ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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ここで、物語の折り返し


第32話 VSアイズ・ヴァレンシュタイン

ナイフと鞘の激しい殴打音が市壁の上に拡散する。

 

『遠征』までの期間、『鍛練』することになった白髪の少年の動きにアイズは驚嘆した

 

(何、この動き)

 

脚捌き、と言えば正しいのだろうか?激しい動きの中、極一瞬、稀にアイズがベルを見失う時があるのだ。その理由は恐らく視線、目の前の少年は異常なぐらい敵意と言う名の死線を知覚し、それを避ける体の動かし方を自然と身に付けていた。瞬き程とはいえ、自分(Lv.6)の認識から外れるぐらいに

 

(きっと今まで沢山のそう言うもの(敵意の視線)に晒されてきたんだ。それを避れるのは臆病だから?………違う、そうじゃない)

 

そう、そんなわけがない。だって今まで一度も目の前の少年は倒れていない、武器を手放していない、勝機を見出だす眼の輝きを失っていない。

 

そして

 

「少しだけ、休憩にしようか?」

 

「ハッハッ……まだまだぁ、丁度体が暖まってきた所ですよ!!」

 

決して脚を止めようとしない。アイズと鍛練を始めた時から、もうすぐ終わろうとする今までベルは脚を止めたことが無かった。たまに魅せる特殊な脚捌き以外は拙く、何度も吹き飛ばされながら、それでも決して脚を止めずに立ち向かってくる。

 

確かに目の前の少年は臆病ではないのだろう。しかし常に全力で前に出て、自分に立ち向かってくるその姿は、迫り来る何かに追われながら生き残るために必死に光明を探している小動物()の様に感じられた。

 

「今日はここまでにしようか」

 

「ぜぇ…ぜぇ……あ、ありがどぉ……ごじゃ」

 

「無理しなくていいからッ」

 

結局ボロボロになりながらも一回も止まらず、干からびるのでは無いかと思うほど滝のような汗を垂れ流しているベルに、駆け寄ったアイズは回復薬(ポーション)を手渡した。受け取った彼は、ゴキュ!ゴキュ!と言う液体を飲む時に出してはいけない音を出しながら、失われた体力と水分を補給した後、ハッとしたような顔になり、急いで自分のポーチから回服薬(ポーション)を取り出した。

 

「す、すいませんわざわざ!!これ、お返しします!!」

 

「いいよ、その回復薬(ポーション)は頑張ったご褒美」

 

「は、はぅ」

 

微笑みながらそう言ったアイズに、真っ赤になり固まったベル。先程の鬼気迫る表情とのギャップに少しだけクスッと笑ってしまう。

 

「ずっと脚を止めなかった、君は凄いね……」

 

「え?だって脚を止めたら死んじゃうじゃないですか?」

 

脚を止めたら死ぬ。それは最近出来たベル・クラネルの常識だ、数え切れない程のモンスターが生まれ落ちる『怪物の宴(モンスター・パーティー)』、上層で普通は起きないそれが、ベル達の回りには矢鱈と起こる、それも一階層で『コボルト』と遭遇するぐらいの気軽さで。

 

だから理解した、脚を止めたら死ぬ、攻撃を止めたら死ぬ、避け損ねたら死ぬ。迷宮都市(オラリオ)に来て一ヶ月にも満たず、ダンジョン攻略の常識を浅い知識でしか知らなかった少年は、もうすでにそんな非常識を常識だと認識するほどに、とある少年に毒されていた。

 

「それに僕なんて全然凄くないですよ、あの人に比べればまだまだです」

 

「あの人?」

 

「はい、実は最近僕のファミリアに新しい団員が入ったんですけど、その人が凄く強くて―――」

 

少年は語りだす。

 

とある冒険者の英雄譚(オラトリア)

 

どんな攻撃にも怯まず、指先一つでモンスターを屠り、集団で囲まれても傷一つなく帰還する。お伽噺に出てくるような無敵の英雄を想起させるそんな彼は、最近ダンジョンに潜り始めた新米冒険者だと言うから驚きだ。

