滅茶苦茶いい匂いが私の食欲を刺激しまくりましたが、なんとか耐えてパソコンに向かっています。
私ってば偉い!
思いっきり褒めてあげたい!
食後のお茶を飲んでいると、突然オーフィスちゃんに転移させられた私。
やって来た場所は……
「……え?」
辺り一面、真っ黒な場所でした。
岩肌が剥き出しになっている地面だけがあり、他には何もない。
まさしく『無』と表現するのがふさわしい場所かもしれない……って!
「…なんで?」
テーブルごと来てるんですけど…。
私ってば椅子に座ったままだし…。
隣のオーフィスちゃんも相変わらずの表情でお茶を飲んでる。
…あれ?テーブルごと来たって事は……
「こ…ここは何処だにゃ!?」
「何にもありませんね…」
やっぱり……。
この二人も巻き込まれてたか…。
「オ…オーフィス。ここは…?」
「次元の狭間」
「ここが…?」
もうちょっと…こう…斑模様的な場所を想像してたけど、思った以上に殺風景だな…。
「…なんで二人も連れてきた?」
「…加減を間違えた」
あ、なんかちょっとだけ申し訳なさそうにしてる。
一応の反省はしてるのね…。
どうしようか考えてると、オーフィスちゃんが椅子から降りて、虚空を見つめている。
「……どうした?」
「グレートレッド、近くにいる」
「…分かるのか?」
「ん。気配する」
マジで?
「…ドライグ…分かるか?」
『い…いや…。グレートレッド程の龍神ならば、封印されていても一発で分かりそうなものだが…』
一応、黒歌達にも目配せをする。
「何にも感じ無いにゃ…」
「この近くに誰かがいるとは思えませんね…」
だよねぇ~?
私にも何にも感じないもん。
そんな感じでのんびり構えていたら、その瞬間はやって来た。
「「「「『!!!!!』」」」」
突然、私達全員の背後に強大な気配が出現したのだ。
今まで感じた事が無いほどに強大な力の奔流。
私達は急いで後ろを振り向くと、そこにいたのは……
「なっ……!?」
「う…嘘だにゃ……」
「あ…ああ…」
『来たか…!』
「…………」
とてつもなく巨大な体躯を誇る、深紅の龍だった。
指一本の大きさでようやく私の背と同じぐらいだった。
「なんだ…貴様等は…」
しゃ…喋った…。
思ったよりも穏やかな声だけど…。
「グレートレッド、久し振り」
「オーフィスか…」
やっぱり、この龍がグレートレッドか…。
どうしてオーフィスちゃんは、私がこの龍を倒せると思ったのかね…。
どう考えたって無理ですから!
一瞬で殺されるわ!!
「何をしに戻ってきた?」
「グレートレッド、倒す」
「まだ、そんな事を言ってるのか…」
もしかして、前から同じことを言ってたの?
「その為に、ゴッドイーター連れてきた」
「何…?」
うわっ!こっち見た!
「赤い腕輪にドライグの気配…。お前が神を喰らう赤龍帝か…」
そんな風に言われると、なんが凄く感じるな…。
実際は、そんなに大層な存在じゃないけど。
「ドライグ、いるのだろう?」
『あ…ああ』
左手に赤龍帝の籠手が出現した。
グレートレッドに応えようとしたのかな?
「お前とも久し振りだな…」
『ああ。最後に会ったのはいつだったか、もう忘れてしまった』
「私もだ…」
な…なにかしら。
まるで久し振りに同級生に会うような雰囲気は…。
「にしても…変わったな。様々な意味で」
『そうだな…。このような姿になってから、色んな人間と出会ってきた。嫌でも心境の変化ぐらいは出るさ』
「だが、一番の原因は今の宿主だろう?」
『ふっ…。お前の目は誤魔化せないか…』
ん?心なしか嬉しそうに聞こえたけど…。
「神を喰らう者よ」
「なんだ」
い…いきなりのご指名ですか!?
「オーフィスが世話になったようだな」
「それ程でもない」
私も楽しんでた節があったしね。
全然気にしてないよ。
でも…この雰囲気なら、話すことは出来そうだな。
どうやら、思慮深いって言うのは本当みたいだし。
「グレートレッド、貴方に聞きたいことがある」
「なんだ、言ってみろ」
「オーフィスが貴方にここを追い出されたと聞いた。それはどうしてなんだ?」
「追い出された…?そんな事を言っていたのか…」
え?違うの?
「私は別に、こいつを追い出したつもりは無いんだがな…」
「どういう事だ?」
私は思わずオーフィスちゃんの方を見る。
全然言葉が分かってないような表情をしてたけど。
「グレートレッド、ここから出て、外を見ろと言った」
……もしかして、これはオーフィスちゃんがキチンと言葉の意味を理解してない?
