原作に入るのはもうちょっと先になると思います。
黒歌や白音、そしてオーフィスちゃんとグレートレッドと一緒に共同生活を始めてから、早数日が経過した。
あれから、家事は基本的に私と黒歌でやる事になった。
それを白音やオーフィスちゃん達が手伝うような形が早くも形成されつつある。
皆とてもいい子で、私としても非常に楽しい日常を満喫させて貰っている。
そんな私が今何をしてるのかと言うと……
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「ふっ!」
とある港町の倉庫街にて、アラガミと交戦中です。
周囲には全く人間の気配が無い。
恐らく、この倉庫街は既に廃棄されているんだろう。
ま、お陰でこっちも遠慮なく戦えるんだけど。
一応、ドライグに人避けの結界は張って貰ってるけどね。
時代は現代。
ドライグ曰く、今までの戦闘はいずれも過去の世界での出来事で、これからは現代での戦いが主になっていくだろうとの事。
その理由はよく分かっていないけど。
今回の格好は、偶には真面目な服装をという事で、フェンリル制式制服(グリーン)の上下だ。
キチンとした戦闘服であるせいか、かなり動きやすい。
因みに、今回交戦しているのはグボロ・グボロ。
大きな顎を持つアラガミで、額の部分に砲身のような部位があり、遠近両方において戦える、中々のオールラウンダーだ。
だが……
「あと少しだ…」
もう瀕死でフラフラになってます。
牙、胴体、背びれと、部位破壊出来る部分は全部壊してある。
その上、さっきから動きが鈍くなってきているため、容赦なく
『いい加減にくたばればいいものを…』
「油断は禁物」
少し息を整えていると、グボロ・グボロが左右に飛び跳ねるようにジグザグに突撃してきた。
冷静に動きを見て、私はグボロ・グボロの動きとは真逆の動きをして回避した。
その結果、私は上手く奴の背後に回ることが出来た。
こうなれば、もうあと少しだ。
私はポケットからスタングレネードを取り出して、こっちに振り向こうとしているグボロ・グボロに向かって大きく投げつけた。
「暗め…」
次の瞬間、仄暗い倉庫内が一瞬だけ眩しい閃光に包まれる。
その閃光に網膜をやられたグボロ・グボロは完全に怯み、明らかな隙が生まれた。
私は両手で神機を構え、大きく振りかぶる。
それと同時に、グリップについているボタンを押す。
すると、神機の刀身から紫がかったオーラが現れ、刀身を覆った。
「貫く…!」
そして、私は念には念を入れることにした。
「ドライグ。倍化」
【Boost!】
「もっと」
【Boost!】
「もう一回」
【Boost!】
三回の倍化。
威力が8倍にまで上がったチャージクラッシュのオーラは、天井に届くほどにまで大きくなった。
こっちの準備が完了したと同時に、グボロ・グボロが正気に戻り、私を見据える。
だが、時すでに遅し。
もう既にお前の命運は尽きているのだ。
睨み付けるようにこっちを見たグボロ・グボロは、私に向かって突進してきた。
だが、私は回避行動に移ることなく、そのまま奴を迎え撃った。
グボロ・グボロの突撃に合わせて、全力で神機を振り下ろす!!
「でぇいっ!!!」
すると、特大の一撃はグボロ・グボロの体を一瞬で真っ二つにしただけでなく、その衝撃波で倉庫そのものを吹き飛ばし、更にコンクリートの床には大きなクレーターが出来上がった。
周囲には土煙が立ち込め、何にも見えなくなってしまった。
「やり過ぎた…」
『はははっ!凄いぞ相棒!たった三回の倍化でこれほどの威力か!流石は俺が見込んだだけの事はある!』
ドライグ、はしゃぎすぎ。
急に風が吹き、煙が晴れると、そこには真っ二つどころか、8倍チャージクラッシュの威力で粉々になったグボロ・グボロの死骸があった。
その周囲には夥しい程の血が飛び散っている。
どう考えても生きていない。
だって、亡骸の中央に青く光るコアがあるもの。
倉庫は完全に潰れていて、見る影もない。
夜空には星々が輝いている。
「捕食…出来るかな?」
『試しにしてみればどうだ?』
「うん」
地面に転がっているコア目掛けて、私は神機を捕食形態にする。
チャージのプレデタースタイルはカーネイジ。
本来ならば、捕食した瞬間にアラガミ濃縮弾を自動で発射するのだが、戦闘中でなければ問題無い。
漆黒の大顎を落ちているコア目掛けて放つ。
問題無く捕食に成功して、神機のコアが一瞬だけ光った。
「…大丈夫だった」
『よし。これで戦闘終了だな』
「ああ」
思ったよりも苦戦はしなかった。
どうやら、『私自身』も段々とアラガミとの戦闘に慣れつつあるようだ。
「後始末…どうしよう」
『問題無いだろう。多分、違う事故などに置き換わるさ』
「だといいけど」
想像以上に倍化の効果はデカい。
これからは、力の加減をちゃんと考えないとな。
『では、転移するぞ』
「うん」
最近は、もっぱらドライグの力で戦闘領域内に転移している。
倍化以外にも出来る事が増えて嬉しいのか、ドライグ自身も全く嫌がっている様子はない。
こうして、今回の戦闘を終えた私は、皆が待っている家に帰るのだった。