 

「ズルいんですよあの人は!この前だって………あ、すみません、アイズさんも忙しいのに!!」

 

「ううん、もう少し時間あるから。その人の事教えて?」

 

「えぇ!?―――そ、それじゃあ、もう少しだけ」

 

再開する黒い冒険者の物語。白い少年は、挟み挟み強すぎる彼に自分の不満を口ずさみながらも、どこか楽しそうに話題の尽きない彼の事をアイズに教えてくれた。

 

「それじゃあ僕もそろそろ失礼します!!」

 

「うん、また明日」

 

「は、はい!また明日!!」

 

嬉しそうに走りながら帰路に着くベルの背中を見送ったアイズは、「全身真っ黒なのが特徴です!」と熱く語られた顔も見たこともない青年の事を、モンスターに囲まれても恐れず突っ込んでいく、どこか自分に似ている同い年の男の子の事を思い浮かべた。

 

「黒鐘 色……」

 

呟いた名前が風に溶けて消えていく

 

きっと、仲良くなれる。

 

漠然とそんな気がしたアイズは、雲一つ無い青空を見上げながら、まだ見ぬ冒険者との出会いに胸を踊らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒雲に覆われた夜空の下、雷を纏い、ベクトルを操り、凄まじい速度でアイズに向かっていく黒鐘 色は自分の勝率を考える。

 

――五分五分って所か

 

それは単純に計算した結果、弾き出された解答だ。前の衝突、迷宮から出た瞬間にぶつかったあの時、色はアイズの攻撃を確かに弾き返した。つまりは力値に関しては自分の方に分があると言う事、【ステイタス】を更新してカンスト間近までに伸びているのだから尚更だ。耐久だってカンストしている、恐らくあの速くて重い攻撃も反射圏内に入っているはず。故に、一番の懸念事項は

 

ここで木原神拳とか使ってくんなよ糞女

 

アポロン戦で使われた反射返しを使われる事。一応《スキル》の情報は封鎖してある、ミィシャ・フロットに任せたので絶対に漏れてはいないだろう。しかし、万が一冒険者の勘とかいう、ふざけた理由で反射返しを使われて突破されれば堪ったもんじゃない。

アポロン戦よりも制度の高い反射が出来るようになっているとはいえ、Lv.6(アイズ)の器用値の前には意図も容易く突破されることを、計19回にも及ぶ衝突の中で色は感覚的に理解していたのだ。

 

「「死ね」」

 

そして、弓のように引き絞られた剣と拳が解き放たれた

 

迷宮の楽園(アンサーリゾート)』から始まった、計20回目の衝突。今まで見出だせなかった勝機を見出だした黒鐘 色の一撃

 

超加速電磁砲(アクセル・レールガン)――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ!?」

 

当然、そんなもの(黒鐘 色の一撃)彼女(アイズ)には届かない。

 

剣先を器用に使い、弾かれた拳。

 

そのまま振り下ろされる剣に地面に叩き付けられ、バウンドする体。

 

浮いた体に突き刺さる足先

 

「ブゴッ」

 

流れるような動作で繰り出された二撃。たった二撃で黒鐘 色は思い知らされた、自分がどう足掻いてもアイズ・ヴァレンシュタインには勝てない事を、自分の身の程を。

 

手加減をされていたのだ、今までずっと。思えば当たり前の事だろう、彼女が本気になれば色の首など当の昔に跳ねられている。そうならなかったのは、常に彼女が一定以上の攻撃をして来なかったから

 

あの時攻撃を弾けたのも、彼女は自分の団長にモンスターを生け捕りにする事を命じられていたので全力では無かった。そして、スピードに乗っていた色と空中にいた彼女。あそこで色がアイズを弾き返せたのは、そういう偶然が積み重なった奇跡に近い。

 

