神を喰らう転生者   作:とんこつラーメン

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今回から高校入学です。

そして、原作メインヒロインが再登場する回でもあります。

果たして、マユはどんな高校生活を送るのでしょうか?




高校入学 ~再会と新生活~
第10話 友達100人出来るかな?


 その日、魔王であるサーゼクス・ルシファーは冥界にあるグレモリー邸の自分の書斎にて仕事をしていた。

ノートパソコンと睨めっこしながら確認しているのは、自分が理事長を務めている駒王学園の新入生のデータだった。

 

人間界と冥界の発展は表裏一体で、人間界の文明レベルが上がれば、それに比例して冥界の文明レベルも向上していた。

今では、冥界にある各都市は人間界の都会と何ら遜色ない程に華やかになっている。

故に、魔王である彼がこうして文明の利器を使用しているのも、別段変なことでは無いのだ。

 

「ふぅ……」

 

椅子の背もたれに体を預けながら体を伸ばす。

それと同時に眼鏡を外して眉間を揉み解す。

 

「最近になって女子高から共学に変えたせいか、男子の数が段々と増えてきたな…」

 

今年は、彼の妹であるリアスも入学する予定になっている。

だからこそ、いつも以上に入念な確認作業をしているのだ。

 

「さて…気合いを入れて続けるか」

 

再び眼鏡を掛けて作業に戻るサーゼクス。

すると、書斎の扉が開かれて、メイド服を着た一人の女性が入って来た。

 

彼女の名は『グレイフィア・ルキフグス』。

サーゼクスの妻であり、同時に『僧侶(ビショップ)』の駒を持つ眷属でもある。

更には、グレモリー家のメイド長も兼任している。

 

「失礼します」

「グレイフィアか。どうしたんだい?」

「そろそろ休憩をする頃と思いまして、お茶とお茶菓子をお持ちしました」

「ははは……。君にはなんでも御見通しか」

 

つい先程、小休止をしたばっかりの彼は、思わず頭を掻きながら苦笑いをする。

 

そんなサーゼクスを他所に、グレイフィアはティーセットを乗せたトレーを持って静かに

机に近づく。

 

「どれほど終わったのですか?」

「まだまだだよ。もしかしたら、今夜は徹夜かもなぁ~」

「全く貴方は…。少しはご自分を労わったらいかがですか?」

「そうもいかないさ。この程度で音を上げていたら、『彼女』に笑われてしまう」

「それは……例の『ゴッドイーター』と名乗る少女…ですか?」

「ああ。僕達が手も足も出ない怪物達を、たった一人で相手してるんだ。その勇気と実力は本当に凄いと思うよ」

「だから、彼女の武勇伝を書籍化などしたのですか?」

 

実は、サーゼクスは密かにマユとの出会いや今までの戦いなどを書き記した本を出版していた。

実際、サーゼクスとマユとは数える程しか会っていない筈だが、それでも書籍にしてしまえるのは、単純に彼が大幅にマユの事を誇張しているに過ぎない。

それ程までに、サーゼクスにとってマユとの出会いは衝撃的だったのだ。

 

「まぁね。僕だけが知っているのは駄目だと思ったんだ。彼女の存在は、皆が知ってしかるべきだと思ったからね」

 

本人が聞いたら、恥ずかしさの余り自分の部屋に引き籠ってしまうかもしれない。

 

半ば呆れながら、グレイフィアは慣れた手つきで紅茶を淹れる。

それを受け取りながらパソコンを操作する。

画面は次の生徒の顔写真と簡単なデータを表示する。

そのデータを見た途端、サーゼクスがいきなり咳き込んでしまった。

 

「ゴ…ゴホッ!?ゴホッ…」

「サ…サーゼクス!?どうしたのですか!?」

「こ…これ…」

 

彼が指差したのはパソコンのディスプレイ。

そこに映っているのは、一人の女子生徒の事だった。

 

黒くて僅かにウェーブのかかったセミロングの髪に、細くて切れ目の瞳、それを覆いつくす楕円形の眼鏡。

高校一年生とは思えないほどに大人びた顔立ち。

…そう。そこに映っていたのは、マユの表向きのデータだった。

 

