神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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なんか消化不良だったので、連続でいきたいと思います。

今回はアラガミとの戦いと同時に、とある原作キャラとの出会いと、ネロとは別の歴代の赤龍帝を登場させます。

まぁ…サブタイでなんとなく分かるとは思いますけど。



第16話 良妻賢母な妖狐と狐っ子

「……てな事があった」

 

その日の夕食時、私は皆に今日あった出来事を話していた。

 

「前に助けた男の子が新入生として…ねぇ…」

「マユさんは本当に色んな人を助けてるんですね」

「困っている誰かを助けるのは当然の事だからな」

 

例え相手が誰であろうとも、助けるのは当たり前だ。

戦う事しか出来ない私が誰かを助けられるのは、こっちとしても嬉しいけどね。

ま、自己満足と言われればそれまでなんだけど。

 

って、グレートレッド…

 

「ちょっとじっとしてて」

「ん?」

 

私は彼女の口についているソースをティッシュで拭いてあげた。

 

「……これでよしっと」

「すまんな、マユ」

「家族だから、これぐらいは当たり前」

「家族…か。ふふ……なんだかいいな…」

 

嬉しそうに微笑みながら食事を再会するグレートレッド。

なんか…こう、心の底から湧き出てくるものがあるな…。

 

「…本当にマユは私達と同い年か疑いたくなるにゃ。あ、オーフィス。ご飯粒が付いてるにゃ」

「ん」

 

それってどういう意味かな?

…もう慣れたけど。

 

「機会があれば紹介してほしいにゃ」

「そうですね。私にとっては先輩になるかもしれない人ですから」

「そうだな…」

 

裕斗は物腰もいいし、基本的に優しそうだったから、すぐにでも仲良くなりそうだ。

いつか家に呼んでもいいかもな。

 

そんな風に話していると、いつの間にか食事は終わっていた。

 

全部の食器を下げた後、私は黒歌と一緒に洗い物をしていた。

白音はオーフィスちゃんとグレートレッドと一緒にお風呂に行った。

 

もう少しで全部洗い終わる……そんな時だった。

 

『む…?』

「どうした?ドライグ」

『少々反応が捉えにくいが、アラガミの気配がするぞ』

「なに?」

 

アラガミ?

全く…空気読めよな。

もうすぐ、一日の内で一番の楽しみなお風呂タイムだってのに…。

 

「後は私がやっておくにゃ。遠慮なく行ってくるにゃ」

「すまない…」

「家族なんだから、遠慮は無しにゃ」

「黒歌…」

 

そんな事を言われたら……本気で感動してまうやろ~!

 

「白音達にはちゃんと言っておくにゃ」

「わかった…」

 

本当に…良く出来た子だよ…。

私には勿体ないぐらいだ。

だからだろう……殆ど無意識のうちに、体が動いていた。

 

「黒歌…」

「どうしたにゃ?」

「……ありがとう」

「にゃ……にゃにゃ!?」

 

私は、黒歌の事を抱きしめていた。

 

「黒歌や皆がいてくれるから……この家で待っていてくれるから、私は頑張れる。いつも…本当に感謝してる」

「…マユは私達の事を救ってくれた。だから、マユが帰ってくる場所を護るぐらいの事はお安い御用よ」

「黒歌……」

「マユ……」

 

私達は互いに見つめあう。

 

『……イチャイチャするのは、アラガミを退治してからにしたらどうだ?』

「「……!?」」

 

一気に互いの顔が真っ赤になって、素早く離れた。

 

「わ…わかっている!」

「そ…そうにゃ!早くやっつけてくるにゃ!」

 

何だか悶々とした気持ちのまま、私は急いで準備をして転移した。

うぅ…どうしてしまったんだ?私は……

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 転移が完了すると、そこは並木道だった。

周囲には桜の木が並んでいて、花吹雪が舞っている。

こんな時じゃなければ、静かに眺めていたいけどね。

 

「ここは一体…?」

 

少なくとも日本なのは確実っぽいけど、何処なのかが分からない。

 

「アラガミの気配はする?」

『いや…先程と同じように、僅かにしか感じん…。もしかしたら、まだ出現していないのかもしれん』

「そうか…」

 

そこまで慌てなくてもよかったかな?

