IS~鉄の華~   作:レスト00

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色々と書こうと思っていましたが、長くなりそうだったので、今回は臨海学校編のプロローグです。

最近、色々とクロスオーバー系の作品の構想が止まらない自分に呆れそうです。
鬼滅×GE3(アニメ制作繋がり)とか、マブラヴ×ロスカラ(エクストラ編から)とか、えみご×料理系の漫画(士郎に平穏を)とか、ネギま×スパロボ(主に機神拳)とかとか。………でもこっちともう一つをどうにか切りのいいところまでやらないとできないというジレンマ。どうしましょうね?


五十話

 

 カツカツと靴底を鳴らしながら、その建造物内にある廊下を進む一人の男が居た。

 その男性の姿は一言で表すなら“チグハグ”だ。

 着ているスーツと白衣はパリッとして、皺の一つもないのだが、その男自体は髪に寝癖が付き、髭も伸びたまま、そして眠たそうな表情を隠しもせずに欠伸をかみ殺している。

 そして、疲労からかどことなく疲れた表情を見せていることから、傍から見ても彼の実年齢を予測するには困難なほどであった。

 

「お邪魔しますよっと」

 

 そんな言葉と共に、彼は廊下の先にある一室に入り込む。その部屋の扉は木製で、ドアノブも古いデザインの真鍮でできていた。

 ガチャリという音と共に開かれたその部屋の向こうは、彼の見た目と同じく扉のデザインとは打って変わった光景が広がる。

 その部屋の一番の特徴は壁に幾つものモニターが備え付けられ、それ用のコンソールやらハードやらは部屋の隅に纏められている箇所である。

 しかし、そんな近未来的な風景が広がっていると思えば、部屋の一角では安っぽいデザインのシンクと冷蔵庫、電子レンジなどが置かれ、足場は畳というどこか日本の昭和テイストな箇所もある。

 初見でこの部屋を見た人間は揃って、そのデザイン性に疑問を覚え、首を傾げるだろうが、その部屋の主が彼であるのであれば、そのチグハグ具合もどこか納得する。そんな不思議な空間の部屋こそが、彼の職場である。

 

「はてさて、今の状況はっと」

 

 冷蔵庫から幾つかドーナツを取り出し、レンジでチンしながらそんな言葉を呟く。

 すると、彼の言葉に連動するように、壁にあるモニターの一つが灯る。

 その画面の向こうには一台のバスが映りこんでいた。

 

「…………日本ではこういうのなんて言うのだっけ?校外学習?」

 

 温まったドーナツの内の一つを咥え、冷蔵庫から冷たい牛乳を取り出し、グラスに注ぐ。

 

「あ、しまった。コーヒーにすればよかった」

 

 普通に見ればそれは成人男性の朝の朝食風景に見えなくもないが、彼がその行動一つ一つの間に挟まる動作によって、部屋の中にある機器が起動していく様は、異様以外の何物でもない。

 指を振れば、機器のハードが立ち上がっていく。

 肩を回せば、機器が熱暴走を起こさないようにする冷却ファンが動き出す。

 靴のつま先で床を二回叩けば、部屋の温度が下がり過ぎないように空調が起動する。

 

「…………うっさい」

 

 最後に彼がそう愚痴ると、奇妙な事に“部屋にある機器の起動音のみが聞こえなくなる”。

 牛乳を注いだグラスと、残りのドーナッツを乗せた皿を持つと、彼は部屋の中央に敷かれた三畳ばかりの畳に向かう。

 その畳の上には卓袱台と座布団が敷かれ、彼はそこに腰を落とした。

 卓袱台の上にはモニターを操作するための機器が置かれており、グラスと皿はその隙間に差し込むように置いておく。

 

「世界情勢は……」

 

 モグモグと口の中のモノを咀嚼しながら、彼は機器を操作し、他のモニターに様々な情報を映し出していく。

 

「結婚に、不倫に、熱愛報道…………あれ?この人ファンだったのに、ショックだ」

 

 彼の言葉通り、モニターには芸能情報といった世俗にまみれた内容もある。ただ、その横のモニターには某国の軍の活動記録といった、一般人が知る筈もない機密の高い情報が流れていたりするのだから笑えない。

 

「銀の福音の起動実験、IS学園の臨海学校、亡国企業の機体簒奪…………さっきのバスはそれか」

 

 彼は文字であったり、映像であったりする情報を流し見ていく。そして、何らかの関心が働いたのか、ここ数か月分のIS学園で起こった出来事を再確認する作業に移った。

 

「男性操縦者の増加、クラス対抗戦、タッグトーナメント、VTシステム、無人機の存在の認知…………彼女も難儀だなぁ」

 

 彼の脳裏にうさ耳を付けた一人の女性の姿が浮かぶ。彼がどういった経緯があり、彼女を難儀といったのかを確かめる人物は、残念なことにその場には居なかった。

 

「世界は特に変わりなし。いつも通りの人らしい世の中だな」

 

 特にこれといった面白みはなかったのか、彼はそんな感想を述べると上半身を後ろに倒し、その場に寝っ転がる。

 

「今日の予定は例のデカブツの完成で、あとはフリーだから何しよう?」

 

 そう言って、彼は寝転がったまま首を横に向ける。すると、それに連動し再び部屋の一部が動き出す。

 その部屋で唯一何も無かった壁が動き出し、その部屋に隣接する、もう一つの部屋が姿を現す。それは格納庫のような空間で、かなりの広さがあった。

 そして、その部屋の中央には、彼が先ほど口にしたデカブツが鎮座していた。

 

「…………今度は、座椅子を注文しようかな?」

 

 

 

 

 





というわけで、本当に話の導入部分です。
今回出てきた男性はまたしても自分のオリジナルキャラです。
まぁ、勘の良い読者の皆様は簡単にどういった人物か予想がつくでしょうけど、その予想を裏切れるように頑張っていきたいと思います。


おまけ

「結婚に、不倫に、熱愛報道…………あれ?この人ファンだったのに、ショックだ」

 彼の言葉通り、モニターには芸能情報といった世俗にまみれた内容もある。そしてその中に彼が見逃せない情報が含まれていた。

「水〇奈々が結婚、だと?………鬱だ、死のう」

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