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玄関前に転移すると、一応の為に周囲の様子を見る。
夜になっている為、人影は無かった。
「よし」
確認が終わると、私は玄関のドアを開ける。
すると、奥の方からトテトテと三人ほどの足音が聞こえた。
「おかえりなさい、マユさん。ご苦労様です」
「マユ、お帰り」
「お疲れ様だ!マユ!」
私の事を出迎えてくれたのは、白音とオーフィスちゃんとグレートレッドだった。
黒歌は恐らく、キッチンにて夕飯を作っているんだろう。
「ああ…ただいま」
やっぱり…お帰りって言って貰えるって…いいなぁ…。
なんか、『帰ってきた』って感じがするよ。
そうそう、実は彼女達には既に私の事やアラガミの事については話してある。
流石に、私が転生者であるとは言えなかった為、私はゴッドイーターの世界から足長おじさんの手によって異世界転移させられたという事にしておいた。
あながち、間違いでもないし。
当初、私しかアラガミと戦えないという事に皆、難色を示していたが、ちゃんと理由を説明したら、一応の納得をしてくれた。
幾ら猫又と龍神とは言え、万が一の事があっては困る。
だから、彼女達には悪いがここで待って貰うことにした。
でも、待ってるだけでは嫌なのか、黒歌や白音は密かに体術や仙術の訓練をしているようだ。
ま、その向上心は偉いと思うけどね。
「黒歌姉様はキッチンで夕飯の準備をしてます。先にお風呂に入って来てはいかがですか?」
「今日は私とオーフィスが風呂掃除をしたんだぞ!」
「我、頑張った」
「うん。偉い偉い」
小さいながらに、一生懸命に手伝ってくれる。
その姿勢が嬉しくて、つい反射的に二人の頭を撫でる。
「えへへ……」
「はぅぅ…」
気持ちよさそうに目を細めるオーフィスちゃんとグレートレッド。
あぁ…癒されるなぁ…。
「…………」
あ、なんか白音が羨ましそうに二人を見てる。
もしかして、この子も撫でて欲しいのかな?
可愛い奴め。
それなら、そのリクエストに応えようではないか。
「白音も、今日一日ご苦労様」
「あ…ありがとうございます……」
顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
その仕草が可愛くて、自然と微笑んでしまう。
そんな三人を眺めながら、靴を脱いで家の中に入る。
「それで、どうしますか?」
「そうだな…」
確かに今日は疲れたし、って言うか、アラガミと戦闘して疲れない日とか無いしね。
「遠慮なく、入らせて貰うよ」
「わかりました。既に準備は済ませてあります」
「ありがとう」
ホント、準備がいいよなぁ…。
きっと、将来はいい奥さんいなるんだろうなぁ…。
そんな事を考えながら、私は白音達と一緒にリビングへと入っていく。
「黒歌、ただいま」
「あ!マユ!お帰りだにゃ!」
こっちを見て嬉しそうに微笑む黒歌。
黒いワンピースに白いエプロンを付けている。
そうそう、実はこの間、皆の分の普段着や下着なんかを買いに行った。
流石にこのまま私の服を貸し続けるわけにはいかないので、大量に購入した。
かなりの出費になったが、元々一人では使い切れないほどあるのだから、一切問題無かった。
黒歌と白音は非常に申し訳なさそうにしていたけど。
「もう少しで夕飯が出来上がるにゃ」
「なら、その前にお風呂に入ってくる」
「わかったにゃ。ついでだから、白音達も一緒に入ってくるといいにゃ」
「え?いいんですか?」
「節約の為だにゃ」
すっかり主婦目線になっちゃって。
けど、そんな君も素敵です。
「わかりました。それじゃあ、お言葉に甘えることにします」
「我も分かった」
「私もだ」
「私は、夕飯の後に入るにゃ」
「いつも済まないな」
「気にして無いにゃ。こうして普通の生活をさせてくれて、こっちの方こそマユにお礼を言いたいにゃ」
そんなに気にしなくてもいいのに。
けど、その気持ちは純粋に嬉しいです。
「それじゃ、行こうか」
「はい」
「ん」
「おう!」
私達をそれぞれに部屋に戻り、着替えを取ってくる。
因みに、白音と黒歌、オーフィスちゃんとグレートレッドでそれぞれ同じ部屋で暮らしている。
着替えを用意した私達は、揃って風呂場に向かう。
四人で入るのは狭いと思われるかもしれないが、白音は普通よりも体が小さいし、オーフィスちゃんとグレートレッドは言わずもがなだ。
服を脱いでから、風呂場のドアを開けると、まずは風呂場の椅子に座ってゆっくりと自分の身体に湯を流す。
「ふぅ……」
あぁ……これだけで結構スッキリするよ…。
「まずは…」
「「「わかってる(ます)」」」
うむ、よろしい。
私はいつものようにオーフィスちゃんを、白音はグレートレッドの頭をそれぞれに洗ってあげる。
最初は子供扱いされるのを、あんまりよく思っていなかったが、今ではすっかり頭を洗ってもらうのを許している。
もう完全に普通の女の子と化している。
幼女二人の頭と体を洗った後、私達の頭と体を洗う。
その時、ふと白音の視線が私の胸に集中しているのを感じた。
「ん?どうした?」
「…羨ましいです」
「え?」
もしかして…胸の事を気にしてる?