それを自分と互角などと勘違いするとは、なんと烏滸(おこ)がましい事か

 

「……ァガ」

 

力付くで反射を突破され、鳩尾に蹴りを入れられ、壁に叩き付けられ、くの字に曲がった体が大の字になることでやっと停止する。口元から垂れ流れた体液が、激しく降り注いだ雨に洗い流されながらも、漆黒の相貌は前を振り向いた。

 

「…………ぅ」

 

絶望(銀閃)が迫ってきている。その速さは色のレーダー(探知速度)を遥かに越えていた。それが見えるのは恐らく色の視覚や聴覚が鋭敏になっているから

 

「………ょう」

 

その感覚は知っている。色は自分が死の間際に立たされている事を理解していた。ウィーネの時と同じだ、全てがスローモーションの様になり、その景色を見た瞬間に自分の命が消え去るのは確定しているのだ

 

「【テンペスト(目覚めよ)】」

 

「ちくしょぉおおおおおおおお!!!」

 

刻が加速する

 

緩やかな視界からフッと【剣姫】の姿が消えた。一回その感覚を味わったからか色の行動は迅速だ、降り注ぐ雨の向き(ベクトル)を操り、音速レベルにまで加速させた水弾を散弾銃さながら前方に向かってぶっぱなす。

 

しかし、風の鎧はそんなもの(雨粒)を寄せ付けない。

 

分かってんだよ!てめぇにこの程度の攻撃が効かねぇなんてことは!!

 

必死に手を動かした先に触れたのは砂鉄だ。ポケットの中のそれを目潰しになればと、ばら蒔きながら指先と脚力のベクトルを操り、めり込んだ壁から無理やり離脱する

 

――ドンッ!!

 

 

超硬金属(アダマンタイト)で造られた壁に、【剣姫】の牙突が突き刺さる。そこは数瞬前に色の頭が存在していた所だ、あんなものを食らえば一撃で即死。

 

「糞がぁああああああああ!!!!」

 

黒い少年は金の少女に背中を向けて逃げ出した。

 

逃げる事しか頭の中に思い付かなかった、ここで殺されたら全てが終わる。異端児(ゼノス)もフェルズもミィシャもベル達も、だから逃げるしかねぇだろ!!

 

そんな言い訳を心の中で反響させながら無様に背中を見せる鴉に対して、空から降る液体以外の雨、斬撃の雨が降り注いだ。

 

「フッ!!」

 

「ォ……ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

 

全く役に立たないレーダーには、複数の剣線が同時に襲ってきているかのように映っている。したがって色は己の生存本能のままに両手を動かした。反射が効かないモンスターが跋扈する37階層の闘技場(コロシアム)に単身乗り込み、師事したフリュネに死ぬかもしれない攻撃の嵐を毎回受けて磨かれた生存本能は確かに黒鐘 色の力となり、【剣姫】の斬撃から生き残る為の時間を稼いだ

 

約三秒ほど

 

足りない、余りにも足りない。技術も力も駆け引きも、今まで培ってきた全てが目の前の少女に打ち砕かれ、最早色の中には勝つ等という選択肢は存在していない。頭の中にあるのは生き残る事のみ、例え無様でも、地を這いつくばってでも、生き残る、それしか無かった。

 

そして、道が出来る

 

「ゥ……ア!?」

 

僅かな隙、天からもたらされた蜘蛛の糸、溺れた時に掴んだ藁

 

何でもいい、逃げ道が出来た!!

