今回の話は書いていて、原作のキャラの個性どこいった?となりましたが、もう今更の話なので開き直りました。
原作のキャラクター性が好きな人は申し訳ないです。ではどうぞ。
IS学園に在籍する生徒は基本的に上昇志向を持つ人間が多い。
それは公の場において、ISが一つのスポーツ競技という認識を受けていること。そして、教師の中にかつて世界という舞台で大きな功績を残した人間がいることにより、自分たちにも手が届きうるかもしれないという良い意味での欲を抱かせるからだ。
そう言った意味では、身内がズバリ世界で一位というわかり易すぎる功績を残している一夏にとっては、その上昇志向は他の生徒よりも大きくなっているかもしれない。
今度開催されるタッグトーナメントもそうである。
不本意ながらも、他人からの配慮によって預かった専用機を持っている身としては、出場するからには一つでも多く勝ちたいと思う一夏。
そして、素人考えなりに出した結論として、試合の勝敗が組む相方によって左右されるということから、自身にとって意思の疎通がしやすい相手を選ぶことにした。
そして、入学からしばらくは一緒の部屋で過ごし、幼い頃は同じ道場に通っていた箒にその依頼をするのはある意味で当然の流れであった。
「そう考えてくれて、気持ちは嬉しいのだが一夏…………その誘いは辞退する。本当に勝ちたいのであれば私を選ぶのはお互いのためにならんと思うのだ」
なので、なんだかんだで入学以来何かと気に掛けてくれていた幼馴染からの拒否の言葉は一夏を少なからず驚かせた。
「な、なんでか聞いてもいいか?」
内心の動揺を隠しきれず、どもりながらも問いを投げる。その彼の反応が可笑しく、そして自分をそこまで信頼してくれていたと思うと胸の辺りにじんわりと温かい感触がこみ上げる箒であった。
「理由は幾つかあるのだが……」
緩みそうになる表情を考える仕草で誤魔化しつつ、そう前置きをすると箒は人差し指を立てながら一つ目の理由を述べ始める。
「私は今大会が入学試験以来のISの搭乗になる。恐らくは自分のことで精一杯になるであろうから、一夏との上手い連携は無理だと思う」
この二人は“今のところ”と前置きが入るが、代表候補生ではない。ISという業界ではVIPではあっても、実際にISに乗ったのは入学してからのことになる。
その為、専用機を持っているというアドヴァンテージがあっても、この二人の実力差はそうそう大きな開きはないのである。
その為、お互いに試合中相方を気にかける余裕が生まれない可能性が高い。それはタッグという試合形式にはある意味で致命的であった。
人差し指に続き今度は中指が立つ。
「次に、お前と私では戦い方の役割が被り、試合相手に対して柔軟な対応ができない」
この二人の戦い方の基本は、良くも悪くもほぼ同じである。刀などの刀剣類を使った近接戦。それは機体の容量的に他の武装を装備できない白式はもちろん、箒が使用する近接よりのプリセットが行われている打鉄も同じである。
一応、外付け装備などで銃器類も装備できるが、箒自身それを十全に扱いきれると思える程自惚れてはいなかった。
(まぁ、月石社の外付け武装のライフルも……私が頼んだ“アレ”も一応は間に合うと言っていたから、遠距離武装が無いことはないのだが……)
契約上の守秘義務的に口に出せないことを脳内で呟く箒であった。
「他にも細かい理由がないわけでもないが、大きな理由としてはこの辺りだ……理解してくれたか?」
「あ、いや、うん……少し頭が冷えた。よく考えたら…………違うな、少し考えれば分かることだな。すまん箒」
箒の説明を聞くうちに冷静になった頭がまともな思考を始めたのか、自然と反省の言葉と謝罪の言葉が一夏の口から出てくる。
そして、パートナー選びが振り出しに戻ったことに一夏は内心で困った。
そんな彼を見兼ねて、箒はある助言を口にする。
「一夏……お前が私を選んだのは、気心の知れた仲だったからだな?」
「え?そうだけど……」
確認の質問は少し気恥ずかしかった箒であったが、相手が真剣に悩んでいる中でそんな態度は見せないようにする箒であった。
「ならば、もう一人この学園にいるだろう?お前の幼馴染は」
その箒の言葉に一夏はハッとした後に苦い表情を浮かべた。
そうなのである。一夏の相方を選ぶ基準が、お互いによく知った相手というのであれば、もう一人この学園には彼の幼馴染がいるのだ。
「凰とはつい最近までプライベートでも一緒だったのだろう?ならば問題ないではないか」
「鈴、か……」
内心で意地悪な物言いをしている自覚が箒にはあった。
例の誘拐事件に鈴音が巻き込まれた後、学園に戻ってきた彼女を一夏は心配していた。それも帰ってきてすぐの彼女に詰め寄り、怪我がないかを確認する程に。
そこまでして一夏は自分が彼女を一回傷つけた事を思い出し、無事でよかったと告げると逃げるように彼女から離れてしまったのだ。
それ以来、明確な仲直りをしたわけでもない彼女と話をするというのは、今の一夏にとっては少し気まずいものであった。
「一夏、一応ISでの試合は競技で、凰はそのプロの卵である代表候補生だ。ならば、そういった事を気にして勝つための努力を怠るのは、自身にも彼女にも失礼だと思わないか?」
綺麗事だと、再び箒は内心で呟いた。
だが、時々一夏が悩むような仕草を見せるのも、彼を遠巻きに見ている鈴音の姿を見たことのある箒にとっては早く話し合うなりなんなりとして、仲直りをして欲しいというのが本音であった。
「……うん、そうだな。ちょっと行ってくる」
やはり、少し足取りは重いものの、一夏は一歩を踏み出した。それは確かに前進する一歩であった。
そんな彼を見送り、箒もまた自身の探し人のために足を動かす。
放課後の夕暮れどき。既に開店している学食は少し早めの夕食を取る生徒が多くいた。その席のうちの一つに目的の人物がいたため、箒は彼女の背に言葉を投げかけた。
「オルコット嬢、少々話があるのだが、時間をいただけないだろうか?」
机の上に置かれた真っ白いピースの山を額縁にはめる作業の手を止めるセシリア。
探し人である彼女は所謂牛乳パズルの二千ピースを解いていた。
後日、二日に渡って行われるタッグトーナメントにおいて、初日の終了時点で一年生の部での四強が決まり、準決勝の対戦カードが確定する。
校内の電光掲示板にはその名前が無機質に流れていた。
『準決勝第一試合
昭弘・アルトランド、更識簪VS篠ノ之箒、セシリア・オルコット
準決勝第二試合
三日月・オーガス、ラウラ・ボーデヴィッヒVS織斑一夏、凰鈴音』
次回からタッグトーナメント終盤です←オイマテコラ
予選も書きたかったのですが、かさ張りすぎるのと主要メンバー以外の人の試合内容書いても、読者は飽きると思ったので、多少内容をかっ飛ばしました。
一応どんな予選だったかを書くつもりはあるのでそれはまた次回に。
…………え?箒が正ヒロイン臭い?い、一応原作一巻表紙ですし……
追記
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