ちょっとだけ焦っていたので、今回は殆ど勘に従って服を選んだ。

今回の服はミューティニア……つまりはアリサの衣装である。

お腹が丸見えな恰好な為、私の割れた腹筋が見えまくっている。

今回、なんでかこの格好の方がいいと感じたため、その感覚を信じてこの服で来た。

因みに、帽子は被っていない。

 

「ちょっと…歩いてみようか」

『そうだな』

 

私はその場を離れて、少し歩いてみた。

 

「綺麗だな…」

『風流…と言うのだったか?この国では』

 

ほぅ…そんな言葉も知っていたのか。

 

ドライグの意外な語録に感心していると、赤龍帝の籠手が強制的に出現し、そこから聞いたことのない声が聞こえた。

 

『みこーん!ここは…まさか?』

 

みこーん?

なんだ…一体?

聞いた感じじゃ、年頃の女の子みたいだったけど…。

 

『玉藻……お前も来たか』

『当然です!私だってご主人様とお話したかったんですから!』

 

玉藻…?

それに、ご主人様…?

 

『ああ!私としたことが、自己紹介を忘れるとは!?』

 

テンション高いなぁ~…。

 

『初めまして。私は歴代の赤龍帝の一人の『玉藻の前』と申します』

「玉藻の前……」

 

それって…かなり悪名高い妖怪…って言うか、確か九尾の狐の別名だったんじゃ…。

 

『史実はどうだったかは知らんが、実際のこいつは神の化身だぞ』

「……は?」

 

神の化身とな?

 

『人間に興味を持った太陽神『天照』が自ら自身の記憶を消去して、人間に転生した姿なんだ』

「なんと…!」

 

歴代の赤龍帝には、そんな大物もいるのか…!

 

『俺も実際に知った時は驚いた。よもや、神と共に戦うことになるとは夢にも思わなかったからな』

 

そりゃそうだ。

 

「けど、確か史実ではかなりの悪行を重ねたと聞いたことが…」

『それは……』

 

あ、もしかしなくても地雷踏んだ?

 

「…すまない。無神経だった」

『い…いえ!お謝りなさらないでください!ご主人様は何も悪くはございません!』

 

なんだよこれ……めっちゃいい子じゃん…。

誰だよ、悪名高い大妖怪とか言った奴。

私がぶっ飛ばすぞ。

 

『一応言っておくが、玉藻は俺の力を悪行には一切使わなかったぞ』

「そうか…」

 

それはなんとなくわかる。

こうして赤龍帝になったせいか、どことなくそこは理解出来るのだ。

 

「ところで、さっきはここが何処か分かったような事を言っていたけど…」

『そうでした!』

 

しっかりしてそうで、意外とうっかりさんなのね。

 

『おそらくここは、京都だと思われます』

「京都…?」

『はい。この場所からは京都特有の霊脈を感じますから』

「霊脈…」

 

流石は玉藻の前ってところか。

 

「物知りだな」

『いや~ん!ご主人様に褒められたぁ~!もっと褒めてくださいまし!さぁさぁ!お願いプリ~ズ!』

 

……どうしろと?

 

リアクションに困っていると、足元に薄汚れたチラシを見つけた。

試しに拾い上げてみると、そこには確かに『京都』と言う単語が書かれてあった。

 

どうやら、彼女の予想は大当たりのようだな。

 

チラシをくしゃくしゃにして、近くにあったゴミ箱にシュートしたところで、玉藻が何かを感じたようだ。

 

『むむ?この感じは…!』

「どうした?」

『アラガミとは違う気配……これは、妖気ですね』

「妖気…?」

 

私は何にも感じないけど。

って、そりゃそっか。

私に分かる事なんて、アラガミが放つオラクル反応だけだもんな。

 

『俺も確かに感じた…』

『あっちです!ご主人様!行ってみましょう!』

「そうだな」

 

てなわけで、行ってみることにした。

念の為に走って。

 

『そうだ、ご主人様。念の為に私の力の一部をお貸ししますね?』

「力の一部…?」

『はい!禁手に至らなくとも、歴代の力の一部ぐらいなら使用は可能なのですよ?』

「そうなのか?」

『言うのを忘れていたな。すまん』

 