「少しでもオーフィスと過ごしたなら分かると思うが、こいつはかなりの世間知らずだ」
「まぁ……」
「確かに…」
そこの猫姉妹、変に納得しない。
ちょっとだけ同感だけど…。
「私は、時折様々な姿に己を変えて、外の世界を観て回っている。それによって、様々な知識を得ているのだ」
「知識欲が豊富なのだな…」
なんか…私の中の龍のイメージがまたまた変わっていく…。
もう、姿形が違うだけで、精神的には人間と同じか、それ以上に優れてるじゃん。
そりゃ、神と同一って言われるのも無理ないわ。
寧ろ、尊敬の念すら抱くわ。
「だが、どういう訳か、オーフィスはこの次元の狭間から一歩も外に出ようとしない。静寂を求めると言うが、私にはどう考えてもそれがコイツの為になるとは思わない」
まるで親の考えだな。
対の龍とは言っていたけど、完全にグレートレッドの方が保護者のポジションじゃん。
「だから、何度も外の世界で見聞を広めるように言ってきたのだが…」
「我、ここがいい」
「…という訳だ」
「成る程…」
こりゃ、筋金入りだ。
もう完全に引きこもりの子供の心配をする親の心境になってるし。
「だから、不本意ではあったが、半ば強制的に外に出すことにしたのだ」
「その結果がこれか…」
『お前も苦労してるんだな…』
「にゃんだろう…。不思議と同情してしまう自分がいるにゃ…」
「龍の世界も大変なんですね…」
猫又に同情される龍神って…。
「オーフィスよ。そんなにも外の世界は嫌か?」
「我、ここで静寂を手にする。…けど」
「けど…どうした?」
「ゴッドイーター一緒にいると、ここがポカポカする」
オーフィスちゃんは胸の辺りを両手で抑える。
胸が熱くなるって言いたいのかな?
「頭撫でられると、気持ちがいい。ゴッドイーターの近く、不思議と落ち着く」
「ほぅ……」
おうっ!?
なんかでっかい目でこっちを見てるんですけど!?
「あんなにも静寂に拘っていたオーフィスが、ここまで誰かに懐くとはな…。どうやら、お前と出会ったのは、こいつにとっていい効果を生み出したようだな」
『当たり前だ。こいつは歴代の中でも最強にして最優の赤龍帝だぞ。龍神の心を溶かすぐらいは訳もなく出来る』
「言い過ぎだ…」
どうしてそんなに私に対する評価が高いかなぁ~?
困っている女の子に手を差し出すのが、そんなに凄い事?
そりゃ…懐かれたのは予想外だったけど。
「オーフィスよ。次元の狭間とその女の隣、どっちが居心地がいいと感じる?」
「ゴッドイーターの隣。ここには静寂があるけど、ポカポカは無い。我、ポカポカ欲しい」
「…と言うことらしい」
この流れは…もしかして?
「決めた。我、ゴッドイーターと一緒にいる。次元の狭間、出て行く」
「おお!そうか!」
今までで一番嬉しそうな声を上げたな。
まるで、子供の独り立ちを喜ぶ親のようだぞ。
「だが、そなたばかりに負担を掛けるわけにはいかんな。それに、私もお前と言う存在に興味が出てきた」
なんだろう…。
エライ事が起きる予感がする…。
「少し待っていてくれ」
「は…はぁ…」
何をする気?
そんな風に思っていると、急にグレートレッドの身体が光り出し、同時に縮みだした。
縮むのと一緒に体の形も変化していっている。
具体的に言うと、人型になっていっている。
縮んだ体は、そのまま私の目の前に降りてくる。
現れたのは、赤いゴスロリを着た、真っ赤な髪の幼女だった。
「これで良し!」
「おお~…。グレートレッド、我と同じようになった」
「私もお前について行くぞ!オーフィスの世話は私に任せろ!付き合いは長いからな!」
「そ…そうか…」
あんなに大きな龍が、あっという間に小さな女の子になっちゃった…。
あんまり、現実感が無いや…。はは…。
『相棒。早く慣れないと、これからが大変だぞ』
「そう…だな」
分かってはいるけど…慣れるかなぁ?
「なんか、同居人がまた増えたにゃ」
「でも、賑やかそうで私はいいと思います」
それは否定できないんだよなぁ…。
私自身も賑やかなのは嫌いじゃないし…。
「そう言えば、どうやって戻れば…」
「来た時と同じ、我が戻す」
言うが早いが、オーフィスちゃんは自分の座っていた椅子に座り直した。
「早く座る」
「あ…ああ。分かった」
私も慌てて、元いた椅子に座った。
すると、グレートレッドが私の膝に乗ってきた。
「座る椅子が無いからな。私はここに座らせてくれ」
「ああ」
なんか…妙に色んな小さい子供に懐かれまくってない?
