後、本来ならあり得ない筈のキャラ達を何故歴代の赤龍帝にしたのかは、原作開始直前にとある形で説明したいと思います。
もしかしたら、壮大なネタバレになるかもしれませんが。
それは、とある休日の御昼前の事だった。
その日の私は、オーフィスちゃんとグレートレッドと一緒にスーパーに買い物に出かけていた。
右手にはオーフィスちゃん、左手にはグレートレッドと手を繋いで、はぐれないようにしてスーパーへの道を歩いていた。
「そう言えば、今日のマユはスカートなのだな」
「う…うん」
「マユ、似合ってる」
今回の私は、黒歌と白音によって半ば強制的にスカートを穿かされていた。
と言っても、別にミニスカを穿いているわけではない。
それ以前に、プライベートで着る勇気はない。
赤いタートルネックのセーターに、純白のロングスカートが今の格好だ。
ぶっちゃけ、これでもかなり妥協した。
(くそ……やっぱりスカートって慣れないな…)
制服だとそこまで抵抗無いのに、どうして私服だとこうも恥ずかしいのだろうか…。
凄くひらひらして歩き難いし…。
しかも……
「なぁ…そこを歩いてる子供連れの子ってめっちゃ美人じゃね?」
「ああ……どっかのモデルか何かかな…?」
「でも、見た事はないよな…。読者モデルとかか?」
…私には家以外の安息の地は無いのか…?
一度道を歩けば、いっつもこうだ…。
「あれって…マユお姉さま!?」
「一緒にいるのは、妹さんかしら?」
「きっとそうよ。凄く仲が良さそうだもの」
校外で同じ学校の生徒を見かけると、なんか気まずいよね…。
この気持ちだけは転生しても変わらないな…。
「マユは人気者だな!」
「マユ、モテモテ」
「やめてくれ…」
普段は無表情を貫いている私にも、羞恥心はあるんだぞ!?
恥かしくて顔を伏せながら歩いていると、なんか前方から誰かの気配を感じた。
「ん?」
反射的に前を向くと、そこにいたのは……
「お…お前は…」
ボタンをいくつか外した白いワイシャツにジーパン、首にはシルバーのネックレスと、ワイルドな雰囲気を醸し出すお髭の叔父様が私の方をじっと見ていた。
彼の手にはビニール袋が握られており、中には缶ビールが幾つかと、おつまみと思わしき物が入っている。
「「あ…アザゼル」」
え?知り合い?
「その顔…忘れもしねぇ…」
な…なんなの?
「お前さん…もしかして、例のゴッドイーターか?」
「!!!」
どうして私の職業名を…?
「あれ…もしかして覚えてねぇか?」
「……?」
私とこの人ってどこかで会ってる…?
えっと……どこだ?
「…………あ!」
思い出した!
「あの時…サーゼクスさんの隣にいた…」
「そうそう!あの時にお前さんに救われた堕天使だよ!」
え~…こんな往来で堂々とそんな事を言っちゃっていいの?
「あ、俺の発言なら気にしなくてもいいぞ。この喧噪じゃ、何も細工をしなくても誰も聞いてねぇよ」
「そ…そうか…」
世知辛い世の中だな…。
「風の噂で聞いちゃいたけどよ…まさか本当にこの町に住んでたとはな!」
「ああ……まぁ……」
正直なところ、私とこの人って初対面同然なんだよね…。
どう反応すればいいのか分からないよ…。
「一応自己紹介しとくか。俺はアザゼル。これでも一応、堕天使の組織『
「えっと……闇里マユです」
「闇里マユ…な。よし、覚えた」
早いな。
「アザゼル、久し振り」
「懐かしいなぁ~」
「ん?俺は幼女に知り合いはいねぇぞ?」
あ、この姿だから分からないのか。
普段は二人共魔力を抑えてるって言うし。
「我、オーフィス」
「なっ!?」
「私はグレートレッドだ!」
「はぁっ!?」
アザゼルさんが一気に後ずさりしてしまった。
その顔は驚愕に染まっていて、汗だくになっている。
「な…なななななななんでお前らがここに!?」
「「マユの事が好きだから」」
実にシンプルな答えだこと。
私は嬉しいけど。
「マジかよ…。こっちが知らない間に伝説の龍神を二匹も味方に付けちまったのかよ…。ここにいる三人だけで三大勢力とも互角に渡り合えるんじゃねぇか?」
「それは言い過ぎですよ」
そこまでの力は私には無いですって。
この二人にはあるかもしれないけど。
「しかもよ…確かお嬢ちゃんは、赤龍帝でもあるんだろ?」
「はい。ドライグは大切なパートナーですし、歴代の皆とも仲良くしてます」
(うう……俺は…俺は非常に嬉しいぞ!相棒!お前が赤龍帝で本当に良かった!!)