 

その空間を色は全力で駆け抜けた。掌握できる全てのベクトルを操り、【剣姫】から逃げる事のみに費やす。道は開けた

 

「終わり……」

 

死の道が

 

「………ァ?」

 

誘導された。わざと逃げ道を作っていたのだ、確実に殺すために。気付いた時には余りにも手遅れだった。全てのベクトルを逃げる事に費やした色に、その一撃を防ぐ手立てが無い

 

再度ゆっくりとなる視界の中、とうとう色の首筋に熱が走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いた?あの冒険者の話」

 

「あぁ、あのボロボロだった人の事っすか?」

 

「なんでもLv.1なのに、一人であのゴライアスを倒したらしいよ?」

 

「あの体術を使ってくるゴライアスの強化種をっすか!?」

 

「プッ、なにそれ?冗談言うにしても、もっとましな事言いなさいよ」

 

「だよねー、流石の私だって嘘だってわかるよ。大方、解毒薬を取りに行ったベートが、フィンの言いつけを守んなくて倒したんでしょ?」

 

「団長の命令を破ったあの糞狼には後で躾がいるわね」

 

「Lv.1でゴライアスを……」

 

「ん?どうしたの、アイズ?」

 

「え?、う、ううん何でもない」

 

リヴェラの町で噂になっている冒険者の話はアイズの耳にも確かに入っていた。Lv.1の冒険者が一人でゴライアスを撃破した、そんな荒唐無稽な話。しかし、彼女はその噂が本当かもしれないと思っている

 

黒鐘 色(くろがね しき)………君)

 

白い少年が語った英雄の名前を思い浮かべた。そう、あの無敵の英雄ならLv.1でもゴライアスを倒せるかもしれない、いやきっと本当に倒してしまったに違いない。

 

アイズは特に疑いを持たず、顔も見たことも無い彼の事を無意識に信じていた

 

(お話、聞かせてくれないかな………)

 

今はまだ無理だろう。付きっきりで看病しているベル、そして心配でベル達を追ってきたヘスティア様。特にヘスティア様の警戒(マーク)がキツくてテントにすら近づけないが、この前ベルがやっと起きたと大喜びしていたから、もうすぐ会えるはず

 

(今度は………本人から直接聞こう)

 

どうやってゴライアスを倒したのか、どうやればそこまで強くなれるのか、短期間でここ(18階層)まで来れた彼の英雄譚(オラトリア)

 

「あっれー?アイズが何もない所で笑ってる!?何か良い事でもあったの?」

 

「え!?……う、うん」

 

「そうなんだ!!ねぇ、それってどんな事?教えて!」

 

「えっと………内緒」

 

「なにそれ気になる!?」

 

騒ぐアマゾネスから視線を反らしつつ風に撫でられた金髪を整えながら、彼女は顔も見たことも無い彼から直接話を聞く瞬間を想像する。

 

(少し………楽しみ、かな?)

 

軽くなった足取りは、少し前には想像できないぐらい騒がしくなったテントの一角に向いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズの放った不可避の一撃が、神速の《デスペレート》が黒鐘 色の首を切断する

 

事は無かった

 

「遅ぇじゃねぇか!!」

 

弾かれる銀閃、見開かれる金眼

 

そして

 

兎を想わせる頭髪

 

「ベルぅううううううううううう!!!!!」

 

「ああああああああああああああ!!!!!」

 

「ッ!?」

 

白兎の猛攻(ラビット・ラッシュ)。鴉を殺されそうになった兎は、狂ったようにアイズにナイフを振るう。その速度は第一級冒険者(フリュネ)を唸らせる物で、その力は第一級冒険者(ディックス)を切り伏せた物だ

 

予想外の一撃を死角(色の後ろ)から受けた【剣姫】は、体制を崩し、思わず後ろに下がってしまった

 

「あー、怖かった。死ぬかと思った、文字通り首の皮一枚になる所だった」

 

「それ洒落になんないからね!?僕が来なかったらどうするつもりだったの!?」

 

「団長様を信じてたんだっつうの。愛してるぜ、ベル」

 

「会って早々気持ち悪いこと言わないでよ副団長様。ここからが本番なんだからしっかりしてよね、色」

 

白と黒、兎と鴉、【ヘスティア・ファミリア】のツートップ(団長と副団長)。ベル・クラネルと黒鐘 色(くろがね しき)は何時もの様に軽い受け答えをした後、目の前の金の少女、アイズ・ヴァレンシュタインを静かに見据えた。

