ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか 作:しろちゃん
「え?色様と最近、ですか?」
ある日の昼下がり。久しぶりに顔を見せた知り合いのアマゾネスの質問に、尻尾の毛繕いをしていた春姫は首をかしげた。
「う~ん、別にいつも通りですよ?早朝訓練をして、ダンジョンに潜って、帰ってから食事をして、夜寝る時にお話を聞かせて貰う………あ、この間、無敵のゲーマー兄妹が異世界に行ってゲームで無双をするという、とても面白いお話を聞かせてもらったのですけれど、良かったら聞きますか!!――――はぁ、別にいいですか……………面白いのに」
ボソッと呟いた春姫の言葉に微塵も耳を貸さずに、アマゾネスは色との関係について根掘り葉掘り聞くことにした
「寝る時?それはまぁ、同じベッドで寝ますけれど――――え?肉体関係!?な、無いです無いです!!
顔を青くしたり赤くしたりしてワタワタしている春姫に、この生娘の頭の中は何時でも春なのかい、とアマゾネスは頭を抱えた。
「そ、それに色様は一切そういう事をされない方なので安心で、安心なので御座います!!確かに、一緒に寝たり買い物に行ったり攻略作戦や訓練内容を二人っきりで話し合ったりしていますが、これまでに触られたとしても尻尾や耳だけですし!!!」
――――ほぅ
経験豊富なアマゾネスは思う、普通そこまで近くにいる男女がお互いに何も想う所が無いことが有るのだろうか?いや、そんな事有る筈がない。恐らく目の前の色ボケ狐はベル・クラネルに恋をしながら黒鐘 色にも惹かれているのだろう。
これは――――少し引っ掻き回してやったら面白くなりそうだ
「え、二人の関係ですか!?それは勿論同じ
まぁ、落とし所はそこら辺になるだろうねぇ―――だけど私はそんなに甘くないよ。
もう少し具体的に突っ込んで意識させてやろう、心の中でアマゾネスの主神が涙目でヤメロと言っている姿が幻想されたが、そんな事お構い無しに口を開こうとして
その時、件の人物が扉を蹴破るほどの勢いで部屋の中に入ってきた。
「おいこら駄狐!!また俺のスマホ勝手に持ち出しやがったなぁ!!!!」
ビクッと肩を跳ねさせた春姫は、直ぐに顔を真っ赤にして色に食い掛かる
「か、勝手に部屋の中に入ってくるのは止めてくださいって何度も言っているでは御座いませんか!!貴方にはデリカシーと言うものが無いのですか!?」
「てめぇがスマホや帽子を勝手に持ち出すからだろうがぁ!!いいから返せッ!!そしたら出て行ってやる!!!」
「嫌で御座います!!別に少しぐらい貸して下さっても良いでは御座いませんか!!色様のケチンボ!!」
「ケチ!?お前の少しが何回も何回も回数が多過ぎるからこうやって取り返しに来てんだよ!!!もう怒った!無理矢理にでも取り返す!!!
