ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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今回の「ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか」は

「ヴァレン某、立つ」

「モルド、ボコボコにされる」

「色、運命の人と出会う」

の三本でお送りします。


第8話 Lv.差

自分を引き剥がし、テントから出ていく黒の少年の名前を叫びながら見届け、女神ヘスティアは、自信の足元に深いため息を落とした。

 

「色君のバカ」

 

自信の仇敵ともいえる存在、ロキのファミリアに向かって行く少年に向かって投げられた言葉は誰もいくなったテントの中に小さく響く。

 

「・・・はぁ」

 

ヘスティアは手元に持ってきた一枚の紙に目を落とし、もう一度深いため息をした。

 

 

 

 

黒鐘 色

 

 Lv.2

 

 力 :I0

 

 耐久:I0

 

 器用:I0

 

 敏捷:I0

 

 魔力:D500

 

 《魔法》

 

御坂美琴(エレクトロマスター)

 

・電気を自在に発生させる事ができる。

 

《スキル》

 

一方通行(アクセラレータ)

 

・範囲内の向き(ベクトル)を自在に操れる

 

・自身のステイタスにより能力増大

 

 

幻想御手(レベルアッパー)

 

・レベルアップまでの最適化

 

・レベルアップ時の【ステイタス】のブースト

 

 

「【ステイタス】のブーストってこういう事かぁ・・・レベルアップを喜ぶべきか、この異常な【ステイタス】を危惧するべきか」

 

ヘスティアは心の中で問いかける。

 

君は、君達は一体、いったい何処まで行く気なんだい?

 

 

 

 

 

 

これは、いずれ最強を欲しいままにする者達の【眷属の物語(ファミリアミィス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭に柔らかい感覚を感じる。

 

昔、ずっと小さかった子供頃に味わった事のあるような感覚を思い出しながら、重たかった瞼を少しずつ開けていく。

 

「・・・・・・・・」

 

うん、大きな胸があった、どうやら俺は女性に頭を抱えられながら寝ていたらしい。

 

自信の顔に熱を感じながら、その女性、ヘスティアに声を掛けた。

 

「そろそろ離してくんね?ヘスティア」

 

「・・・・・・嫌だ」

 

少し考えた後、笑顔で言い放った女神様を俺はため息を付きつつ、放して貰えるように交渉する。

 

「もう大丈夫って言ったろ?『ゴライアス』にやられた怪我も全快したから、そろそろ此所から出たいんだよ。」

 

だから離してくれ、と続けようとした俺の言葉をヘスティアはジト目で見ながら遮った。

 

「あのね色君。君はボクがどれだけ心配したか解るかい?安全地帯(セーフティポイント)に着いて初めて君の姿を見た時は心臓が止まるかと思ったよ。全身血塗れの包帯まみれだし、ベル君は泣きながら君にすがりついてるし、理由を聞いたら『ゴライアス』と単身戦ったって聞くし、完治しても元のように体が動かせるか解らないって言われるし。本当に、ほんっとうに!心配したんだよ!」

 

目に涙を浮かべながら声を荒げるヘスティアに、昨日何回も聞いたよ、何て言える訳もなく、俺はコクコクと壊れた人形のように首を縦に振った。

 

そう、俺は生き残ったらしい。ベルから聞いた話では、最後の一撃は例の巨人、ゴライアスの一撃を跳ね返しその上半身を吹き飛ばしたのだとか。

 

その後ぶっ倒れた俺を背負い18階層へ、そこにたまたまいた、【ロキ・ファミリア】の人に万能薬(エリクサー)と言う、ゲームでもお馴染みな万能薬を使って貰い、何とか一命をとりとめたとか。

 

まぁその万能薬(エリクサー)を使われる前に、俺達を心配してこの階層まできたヘスティア達に見つかり、付きっきりで看病してくれたヘスティアが、元通りに戻った現状でも、ずっと俺に引っ付いて離れてくれないのというのがこれまでの経緯である。

 

「俺もそろそろ外に出たいんだって、いや、だから胸を押しつけて来るな!ヤバイから!理性とか色々ヤバイから!」

 