いやいやいや…そう言うのはちゃんと言おうよ…。

 

『そんな訳で…いきますよ!ドライグさん!』

『承知した!』

 

次の瞬間、籠手からいつもとは違う音声が聞こえてきた。

 

【Caster!】

 

すると、私の視界に入っている髪がピンク色に染まっているのが見えた。

それと同時に、頭と腰の辺りに違和感を感じた。

 

ちょっとだけ立ち止まって触って確認してみると、そこにあったのは……

 

「……耳と尻尾?」

 

そう。

イヌ科の耳と尻尾と思わしきものが生えていたのだ。

恐らく、これは狐の耳と尻尾だろう。

 

「これは……」

『それが私の力を使う際の姿です。他の方々の際も同じように多少の変化はしますよ?』

「マジか…」

 

狐耳に尻尾って……かなりあざといな。

私は別に萌えキャラじゃないぞ?

 

『とってもお似合いですよ!ご主人様!今すぐにでも押し倒したいほどに…ぐへへ…』

 

今、不審な言葉が聞こえた気が…。

 

「ま、いいか」

 

今は兎に角急ごう。ってな訳で、私は移動を再開した。

 

走っている際に尻尾が妙に邪魔だったけど。

 

「そう言えば、どうして私の事をご主人様って言うんだ?」

『確かに貴女様は私から見れば後輩に当たります。けど、その性格にその心。更には魂がイケメン過ぎます!私的にはどストライクなんです!ですので、このような形ではありますが、貴女様の事をご主人様としてお慕いしたいと思ったと…こういう訳です』

「そ…そうか。頑張れ」

 

説明して貰ってもよく分からん。

大体、『魂がイケメン』って何よ?

 

『むむ?ご主人様、こちらに向かって誰かが走って来ますよ?』

「なんだって?」

 

目を凝らして見てみると、そこにいたのは今の私と同じように狐の耳と尻尾を生やした巫女装束の女の子で、見た感じではオーフィスちゃんやグレートレッドと肉体年齢は同じぐらいだ。

 

聞き耳を立ててみると、彼女の必死な声が聞こえてきた。

 

「な…なんなのじゃ!お前達は!?」

 

どうやら、何かに追われているようだ。

アラガミの気配がしないとなると、別の存在か…?

 

『この妖気は…妖怪の類ですね』

「妖怪…」

『はい。しかも、追われている幼女は私の同族のようです』

 

玉藻の仲間…か。

けど、それ以前に……

 

「子供を傷つける者は…私が許さん…!」

 

どんな理由があるにしろ、子供の笑顔を奪うなど言語道断!

私的には即死刑だ。

 

段々と近づいていくにつれて、彼女を追いかけている妖怪の姿が見えた。

 

妖怪は三人組(数え方は人で合ってるのかな?)で、全員が共通して頭に角が生えている。

一人は赤い肌の大男で、もう一人は青い肌の中肉中背、最後の奴は緑の肌のデブだった。

 

「待ちやがれよぉ~。九重ちゃぁ~ん…」

「別に取って食おうってんじゃねぇよ。お前を人質にして、八坂の奴を呼びだすだけだからよ」

「は…母上を!?なんでじゃ!?」

「決まってんじゃねぇか。外の世界に進出して、悪魔や天使、堕天使の連中に俺達妖怪の凄さってヤツを知らしめてやんのよ」

「本来なら他所者であるあいつらが、ここでデカい顔をしてんのが我慢ならねぇのよ」

「何を言うておる!そんな事になれば、三大勢力と妖怪との全面戦争になってしまうぞ!」

「だぁ~かぁ~らぁ~…それが目的だっつーの!ぎゃはは…」

 

…聞いてるだけで反吐が出る。

少なくとも、魔王であるサーゼクスさんは一生懸命に他の種族との共存を考えてるってのに……こいつらと来たら…!

