IS~鉄の華~   作:レスト00

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ランキング載っててびっくりしました。
今回は色々と触りの部分で、前話から少し間も空いています。


二話

 

 

「…………ここがIS学園か、クッキー、クラッカ?今までの所と比べると安全だけど、大人の人たちに迷惑をかけちゃいけないよ」

 

「「はーい」」

 

「ほら三日月、これタービンズの人たちから貰った野菜の種とかを食べられるようにしたの。前のヤツよりも美味しいと思うよ」

 

「あぁ、ありがとう。アトラ」

 

(緊張感が無いと言うか、年相応の会話のはずなのに違和感があると言うか……)

 

 どこか微笑ましくもあり、場違い感も大きいそのやりとりに、この場にいる六人の内で最年長である雪之丞は内心でそんな事を思う。そして、その考えを苦々しく感じつつ、自前のタバコを取り出そうとするが、ここが未成年者の学校である事を思い出し、タバコを取り出すのをやめ、口寂しさを誤魔化すように自身の顎をさする様にしながら、その学校の校舎に視線を向けた。

 タービンズのメンバーや三日月たちと一緒に保護された他の子供達と別れた六人は、海に面した埋立地に建設されているIS学園の正門前で、人が来るのを待っていた。

 ある意味で待ち呆けをくらっている六人であったが、これまでいた場所が色々な意味で突き抜けた場所であったため、そこまで不快感を抱くことはない。

 とはいえ、学校の正門の隣の詰所で勤務する警備員は彼らのことを把握していないのか、チラチラと警戒の視線を向けてくる。

 その視線の意味を理解しているビスケットは苦笑いするしかなかった。

 待ち始めて十分前後。未だに長期休暇であり、その為人通りの見えない正門に学園から向かってくる人間が複数現れた。

 一人は三日月と雪之丞には見覚えのある水色の髪をした少女。タービンズに依頼をし、IS学園で生徒会長を勤めている更識楯無。そして、彼女の隣にいるのはここにいる六人全員にとっては初対面であり、この学園の教師である織斑千冬と山田真耶であった。

 その三人の他にも、黒服を着た幾人かの人間がいたがその三人と比べるとあまり目立たないため、そちらに意識が向くことはあまりなかった。

 

「お久しぶりかしら?三日月くん?」

 

 どこか物々しい雰囲気で近付いてきた集団に怖くなったのか、双子の姉妹であるクッキーとクラッカは兄であるビスケットの後ろに隠れる。

 幼い二人よりも幾らか年上である少女――――アトラは隠れるほどではないが、幾ばくかの恐怖心が沸いたのか、三日月にその小さな身を寄せた。

 

「?……あぁ、説明が下手な人」

 

 女性陣――――と言うには幼い三人の少女の緊張をほぐす為、楯無が軽く挨拶の言葉を投げかける。すると、三日月は最初『何コイツ?』と言った表情を見せていたが、船でのやり取りを思い出したのか、そんな言葉を吐き出した。

 その三日月の返答に笑顔を固まらせ、硬直してしまう楯無。

 彼女はまさか、緊張をほぐす為の言葉を投げかけ、それを力一杯打ち返されるとは思っていなかったようだ。

 この場においては雪之丞を入れて三人にしか分からないやり取りを行い、少しの間変な空気が流れる。

 

「…………確認するが、三日月・オーガスとその同行者だな?」

 

「あ、はい。ここに居る六人がここでお世話になるメンバーです」

 

 その空気を切り替えるように固まった楯無に代わり、千冬が確認の口上を述べる。それに少し緊張したように返事を返したのはビスケットであった。

 そのやりとりだけで、この六人の中で一番話が通じそうなのがビスケットであると判断した千冬は、早々に要件を口にする。

 

「早速で申し訳ないのだが、彼が本当に流された映像の通りIS……らしき機体を動かしたのかを確かめたいのだが、今あの機体はどこにあるのだろうか?」

 

「えっと、僕たちはともかく、機体の方はコンテナに積み込みの作業があったりして、少し遅れてから到着すると言われています。もうそろそろ…………あ、あれです」

 

 そう言って、ビスケットが視線を向けると、そこにはそこそこのサイズのトラックが学園の正門に向け走ってきていた。そのトラックには、タービンズのロゴが付いており見間違えようがない。

 

「確認した。では、到着し、準備ができしだい起動と稼動試験を依頼したい」

 

「分かりました…………あの、妹たちのことですけど」

 