「ダメだダメだ!今はあの、ロキファミリアもいるんだよ!どうせ録でもない事になるに決まっている!」

 

「そのロキファミリアに助けられたからお礼を言いに行くんだよ!だから離してくれ!」

 

「お礼何てベル君がとっくの昔に言ってるよ!それに、君までもヴァレン某の毒牙にかけられたら堪ったもんじゃない!ベル君みたいに!ベル君みたいに!」

 

そう怒鳴りながらくっついてくる過保護な神様を引き剥がすこと1時間、何とか外に出られた俺は、会話の一部を聴いてたのか、苦笑いしているヴェルフに手を降りながら、【ロキ・ファミリア】のテントに向かった。

 

ヴァレン某よ、うちのベルに何をした・・・

 

 

 

 

 

 

「おーい、ベルー!」

 

ヴェルフに案内された俺は、少し駆け足になりながら、見慣れた白髪に声をかけた

 

「もう、遅いよ!色!」

 

「悪りぃ悪りぃ、ヘスティアが離してくれなくてさ」

 

そう言うとベルは少しだけ、ムッ、とした顔になった。もしかして焼いているのだろうか?

 

「やぁ、キミが『ゴライアス』の強化種を単身で倒した、黒鐘 色君だね?」

 

そこには小さな金髪の少年が立っていた、身長はリリと同じぐらいなのに、どことなく貫禄のある佇まいに、つい敬語になりながら、差し出された手を握った。

 

「ど、ども、黒鐘色です」

 

「僕の名前は、フィン・ディムナ、【ロキ・ファミリア】の団長だよ」

 

その言葉を聞いた俺は若干目を見開いた。

 

「じゃああんた、リリと同じ小人族(パルゥム)か?」

 

「ちょっと色!失礼だよ!」

 

「いいよ、クラネル君。いかにも、僕は君の所のリリルカ・アーデさんと同じ小人族(パルゥム)さ」

 

そう言いながら挨拶をしてくる小さな少年を見つめる。

 

いや、違うな。

 

何と無くだけど分かった気がしたのだ。この小さな少年はあの『ゴライアス』よりも強いと。

 

「この度は危ない所を助けていただいて、ありがとうございました。小さくて大きな団長さん」

 

そう言ってお辞儀する俺にベルは抗議の言葉を言おうとするが、フィンさんの「ふぅん、中々大したものじゃないか」という言葉に抗議の言葉を飲み込み、複雑そうな顔をする。

 

「僕たちは今日中に帰るけど、よかったら地上に出てから一緒に飲みにでも行くかい?」

 

『ゴライアス』を倒した時の話を聞かせてくれないかな?と続けるフィンさんに俺は「いいですよ」と答えようとした。しかしその言葉は俺の顔面に突き刺さった拳によって遮られた。

 

「え!?アイズさん!?」

 

「アイズ!?」

 

最後に認識したのは白髪と金髪の少年が出した驚愕の声と急激に遠ざかっている金髪の女、そして遅れてやってくる鈍い痛み。

 

これが後に伝説に語られる。黒金戦争の幕開けであった。

 

 

 

二転三転地面をバウンドした俺は何処かのテントに突っ込み、ようやく止まった。

 

「「「「「キャァァァァァァァァァ!!!!!」」」」」

 

揺れる意識を保ちつつ悲鳴が聞こえた方を振り向くと、知らない女の子達があられもない姿でそこに立っていた。

 

「ああああなた行き成りなんなんですか!?ていうかだだだ誰なんですか!?」

 

ぼー、としながら叫んでくる一人の女性を見ていた俺はやっとの事意識が覚醒する・・・主に怒りで

 

「ふ、ふふ、ふふふふふふ、ふははははははははは」

 

突如笑い出した俺に金髪の女性や他の女の子達は小さく悲鳴を上げた後、シーツを体に巻き付け押し黙った。

 

そう、金髪、金髪の女だ。

 

俺は見やる、遥か向こう、俺を挨拶も無しにぶっ飛ばしてくれた金髪の女を。

 

「金髪ぅぅぅぅ!!!てめぇ、絶対ぶっ飛ばしてやるからなぁ!」

 