そう言って色は盗られたスマホを取り返そうと春姫に襲い掛かった。ドタバタし出した二人の間に男女の中の甘酸っぱい空気など欠片も見受けられない
「あっ、ちょっ!!着物を引っ張らないで下さいますか!せめて新曲を覚えるまで待って下さいまし!」
「くそっ!このっ!生意気に魔防の着物なんて着やがって!!何が新曲だ!人の曲パクって歌ってる
「あぁ!?今
「上等だ!!こっちだってファンの一人や二人いるもんね!!お前だけが特別じゃねぇんだよ!!って痛てぇ!?爪立てやがったなこの女!!もう容赦しねぇ!!!」
「ふぐッ!?こんな事で《スキル》を使用するなんて大人げないとは思わないのですか卑怯者!!ならばこちらにも考えがあります!!アイシャ様!《魔法》を使うので応戦を――居ない!?」
自分が巻き込まれる前に部屋の外に退散したアマゾネスは、服を乱れさせ傷を付けながら暴れ出した二人に呆れた視線を送り
「何にしても、春姫が取っ組み合いの喧嘩をする所なんて初めて見るね」
そんな言葉を呟いた。
『おっとぉ!!他の【ロキ・ファミリア】の高レベル冒険者が合流しましたぁ!!これでは戦局がどちらに傾くか全く見当がつかなぁぁぁぁぁい!!!!!』
『の、ノリノリですねミィシャさん』
『イブリさんの方こそテンションが低すぎるんじゃないですか!?よくそれで『喋る火炎魔法』なんて自称出来ましたね!!』
『ぉお!?言ってくれるじゃねぇか!!それじゃあこっからは、この『喋る火炎魔法』ことイブリ・アチャーの独壇場だ!!』
そんな大声と共に天高く展開されている鏡には、人間の様に指示を出し普通のモンスターとはまるで違う戦い方をする
「色さんは!?何故色さんを映さないのですか!!」
その中で、エルフの女性の野次が飛んだ。普段とは違う彼女の様子に隣に佇むヒューマンの女性が少しだけビックリした
「リュー、今日はどうしたの?」
「シル、貴方はおかしいと思わないのですか!!さっきから
「お、落ち着いて。そんなに怒鳴らなくても今は
「しかしシル。あの人達がここまで時間が経っているのに何もしていないのは考え辛いのです!!――――ッ!?」
大声を上げたリューは押し黙った、理由は自分に集中されている視線だ。「今、良いところだから静かにしてろ」そんな言葉がありありと乗せられた複数の視線を一身に受け、思わず「すみません」と謝ってしまう
「今はベルさん達を信じて静かに見守りましょう。きっと何とかなるわ」
「……………はい」
隣友人にそう言われ、言葉を返してから空に浮かぶ大鏡を見ると
『おおっと!!これは!!【ロキ・ファミリア】のアマゾネス姉妹の前に!!絶世の美少女アマゾネスが立ち塞がっているぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!!あの子が【ヘスティア・ファミリア】の助っ人なのかぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?』
『イブリさん、やっぱり五月蝿いので黙っていてください』
『酷い!?』
まるで自分の
(なによそれ)
面積の少ない踊り子のような衣装に裸足の足、光の粒を纏った銀髪黒眼の
(ふざけんじゃないわよ)
それは恐怖で怖じ気づいた訳でもなく、威圧感に身を竦めた訳でもない
(あれは一体なんなんだ!!)
ただただ美しい少女に感心しただけだ。例えば、夜空に落ちる流星群を見掛けたときの様に、町に沈む夕焼けを見かけた時のように、美しい風景を見かけた時に人間がする
「ふざけんなぁぁぁぁぁあああ!!!!」
そうなった自分を認めないかのように、彼女は目の前のアマゾネスに双剣を差し向ける
「ケケケケ!!それじゃあ、いくよぉ!!!」
その怒号を合図にフリュネも戦斧を振り回し、唐突にその先端を