 

「子供を人質にするなどと…!」

『暫く見ないうちに京妖怪も質が落ちたな。俺が知っている連中は、妖怪としての誇りに満ちていたと言うのに…』

『全くです…!あんな奴らがいるから、善良な妖怪が被害に遭うんですよ!』

 

二人共、あの連中に憤慨してるようだな。

私も気持ちは同じだ。

 

「ならば…!」

『やる事は一つだ!アラガミと戦う前のウォーミングアップには丁度いい』

『ご主人様!やっちゃってください!』

「当然!!」

 

私は一気にスピードアップして、彼女の元に急いだ。

その最中、頭の中に今の状態の戦い方に関する情報が流れてきた。

 

(そうか…これなら…!)

 

向こうも走ってくる私に気が付いたようで、立ち止まってこっちを指差した。

 

「な…なんだぁっ!?」

「誰かが走って来る!?」

「このガキの仲間か!?」

 

女の子の方も、私を見て目を見開いていた。

 

「な…なんじゃ!?」

 

私は女の子の所まで行くと、そのまま彼女を庇うように前に出た。

 

「テメェ…何モンだ?」

「おい…コイツの頭…」

「ほほぅ…?」

 

なにやら、私の頭の耳と尻尾に注目しだした。

 

「そうか…お前もそこのガキと同じ妖狐か。だったら丁度いいや。テメェも一緒に人質に…」

「させると思うか?」

「何?」

 

私は籠手から一枚の札を召喚した。

 

「炎天よ…走れ!!」

 

この状態で出来る攻撃手段…それは、呪術だ。

炎の力を帯びた札が直撃した赤い大男は、地面をのたうち回った。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?も…燃えるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

ふん!子供を人質にしようとする輩には、当然の報いだ。

 

「て…てめぇっ!!」

「女だからって下出に出てれば調子に乗りやがって!!」

 

どこがだよ。

完全に脅しまくってたじゃん。

 

「捕まって!」

「は…はいなのじゃ!」

 

私は女の子を抱えて、青い男の拳を回避。

少しだけ離れた場所に着地すると、再び札を召喚した。

 

「氷天よ……砕け!!」

 

幾ら身体能力に優れた妖怪とは言え、素人同然の動きでは回避できるはずもなく、札は吸い込まれるように直撃した。

 

「が…あぁぁぁっ…!身体が…凍って…!」

 

青い男はあっという間に氷像になった。

この時期はまだ寒いだろうに(笑)

 

「そ…そんな…!あっという間に二人も…!」

 

流石にこの短時間でここまで圧倒されるとは思っていなかったのか、緑のデブは後ずさりをしていた。

 

だが……

 

「逃がすと思うか?」

 

コイツは生理的に受け付けない。

故に、考えうる最大の攻撃をお見舞いしてやろう。

 

「ここでじっとしてて」

「わ…わかったのじゃ…」

 

女の子は困惑した状態でゆっくりとその場に降りた。

 

そして、私はデブに向かって全力疾走した。

 

「ひっ…!く…来るなぁ!?」

 

そんな言葉を聞くはずもなく、私はそのまま突撃した。

その勢いのまま、まずはその股間に蹴りを一撃。

 

「弁明!」

「ぐぴぃっ!?」

 

左足を軸にして、お次はその場で回転蹴り。

 

「無用!!」

「ぶじゃすっ!?」

 

そのままバク転で一回間合いを取る。

全力で助走して、前方に向かって思いっきりジャンプ!!

 

「浮・気・撲・滅!!!」

 

その蹴りは悶絶しているデブの股間にクリティカルヒット!!

その勢いのまま、後ろに降り立つ。

 

「名付けて……一夫多妻去勢拳!!!」

「ハスイニウデャイdshnuisdanhf!!?」

 

デブの断末魔と共に、なんでかボカーン!と言う爆発が起こった。

 

…なんで私…『浮気撲滅』とかって言ったんだろう?

 

緑のデブは、黒焦げになった状態で泡を吹いて倒れた。

 

『さっすがご主人様!お見事です!!』

『痛い……あれは痛いぞ…相棒…』

 

なんでドライグが苦しそうなのさ?