叫びながら跳躍する、Lv.が上がった俺のベクトル操作は今までと一線を画する爆発力で地面を砕き、俺をぶっ飛ばした金髪の女に肉薄する。

 

「らぁっ!」

 

推進力を極限にまで高めた飛び蹴りを金髪の女に食らわす、しかしその攻撃は簡単に見切られ、逆に上空に蹴り上げられた。

 

「痛ってぇじゃねぇか!金髪ぅ!」

 

Lv.が上がった反射を突破してきてる。あの女は危険だ。 接近戦は論外。様々な思考の中、あの金髪をぶっ飛ばす作戦を練り上げていく。

 

「これでも食らえ!」

 

作り出したのは【プラズマ弾】、その数5発。

 

生成スピードが格段に上がっている事を認識し、打ち上げられた空中から、真下にいる金髪に全弾ぶち込んだ。

 

「【テンペスト】」

 

呟きが聞こえた、それと同時に俺の【プラズマ弾】は風を纏った金髪の一閃により尽く切り裂かれる。そうして最後の弾を切り裂いた後、空中にいる俺目掛けて跳躍していた。

 

「それは俺の技の名前だ!パクんじゃねぇよ!金髪ゥ!」

 

「うるさい、ゴミ虫」

 

俺は金髪に拳を繰り出すが、それよりも早く放たれた踵落としが俺の腹を貫いた。迫ってくる地面に向けて反射の膜を展開押しながら、見下ろしてくる金髪(格上)をその時の俺は、ただ睨む事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

「謝るんだ」

 

プイッ!

 

「はぁ、すまない。いつもはこんな事、絶対にないんだが・・・アイズ、本当に黒鐘君とは、以前に会ったことがないんだね?」

 

「こんな虫けらとは一回も会ったことは絶対にありません。フィンももう謝らくていいよ?ゴミの匂いが移るから」

 

「よし分かった、そこに座れ金髪、一発ぶん殴る」

 

そう言いながら腕を捲り、金髪、ヴァレン某に向かって行く。

 

「わぁ!待って、待って色!落ち着いて!って力強!?手伝って!【タケミカヅチ・ファミリア】の人達も手伝って!」

 

「まっ、待ってください色殿!、今行かれてもあの方には敵いませぬ!」

 

「そうですよ!色殿!」

 

そう言いながら俺の体に纏わり付いてくるのは、中層で俺達に助けられた恩を返したいと言って、ヘスティアをここまで連れて来てくれた【タケミカヅチ・ファミリア】だ、他には覆面の女性と【ヘルメス・ファミリア】の人もいるのだが今のここには居ない。

 

「待って!本当に待って!アイズさんも、アイズさんもなんか言ってください!」

 

「ベートさんが言ってました。『弱い犬程よく吠える』」

 

「ぶっ飛ばす!」

 

「そう言う事を言って欲しいんじゃないんですよ!?止めて!誰か止めて!?」

 

ドヤ顔で煽ってくる金髪をぶん殴るために「金髪ゥ!」と叫びながら足を進めた俺は、様子を見に来たヘスティアに止められるまで、ベル達に必死に止められていた。

 

「ねぇ、アイズどうしちゃったの?」

 

「理由を聞いたら、『顔が気に食わなかった』からだそうだ」

 

「いずれにしろ、あの色君って男の子と今後合わせない方がいいわよねぇ」

 

「ううううううううう」

 

「どうしたの?レフィーヤ?」

 

「初めて男の人に、裸を見られましたぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、ベル?これ以上やるの?」

 

「当たり前でしょ、この人達は神様を攫ったんだからそれ相応の報いが必要だよ」

 

困り顔でいう俺に不機嫌な声でベルは返して来た。

 

今、拳を構える俺とナイフを構えるベルは、同じLv.2の冒険者達に囲まれていた。理由はヘスティアを人質に取られ、決闘を申し込まれたから。

 

「ま、まて!落ち着け、本当に落ち着け!、それに其処の黒髪、お前は本気を出しちゃいけない、絶対にだぞ!」

 

そして、この騒動のモルドとかいう主犯のおっさんは完全に腰が引けていた。理由は簡単だ、俺達に手も足も出なかったから。

 