「な!?」
「フッ」
驚愕で眼を見開くティオネにフリュネは薄く笑い、宙に浮いている彼女を向かってきた勢いのまま地面に叩きつける。
「ガッ!?」
「ケケケケッ、あたいと戦うには少~しばかり器用と敏捷、それと技が足りないねぇ」
小振りな唇を喜悦に歪め、ポールダンスの様に戦斧に体を絡めているフリュネをティオネは憎々しげに見上げた。
先程の一瞬で起こったのは単純にティオネが投げ飛ばされただけではない。まずフリュネはティオネが全力で振り抜いた二つの刃を上に弾いた。それはまるで雨の中で行われたアイズと色の一合い目を想起させるが、彼女はその上を行く。戦斧に体を預けバランス取りながら、剛速で襲いかかる双剣を指で摘まみ押し上げたのだ。
更に体制を崩したティオネを右足蹴り上げ、その時のスピードを殺さないまま左足を胴体に絡めて、全身を使い頭から叩き落とす。その一連の動作を目の前の華奢な少女は
「その気持ち悪い体をこれ以上私に見せるんじゃねぇ!!!」
そう、冒険者は恐ろしいのだ。例えあれだけの力の差を見せ付けられたとしても、ティオネは怒りの形相で戦斧に張り付いて離れないフリュネを罵倒した。
「中々いい表情で吠えるじゃないかぁティオネ・ヒリュテぇ。そうさ、その反応がこのみすぼらしい身体に最も相応しい評価なんだよぉ………ケケケ」
「笑ってんじゃねぇぞ、蛙女!!」
普段では絶対に見せないような自傷気味な笑いを見せたフリュネに、ティオネの攻撃が飛んだ。それは投影型のナイフ、フィルカだ。深層のモンスターでも切り裂けるナイフを三本、少女が逃げられないよう両面と真っ正面に投げたティオネは、それに追い付く速度で自身も駆け出す。
「ふんっ、考えが浅いねぇ」
そう呟いたフリュネは
「チッ!!」
「ほぅ」
舌打ちをしながらティオネが取った行動は後ろに下がることでも横に避ける事でもなく、更に加速し前に突き進むこと。振り下ろされたナイフを腕に受けながらバランスを崩したフリュネに向かって再度凶刃が振り上げられ
「ガッ!?」
体を壁に投げつけられた。強制的に肺から空気を吐き出さされたティオネは、酸欠でクラクラしながらも少し冷静になった頭を押さえ、さっきの現象について考えを巡らす
(なんだ、何もしていなかったのに私が投げ飛ばされた?)
そう、ティオネは刃を走らそうとした瞬間、何もしていないフリュネに直角に投げられ壁に叩き付けられたのだ。普通ならばあり得ない現象だが、何かの《スキル》が働いているのかもしれない。
そう結論付けたティオネは、今度は持っているナイフ全てをフリュネに向けて投げ放った。
「ケケケッ、自棄になったのかぁい?」
戦斧に体を絡めるフリュネは、迫り来る無数のナイフをまるでダンスを踊るかの様にクルクルと回りながら捌いて行く。腰まで伸びている銀髪を揺らしなが行われる
「ティオナ!!!」
「ほいさっ!!!」
フリュネの背後、掛けられた声に復活した妹の武器が上段から振り下ろされた。しかし、
「うっそぉ!?」
「甘いね」
涼しい顔で姉妹のコンビネーションを防ぎきったフリュネは、光輝く妖精の様なしなやかな足先で掴み取ったフィルカを流れるような動作で容赦なく体制を崩したティオナに解き放った。
「うッ!?くッ!!」
何とか両腕をクロスさせて頭はガードしたものの、腕から血飛沫が飛び散り。バックステップで大きく後ろに下がる妹に気を取られているフリュネの背後から姉が横凪ぎに振り抜こうとして――――視線を向けられただけで投げ飛ばされた
「糞がッ!!さっきから鬱陶しい《スキル》だな!!ティオナ二人で行くわよ!!!」
「う、うん!!」
挟撃――【ロキ・ファミリア】が誇る最強の双子のアマゾネス姉妹が、たった一人のアマゾネスを打ち倒すために駆けた。弾丸の様に放たれた拳、鞭のようにしなる脚、戦斧に張り付くフリュネは隙間の無い攻撃を