(奏者よ!余も嬉しいぞ!奏者の為なら…余は…余は…)
(むっほぉぉぉぉぉぉっ!!ご主人様最高~~~~~!!!)
…うん。五月蠅いです。
ちょっと静かにして。
割とマジで。
「その上、歴代の意思がもう出てんのかよ…。成長率もチートなのかよ…」
そこまで言いますか。
「はぁ……うちにいるあの『バカ』も少しはお嬢ちゃんを見習ってほしいぜ…」
なんか…子供の教育に苦労してるお父さんって感じがする。
「…あの…堕天使の偉い人である貴方がどうしてこんな場所に?」
「ああ……この間ようやく溜まってた仕事が終わったんだよ。で、せめてもの自分への褒美として、こうして調達しに来たって訳だ」
「な…成程…」
それでビールとつまみって…。
まぁ…気持ちは超理解出来るんだけどね?
「真昼間から飲むビールは最高だからな。それが仕事終わりなら更に最高」
もう堕天使じゃなくて唯の飲んだくれのおっさんになってるよ…。
これでいいのか…堕天使…。
「そうだ。こうして会ったのも何かの縁だ。ちょっと番号交換してくれねぇか?」
「それはいいですけど…」
「んじゃ、頼むわ」
私達は互いに携帯を出して、番号とメルアドを交換した。
「あんがとよ。何か頼みたい事とかがあったら連絡するわ」
「は…はぁ…」
「そんじゃな!早く帰ってお楽しみタイムと洒落込みたいしな!今日だけはシェムハザに小言を言われずに存分に酒を飲めるぜ~!」
嬉しそうにスキップしながら、アザゼルさんは去って行った。
苦労してるんだなぁ~…。
「なんか…なし崩し的に交換してしまった…」
「いいのではないか?それぐらいなら」
「気にしたら負け」
おう…オーフィスちゃんに慰められた…。
この子も成長してるのかな?
その後、スーパーにて買い物を済ませた後、家に帰ってこの事を報告すると…
「今度は堕天使の総督!?マユは顔が広すぎにゃ!」
「魔王に妖怪の総大将と来てますからね。次は熾天使辺りが来るんじゃないんですか?」
「白音。それはフラグにゃ」
そんな事を言われてしまった。
確かに白音の発言はフラグかもしれない。
今頃、天界では天使の中のトップの人がくしゃみでもしてるんじゃないか?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
はい、またまたアラガミの気配を感じたので、毎度のように転移してきました。
今回の服装は、劇中にて御坂美琴が着ていた常盤台中学の制服だ。
私は嫌だったけど、ドライグがこの服を着た際に使えるようになると言う電撃の威力を確かめておきたいと言い出したので、仕方なく着る事にした。
高二なのに、中学生の制服を着るって……恥ずかしい事この上ないよ!!
転移した直後、癖のように周囲を見渡す。
石造りの建物が多く、どう見ても海外だ。
時間帯はまた夜。
北欧あたりかな?
取り敢えず歩いてみると、いつものように赤龍帝の籠手が勝手に出現した。
『おや…ここはもしかして…』
んん?
今回はまた、別の声が聞こえるぞ?
聞いた感じは女性、しかも大人の女性だ。
『次はお前か。ドレイク』
『はっはっはっ!アタシもこの嬢ちゃんが気になってね!なんとかしてネロと玉藻の奴を出し抜いてきたって訳さ!』
『相変わらず自由だな…』
ドレイク…?
結構ありふれた名前っぽいけど…。
『アタシの名は『フランシス・ドレイク』。名目上はアンタの先輩って事になんのかね?』
フランシス・ドレイク…!
人類史上、初めて生きたまま世界一周を成し遂げた伝説の海賊じゃないか!