最初は良かったんだ、「2対1で来いよ!身の程を教えてやる!」と意気込み、謎のアイテムを使い、透明人間になったおっさんは勢い良く殴り掛かってきた・・・俺に

 

当然Lv.が同等の反射を突破できず殴った拳は粉砕、痛みで声を荒げるおっさんをベルが一蹴、謎のアイテムは砕け、顔面蒼白のおっさんは「お、お前ら、やっちまえ!」と、どこかの三下みたいなセリフを吐いて来た。

 

まぁ、あれだ、その後は見事に無双した。おっさんの声を皮切りに飛び掛かって来た雑魚共(Lv・2)を俺は反射の絶対防御を使いながら【プラズマ弾】や風の刃で、ベルは持ち前の速さで敵を錯乱しつつ二振りのナイフで次々と薙ぎ倒し、途中から合流したヴェルフや覆面の人、【タケミカヅチ・ファミリア】の面々も加勢し、ものの見事に地獄絵図が完成している。

 

「なぁ、もういい加減やめよう?かわいそうだから、ほら、モルドのおっさんも泣いてるし」

 

「なななな泣いてねぇよ!ここここれは心の汗だっ!」

 

そう言いながら服の裾で目元をゴシゴシしているおっさんを見ながらベルは溜息をついた

 

「全く色は優しいんだから、そんなんじゃ何時か足を掬われるよ」

 

「お前に言われたくねぇよ!?」

 

やれやれ、と言った感じに手を腰に当てているベルにツッコミつつ、今だ戦っているヴェルフや【タケミカヅチ・ファミリア】の面々、泣きながら土下座している人間を綺麗にぶっ飛ばしている覆面の女性に撤収の声を掛けようとしたその時・・・

 

「止めるんだ」

 

何処かに拉致されたヘスティアの声が聞こえた。

 

「あ~、ヘスティア?えっと、もう終わった」

 

「・・・・・・・え?」

 

小高い山の上から何故か響いて来た間抜けな呟きに、苦笑いしながら俺は少し大きめの声で返した

 

「だからもう終わったんだよ、撤収すんぞ!」

 

そう周りに声を掛けたが、何故か誰も反応しない、まるで金縛りにあったかの様に固まる面々を不思議そうに見ながらもう一度声を掛けようとして止まる、何故なら・・・地響きが鳴り、空が砕けたからだ。

 

(ボク)の神威が効かない?色君、君はいったい・・・」

 

そんな中呟かれたヘスティアの声は誰の耳にも届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁベル?あれなんだと思う?」

 

「わかんない」

 

突如現れた黒い『ゴライアス』に指を刺しながら問いかける俺にベルは簡単に返した。

 

二人そろって溜息を付きながら腕を組み、声を揃える。

 

「「またこのパターンか」」

 

「馬鹿な事言ってないで何時もの事なんですから直ぐに準備してください」

 

そう言いつつリリは手馴れた作業で俺達に装備品を渡してくる。まぁ俺の装備は黒籠手(デスガメ)だけだけどな!

 

「あの?リリ殿?嫌に落ち着いていますが、こういう事はよくあるのですか?」

 

「そりゃあ、この人達(デス・パレード)と一緒にダンジョンに潜ってたら嫌でも異常事態に馴れますよ。ダンジョンに入ったら必ず群れを成しているモンスター、赤い『ミノタウロス』に『天然武器(ネイチャーウエポン)』で武装している軍隊、果ては格闘技を使ってくる『ゴライアス』の強化種、今更黒い『ゴライアス』如きで慌てて居たら『怪物進撃(デス・パレード)』のサポーターなんて務まりませんよ」

 

「そ、そうですか」

 

【タケミカヅチ・ファミリア】の面々にも武器を配りだしたリリを見ながらヴェルフは「入るパーティー間違えたかな?」と言いいつつ遠い目をしていた。

 

「よし、準備できた?色」

 

「いつでも行けんぞ」

 

「待ちなさい」

 

意気揚々と飛び出そうとした俺達に覆面の女性が待ったを掛けてくる。

 

「本当に、彼等を助けに行くつもりですか?このパーティーで?」

 

