じゃ?」
『君の努力の結晶だからね』
ゲーマーの廃人プレイをそんな風に言うな。
『ねぇ……試しにアラガミと戦ってみる?』
「…どういう事?」
『こういう事!』
電話の向こうで足長おじさんが叫ぶと、部屋の中央にまるで漫画やアニメに出てくるような魔法陣的なものが現れた。
「…なにこれ」
『そこに入れば、一瞬で戦場にワープ出来るよ!』
「嬉しそうに言うな」
何気にテンション上がってんじゃねぇよ。
「って言うか…そもそも、アラガミなんて本当にいるのか?」
『いるみたいだよ。僕にもよくわからないんだけど、どうやらゴッドイーターの世界から散発的にやって来てるみたい。少なくとも、君が今いる世界があっちみたいに荒廃したりはしないから、それだけは安心して』
「出来るか」
アラガミがいるってだけでも充分すぎる程危険でしょ。
はぁ……仕方がない。
「選択肢は無い…か」
『分かってくれた?』
「お前が私を戦わせようとしているという事はな。…何が狙いだ?」
『別にぃ~?僕は君に第二の人生を謳歌してほしいだけさ』
「戦いの人生を謳歌しろと?」
どんだけ殺伐とした人生だよ。
『でも、刺激があっていいでしょ?』
「それは……」
『前みたいに、バイトだけの人生をまた送りたいの?』
「流石にそれは…」
『でしょ?今の君はチートなんだから、戦いに関しては心配ないよ。だから、遠慮なくアラガミとの戦いをエンジョイしていいんだよ』
「してたまるか」
アラガミとの戦いは、完全な生存競争だぞ。
楽しむ余裕なんてあるわけないだろ。
「けど、アラガミの事は放置できない」
『なら……』
「乗ってやる。お前の話に」
『よっしゃー!』
「喜ぶな」
子供か。
『因みに、行く場所は場所だけでなくて、時代も超える場合があるから、そのつもりでね』
過去にも行くかもしれないって事か。
「ちゃんとここに戻れるのか?」
『その辺りは大丈夫。対象のアラガミが倒されたら、この僕がちゃんとこの家に戻してあげるよ』
戻すって…。
「アンタ…本気で何者?」
『言ったでしょ?足長おじさんだって。単なる君の後方支援者さ』
「そう……」
この手の相手は、何を言ってもはぐらかされるだけだ。
だったら、追及するだけ無駄か。
『回復アイテムの類は、全部ポケットに入ってるから、一応確認しておいて』
言われた通りにポケットに手を突っ込んでみると、中から小さな薬のような物が幾つも出てきた。
きっと、回復錠だろう。
「結構忠実」
『勿論!頑張ったからね!』
もっと別の事を頑張れよ。
『神機はちゃんと持った?ティッシュにハンカチは?トイレにはちゃんと行った?変な物を拾い食いとかしちゃ駄目だよ?』
「しゃらっぷ」
思わず『お前は私の親か』とツッコみそうになったところを我慢して、私は通話を切った。
「……行くか」
なんか、転生してから矢継ぎ早に色んな事や話があったけど、取り敢えずの目標は出来た。
ここがどんな世界だろうとも、私が神機使いなら、やるべきことは一つだ。
「アラガミを駆逐する…。それが、私の存在意義」
ショートからロングに刀身を変えて、神機を肩に担ぐ。
そして、ゆっくりと魔法陣に入っていく。
「最初は……何が相手なんだろうな…」
不安も高揚感も全く無い。
考えるのは、どうやって『敵』を殺すか…それだけ。
魔法陣の中心に行くと、自分の身体が光の粒子へと変わっていく。
前世では考えられないような非常識な光景なのに、不思議と恐怖は無い。
身体が消えゆく中、私は静かに目を閉じた。
ゴッドイーターとハイスクールD×Dとのクロスって、思ったよりも無いんですね。
と言う事で、やってみました。
一応、数話分は話を考えてます。
主人公の名前は出ませんでしたが、別に考えてないわけじゃないです。
ちゃんと考えてますよ?
いつ名乗るかは未定ですが…。
次回は早速戦闘シーン?
さてはて、初戦の相手はどのアラガミなのか?
そして、向かった場所で誰と会うのか?
では、次回。