でも、確か白音って私の2つ下だったよね?
だったら、今ぐらいのサイズが普通だと思うけど。
でも…私ってばそんなに大きいかな?
アリサやサクヤさんやカノンちゃんに、身近なところだと黒歌の方が大きくない?
白音の羨望の眼差しを浴びながら、頭と体を洗った私達は、待望の湯船に入る。
「はぁ~…」
癒されるぅ~…♡
一日の疲れが消えていくようだよ…。
「今日はどこに行ったんですか?」
「今回は港にある倉庫街だった」
「ま、マユならどんな奴が来ても楽勝だろうがな!」
「我も同感」
過大評価しすぎだって。
私だって負ける時は負けるよ。
「…今日はちょっとやり過ぎた」
「と言うと?」
「止めの一撃を刺す際、三回ほど倍化したら、倉庫ごと吹き飛ばしてしまった」
あれ…本気でどうしよう…?
怒られたりしないかな…。
「凄いですね…。流石はマユさんです」
「ははは!伝説は伊達ではないと言う事か!」
「マユなら当たり前」
当たり前と来ましたか…。
悪い気はしないけど。
ゆっくりとお風呂を堪能し、疲れを癒した後、私達はお風呂から上がった。
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・・・
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寝間着に着替えてリビングに行くと、黒歌が夕飯の準備を丁度済ませるところだった。
「あ、ナイスタイミングにゃ」
「そのようだな」
今日の夕飯は焼き魚に肉野菜炒め。
四人分な為、肉野菜炒めは大皿に大量に盛られている。
皆で椅子に座り、手を合わせる。
「「「「いただきます」」」」
皆揃って箸を取って、夕食に手を付ける。
ホカホカのご飯の入った器を手に取って、おかずである肉野菜炒めを食べる。
うん、実に美味。
黒歌は料理が上手だなぁ。
次に、焼き魚に醤油をかけて、少しだけ解してからパクリ。
いい焼き加減だ。
「黒歌は…いい奥さんになれるな」
「い…いきなり何にゃ!?」
「素直な感想を言っただけ」
「そんなセリフを素で言えるマユの方が、ある意味凄いにゃ…」
「同感です」
うんうんと頷きながら、白音も同意する。
別に凄くはないでしょ。
思った事を言っただけだし。
その証拠に、オーフィスちゃんとグレートレッドは?マークを浮かべてるし。
そんな感じで食事の時間は楽しく過ぎていく。
こんな風な穏やかな毎日を過ごしていく内に、とうとうあの日がやって来た。
そう……私の高校入学の日だ。
受験の方はなんでか免除になっていた。
と言うのも、どう言う訳か私は推薦入学と言う事になっていたのだ。
これも、足長おじさんの仕業なんだろうか…?
いつの間にか必要な書類や様々な教科の教科書、制服なども送られてきたし。
出来れば黒歌も行かせてあげたいが、本人が家で家事をすることを強く希望したため、私の方が大人しく諦めることにした。
でも、白音はなんとかしてあげたいな…。
さてはて、転生してから初めての高校生活で、一体どんな出会いが待っているのやら…。
次回、成長した他のキャラが登場します。
と言っても、話の都合上、二人ぐらいですけどね。
まだまだ原作突入はありません。
もう少しだけ待っててください。
では、次回。