覆面の女性は眼下の無法者達(かれら)を見ながらベルに問いかける

 

「もちろんです」

 

その問いにベルは一瞬の迷いなく答えた、その清々しいまでの表情に俺も笑顔でベルの肩に手を掛けながら続ける。

 

「まだ謝ってもらって無いもんな?」

 

「謝礼金も貰わなくちゃね?」

 

そう、今俺達のファミリアは俺に使った万能薬(エリクサー)のおかげで金が全く無いのだ、せめて帰るまでのポーション代ぐらいは無法者達(あいつら)に出して貰わなければ。

 

「もしかしたら、貴方達は将来大物になるのかもしれませんね」

 

覆面の女性は若干引きながらそう答えた。

 

 

 

 

 

「ベクトルパンチ!!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオ!』

 

俺の繰り出した拳は、結局一緒に戦ってくれる覆面の女性に迫っていた黒い巨人の拳とぶつかり・・・巨人の拳が弾かれる。

 

「痛つつ、Lv.2になったとはいえ、まだまだだな」

 

黒籠手(デスガメ)の上から痛む拳を抑えながら、後ろに居る覆面の女性に視線を向けた。

 

「大丈夫か?」

 

「さっきの風の攻撃といい、ゴライアスに負けないパワーといい、貴方は本当にLv.2なのですか?とても、いえ、全くそうには見えませんが?」

 

そう問いかけてくる女性に対して何か言おうとしたが、響いてくる鐘の音が終わったのを聞き届けると、咄嗟に女性の手を握りその場から撤退した。

 

「・・・あっ」

 

「ファイアボルト!」

 

着弾したベルの魔法は見事に黒い巨人の上半身をぶっ飛ばしながら爆炎を上げる。

 

「あれがLv.2なんだから、俺もLv.2でいいんじゃないかな?」

 

「そ、そうですね、あ、後、その、手を放してくれたら助かります」

 

「おっと、悪りぃ」

 

手を放しながら前方の黒い『ゴライオス』に目を向けると、徐々にその肉体が再生しているのが見える。

 

「どうやら通常の『ゴライアス』と違い再生能力を持っているようですね。あ、申し遅れました私はアスフィ、【ヘルメス・ファミリア】の一員です」

 

シュタッ!と空から舞い降りた、空色の綺麗な髪の色の、眼鏡を掛けた女性は、俺を見ながら真剣な表情で挨拶をしてきた。

 

「あなたが【ヘルメス・ファミリア】のアスフィさんですか、この度はうちのヘスティアがご迷惑を掛けました、よかったらお詫びに食事でも奢らせてください」

 

今度一緒にどうですか?と続けようとした俺の声を隣の覆面の女性が遮った

 

「だ、駄目です、じゃない、えっと、コホン・・・私も貴方の主神を連れてきたのだからそれ相応の報酬をいただきたい、のですが」

 

「え?でも正体をバラす訳にはいかないんじゃ?」

 

「ッ!?」

 

「えっと続きを話してもいいでしょうか?」

 

妙に悶えている覆面の女性を放っておき、困惑しているアスフィさんに続きを促した

 

「通常の攻撃ではすぐさま回復されて終わりです。ですのでさっきのクラネルさんみたいな、一撃で倒せる魔法や技をあなた方は持っているのか聞きに来たのですが?」

 

アスフィさんの言葉に俺は「うーん」と唸りながら

 

「一応あったのですが、さっき試して効きませんでした」

 

「私の方も、同じく」

 

「ああ、さっきの風の攻撃ですか」

 

そう、あの黒い巨人には俺が『ゴライオス』の強化種を倒した【ゴットブレス】が全く効かなかった、それどころかありとあらゆる風の攻撃の無効耐性を持っているらしく覆面の女性の魔法も意味をなさなかった。

 

「体内のベクトルも全く操れないし、正直ベルの魔法に賭けていたのですが・・・」

 

そう言いつつ咆哮を上げてこちらに迫ってくる回復した巨人を見やった

 

「解りました、それなら足止めをお願いしてもいいですか?今他の冒険者達に魔法の準備をさせています。魔法を完成させるまでの時間だけでいいのでお願いします」

 