 

「べ……ル?」

 

「アイズさん」

 

少し困惑した顔をするアイズを、ベルは睨んだ。ずっと憧れていた憧憬の少女を、始めて睨んだのだ。

 

「このまま何も言わず色を通して下さい」

 

「…………できない」

 

雨音に消えそうな程小さく発せられた声、ベルの眉がピクリと動いた

 

「何故ですか?貴方の団長からは、色を殺害しろなんて命令は出ていない筈です」

 

「………………狂った帽子屋(マッドハッター)を捕縛しろと」

 

「貴方は!!」

 

アイズの言葉を遮ったベルはそこで一呼吸置いた。そして、激しくなって行く雨音に負けないように息を吸い込む

 

「フィン団長から帰還命令が出されていた筈だ!!」

 

「!?」

 

まるで悪戯がバレた子供のようにビクッと彼女の肩が震えた

 

「で、でも!」

 

「そしてこうも言われていたでしょう。もし黒鐘 色を見かけても、手を出すな」

 

「ッ!?」

 

ベルの言った全部が図星だった。彼女は自信の団長からの命令を無視し続けて、色をずっと探していたのだ。周りの仲間が死んだと言っても、偵察から帰った後輩のエルフが死んだと言っても、頭の切れる団長が死んだと言っても、愚直なぐらい色の生存を信じ、朝早くから夜遅くまで鴉の気配を感じては走り回っていた。そして遂に諦めたフィンから、探すのは構わないが、もし見つけたら手を出さずに尾行しろ、と言われている

 

「どうして………しっているの?」

 

それは当然の疑問。ずっと館に引き込もっていたと聞いているベルが、何故そこまで【ロキ・ファミリア】の事情に詳しいのか?

 

「いえ、少しカマを掛けてみただけです」

 

「…………へ?」

 

気の抜けた声を上げたアイズに、ベルはニッコリと笑った。隣で静観していた色は、今にも笑い出しそうなほどに顔を歪めている。

 

「プククッ………ベル聞いたか?『へ?』だって、『へ?』って。なんつー間抜けな声出してんだよウケるー」

 

「こら、ダメだよ色。やっと穏便に終わりそうなのに」

 

「へいへい、それじゃあな金髪ゥ。団長の命令通りに、大人しく尾行してろ」

 

「もう!すみませんアイズさん、後でお詫びしますから、それじゃ」

 

降りしきる雨の中、そのまま何事も無いように隣を通り抜けようとする二人

 

その二人に

 

「クッ!?」

 

「てめぇ!?」

 

斬撃が跳んだ

 

「アイズさん!?」

 

辛うじて防いだベルと色は、扉の方向へ跳ばされる。これで振りだし、両隣を壁で囲まれたその先には、変わらない黄金の少女が剣を携えている

 

「私は、【ロキ・ファミリア】の幹部。アイズ・ヴァレンシュタイン」

 

【剣姫】、いや違うそこに居るのは【戦姫】

 

怪物(モンスター)を家族と言った人類の敵を、都市最強ファミリアの幹部として独断で排除します」

 

(いくさ)の姫は、自分が満足する(戦いが終わる)まで逃がさないとばかりに剣の切っ先を鴉に向けた。

 

俺の家族(ゼノス達)が人類の敵だと?………やるぞベル、ぶっ殺してやる」

 

「またそんな事言って………ふぅ、気合い入れて行くよ、色」

 

雨の勢いは増すばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天井の水晶が『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』の朝を報せる。水晶の光にキラキラと照らされた美しい金髪を靡かせながら、金眼の少女は同じ場所を何度も何度も行ったり来たりしていた。

 

(まだ………かな?)

 

ソワソワと視線を寄せる先には一つのテント。無敵の英雄が寝泊まりしている場所がそこには有った。彼が起きたと言う知らせを聞いてから彼女は何回も、様子を伺う為に脚を運んでいる。

 

(でも、どんな話をしようか?)