「な、なんで!?」
「当たらねぇ!?」
白銀の毛先に触れさせる事もなく、美しい蝶の様にヒラヒラと捌いて行く。
「たしか制空権と呼吸投げだったか?ケケケッ馬鹿弟子の知識も中々役に立つじゃぁないか」
数秒後、ティオネは当たり前のように何もされていないのに投げ飛ばされ、ティオナは自分の力を利用され地面に叩きつけられた。
「それにしてもアイツの『魔法』は相変わらず凄まじいね。元の身体を使ってここまで慣れるのに時間が掛かるとは思わなかったよ」
「うぐッ」
「くそっ!くそっ!!」
無様に転がる姉妹を前に、変わらない輝きと美しさを撒き散らす幼げな女性が、遂に戦斧を地面から引き抜き、突き付けた
「それじゃあ準備運動も終わった事だしぃ」
フリュネ・ジャミールは姿勢を低くする
「見せてやろうかぁ」
咄嗟に武器を構えたヒリュテ姉妹
「器用と敏捷の極みをねぇ」
迷宮の一角、双子の
それはなんて事の無い普通の日、とある家で一人のアマゾネスが生まれた。子が生まれて喜んだ母親も出産に立ち会った人物も勿論全員がアマゾネスだ。そんな中生まれた子はアマゾネスの中では珍しい銀髪で、とても美しいという噂が近所でもあっという間に広まるぐらい輝いていて、母親も己の事のように自慢していた。
「お前みたいな醜い子、生むんじゃなかった」
生まれてから三年後、銀髪の少女は捨てられた
少女の母親は日に日に美しくなっていく子供の美貌に耐えきれなくなったのだ。しかし娘に手を上げる訳にもいかず、そして遂に限界に達した。
「あんたみたいな不細工、これ以上家に置いておけないよ」
引き取られた先に居られたのは半年、そこから転々とたらい回しにされた。
それはまるで自分が何処までも醜く映る鏡を見せられているような感覚、どれだけ着飾っても価値が高い化粧品をどれだけ使っても、少女の美貌の足元にも及ばない。
「ふんっ、なんだその気持ち悪い髪は」
【
その頃には自分の容姿が嫌で嫌で仕方がなかった。幾ら食べても大きくならない体、伸びない身長、他のアマゾネスとは違う髪色、その全てを周りの人間から罵られる。ある日から少女は不細工な身体を隠す為に全身を覆う鎧を被り、顔を隠してダンジョンに行く事にした。
「なんだい弱っちいね。弱い
ダンジョンに潜った彼女の回りの評価は散々だった。体質的に華奢な身体では力値と耐久値が殆ど伸びないのだ。それでも彼女は努力を怠らなず、せめて器用値と敏捷値は伸ばせるだけ伸ばそうと躍起になった。強いアマゾネスはそれだけで美しいと賞賛されるだから。
だから自分も、Lv.さえ上がれば――――少女がダンジョンに籠るようになるまで、差ほど時間は掛からなかった
「へー、中々やるじゃないか」
どれだけ努力しても力と耐久が殆ど上がらない、その代わり器用値と敏捷値は馬鹿に出来ない程に伸びていた。なのでモンスターの弱点を的確に突き、攻撃を全て避けて行くのが少女の戦闘スタイルになっていく。
そして少女が年頃の女性になる頃、遂に【ステイタス】を
これで誰にも馬鹿にされない!!
そして少女は鎧を脱ぐ事にした。Lv.が上がった彼女は初めて見せる素顔に困惑する周りのアマゾネス達を引き連れてダンジョンに向かう。
重い鎧を脱ぎ捨てた彼女はモンスターの攻撃を全て避け、傷一つ付けず踊るように戦った。その姿はまるで妖精のようだと周りの男性冒険者に絶賛され、やっと認められたと他のアマゾネスに輝かしい笑顔で振り向き
「それ以上その身体を私達に近づけるな!!」
何時もと同じ様に罵声を浴びせられた
アマゾネス達が彼女の容姿を口汚く罵るのは最早、防衛本能に近くなっている。せめて言葉で汚さなければ自分が保てなくなるほどの暴力的なまでの美さは、美神の魅力とは真逆の
「どうして、だれもあたいを認めない!?」
