と言っても、まだ原作に入るわけでは無いんですけどね。
ここからも、原作前に様々なキャラと絡ませていきたいと考えてます。
時は…待たない。
そんな風な言葉をオープニングから言ってのける某ジュブナイル系RPGのように、時間と言うのはあっという間に過ぎていく。
気が付けば、もう一年が経ち、私は二年生になりました。
あれからも色々とあった。
学校では色んな行事があり、その度にリアス、朱乃と一緒にいたせいか、三人揃って変な異名で呼ばれるようになったし。
プライベートでは何回もアラガミと戦った。
しかし、どういう訳か、まだ大型のアラガミは出現しない。
この一年は主に中型のアラガミとしか戦ってない。
しかも、未だに属性変化した堕天種とは遭遇していないと言う有様だ。
本気で訳が分からん…。
ま、どういう原理でアラガミがこの世界にやって来ているのか、その理由も分かっていない以上、ここで考えても仕方が無いんだけど。
あ、ちゃんと約束通りに私はリアスが作った『オカルト研究部』に入部したよ。
彼女自身も暇な時に顔を出してくれればいいと言ってくれたし、こっちとしては色んな意味で有難い申し出だった。
これからはもう、部活の勧誘を受けなくて済むから…。
本気で大変なのよ…あれ。
白音はサーゼクスさんから届いた入試用の問題集をするようになった。
勉強は主に私と黒歌で教えていた。
白音は思った以上に呑み込みが早く、こっちとしても教え甲斐があった。
これならきっと大丈夫だろう。
そして、去年の冬にサーゼクスさんから連絡が届いて、黒歌のはぐれ悪魔認定が完全に解除されたとの事だ。
その日は皆で盛大にお祝いしたっけ。
黒歌も嬉しそうに泣いていたし、白音も自分の事のように嬉しがっていた。
どう言う訳か、ネロもいきなり介入してきて大騒ぎしてたけど。
なんでも、他にも黒歌のように謂れの無い理由ではぐれ悪魔になった人々が多いらしく、現在はそんな人達を洗い出しつつ保護するようにしているらしい。
なんか、私の中で猛スピードで魔王のイメージが変わっていった。
それからは今まで以上に安心して生活できるようになり、黒歌の笑顔も増えて行った。
年末年始は、皆で大掃除をしたり初詣にも行ったりした。
その際、リアス達と黒歌達は初めて出会った。
リアス達も黒歌達の事は予めサーゼクスさんから聞かされていたらしく、そこまで警戒はしなかった。
その代わり、なんか強敵と書いて友と呼ぶ空気が流れていたけど。
あと、白音が二人の胸を見て恨めしそうにしていたのが印象的だった。
流石にオーフィスちゃんとグレートレッドの事を見た時は驚きを隠せないでいたけど。
ま、手抜きのように見えるかもしれないが、そんな感じで転生してから初めての一年は過ぎていった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そんな訳で、今は新しい二年の教室にいます。
クラス替えによって、私とリアス、朱乃は同じクラスになった。
なんとなく、サーゼクスさんの見えない手が働いてるような気がしなくもない。
「今年からは同じクラスね。お姉ちゃん」
「ふふ……この一年は楽しい事になりそうですわ」
「ふっ…そうだな」
私としても嬉しくはある。
やっぱり、顔見知りがいるだけで新学期のスタートは違うからね。
しかし……
(まだ私の事を『お姉ちゃん』って呼ぶのか…)
今までなんとなくスルーしてきたけど、そろそろ普通に呼んで欲しい。
二人につられて、他の同級生たちも私の事をお姉ちゃんって呼び出す始末だし。
後輩達が見たら絶対に驚くよ。
もしくはドン引き。
「そうそう。今日の放課後って何か用事はあるかしら?」
「いや、特には。…何かあるのか?」
「ええ。実はお姉ちゃんに会わせたい子がいて」
「会わせたい子?」
私に会わせたい…ねぇ?
誰なんだろ?
「向こうの方は、ずっとお姉ちゃんに会いたがってましたものね?」
「きっと喜んでくれるわ」
う~む……全然分からん。
マジで誰だ?