 

なんでか暴漢達と同様に苦しんでいるドライグに疑問を感じながら、私は女の子の元に戻った。

 

「大丈夫だった?」

「う…うむ…」

 

気丈に振る舞って入るけど、今にも泣きそうだ。

無理もない。

あんな連中に追いかけられれば、この歳の子は誰だってこうなる。

 

「もう怖い奴はいない。大丈夫…大丈夫だから…」

「う……うう…うう…うわぁああぁぁぁぁん!!!」

 

女の子は私の身体に抱き着いて、思いっきり泣いた。

うんうん、今はそれでいいよ。

泣きたい時は思いっきり泣けばいい。

 

暫くして、女の子はようやく泣き止んだ。

 

「ひっく……みっともない所を見せてしもうたの…」

「気にしてない」

 

それよりも、気になってたんだけど…。

 

「どうしてこんな時間にこんな場所に?」

「うぅ……今夜は満月が綺麗だから、こっそりと寝所から抜け出して外で眺めていたんじゃ…。そしたら、さっきの奴等がやってきて…」

「君を捕まえようとした…と」

「うむ…その通りじゃ…」

 

子供の夜の一人歩きは感心しないが、この子も反省しているようだし、ここはお説教はしないでおこうか。

そう言うのは、この子のお母さんに任せるよ。

 

「これからはもう、夜中に一人で出歩いてはいけないよ?」

「わかったのじゃ…」

 

私は彼女を宥めるために、頭を優しく撫でた。

 

「ところで…おぬしは誰なんじゃ?その耳と尻尾を見る限りでは、同族のように見受けられるが…」

「それは……」

 

私が説明しようとすると、突然…

 

『…!相棒!アラガミの反応がいきなり大きくなったぞ!!もうすぐここに来る!!』

「なにっ!?」

 

こんな時に…!

 

「どこから来る?」

『俺達が来た方向からだ。間違いない』

「そうか…」

 

私は彼女を放してから、少しだけ離れた。

 

「君はそこら辺の草むらに隠れてて」

「え?え?」

「もうすぐ…こいつ等よりももっと怖いのがやって来る…!」

「なんじゃとっ!?」

 

女の子は恐怖と驚きが混じった顔になる。

 

「もうすぐやって来る。いいから早く!」

「わ…分かったのじゃ!そなたも気を付けるのじゃぞ!」

 

彼女の激励を受けて、私はやって来るアラガミに対して身構えた。

同時に、神機も取り出した。

 

「…!これは…」

 

出て来たのは、アヴェンジャーにレイジングロア、ブリムストーンのアリサセットだった。

もしかして、アリサの格好になったから、装備も強制変更になったのかな?

 

あ、そう言えば、この馬鹿たちはどうしよう?

 

「……ま、いいか」

 

何かあったとしても、それは全部こいつらの自己責任だ。

女の子を誘拐しようとしたこいつらが悪い。

 

『ご主人様……来ます!!』

 

玉藻の言葉で一気に戦闘モードに入る。

 

やって来たのは……

 

「アイツは…!」

 

アラガミには珍しい人型のフォルム。

両肩には鎧を付けて、その右腕からは大きな砲身を覗かせている。

 

「ヤクシャ…か」

 

単体ならば、それほど脅威じゃない。

けど、本来ならあいつは集団行動を好む習性があった筈。

 

「ドライグ。他にアラガミの反応は?」

『見受けられない。今この場にいるアラガミは、あのヤクシャだけだ』

「了解した…」

 

ターゲットはヤクシャ一体。

これなら何とかなる。

毎度のように、ヘイト値はMAXで、私の方しか向いてないしね。

 

「距離を取られたら厄介だ。こっちから行く!」

 

ヤクシャの先制攻撃を防ぐために、自分から仕掛けた。

 

まずは真正面から向かって行く。

すると、ヤクシャは片膝をついて、砲身をこちらに向けてから狙いを定めた。

 

「そうくると思った…!」

 

狙われた直後、私は瞬時に左側に回り込む。

コイツは狙いを定めている間は、身動きが出来ないからな。

 

「うぅ……まだ熱い…」

 

あ、炎天を受けた赤い男がフラフラになりながら起き上がった。

他の連中はまだ気絶してるけど。

 

「な…なんだあいつはぁ!?」

 

運の悪い事に、赤い男が起き上がった直後にヤクシャのマスドライバーが発射された。

 

巨大なオラクルの塊が真っ直ぐに飛んでくる。

炎天のダメージが残っているせいか、碌に身動きが出来ない赤い男は当然…

 

「ぶぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

見事に直撃して吹っ飛んだ。

 

多分…死んだな。

 

その隙に私は左肩の鎧を攻撃する。

勿論、一撃では壊れないが、ロングブレード特有の四連撃をお見舞いしたお陰で、部位破壊に成功した。

 

「よし」

 

ヤクシャは痛そうに雄叫びを挙げて、こちらを向く。

すると、奴は砲身下に向けて、エネルギーを溜め込んだ。

 

「鬼爆陣か…」

 

次の攻撃が分かれば、避けるのなんて容易い。

 

バックステップで後ろに下がり、銃形態に変形。

そのまま今度はこちらが狙いを定める。

 

「遠距離攻撃は…そっちだけの専売特許じゃない」

 

頭を狙って、炎属性のバレットを何発も連続で叩き込む!

途中で避けようとしたが、それはこちらが標準補正をすればいいだけの話。

結果、ヤクシャの頭部の部位破壊に成功した。

 

「割れた…」

 

私はお約束のように横に回り込み、近接形態に戻して三回斬りつけた後にプレデタースタイルの昇爆を使った。

真上に飛び上がりつつ捕食して、バースト。

更に二回斬りつけて空中捕食のガイストを発動。

捕食後に空中を後退し、丁度いい感じに間合いが出来た。

 

ヤクシャはふらつきながらこちらを向き、上空にレーザーを撃ってこちらの頭上に降り注がせる斬鬼柱を撃った。

 

だが、さっきも言ったように、次の攻撃が分かれば避ける事は容易い。

それが単体の敵なら尚更だ。

 

いつものようにバックステップして、また銃形態に変形。

今度はヤクシャから貰ったアラガミバレットをセットしてから発射した。

撃ったのは鬼斬柱。

追尾性能を持っているから避けても無駄だし、着弾時にエネルギーの柱による追加ダメージまである。

 

その一撃はかなりのダメージになったらしく、体中から血飛沫が上がって怯む『ファンブル』が起こった。

 

「あと少しだ…」

 

一気に決めるために懐に入り、近接形態にしてから四連撃を叩き込む。

その後にゼロスタンスでリセットし、そのままインパルスエッジを何発も撃ち込んだ。

 

バースト化と近接攻撃によってオラクルポイントには余裕があり、無くなるまで撃ち続けた。

 

もう限界の筈なのに、まだ攻撃をしようとしてきたので、思いっきり踏み込んで、大きく斬り抜けた。

 

その一撃が止めとなり、ようやくヤクシャは活動を停止して、その場に倒れた。

 

「…悪くない」

 

倒れ込んだヤクシャを捕食して、そのコアを摘出する。

摘出が完了すると、ヤクシャの死骸は霧散した。

 

「…もういいよ」

 

私が女の子がいる草むらに話しかけると、女の子は走って私に抱き着いた。

 

「よかったのじゃ……無事でよかったのじゃ…」

「…………」

 

なんか、心配されていたらしい。

ふむ……

 

「私なら大丈夫」

「うん……」

 

泣いている女の子を宥めるために、私は彼女の頭を撫でる。

髪…サラサラで気持ちいいな…。

 

「そなたは何者なのじゃ?鬼達を相手にしても一歩も怯みもせず、それどころか倒してしまう始末。しかも、見た事のない化け物をやっつけてしまった」

 

まぁ…当然の質問だよなぁ…。

 

「私は……」

 

もう説明するのに躊躇いはない為、この子に教えてあげようと思ったら、ヤクシャが来た方とは反対側から誰かの気配が来た。

 

「九重!どこにいる!?」

 

やって来たのは、この子と同じように巫女衣装を着た大人の女性だった。

頭に狐耳があるのを見ると、どうやらこの子のお母さんのようだ。

 

「…!母上!」

 

女の子…九重ちゃんは嬉しそうにお母さんにところに走って行って抱き着いた。

うんうん。

やっぱり親子はこうでなくちゃね。

 

「こ…九重!?今まで何処に…」

「すみません…母上…。私の我儘でご心配をおかけして…」

「もうよい…。お前が無事なら…それでよい」

「母上…」

 

ひとしきり安心すると、二人はこっちを見た。

 