「…この生徒がどうかしたのですか?」

「彼女なんだ…」

「は?」

 

ポケットからハンカチを出して、口元を拭いながら答えるサーゼクス。

その顔は未だに驚きに満ちていた。

 

「この子が…ゴッドイーターなんだよ」

「ええっ!?」

 

まさか、先程彼が語っていた少女が生徒として入学するとは想像もしなかったグレイフィアは、柄にもなく大声を上げてしまう。

 

「まさか…三度彼女の顔を見る事が出来るとはね…。しかも、リアスの同級生として…」

「これは…偶然でしょうか?」

「僕もそう思いたいけど……どうにも違うような気がする」

「…と言うと?」

「あくまで僕の勘なんだけどね。この時期に彼女が入学することは、もしかしたら誰かに仕組まれている事なのかもしれない…」

「一体誰がそんな事を…」

「さぁね。けど、彼女自身もリアスと同級生になるとは思ってもいない事は確かだろうね。なんせ、あの子は時空を超えて現れる。最初あった時はまだ幼かったリアスが、もう高校生になっているなんて思ってもみないだろう」

 

リアスもマユにはずっと会いたがっていた。

その張本人が、まさか同じ高校に入学するとは想像もしないだろう。

だから……

 

「リアスには黙っておこう」

「何でですか?」

「ちょっとしたサプライズってヤツさ。この方が面白そうだろ?」

「はぁ……」

 

自分の夫の困った性格に溜息を吐きながら、グレイフィアはディスプレイに映ったマユを見る。

 

(彼女が…サーゼクスの『女王(クィーン)』候補…)

 

妻として、少々複雑な気持ちになりながら、子供のように嬉しがるサーゼクスを見ていた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 遂に来た…!私立駒王学園!

ここで、私の第二の高校生活が始まる!

 

と言う事で、現在私は駒王学園の校門前に来ています。

勿論、真新しい制服を着て。

校門には『入学式』と書かれた看板が立てかけられている。

 

周囲には親子連れの新入生達が沢山いて、なんともソワソワした雰囲気を漂わせている。

 

いいねぇ~…この感じ!

これこそ入学式って感じだよ!

 

そして、私の隣には黒歌達が一緒にいる。

 

「うわぁ…。なんだか賑やかだにゃ…」

「私も…早くマユさんと一緒の高校に通いたいです」

「「おお~」」

 

黒歌は雰囲気に圧倒されて、白音は羨ましそうに新入生達を見ている。

そして、オーフィスちゃんとグレートレッドは珍しそうに周囲をキョロキョロとしている。

勿論、猫姉妹はちゃんと例のアクセサリーを装着済みだ。

これで、二人の正体がばれることは無い。

 

けど……

 

「うわぁ……。あの子、すっごいキレイ…」

「背高っ!?足もすらっとしてて…まるでどっかのモデルみたい…」

「あの容姿で本当に新入生なの…?パッと見はまるで大学生みたいに見えるわ…」

「うん…。なんか、自分達がすっごく子供に思えてきちゃう…」

 

なんか、滅茶苦茶注目されてます。

変なひそひそ話と共に。

 

「案の定、マユさんは注目されてますね」

「当然にゃ。マユはどう見ても高校一年生には見えないにゃ」

 

それって褒めてるんだよね?

そうだよね?

 

因みに、入学前に自分のきちんとした身長と体重を調べてみた。

身長は……なんと、驚愕の174センチ。

15歳の女の子としては破格の身長である。

これもオラクル細胞の影響か!?

って…んな訳ないじゃん。

もしそうだったら、アリサやサクヤさんを初めとした神機使いの女の子は皆身長が高い事になってしまう。

少なくとも、アリサは年相応の身長だったし。

私だけが特別高いんだよ、きっと。

 

「それじゃ、そろそろ入学式に行くよ」

「わかったにゃ。私達は後ろから見てるにゃ」

「了解した」

 

さて、それじゃあ行きますか!