歴史上では男だった筈だけど、実際は女だったのか…。
『で?ドレイクよ。ここが何処か分かるのか?』
『応ともさ。ここは多分バチカン辺りじゃないかい?』
「バチカン…」
それなら石造りの建物が多いのも納得だ。
バチカンの事はよくは知らないけど。
『いつでも大丈夫なように、今回はアタシの力を貸してやるよ』
『それが良いな。前回のように、またアラガミ以外の奴と戦闘するかもしれん』
「そうだな」
念には念をってね。
【Rider!】
音声と共に、私の身体が変化する。
髪は濃い目のピンクに染まり、頭頂部からはピコンとくせっ毛がたれている。
身体の変化はそれだけだが、私の両手にはクラシカルな銃が握られていた。
「おお~…」
前回に比べれば、かなり控えめな変化だ。
これからはこの人の力を併用しようかな…。
「ありがとう。ドレイク姐さん」
『姐さん?』
「あ……なんかそんな感じがしたから、つい反射的に…」
『あははははは!姐さんか!いいね、それ!なんか昔を思い出すよ!』
うぉう…なんか知らんが、喜ばれた?
『ん?なんか向こうから戦闘の気配がするねぇ…』
姐さんの言う通り、遠くの方から戦闘音のような金属音が聞こえてくる。
「行ってみよう」
『そうだな』
『善は急げ…ってヤツだね』
私は音が聞こえた方へと向かって行った。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ついた先にいたのは、真っ黒なボンテージファッション?に身を包んだ二人の女の子と馬鹿みたいに笑っている若い男だった。
女の子は、片方が緑のメッシュが入った青髪のショートヘアで、もう片方は茶髪でツインテールだった。
「くっ…!貴様!」
「悪魔の癖に!」
「うっせぇんだよ!ここでテメェらなんかにやられるかよ!」
男の背中からは蝙蝠のような翼が生えていて、どうやら悪魔のようだった。
「はぐれ悪魔のアスター!大人しく神の裁きを受けろ!」
「黙れっつってんだろぅがよ!!ようやくあのウザいクソ悪魔から解放されたんだ!こっからは俺様の天下なんだよ!!」
…どうやら、あいつは黒歌のように事情があって主の元を去った訳では無くて、自分の欲望の満たす為に主を殺したようだな…。
「あのアマ……アホみたいに俺の世話を焼きやがって……それが滅茶苦茶癇に障んだよ!!」
「だから…殺したのか!?」
「そうだよ!死ぬ直前のあいつの驚いた顔ったらなかったぜ!マジで爆笑!」
「あなたは…!例え相手が悪魔でも、自分の主を…無抵抗の者を殺すことに躊躇いは無かったの!?」
「ある訳ねぇだろ!勝手に助けて、勝手に死んだ!それだけじゃねぇか!教会の犬のテメェらにどうこう言われる筋合いはねぇんだよ!!」
どうやら、話は平行線のようだな…。
「そろそろお話はおしまいだ…。ここらでテメェらもぶっ殺してやるぜ!!」
「来るか…!」
「返り討ちにしてあげるわ!!」
気丈に振る舞ってはいるが、二人共体の至る所に怪我をしている上に、相当に疲弊しているように見えた。
二人が持っている剣にも罅が入っていて、もう一撃でも喰らえば壊れるであろうことは明白だった。
『…ほっとけないかい?』
「ああ…」
どんな理由があろうとも、助けられる命は助けたい。
それが私達…ゴッドイーターだから。
『ま、偶にはいいか…』
ん?なんだ?