 

勿論、今までの冒険の話を聞くつもりだ。しかしどうやって話を切り出せば良いのか、口数の少ない彼女は悩んでいた。

 

(だ、大丈夫……)

 

この日の為に予行練習(シュミレーション)はバッチリしている。ベルからも、何だかんだ言いながら結局は優しいお人好し、という話を聞いている。いきなり話し掛けても迷惑がられない……はず

 

「おいこらヘスティア!?抱き着くのは止めろ!!」

 

「なぁに言ってるんだ!!ボクが着替えさせて上げるって言ってるんだから大人しくしないか!!」

 

「余計なお世話だっつうの!?」

 

耳を澄ませば声が聴こえた。荒々しい口調だが、仲間の狼人(ウェアウルフ)の様な突き放す感じの声ではなく、人を惹き付ける様な、そんな声

 

(うん、色々な話を聞こう…………出来たら、ちょっとだけ強くなれる秘訣も教えて貰おう)

 

後、ずっとテントの中に居たからリヴェラの町を案内してあげて、それと一緒にダンジョンにも潜ったりして、モンスターを倒す為に共闘とかも………

 

「アイズさーん!!」

 

「ッ!?」

 

ビクッ!!とアイズの肩が跳ねる。後ろを振り向くとエルフの少女が此方に駆け寄ってきていた。

 

「皆さんで水浴びをする事になったんですけど、良かったらアイズさんも、ご一緒しませんか?」

 

「えっと……ごめん、今は」

 

拒絶されたエルフの少女は、ガーン!と肩を落とした。多少の罪悪感を感じながらも、アイズはテントから極力視線を外さないでいる。

 

「………ふ、ふふふ。そうですか、またあの男の子ですか」

 

何を勘違いしたのか、幽鬼の様にフラフラと着替えのテントに向かって行くエルフの少女に、声を掛けようとしたアイズだが、向けた足は―――動かない

 

「やぁ、キミが『ゴライアス』の強化種を単身で倒した、黒鐘 色君だね?」

 

「ど、ども、黒鐘色です」

 

居た

 

待ち焦がれた人が、聞き慣れた声が、黒髪黒目の男の子が

 

そこに居た。

 

「………ァ」

 

(話を聞かなきゃ!!)

 

予行練習(シュミレーション)なんて無意味だった。何故なら彼を見た瞬間、頭の中が真っ白になったからだ。それでも彼女は小人族(パルゥム)の団長と話している彼の元に駆ける。

 

君の冒険譚(オラトリア)を聞かせて!!

 

熱い想いで胸を焦がしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(で?仕上がりはどうなの?)

 

(オール3で1つ4)

 

(はいバケモノー!!いっつも思うんだけど、お前やっぱ頭おかしいわ)

 

(オラリオの8割を支配している色に言われたく無いんだけど?そっちの方がバケモノじゃないか)

 

(はっはっはっ………で?その化物二人が揃って、目の前の怪物を倒せる確率は何割よ?)

 

(………殆ど0かな。さっき撃ち合って分かったけど、もう一度付与魔法(エアリアル)使われたら絶対に勝てない)

 

(マジ?)

 

(マジ)

 

それは、ベルとアイズが会話を行っている時に、水面下で行われた色とベルの会話(ハンドシグナル)だ。つまり、この二人は会話でアイズの剣が引っ込むなど、微塵も考えていなかった。

 

そして、兎と鴉と剣姫。2対1の戦闘が始まる。

 

「シッ!!」

 

「「ッ!!」」

 

最初に動いたのはアイズだった。

 

漆黒のナイフと紅刀を前方に構えるベルと両手両足を地に付けている色に、神速の三連撃が見舞われる。自分達の反応速度を遥かに越えた剣撃に、鴉と兎は反応した。

 

「フッ!!」

 

「チィッ!!」

 

そう来る事は予め分かっている。ずっと訓練を受けてきたベルに何回も戦ってきた色、二人はアイズの癖を把握していた。把握していたからこそ、この最初の攻撃で反撃(カウンター)を決めなければ、そのまま敗北まで持って行かれる事を感じ取った。

 

キィィイイイイイイン!!!