「解りました」

 

「任せてください!」

 

ふと思った俺は、飛び去って行くアスフィさんを風を纏い追いかける。

 

「アスフィさん!」

 

「何ですか?・・・って飛んでる!?」

 

「連絡先教えてください!」

 

驚くアスフィさんに連絡先を聞きだした俺は、何故か覆面の女性に睨まれながら、黒い『ゴライオス』に突撃していった。

 

 

 

 

 

「と、いうわけで魔法が効かなかったので、色は上半身をお願いね?」

 

そう言いながら手に持っている黒大剣を光らせ、大きな鐘の音を鳴らしながらベルは俺に言ってくる。

 

「いやいやいや、だから風の攻撃が効かないんだって、【プラズマ弾】すら効かないのに俺にどうしろと?」

 

場所は黒の『ゴライアス』が真っ直ぐ見える小高い丘、いつの間にか大黒剣を持っていたベルは、目の前に着地した俺に向かって何の説明も無しにそう言ってきた。

 

「またまたぁ、そんな事言って、美味しい所持って行こうたってそうはいかないよ?」

 

「そんなんじゃないからね!?ベル君は普段俺の事をどういう目で見ているのかな!?」

 

そうツッコんだ俺に「はっはっはっはっ」とどこかで聞いたような笑い声を上げながらベルは真っ直ぐ巨人を見据える・・・正直ちょっと怖い

 

「ねぇ見てよ色、皆僕たちの攻撃のために足止めをしてくれているんだよ?」

 

ベルの視線の先、黒の『ゴライオス』を見ると、向かってくる『咆哮(ハウル)』を物ともせず戦う冒険者達の雄姿が目に映った。

 

切り刻まれ、魔法で押しつぶされ、大火炎で焼かれながらもこっちに向かってくる『ゴライオス』に鐘の音が止まったベルは立ち向かう為に足に力を入れる。

 

「あるんでしょ?とっておきが」

 

「・・・・どうしてわかった?」

 

「そりゃわかるよ、まだ一か月ぐらいだけど、毎日一緒に過ごしてるんだから」

 

「はぁ、どうなっても知らんぞ?」

 

その声に答えたのはベルで無くヘスティアだった

 

「ベル君、色君、何でもいいからとっととあの目障りな巨人をボクの目の前から消してもらえないかな?これは主神命令さ!」

 

そう言ってドヤ顔をしながらヘスティアは俺とベルの肩を叩き、何時もの様に笑顔を向ける。そんなうちの主神様に俺達は顔を見合わせた後、

 

「たく、主神命令ならしょうがない!」

 

「ははは、それじゃあ、行ってきます神様!」

 

と言いながら、お互いに迷いのない表情でゴライアスを見据えた。

 

「任せたよ、ベル君、色君」

 

「「任された!」」

 

言うな否や俺は空を駆け、ベルは地を駆ける

 

巨人の頭上を目指し新しく発現した魔法【御坂美琴(エレクトロマスター)】の行使に移った。

 

初めて使う魔法のぶっつけ本番がコレとかマジで洒落になってねぇわ

 

そう思いつつも電撃を纏い飛んでいく俺の表情は笑っているのだろうか?

 

おっと、ついでだから詠唱とかしちゃう?しちゃったりする?

 

日本にいた頃ではお馴染みの詠唱を唱えながら、巨人に向かって行く俺の姿を異世界に来る前の俺が見たらどう思うのだろう。

 

「出でよ!神の雷!【インディグネイション】!!」

 

きっとこう思う筈だ、ああ、なんて楽しそうなんだろう

 

「未だ人類が到達できていない10億ボルトの落雷に耐えれるもんなら耐えてみろやぁ!」

 

光と閃光が包む中、俺はもし異世界に来る前の俺に一言言えるならこう言ってやりたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

チート使ってもダンジョン攻略は楽じゃねぇんだよ・・・と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




また見て下さいね!

じゃーんけーん、ゴフッ!てめぇ金髪ゥ!何しや「うるさい、ゴミ虫」グフッ!


うちのアイズさんの扱いは大体こんな感じです。

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