美しい事は罪だと誰かが言った、しかし彼女はあまりにも美し過ぎた。
そして何よりも不幸だったのは、周りに
「この身体のせいかッ!!!」
彼女は願う。最も強く美しい身体を、誰にも負けない強靭な肉体を、強く強く強く強く願い―――
一つの『呪詛』が権現した
【プリンセス・フロッグ】
その効果は自分の【ステイタス】を好きなように振り直しが出来るという、とてつもない『
彼女は身体を大きくする為に嬉々として器用値を力値と耐久値に振り分け、本来の美しさという『代償』を湯水のように支払い、銀髪の美女は蛙の巨女に変貌する。
そこから彼女の人生は変わった。周りの嫉妬が畏怖に変わり、罵倒が賞賛に変わり、掌を返したかのように褒め称えるアマゾネス達に優越感を覚え、何より【イシュタル・ファミリア】の団長にまで上り詰め、オラリオ最強の女性冒険者という名声まで手に入れた。
「ゲゲゲゲゲッ!!だぁれもアタイには敵わない!!アタイこそが最も美しく、最も強い女なのさ!!」
そんな彼女の栄光に泥を塗ったのは、一人の金髪金眼の剣士
初見で気に食わない奴だと思った。あんな人形顔の不細工だれも相手にしやしないよ。そう思いながらLv.2の
『
それからフリュネ・ジャミールの地位も名声も実力も、全てが金髪の少女に追い抜かれるのに差ほど時間は掛からなかった。気付いた時には気に食わない金色が都市最強の女性冒険者の名を欲しいままにして、美しさすら己の方が劣っていると蔑まれる始末。
「アタイの方が美しいに決まっている!!!どうしてあんな不細工が持ち上げられる!!」
あり得なかった。あの容姿で、あの姿形で、自分より美しいと言われ強くなっている彼女が到底信じられなかった、そして何よりも憎かった。
憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて――――自身の本来の姿を醜いものと信じて疑わないフリュネは気づけない。その気持ちこそが、他のアマゾネスが自分に向けていた感情だと言うことに………
「全く、イシュタル様にも困ったもんだよ。作戦決行日までLv.を上げるのを保留にして限界まで
そして月日は流れ
「春姫を使って確実に【剣姫】をぶっ潰す為に、一刻も早く弱味を握って脅すしかないねぇ。レナの奴、上手くやってたらいいが………ん?」
「何が【剣姫】だ!何がオラリオ最強の女剣士だ!あんなのただの暴力女じゃねぇか!!!!」
銀髪のアマゾネスは黒髪の少年と
「へ~、中々面白いことを言う奴がいるねぇ。ちょっと行ってみるかぁ」
師弟関係を結ぶ事になるのだ
「「グッ!?」」
「なんだいなんだい、その程度かい?ヒリュテ姉妹ぃ」
もう何度目か分からない程に地面に叩きつけられた二人を、再び戦斧に張り付いたフリュネが銀髪を掻き上げ艶かしい表情で挑発する。
「ぶっ殺してやる蛙女ぁ!!」
「ちょっとティオネ!?さっきから様子がッ」
フリュネの美貌は例え自覚がなくても同じ種族のアマゾネスに取っては毒でしかない。特に恋をしている
「フッ」
そのため、怒りに任せて力押しをすればするほど昔から相手の力を利用する事に長けていた彼女の餌食となり、例え【
「あぐっ!?」
戦斧が跳ね上がり、双剣ごと身体を絡め取られ地面に叩きつけられた
「ティオネ!!連携しなきゃ本当に負けちゃうよ!?」
「うるせぇ!!散々やって無駄だっただろうが!!!」
「でも!!私たちもうッ!?」
「ペチャクチャと、よく動く口だねぇ」
一瞬で懐に入られたティオナは反応できない。光を纏いながら放たれる
「ティオッ!?」
「姉妹仲良く飛んじまいな」
眼にも止まらないスピードで回り込んだフリュネは、姉の方も同じように妹が吹き飛ばされた方向に戦斧の腹で吹き飛ばす
「まぁ、可愛い愛弟子を殺させる訳にはいかないからねぇ。春姫、やりな」