 

剣腹を激しく叩き付けた音が響いた、色に向かっていた剣閃を《神様のナイフ(ヘスティア・ナイフ)》で反らしたベルは、逆手に持った紅刀をアイズの脇腹に走らせる

 

「クッ!?」

 

「オラァ!!」

 

咄嗟に手刀で弾いたアイズ、その頭に色の《黒籠手(デスガメ)》が叩き込まれた。それを僅かに体を反らすだけで避けたアイズに今度はベルのナイフが突き刺さる。弾いたアイズに色の蹴りが、避けたアイズにベルの刃が、ベルの色のベルの色のベルの色のベルの色のベルの色の――――――

 

「ォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

「ァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

「ッ!?」

 

兎と鴉の猛襲(カオス・ラッシュ)

 

二人の攻撃は止まらない。それは【炎金の四戦士(ブリンガル)】の様な完璧な連携(コンビネーション)ではなく酷く歪な共闘。当たり前の事だ、面制圧を得意とする色に、一点突破を基本としているベル、そもそもの戦闘の形(スタイル)が違う。しかし、だからこそ隙が無い、呼吸を合わせようともしない二人の歪な共闘は、歪だからこそアイズに反撃を許さない。動きを合わせようともしない二人の噛み合わない共闘は、噛み合わないからこそアイズに《魔法》を使わせない。歪なのにカッチリ合った二人を例えるなら、鍵と鍵穴。

 

ずっと二人でダンジョンに潜って来た二人だからこそ出来る闘い方、ずっと二人で高め合ってきたからこそ出来る戦い方、無呼吸で繰り出される攻撃は、息が合わないからこそアイズ・ヴァレンシュタインを追い詰めた。

 

「ハッ!!」

 

「イッ!?」

 

「ベッ!?」

 

嘗めるな

 

そう思わさせる程に強く振り抜かれた一閃は、濡れたベルの毛先を数本持っていき、色の制服の裾を切り裂いた。

 

たった一撃で今までの均衡が崩れる

 

【テン】

 

「クッソォオオオ!!!」

 

【ペス】

 

「ッ……アアアアアア!!!」

 

【ト】

 

「「ガッ!?」」

 

二度目の付与魔法(エンチャント)、巻き起こる暴風は兎と鴉を容易く吹き飛ばし、壁に叩き付けた。息つく暇もなく次の攻撃がやってくる。速すぎる剣速は色の視界が死を感じる様(スローモーション)になるよりも速く、先程のように逃げる事を許さない

 

「作戦Dィイイイイイイイイイ!!!!」

 

逃げ切れなかっただろう、一人なら。

 

ベルの叫んだ『作戦D』、基本的に色と春姫が立てている【ヘスティア・ファミリア】ダンジョン攻略作戦に、そんなものは存在しない。

 

「ゥ……ォオオオオオオオオ!!!!!」

 

しかし、色には分かった。『作戦D』の正体が、内容が、言葉を交わさなくても理解できたのだ。絶叫と共に、先程撒き散らされた砂鉄が舞い上がる。周りの雨粒を電気分解させるほどの電力で高速回転する死の砂は、【剣姫】が大凡(おおよそ)動ける範囲全てを包み込み、漆黒に染め上げた

 

「シッ!!!!」

 

一降り、風を纏わせた一撃で全ての砂も雨粒も彼女に届く事なく切り伏せられる。しかし、その一降り、コンマ1秒で仕込みは終わった

 

(行くぞ、ベル)

 

(いいよ、色)

 

過去に一回だけ、ベルの力が色を大きく上回った瞬間がある。ポケットに手を突っ込んだ色は、その瞬間をヴェルフ特性のリモコンのボタンを押すことで、強制的に再現した

 

(狂えベル!!フォベートール・ダイダロス!!!)