『ドレイクは良くも悪くも欲望に忠実だからな。相棒の考えは理解しにくいんだろう』
まぁ…海賊だしね。
私は二丁の銃を握りしめる。
すると、私の両手に電撃が迸った。
「これは…!」
『ふふ…お嬢ちゃんの想いに応えたのかもしんないね』
そうか…それなら都合がいい。
このまま、この電撃を銃に宿らせる。
「これが本当の超電磁砲…ってね」
私はそのまま大きく跳躍して、両者の間に割り込んだ。
「「「なっ!?」」」
いきなりの乱入者に、全員が驚く。
「なんだテメェ!お前もこのガキ共の仲間か!?」
「そこの貴女!そいつは危険よ!!」
「早くそこをどくんだ!!」
「大丈夫」
ゆっくりと手を上げて、銃を男の方に向ける。
「ああ?そんなガラクタで俺様を殺ろうってか?ぎゃはは!いいぜ!やってみろよ!」
「…後悔するなよ」
「なに?」
銃口に凄まじいまでの電光が収束する。
「……消えろ」
電光が最大になった時、躊躇いなく引き金を引いた。
その瞬間、小さな銃口からは想像も出来ない程の超極太の電撃を帯びた銃弾が光速で発射された。
「なっ…!?」
幾ら悪魔になっていても光の速さを捉えられる筈もなく、あっけなく私が放った電光に飲み込まれていった。
それは向こうにあった建物まで伸びて、そのままぶつかった。
「な…なんなんだ!?今の一撃は!」
「本当に人間が放てる一撃なの!?」
だよね~。
うん、私にも分かる。
だって、自分でもびっくりしてるもん。
周囲を土煙が包み込み、それが晴れると、建物にめり込んだ男が全身の肌が焼け爛れた状態で気絶していた。
「い…一撃だと…?」
「私達があんなに苦戦したのに…」
女の子たちは驚きながら私に近づいてきた。
「……助けてくれたのには感謝する。が……」
「貴女は何者なの…?」
「私は……」
殆ど諦めながら自己紹介をしようとすると、お約束が発動した。
『相棒!アラガミが来るぞ!』
はい来ター。
私が自己紹介しようとすると、いっつもこれだ。
もういいよ…。
「こ…声が!?」
「なんかここら辺から聞こえたような気が…」
彼女達が私の籠手を見ていると、それは現れた。
深紅の体躯に、目を隠している黄色い顔面装甲。
そして、その背中には大きなキャノン砲を背負う四足獣型のアラガミ……
「ラーヴァナ…!」
前回に引き続き、また群れで行動して砲撃戦が得意なアラガミか…。
ラーヴァナは大きな建物の屋根の上で私達を見降ろしている。
「…ドライグ」
『周囲にはアイツだけだ』
やっぱりか…!
どうしていっつも単発なんだ…!
こっちは楽だからいいけど。
「君達…逃げて」
「え?」
「いいから逃げろ!殺されたいのか!?」
「な…何を言っている!?」
「逃げるなら貴女も!」
「私は…アイツを倒す」
「「……!?」」
これは私の使命。
だから、何があっても逃げるわけにはいかない。
私は銃を籠手に収納してから、入れ替えるようにして神機を出す。
今回の組み合わせは、ケーニヒスベルクにシュトルムカノネ、ケーニヒスシルト。
リザレクションでも最強クラスのパーツである『天なる父祖』の神機パーツだ。
「その武器は…!」
「なんなの…?」
「そんな事は今はどうでもいい!早く行け!」
私が彼女達を説得している間に、ラーヴァナは傍に降りてきて、こっちを見る。
「「ゔ…!」」
正面からラーヴァナを見て、二人は後ずさりした。
その直後、ラーヴァナは背後で気絶しているはぐれ悪魔の男の元に向かった。
「あいつ……まさか…!」
まだ気絶しているのか、男はビクともしない。
すると、ラーヴァナはその口を大きく開けて、頭から男を捕食した。
「た…食べてる…!」
「うぅ……」
生々しい音が響き、同時に血飛沫が上がる。
それに耐えられなかったのか、二人は胃の中のものを地面にぶちまけてしまった。
出来れば介抱してあげたいけど、そんな暇はない。
「はぁっ!」
捕食の隙を狙って先制攻撃をする為にダッシュで近づく。
「はっ!やっ!たぁっ!」
三回斬りつけたところでラーヴァナがこちらを向く。
その際、残骸と化した男の死体が目に映る。
最早人の形を留めておらず、そこには血に塗れた肉片だけがあった。
反射的にバックステップで間合いを取り、構える。
勿論、後ろの二人の事も忘れない。
「はぁ…はぁ…」
「信じられない…。まさか食べるなんて…」
どうやら、全部吐き終えたようだ。
「動けるなら、とっとと行け!」
「…出来るの?」
「無理なら言ってない」
「道理だ。…頼む。…死ぬなよ」
「そのつもりだ」
帰りを待っている人達がいるんだ。
こんな所で死ねるか!