 

私は、桜吹雪が舞う中、入学式が行われるホールに向かって行った。

 

だが、その時の私は気が付いていなかった。

少し離れた場所から私の事を見ている二人の少女がいた事を…。

 

「あの後姿は…まさか……」

「でも…そんな事は…」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 指定された席に座り、私はじっと入学式が進行していくのを見ている。

ぶっちゃけ、暇です。

 

やば……ちょっと欠伸が出そうになったよ。

邪魔しちゃいけないからって、ドライグはさっきからずっと黙りっぱなしだし、校長の話は無駄に長いし。

これで眠くなるなって方が無理でしょ。

あ…ちょっとだけボーっとしてきた。

 

『新入生…訓示』

 

なんか言ってる…。

けど、私にはよく分かりません。

 

『新入生代表。リ…ス・グ……リーさん』

「はい」

 

あれ?今なんて言った?

よく聞き取れなかったんだけど。

ま…いっか。

新入生の代表が誰であろうと、私には関係無いし。

 

なんか、赤い髪の女の子が壇上に立ってから話してる。

どっかで見たことがあるような気がするけど、私の知り合いにはあんな子はいない。

少なくとも、同年代には。

私が知る赤い髪の女の子と言えば、一緒に住んでいるグレートレッドか、前に会ったリアスちゃんだけだ。

けど、二人共体的に私よりも幼いから、完全に違う。

これは、私の気のせいだろう。

うん、きっとそうだ。

 

そんな事を考えてるうちに、新入生代表のお話は終わったようで、赤い髪の女の子が壇上を降りていった。

 

その後も殆ど呆けていて、結局のところ、入学式の間の記憶は殆ど無い。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 割り当てられた教室に向かい、黒板に書かれた席に座る。

なんか…実に懐かしい感覚だ。

嘗ては一度経験している筈なのに、妙に新鮮な感じがする。

やっぱり、自分の性別や容姿が違うせいかな?

 

「ねぇ…あの子」

「うん。さっき校門で見た大人っぽい子だよね…?」

「やっぱキレイ…。なんか雰囲気も私達とは違うし、凄く『大人』って感じがする…」

「顔立ちだけじゃなくて、手や足も凄くシュッっとしてるし…。けど、なんであんなごつい腕輪なんかしてるのかしら?しかも、左手には手袋まで…」

 

またなんか話してるよ…。

しかも、腕輪や手袋までに注目されてしまった。

一応、言い訳は考えてるけど…。

 

「きっと、あれが彼女なりのオシャレなのよ。見目麗しい体に、敢えてあんなアクセサリーを付けることで、相乗効果を生み出してるに違いないわ」

「成る程!亜香里ってば頭いい!」

 

…なんか、勝手に解釈してくれたんですけど。

ま、こっちとしては助かるんだけど…。

 

その後、担任の先生が入ってきて、それぞれに自己紹介。

当然の事だが、誰も知っている人物はいない。

一からの友達作り…か。

これって、かなり大変なんだよなぁ~。

 

因みに、なんでか私の自己紹介の番になった途端、男女両方から黄色い声が響いた。

男子達の『おお~!』って言うのはまぁいいよ。

けど、女子達の『キャ~!お姉さまぁ~!』ってのは何さ?

一応、君達とは同年代なんですけど?表向きは。

 

それから、先生によるこれからの説明を聞いてから、その日は終了となった。

やっぱり、入学式の日はこんなもんか。

余程のエリート校でもない限りは、初日から授業なんてないよな。

 

私が帰りの支度をしていると、何やら教室が騒がしくなってきた。

騒ぎの中心となっている方を見ると、そこには先程入学式で新入生代表として壇上に立っていた赤い髪の女の子と、黒髪ポニーテールの女の子が立っていた。

二人とも、凄いスタイルだな…。

とても高校一年生とは思えない。

ま、私も人の事は言えないけど。

 

二人の女子は私の方へと真っ直ぐにやって来て、席の前に立った。

 

「やっぱり…貴女は……」

「また…会えた…」

 

え?え?どういうこと?

なんで二人共涙ぐんでるの?