前に会ったリアスちゃんもそうだし、神社で会った朱乃って子も満更でもないような顔してたような気がするし、雪山で会った男の子もそうだった。
…私って、案外保母さんの才能があったりするのかな?
因みに、黒歌と白音は椅子から立っていない為、そのままの体勢でいる。
「それじゃ、行く」
オーフィスちゃんの呟きと共に、私達は家へと転移したのだった。
向こう…何時になってるかなぁ…。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
テーブルごと家に戻ると、既に時計は20時を回っていた。
すっかり外は暗くなっている。
「おお~…。ここがお前の家か…」
グレートレッドが物珍しそうに室内を見渡している。
さっきまでのギャップが激しいんですけど。
完全に子供じゃん。
「あの…オーフィスとグレートレッドに言っておくことが…」
「ん?何?」
「なんだ?」
「出来れば、名前で呼んで欲しい。私にはちゃんと闇里マユと言う名前がある」
これからもずっと『ゴッドイーター』とか『神を喰らう者』とか呼ばれたくないし。
特に外とかでは。
「わかった。マユのことはマユと呼ぶ」
「私も了解だ。これからよろしく頼むぞ!マユよ!」
「うん。よろしく」
おっと、この二人によろしくするなら、ちゃんと黒歌達にも言っておかないと。
「黒歌に白音も、これからよろしく」
「よろしくだにゃ!」
「よろしくお願いします」
なんか…今日一日で一気に賑やかになったな…。
人生、いつどこで何があるか分かったのもじゃないな…。
「それでは、お風呂にでも入るか」
『時間が時間だしな』
ちゃんと出かける前に湯船に水は入れてあるし、時間になったら自動的に沸かすようにセットしてきてるんだよ~ん。
その辺は抜かりは無いのだよ、マユお姉さんは。
今ぐらいなら、丁度沸いた頃だと思うし。
「あ…でも、私達は着替えが無いにゃ…」
「私のを貸す。少し大きいかもしれないが…」
「その辺は別に気にしないにゃ」
「私もです。貸して貰えるだけでも
嬉しい?
有難いじゃなくて?
「我もそれでいい」
「私もだ。確か、幼女が大き目の服を着るのは、世間的にも受けがいいのだろう?」
どこでそんな知識を手に入れるんだ…。
そんなんで嬉しがるのは、ロリコンと言う名の一部の変態だけだ。
外で知識を得てきていると言っていたけど、かなり偏ってない?
「それじゃ、入る順番はどうするにゃ?」
「まずはマユさんが入るべきだと思います。ここの家主だし、私達を救ったり、夕飯を作ってくれたりと、疲れている筈ですから」
「それが良いにゃ。私も賛成だにゃ」
なんていい子達なんだ…。
お姉さん、感動です。
歳、あんまり違わないけどね。
「それじゃあ、オーフィスとグレートレッドも一緒に入ろう」
「我達も?」
「いいのか?」
「ああ。二人共、体が小さいから邪魔にはならないし、一緒に入ればそれだけ時間が短縮できる」
「そうか、それならば仕方あるまい」
「我も分かった」
と言う事で、イッツお風呂タイ~ム!
着替えを持って、レッツらゴ~!
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
脱衣所で服を脱いでから、洗濯機の中へとポイ。
その際に、グレートレッドが私の左腕に驚いたが、ちゃんと説明すると納得してくれた。
そして、風呂場の扉を開く。
「「おお~」」
この家の風呂は、大人が2~3人ぐらい同時に入れるぐらいの余裕はある大きさになっている。
ぶっちゃけ、一人では大きすぎました。
きっと、足長おじさんはこうなることが分かってて、予め大きな家具や風呂場なんかを用意したんだろうなぁ…。
どこまで先を読んでるんだ、あの人は…。
「中々に豪勢ではないか」
「まぁね」
少なくとも、転生前に入っていた風呂よりかは何倍も豪華だ。
「まずは体を洗おう。湯船に入るのはそれからだ」
「知っているぞ。確か、風呂に入る前にマナーだったな」
「その通り」
意外と分かってるな。
伊達に頻繁に外には出てないってか?
何故か三人分ある風呂用の椅子に座り、二人もそこに座らせた。
「頭は…」
「私は洗えるぞ!本当だぞ!」
誰も疑ってないから。
身体が子供になってから、精神も幼くなってない?
さっきまでの威厳に満ち溢れた君はどこに行ったよ?