「それじゃ、放課後に部室の方に来てくれる?」
「わかったよ」
私が返事をしたところで先生が教室に入ってきて、その場は解散になった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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放課後。
私はリアスに言われた通りに、オカルト研究部の部室がある旧校舎に向かっていた。
ちょっとだけ新校舎と距離がある為、嫌でも廊下を歩かなくてはいけない訳で……
そうなれば、必然的に色んな生徒たちの目に留まる。
「ねぇ、あれ見て!」
「マユお姉さまよ!…今日も凛々しくて美しくて…素敵だわ」
こんな風に私に変な羨望を向ける生徒達が色んな話をするのだ。
オラクル細胞で聴力も強化されているせいか、その殆どが丸聞こえである。
「うぉ!?あれが噂の『駒王三大お姉さま』の筆頭の闇里マユ先輩かよ…」
「背ぇ高けぇ…。しかも超美人じゃん…」
うぅ…身長の事は言わないでくれ…。
どうやら、神機使いであっても成長期なのは変わらないようで、この一年で私の身長は4センチも伸びて、177センチになっている。
このままいくと、驚異の180台に行くかもしれない…。
仕方がないとはいえ、年頃の女の子としてそれでいいのか…私…。
「なんと!あそこに見えるのは噂に名高い闇里マユ先輩ではないか!?」
「マジか!?どこどこ!?」
「あそこだ!そこの渡り廊下を歩いてる…」
「あ…あれか!?噂以上の美人…!」
「ああ!頑張って駒王学園に入った甲斐があったな!元浜!」
「全くだ!松田!」
なんか…丸坊主の男子と眼鏡を掛けた男子がこっちを見て騒いでる。
丸坊主の子の手には高そうなカメラが握られていた。
妙にいやらしい視線を感じたため、私は早足でその場を後にした。
ま、単純に周囲の視線に耐えられなかったと言うものあったけどね。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
なんだかんだあって、ようやく部室前についた。
一応、礼儀としてノックをする。
「私だ」
「お姉ちゃん?入っていいわよ」
入室の許可をもらって、私は木製の古めかしい扉を開く。
中はオカルト研究部らしく、幾何学的な魔法陣やら蝋燭やらがあって、いかにもな雰囲気を醸し出していた。
高級そうなソファーが四つ置いてあり、その中央には同じように高級そうなテーブルが置いてある。
北側のソファーにはリアスが優雅に座っていて、紅茶を飲んでいた。
その傍では副部長である朱乃が紅茶を淹れていた。
そして、左側のソファーには、金髪の美少年が座って同じように紅茶を飲んでいる。
美少年が私の事に気が付いた瞬間、その目を見開いて私の傍までやってきた。
「本当だ……。部長の言った通り…あの頃のままだ…」
「え?…ええ?」
あの頃?
「もう…祐斗。気持ちは解るけど、少しは落ち着きなさい」
「あ……すみません。部長」
バツが悪そうにソファーに座り直す少年。
え…?マジで誰よ?
「お姉ちゃんも座って」
「あ…ああ」
リアスに促されるように、彼女の向かいのソファーに座る。
それと同時に朱乃が紅茶の入ったティーカップを傍においてくれた。
「どうぞ、お姉ちゃん」
「ありがとう」
まずは一口。
うん、相変わらず朱乃の紅茶は美味い。
毎日でも飲みたいぐらいだ。
前にそんな事言ったら、顔を真っ赤にして目をキラキラさせてたけど。
「じゃあ、そろそろ自己紹介して貰いましょうか?」
「そうですわね」
自己紹介?
あ…彼のか。
美少年が紅茶を飲む手を止めて、こっちを向く。
「本当にお久し振りです。あの時はお世話になりました」
「あ…ああ…どうも…」
思わずつられてお辞儀しちゃったよ。
「と言っても、普通は分かりませんよね?」
「普通はそうよね」
どうやらリアスは知ってるみたいだけど…。
「覚えてませんか?以前、雪山で助けていただいた……」
「雪山……」
雪山って言うと…確か……アラガミに襲われそうになっていた小さな男の子を助けて、それから彼をサーゼクスさんに預けて………って!まさかっ!?
「君は…あの時の…?」
「はい!覚えていてくださって嬉しいです!」
そっか……あの時の子か…。
大きくなったんだな…。
「今は『木場祐斗』と名乗っています。今年からこの駒王学園に入学しました」
「そうか……それは良かった」
「これからよろしくお願いします。マユ先輩」
「ああ…よろしく。…って、私の名前…」
「貴女の名前は部長…リアス先輩に教えて貰いました」
思わずリアスの方を向くと、可愛らしくウィンクをした。
ま…別にいいんだけどね。
因みに、部長とはリアスの事。
彼女がここの部長をしているのだ。
「今は、部長の眷属悪魔をしてます。駒は
……ん?
今なんつった?
眷属悪魔?ナイト?