 

私が訳が分からずに、内心混乱していると、突然赤髪の女の子が私の手を取って立ち上がらせた。

 

「お願い。ちょっと一緒に来て」

「…え?」

 

女の子は私の返事を待たずに、そのまま私の手を引いたまま教室を後にした。

もう一人の女の子と一緒に。

 

あ、教室にカバン忘れた。

後で取りにいかないと。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 連れてこられたのは屋上。

なんか長引きそうな予感がしたので、黒歌達にはメールで先に帰っているように伝えた。

 

屋上の扉を開いて、しばらく歩いた後、彼女達はようやく私の手を離してくれた。

 

「……君達はなんだ?」

 

ある意味、当然の質問を投げかける。

すると……

 

「………~!」

 

なんか、今にも泣きそうな表情になって、そして……

 

「ずっと…貴女に会いたかった!」

 

いきなり私に抱き着いてきた。

 

「リ…リアス!貴女だけずるいですわよ!私だってずっと我慢してたのに!」

 

へ…?今…なんて言った?

リアス?わたしの胸に抱き着いているこの子が?

 

「リアス…なのか?」

「はい!あの日、貴女にこの命を救って貰ったリアス・グレモリーです!お姉ちゃん!」

 

なんと…!

まさか、あのリアスちゃんがもう高校生にまでなっているとは…!

って、そう言えば、私が今まで行っていたのは過去の時代だったっけ。

なら、あれからもうそれだけの年月が流れたって事か?

 

「じゃあ…君は…」

「あの時、母と一緒に救って貰った姫島朱乃です。あの時は本当にありがとうございました」

 

やっぱり朱乃ちゃんだったか…。

なんか、朱璃さんに雰囲気が似てるって思ったんだよなぁ~。

 

「ご両親は元気か?」

「はい。毎日、飽きもせずにイチャイチャしてますわ」

 

それはなにより。

両親の仲がいいのはいい事だ。

 

「にしても驚いたわよ!まさか、お姉ちゃんが私と一緒の高校に、しかも新入生として来るなんて!」

「私も驚きましたわ。こんな形で再会出来るなんて、思ってもみませんでしたから」

「こっちもだ…」

 

こんな事もあるんだなぁ~…。

なんか、仕組まれてる感がしなくも無いけど、この再会は素直に嬉しい。

 

「これからは毎日、お姉ちゃんと会えるのね…」

「そうね…。こんなに嬉しいことは無いわ。家に帰ったら、早速お父様とお母さまにも伝えないと」

 

二人共顔を真っ赤にしちゃって。

そんなにも嬉しかったのかな?

私なんかで喜んでくれるのなら、それはそれで光栄なことだけど。

 

あ、そうだ。

ちゃんと二人にもあの事を伝えないと。

 

「あの……出来れば、『お姉ちゃん』と言うのはやめてほしい」

「え…?なんで?」

 

そんな顔をしないでぇぇ~!?

罪悪感で胃に穴が開きそうだから!

 

「私達は同級生だ。だから、これからはちゃんと名前で呼び合おう」

「そうですわね…」

「けど、お姉ちゃんの名前…まだ聞いてないわ」

 

そう来ると思ってたよ。

 

「私の名は闇里マユ。苗字でも名前でも、好きな方で呼んでくれて構わない」

「「勿論名前で!!」」

「あ…ああ」

 

一瞬…マジでビビった…。

二人共、凄い勢いで顔を近づけてくるんだもん。

 

「それじゃあ、改めて…」

 

リアスが私から離れて、朱乃と一緒にこっちに向き合う。

 

「「これからよろしくお願いします!マユお姉ちゃん!」」

「あ…ああ。これからよろしく」

 

だから、その『お姉ちゃん』をやめろっつーの。

いくら名前を教えても、それじゃ意味ねーじゃん。

 

まぁ……誰も知り合いがいないよりかはマシ…か。

 

 

こうして、意外な人物達との再会と共に、私の二回目となる高校生活は幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リアス(15歳)と朱乃(15歳)ようやく登場!

けど、原作開始まではもうちょっと(?)かかるかも。

ちゃんと祐斗も出して、再会させないといけないし…。

まだまだ、やる事は山積みです。

では、次回。


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