二人が走って去って行ったのを確認したら、ドライグが瞬時に結界を張る。
これで一安心だ。
「…行くぞ!」
ラーヴァナが頭部の上にある太陽核から三つの渦巻く炎を発射した。
これは前方にのみ来るため、右に回避。
そのまま銃形態に変形し、バレットを氷属性の物に変える。
「当てる…!」
これは追尾弾な為、多少避けられても大丈夫。
実際、ラーヴァナはそこから動いて避けようとするが、完全には避け切れずに前足に直撃した。
後ろに転がって距離を取って、バレットを連続で叩き込む!
全弾撃ち込んだ所で、ラーヴァナが怯んだ。
「よし」
近接形態に変形し、また接近する。
そして、四連撃の後にゼロスタンス、そこからのインパルスエッジのお馴染みのコンボを叩き込む。
それによって前足の部位破壊に成功した。
『お嬢ちゃん。奴さんが怒りで活性化したみたいだよ』
姐さんのナビで状況を把握する。
ラーヴァナが大きくジャンプしてこちらを踏みつぶそうとしてきた。
勿論、それを許すわけもなく、バックステップで回避。
着地と同時に衝撃波が広がるが、それは装甲を展開してダメージを軽減した。
また三つの炎を飛ばしてくるが、もうそれには当たらない。
さっきと同じように避けて、そのまま近づくが、こちらが攻撃する瞬間に合わせて、ラーヴァナは咆哮と共に自身の周囲から炎を巻き上げた。
「くっ…!?」
まさかの攻撃に対処が遅れてしまい、吹っ飛ばされてしまう。
『相棒!』
『嬢ちゃん!』
ドライグと姐さんの声が聞こえるが、それを耳にしながら受け身を取る。
「…油断した」
ポケットから回復錠を出してから飲み込む。
「…よし」
仕切り直しだ。
OPは少ない為、まだ銃は使えない。
だから、まだ近接形態で挑む。
ラーヴァナが放つ炎を回避しながら近づき、その頭に斬りつける。
四回斬りつけた後、横に回り込み胴体を斬りつける。
多少効きにくいが、ヒットアンドアウェイを繰り返しながら攻撃を胴体に集中させる。
隙を見て、オラクルリザーブをすることも忘れない。
それを五回程繰り返した後、胴体の部位破壊に成功した。
「あと一か所…!」
もう少しで倒せる!
そう思った時、ラーヴァナの動きが止まり、その背のキャノン砲が展開した。
「…くる!」
圧倒的な炎のエネルギーが収束していく。
隙だらけではあるが、この状態の時のラーヴァナは殆どの攻撃を受け付けない。
勿論、素直に喰らうつもりはない為、射線軸から退避する。
そこで私は銃形態にして、ありったけのOアンプルを使ってOPを回復させる。
全部のOアンプルを使い終わった後、ラーヴァナが明後日の方向に向かって最大砲撃を発射した。
それはそのまま建物に当たって、粉々に崩れ去る。
無人だったようで、中には誰も居なかった。
ちょっとだけ安心したところで、私はラーヴァナの正面に躍り出た。
「貯めに貯めた一撃……」
至近距離で銃を構える。
この位置なら外しようがない。
「受けてみろ」
渾身の氷属性のロケット弾がラーヴァナの頭部にぶち当たる。
最大級の一撃を受けたラーヴァナは盛大に吹っ飛び、背中から地面に落ちる。
フラフラと立ち上がるが、態勢を整えようとした瞬間…
「そこっ!」
再びぶちかます。
避ける間も無くラーヴァナはまた吹っ飛ぶ。
私はそれを追撃し、ラーヴァナに近づく。
その顔面に銃口を近づけ…
「これも持っていけ」
もう一撃。
頭が部位破壊されながら、三度吹っ飛ぶ。
オラクルの量から、撃てるのは後一撃が限界。
本当ならラーヴァナ戦でスタングレネードは禁止行為。
だけど、ここまで来たらもう関係無い。
籠手からスタングレネードを出して、地面に叩きつけようとする。
すると、ラーヴァナが血飛沫と共にファンブルした。
「望外のチャンス…!」
大きな隙が出来た瞬間、狙いを定める。
スコープを覗き、引き金に指を添える。
「…終わり」