「えっと……リアス?」
「あ…あれ?もしかしてお姉ちゃん……眷属悪魔の事を知らない?」
「うん……」
そう言えば、黒歌がそれっぽい事を言ってた気がするけど、深く追求するのも躊躇われた為、全然聞いてない。
「一応聞くけど……三大勢力の歴史は知ってる?」
「それなりには……」
そこら辺の事は、ドライグや黒歌達に教えて貰ったからね。
「三大勢力の戦争によって悪魔勢力は大きく疲弊して、数を減らしてしまったの。元々出生率があまり高くない悪魔達は、ある物を開発してその事態を防ごうと考えた。それが……」
「
「知ってたのね…」
「名前だけはな」
詳しい事は全然知らないけどね。
「その悪魔の駒を使って、自分達が素質があると判断した者達を転生悪魔にする制度を設けたの。…中には邪な考えで無理矢理眷属にしようとする輩もいるみたいだけどね…」
黒歌の事はリアスも同じ女性として憤りを感じたと言っていたっけ。
共感してくれるだけでも、私は嬉しいよ。
「でも、少なくとも私はそんな事はする気はないわ。眷属にするかは相手とちゃんと話し合って、キチンと考える時間もあげるようにしているし。説明もしてるわ」
そこら辺はしっかりしてそうだもんね、リアスって。
「悪魔になれば、身体能力などが大きく上昇するから、それが目的で悪魔になる者もいるみたいね?」
「僕が正にそうですよ」
え?そうなの?
「部長達、グレモリー家の方々に恩があるのもそうですが、それ以上に、これぐらいでもしないと貴女の隣には立てませんから」
「随分と積極的ですわね?祐斗君は」
「勿論です。こればかりは譲れませんから」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、私にそこまでの価値はありませんぜ?
所詮私はアラガミを殺す事しか能が無い、しがない神機使いでしかないからね。
「他には誰がいるんだ?」
「ここにはいないけど、
「私が
……はい?
私がちょっとだけ呆けていると、朱乃の背中から蝙蝠の羽っぽいものが生えた。
「なんで…?」
「大事な親友の助けになりたかったから……そして、もう一つの理由は祐斗君と同じですわ」
それって…私の隣に立つって言う…?
「勿論、両親とは何回も話し合いました。父も堕天使という事もあり、それなりに思う所はあったようですが、最終的には許して貰いました」
「でも…そうなったら朱乃のお母さんは…」
彼女は普通の人間だった筈だ。
このままではいずれ辛い別れが待っているんじゃ…。
「そこら辺はなんとかすると言っていましたわ。お母さんの事になると父は何をするか分かりませんけど」
いいのかそれで…。
ま、このままで済ませる気は無いのは分かったけど…。
「出来ればお姉ちゃんも眷属になって欲しいけど、私じゃどんなに頑張っても無理ね…。余りにも実力が違いすぎるわ」
「お姉ちゃんを眷属に出来る悪魔は存在しているのでしょうか?もしかしたら、初代魔王のルシファー様ですら難しいかもしれませんわ」
「先輩ならあり得ますね…」
えぇ~?
そこまで過大評価する~?
「そう言えば、お姉ちゃんは三大勢力の戦争の最終局面の二天龍との戦いに介入したことがあるってお兄様に聞いたんだけど……本当?」
「二天龍…………ああ」
あの時ね。
私が転生してから最初に戦った、あの時の事か。
懐かしいなぁ~。
「え…マジ?」
「ああ。あの時は私も大変だったな。初めての空中戦だったし」
「その割には普通に戦っていたって聞いたけど…」
んな事無いって。
マジで必死だったよ?
「本当に…どんな場所にも現れるんですね…」
「それが使命だからな」
アラガミが現れる所、神機使い有り…だよ。
「……ちょっと話題を変えましょうか」
少しシリアスな空気になりかけたところを、リアスが変えてくれた。
「確か、お姉ちゃんと一緒に暮らしている白音って子も来年にはここを受験するのよね?」
「ああ。今は頑張って勉強しているよ」
「ふふ……来年が楽しみですわ」
「私もだよ」
白音には色んな事を知って、学んでほしいからね。
これを機に、友達が増えてくれると嬉しい。
「そうそう。裕斗もこれからはオカルト研究部に入るから。よろしくお願いね?」
「と言っても、剣道部と兼任するような形になりますけど。出来るだけこちらを優先するようにはします」
「そうか…。これからよろしく」
「はい。よろしくお願いします」
こうして、(私的には)一年振りの再会を果たした少年…裕斗を迎え、私の新しい一年が始まったのであった。
これから、また賑やかになりそうだなぁ…。
という訳で、祐斗再登場です。
出来ればもうちょっと短めにして、後半にアラガミとの戦いを書きたかったのですが、思った以上に長くなってしまいました…。
アラガミとの戦いは次回にしたいと思います。
では、次回。