「我は…」
あ、なんか困ってるっぽい。
何かないかと風呂場を見てみると、私の視界にあるものが写った。
「あ……」
そこにあったのは、黒と赤のシャンプーハットだった。
どう考えても、足長おじさんが用意した物でしょ…。
「オーフィスは私が洗ってあげる」
「ん。わかった」
私はオーフィスの頭に黒いシャンプーハットを被せた。
「ん?」
「これを付けていると、シャンプーが目に入らない」
「おお~…」
感心したように、自分の頭に被さっているシャンプーハットを触る。
やっぱり、珍しいのかな?
「グレートレッドも」
「おお!かたじけないな!」
グレートレッドも笑顔で受け取ってくれた。
私は洗面器にお湯を入れて、オーフィスに確認を取った後に頭からお湯を掛けた。
それに続くようにして、もう一つの洗面器を使って自分の頭にお湯を掛けるグレードレッド。
次に、近くにあるシャンプーをプッシュして手に出して、手で捏ねてから泡立たせる。
「それじゃ、いくよ?」
「ん」
私はゆっくりとオーフィスの頭を洗い出した。
「ん…」
ん?くすぐったいのかな?
「どうした?」
「わかんない…。けど、変な気持ちになる…」
へ…変な気持ち?
「ここ、またポカポカする…」
もしかして、気持ちがいいって事かな?
ちょっと気になったので、隣のグレートレッドを見てみると…
「~♪」
気持ちよさそうに頭を洗っていた。
どうやら、本当に一人で洗えるようで安心した。
「じゃ、流すよ」
「ん」
ゆっくりとお湯をかけて、頭の泡を洗い流す。
二回ほどお湯をかけて、完全に頭の泡を洗い流した後、次は体を洗うことにした。
これも、グレートレッドは自分で洗って、オーフィスは私が洗ってあげた。
その間も、オーフィスは気持ちよさそうに目を細めていた。
二人の身体と頭を洗った後、二人には湯船に入って貰い、最後に私が自分の頭と体を洗った。
実は、この左腕って意外と洗うのが大変で、洗う際にはたわしでこすらないとちゃんと汚れが落ちなかったりする。
その後、私も二人の隙間を縫うように湯船に入った。
「「「ふぅ~…」」」
一日の疲れが取れていくようだよ…。
やっぱり…お風呂って好きだ…。
「ふむ…マユよ。一つ訪ねたいことがある」
「ん?なに?」
「その赤い腕輪は外さなくてもよいのか?錆びてしまうのではないか?」
「大丈夫。これは防水加工が施されてるし、それに…」
自分の目の前に右腕を出す。
「この腕輪は私の身体と一体化している。もしもこの腕輪が外れてしまったら、私は死んでしまう」
「なんと…!」
「……!」
二人共、大きく目を見開いた。
ま、普通は信じられないよね。
こんな腕輪が私の命を握ってるなんて。
「我、マユ死ぬの嫌」
「私も嫌だぞ!絶対に死ぬな!」
「ああ…」
無茶言うなぁ…。
けど、滅茶苦茶嬉しいな…。
嬉しさに包まれながら、私はオーフィス達と一緒に体の芯から温まった。
誰かと一緒のお風呂をたっぷりと堪能した後、私達はお風呂から上がった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
私達がお風呂から上がった後、それに続くようにして黒歌達が風呂に入った。
風呂から上がった後、四人に着せた寝間着は、私が最初に持っていた服とは違い、転生してから買ってきた服を貸した。
オーフィスとグレートレッドは体が小さかった為、Tシャツ一枚で何とかなった。
黒歌はTシャツとジャージ、白音も同じような格好だったが、流石にダボダボだった。
流石に、下着だけはなんともならなかった。
黒歌以外は。
今日は色々とあって疲れたため、早めに寝ようと床に就こうとしたら、なんでか四人共が部屋について来た。
「我、マユと一緒に寝る」
「私も一緒にいいか?」
「じ…実は私も一緒に寝たいにゃ…。人肌が恋しくなってしまって…」
「わ…私も…です。一人で寝ようとすると、悪魔の所にいた時の事を思い出しそうで…」
そんな顔で言われたら、断れないじゃない…。
「いいよ。一緒に寝よう」
体の大きい私に合わせたのか、ベットの大きさもかなりのものになっている。
少なくとも、私が両手足を広げても余裕がある。
最初に言うのを忘れてたけど。
そんな訳で、皆で一緒のベットに寝ることにした。
私が中心で、オーフィスとグレートレッドが私に左右から抱きつようにして寝て、そこから更に黒歌と白音が私に抱き着くような格好で寝付いた。
生まれて初めて誰かと一緒に寝たせいか、その晩はいつも以上にぐっすりと寝れた。
こうして、私と彼女達との共同生活が始まった。
ようやく、オリ主の同居人全員集合!
龍な幼女×2と猫耳少女×2。
これから更に、誰が加わるんでしょうね?
ま、聡明な読者の方々なら、大方の予想が出来ているかもしれませんが。
では、次回。