「うむ。連絡は受けている。彼女たちについてはこちらの山田くんが案内してくれる」

 

「よろしくお願いします」

 

 了承をとってから、ビスケットが遠慮がちに声を掛ける。すると、全て把握しているのか、千冬は後ろに控えていた真耶を紹介した。

 ここIS学園に来るに当たり、アトラ、クッキー、クラッカの三人はほとんど身柄の保護に近い理由で同行することになっていた。

 これまで劣悪な環境にいた未だ幼い三人をこれ以上引っ張り回すのは問題と考えたオルガは、整備員はもちろんとして保護者として兄のビスケットを加えたメンバーで学園に行くことにさせたのだ。

 そして、流石に何もせずにただ学園に居るだけというのは本人たちも嫌がったため、学園の教師が空いている時間に幾らかの学問を手解きすることになった。そして、無理のない範囲で食堂での下働きや寮の洗濯などの手伝いをすることで学費の代わりとすることになったのである。

 なので、特にISに関わることのない三人はこの場で三日月たちと別れ、真耶と楯無に学園案内をされることになっていた。

 そのもう一人の案内役である楯無は千冬に『しゃんとしろ』という言葉とともにチョップをくらっていたが。

 

閑話休題。

 

 一旦、アトラたちと別れた三日月たちはそのまま、彼女たちとは別の場所――――学園の中のISを動かせる場所であるアリーナに向かっていた。

 移動中、学園に入るための資料をビスケットから受け取りながら、不備がないかを確認していた千冬は、布袋から種を取り出して食べている三日月の背中を時々苦い顔をして見ていた。

 

「では、我々はモニタールームの方に向かう。ここの設備は好きに使ってもらって構わない。準備を終えれば備え付けの内線を使ってくれ。受話器を取るだけでこちらに繋がるようにしておく」

 

 アリーナに直接つながる格納庫のようなハンガーに到着すると、千冬はそれだけ言うとここまで付いてきていた黒服の人間を全て引き連れ退室する。その姿を見送ると、ビスケットはどこか安堵の息を吐いた。

 

「――――はぁ」

 

「オメェさん、大丈夫か?」

 

「あぁ、いえ、こういう綺麗なところって慣れていないくて」

 

 そんな会話をしながら、ビスケットと雪之丞の整備員二人は搬入されていたコンテナの方に歩いていく。

 コンテナを開けると、ここ数日で見慣れたその機体が当たり前のようにそこに鎮座していた。

 

「とりあえず稼動試験なら武装はいらねーな。各部関節のチェックとソフトウェアの確認くらいか」

 

「はい」

 

 雪之丞がそう言い切る前からビスケットは整備用のタブレットを操作しながら作業を開始していた。

 そして、阿頼耶識の接続チェックも必要なため三日月に声をかけようとするが、そうしようとする前に既に三日月は上着と中に着ていたタンクトップを脱ぎ、器用に背中の接続端子にコネクターを装着していた。

 

「三日月、取り敢えず動かせるかどうかの確認らしいから、武装は付けねーぞ。いつもより機体が軽くなるから飛びすぎんなよ」

 

「うん」

 

「あと、IS擬きだが――――」

 

「バルバトス」

 

「あ?」

 

 機体の状態を説明を続けようとした時に、それを遮るように三日月はその名を口にする。

 

「コイツ、自分のことをバルバトスって呼べってさ」

 

「お前――――」

 

「おやっさん、確認終わりました。連絡しますね!」

 

 さらりと言われたその事実に、雪之丞は驚きを隠せなかったが、ビスケットの言葉で無理やりその意識を切り替えさせられる。

 

「あそこに行けばいいの?」

 

「あ?ああ、あそこのところに足を載せて打ち出すカタパルトがある、あれに乗れば後は向こうがやってくれる筈だ」

 

「そう」

 

 それだけ言うと、三日月はさっさと出撃のために移動をする。

 そして、それから数分もしないうちに三日月は、衆目のある大空の下初めてその姿を晒すことになる。

 

『準備が完了しました。いつでもどうぞ』

 

「三日月・オーガス、バルバトス。出る」

 

 聞いたことのない声がハンガーに放送される。

 そのタイミングで、阿頼耶識を通して三日月はカタパルトの操作を理解し、実行した。

 

 

 

 

 





てなわけで次回は少し戦闘回にします。
三日月の強さはどんな感じにしましょうね?

あ、あと、バルバトスですが専用機みたいに待機形態になれません

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