動きが鈍いラーヴァナでは避けようがなく、頭部にクリティカルヒット。
部位破壊で防御力が低くなった頭部に当たったお陰で、そのダメージは今までで一番の物になった筈。
ラーヴァナは吹き飛んだ後に建物にぶつかった。
瓦礫に埋もれながら震えながら立ち上がるが、その直後に倒れて力尽きた。
「ふぅ……終わった」
殆ど作業と化した捕食をして、コアを摘出する。
『相棒。今回は少しだけヒヤッとしたぞ』
「ゴメン。ちょっと油断した」
『なに、別にいいさ。今まで無傷で済んだのが寧ろ凄いんだよ』
確かにな。
これが神機使いの戦いだよ。
「あ、今回捕食形態使ってない」
『別にいいんじゃないか?終わり良ければ総て良し…だ』
お、意外と寛大。
ラーヴァナの死骸が雲散霧消したのを見届けた後、その場から離れる。
結界が解除された直後、私が最初に来た方向から誰かが走ってきた。
「あれは……」
来たのは、さっきの二人組だった。
「ゼノヴィア!あの子、無事みたいよ!」
「ああ!そのようだな!結界が消えたからもしかしたらと思ったら、案の定だったな!」
戻らなかったのか…。
あのまま帰ればよかったのに。
「はぁ…はぁ…はぁ…。大きな怪我が無いようでよかった…」
「本気で心配したぞ…。あんな得体の知れん怪物相手に戦うなんて言い出した時はな」
「大丈夫と言った」
「それでも、だ」
むぅ…そんなもんか?
「…君は一体何者なんだ?先程の様子から、悪魔の仲間とは思えないし…」
「けど、教会の関係者にこれ程の戦士がいるとは聞いたことが無い」
そりゃそうだ。
私は教会の関係者じゃないし。
「そう言えば、最初見た時から気になってはいたが、まさかこの籠手は…」
「龍の鱗のように輝く深紅の籠手…。まさか、これが伝説の赤龍帝の籠手!?」
「恐らく…な」
「じゃ…じゃあ!もしかして、この子が噂に聞く赤龍女帝!?」
「そうとしか考えられない」
これを見られたら、そりゃすぐに分かっちゃうか。
「伝説の戦士に会えて光栄の至りだ」
「わ…私も!貴女の事はずっと伝承や歴史の本なんかで見て、ずっと憧れてました!」
「あ…ああ…」
なんて純粋な眼差し…。
私には眩しすぎる…!
「私は紫藤イリナっていいます!」
「私はゼノヴィア。出来れば貴女の名前を聞かせて欲しい」
このパターンは……
「「「あ」」」
ほらね。
案の定、魔法陣が展開した。
『ちょっ…!割り込んでくるんじゃないよ!玉藻!』
『そうはいきません!ここで来なければご主人様がまたフラグを建ててしまいます!』
『お前は何を言っている!?』
『お二人共分かっている筈です!ご主人様は近年稀に見る一級フラグ建築士だという事を!!』
何をしてるんだ…こいつらは…。
「これは…」
「歴代の意思だ」
「その割には賑やかみたいだけど…」
「いつもの事」
もう慣れたよ。
って言うか、慣れざる負えない。
「……私の名は闇里マユ。伝説なんて言っているが、君達と同じ普通の女だよ」
「…君を『普通』と言うには、かなりの躊躇いがあるな…」
そう言わないでよ。
こっちとしては、オラクル細胞を注入している以外は普通なつもりなんだから。
「……そろそろ時間か」
「貴女様に敢えて本当に良かったです!ありがとうございました!」
「貴女は間違いなく命の恩人だ。この恩は一生忘れない」
「ふっ……そうか」
ここまで感謝されるのも珍しいな。
二人の顔を見ながら、私は家へと転移した。
帰宅直後、体についた火傷の跡を見て、黒歌と白音が泣きそうになりながら傷の手当をしてくれた。
心配…掛けちゃったかな?
これからは気を引き締めていこう。
もう…家族に心配は掛けたくないから。
またまた長くなってしまった…。
本当はこんなつもりは無いのに…。
これで原作前にやりたいことは一応終了です。
でも、また何か思いつくかもしれませんけど。
次は『夢』の話の予定です。
では、次回。