「母上!あの者が助けてくれたのじゃ!」

「そうか…」

 

お、なんかこっち来た。

 

「なにやら、私の娘が世話になったようで、感謝に堪えない」

「いや…私は別に…」

 

そこまで丁寧に言われると、こっちの方が畏まってしまう…。

 

「む…?」

 

あ、私の籠手を見てる。

それと一緒に頭の耳と尻尾も。

 

「ふむ…。その籠手…そなたが噂の赤龍女帝か?」

「せ…赤龍女帝!?様々な場所、様々な時代に現れて、異形の怪物を退治していると言う…伝説の戦士…。それがこの者…いや、このお方なのですか!?」

「その籠手は間違いなく赤龍帝の籠手。間違いないでしょう」

「なんと…!確かに先程も異形の化け物を退治して見せたし…」

 

なんか一気に九重ちゃんの目が羨望の眼差しに変わったんですけど…。

 

(さ…流石はご主人様…!出会って間もない幼女の心さえも掴んでしまうとは…!)

 

何処に感心してるねん、玉藻ちゃんや。

 

「私は八坂。この京都にて妖怪達の長を務めている」

「私は九重じゃ!」

 

女性の身で妖怪達の纏め役って…。

凄いな…。

気苦労も多いだろうに…。

 

「私は…闇里マユ。見ての通りの女です」

「そうか。まさか噂の赤龍女帝が我等の同族とは思わなんだ」

「いや…この耳とかは…」

 

なんか、言い訳しないと近い将来後悔するような気がする!

 

必死に言い訳を考えていると、いきなり魔法陣が現れた。

 

「え?」

「ほぅ?」

「これは…」

 

ド…ドライグ?

 

『いや…これは俺じゃないぞ』

「じゃあ…」

 

もしかして…?

 

『早く帰りましょう!ご主人様!(このままここにいたら、確実にこの親子にフラグを立ててしまいます!唯でさえ半ばハーレム状態なのに、これ以上増えて溜まるもんですか!)』

 

た…玉藻なのか?

この魔法陣を展開したのは…。

 

「もう行ってしまうのか?」

「はい」

「そうか…。また京都に来る機会があれば、私の所に来るがいい。喜んで力になろう」

「ありがとうございます」

「なに…娘を救って貰った礼だよ。これでも安いぐらいだ」

 

おお…なんかめっちゃいい人だ。

 

「そこで気絶している連中については私がなんとかする。そこは安心してくれ」

「わかりました」

 

ったく…こんな小さな子供を人質にしようなんて、根性腐りすぎでしょ。

 

「また…会えますか?」

 

この展開は…もう何回目だ?

 

「きっと会える。何故なら、道は何処までも続いているから」

「道は…続いている…」

「君の歩く道と、私の歩く道が交わる日がまたきっとやって来る。それまで…お別れだ」

「はい……」

 

九重ちゃん…そんな泣きそうな顔をしないでおくれ…。

こっちも別れを惜しんでしまうよ…。

 

「では…また」

「ああ。また会おう、赤龍女帝…闇里マユよ」

「マユ殿!お元気で!」

「九重も…元気で」

 

そうして、私は自宅へと転移していった。

 

(くっ…!結局、別れ際の挨拶でフラグを回収してしまいましたか…。けど、玉藻は諦めませんからね!ご主人様の正妻の座は必ずや私が!!)

 

転移しながら、なんか玉藻の邪な気配を感じたけど…気のせいか?

 

家に戻ると、狐っ子モードになっている私を見て、黒歌と白音が何故か鼻血を流し、オーフィスちゃんとグレートレッドはもふもふの尻尾で遊んでいた。

 

なんか妙にウケがいいので、その日の夜は玉藻に頼んでそのままの状態でいた。

 

今回も、無事に助けられて良かったよ…。

 

意外な収穫もあったしね…。

 

他の歴代の力を用いれば、アラガミ以外の戦闘も楽になるな…。

 

ま、ちゃんと力を引き出せるかは私に掛かってるんだけど。

 

これからも精進あるのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夢中になって書いていたら、いつの間にか一万字オーバーに…。

今後はちゃんと文字数を抑えないと…。

さて、次回は誰と会うのかな?

では、次回。


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