「わかりました」
言葉を掛けられ、ずっと隠れてた狐が構えたのは一本の魔刀だ。その刀はフリュネに掛けられた《
「魔刀・集月!!」
吹き飛ばされた先で仲良く折り重なっている姉妹に向けて容赦なく放たれた。
「「!?」」
月の形に飛ぶ斬撃は双子を飲み込み、更に奥の
「それにしても、あらゆる魔力を吸収し斬撃に変える次世代の魔剣ですか。ヴェルフ様も面妖な物を作られますね、これで失敗作の出来損ないらしいですけど」
「あんたその魔剣の威力を知らずに放ったのかい!?って言うかそれで失敗作ってどう言うことだい!?」
アマゾネス姉妹を特殊なワイヤーで縛っていたフリュネは、刀剣を繁々と見ていた春姫がポツリと漏らした言葉に思わず突っ込んだ。どう考えても
「何でも、完成品は魔力をずっと留めて置くらしいですよ。そんな事が可能なのかは知りませんが」
「………なんかそれ聞いた事があるねぇ」
「そうなのですか?あっ、それよりフリュネ様」
「なんだい?」
「撫でても良いですか?」
「ぶっ飛ばすよ」
「残念です」
あっさり引き下がった春姫はフリュネの縛ったワイヤーの上から更に何十も巻き付けに掛かった。芋虫のようになった双子を見たフリュネは思う、あの春姫が数ヵ月でここまで変わるとは。少し前まで人の後ろに隠れて『魔法』を唱えるだけだった少女が、今では【ロキ・ファミリア】のヒリュテ姉妹に容赦なく魔剣を放ち、
まぁ、あのキチガイ・ファミリアに何ヵ月も居れば誰だってああなるのかねぇ
【ロキ・ファミリア】と闘うまでの間、修行を付けてくれと言われて一人で色以外の団員の相手をさせられた時の事を思い出して少しだけフリュネは身震いした。
とりあえず、
うん、思い出すのは止めよう。そうフリュネが結論付けた時、芋虫状態の双子を一纏めにしていた春姫の耳がピコピコと動き嫌に機械的な声を投げ掛けられる
「フリュネ様、新手が来ます。足音からして男性、段違いな速さから計算するとベート・ローガ様ですね。この二人を囮にして罠を仕掛けましょう」
「へぇ、そいつは面白」
「二人を助けようとした所を三人纏めて『
「あんたあのアマゾネス達に何か恨みでもあるのかい!?」
「大丈夫です。あの二人なら良い感じにワイヤーで巻いてあるのでダメージは無い筈ですから」
「いやいや、顔面おもいっきり出てるじゃないかい」
「顔面セーフです」
「アウトだよ!?」
「ピーチクパーチク煩せぇぞ、女ども!!」
「「………」」
真顔になった二人が後ろを振り向くと、そこには【ロキ・ファミリア】が誇る俊足の
「春姫、作戦は?」
「うーん、そうですね」
その瞬間予め唱えていた呪文により、フリュネの身体がベートと闘うために最適な【ステイタス】に振り分けられた事で変化し。春姫の『妖術』により更にブーストされる。
「当初の作戦通りに、真っ正面から潰してください」
「あいよぉ――――来な糞狼、お前を潰す為に一週間この身体で慣れさせたんだ、今度こそ【
「あのヒキガエルがどんな手品使ってそんな体型になったのかしらねぇが、娼婦は娼婦らしく男に尻でも降っとけ雑魚が」
娼婦と凶狼の第2ラウンドが始まった。
「準備は良い?」
「何時でも」
「行けるぜ」
「うん、それじゃあリリもヴェルフも手筈通りに任せたよ」
「「任された」」
「ガレスさんとリヴェリエさん、あの二人を三分以内に落とす。それで僕たちの勝ちだ」
声を掛け合った三人は【ロキ・ファミリア】最強クラスの二人に向かって走り出す。
サンジョウノ・春姫
Lv.1
力 :C621
耐久:A819
器用:S999
敏捷:D566
魔力:S990
《魔法》
【ウチデノコヅチ】
・
・発動対象は一人限定
・発動後、一定時間の
・術者本人には使用不可
フリュネさんの元ネタの女性は本当に美しかったらしいですね