 

「………キャハァ♪」

 

「ッ!?」

 

殺人ウサギ(ヴォーパル・バニー)が再び現れる

 

「キャハッ!キャハッ!ギャハハハハハハハ!!!!」

 

奇声を上げながら撒き散らされた砂鉄を隠れ蓑にアイズの視界から消えた兎は、なんの迷いもなく背後からの奇襲を行った。雨を切り裂きながら振り下ろされる漆黒のナイフは、アイズの首筋に叩き込まれ

 

ギィィィン!!!

 

《デスペレート》で防いだアイズの腕が痺れる。全ての能力(全アビリティ)が上昇している今のベルの力が、アイズに届いたのだ。独特の足捌きでアイズの視界から消えながら四方八方から放たれる奇襲に、遂に彼女の足が止まった

 

「そこッ!!」

 

「キャ!?」

 

違う、止まったのではない、足を止めたのだ。そもそもベルに基本的な技と駆け引きを教えたのはアイズである。彼女はベルの動きを当の昔に見切っていた、例え全ての能力(全アビリティ)が上昇していても、視界から消えて見えなくても、癖のある足音がアイズに兎の居場所を教える

 

剣先が狂ったベルを捉える

 

「プラズマ弾!!!」

 

「!?」

 

圧縮された風の砲弾がアイズの頬を掠めた

 

確かに兎だけなら捉えられていただろう、しかしこの場には鴉もいるのだ。広い視野(レーダー)を持つ鴉が狂った兎を切り裂くことを許さない。再び二人の歪な共闘が始まった。足を止めてしまい、ベルに基礎能力(ステイタス)を追い付かれ、先ほど見せた一撃を警戒している二人から逃げ出す事が【剣姫】には出来ない

 

「………ッ!?」

 

遂に、兎の牙と鴉の爪が戦の姫に届いたのだ

 

「ゴフッ」

 

「ベルッ!?」

 

しかし、届いたのは一瞬だけ。色は実際にディックスの『呪詛(カース)』を使用した訳では無い。ベルにやったのは人間が無意識に付けている安全装置(リミッター)を外す事と、痛みの緩和。もし本当に再現できていたのなら、狂ったベルは色にも攻撃してしまうのだから。

 

そして、無慈悲にもベルの限界が来てしまった。痛みの緩和によりハイになっていたテンションが急激に冷えていくのが分かる。色が『呪詛(カース)』を解除し、吐血したベルを抱えながら、後ろに跳んだからだ。

 

「ジギ……もっがい」

 

「アホか!!出来る分けねぇだろ!?何とか時間稼ぐから万能薬(エリクサー)飲んどけ!!!」

 

胸の内ポケットに仕舞ってある万能薬(エリクサー)をベルに半ば強引に押し付けた後、更に後ろに投げ飛ばした。地面を削りながら転がるように後退していくベルを見送る暇なんて無い、既に目の前に金髪が迫っているのだから

 

「速………ぇ!?」

 

ッ間に合わない!?

 

目と鼻の先には、《デスペレート》の切っ先が降り注ぐ水を切り飛ばしながら向かってきている。いくら異次元の動きを出来る色でも、ベルを投げ飛ばした不安定な体制で避けること何て出来ない

 

完全に詰んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタイの獲物を捕るんじゃないよォ、バカ弟子ィ」

 

後ろに引かれる感覚

 

横目に見える赤い鎧

 

そして、二(メドル)を超える程の巨躯

 

気付いた時には色が最も信頼する女戦士(アマゾネス)が、【剣姫】の前に立ち塞がっていた

 

「フリュネ師匠!!」

 

「あなた……は」

 

「ゲゲゲゲゲゲッ!!今日こそは、その面グチャグチャにしてやるよォ!剣姫ィ!!!」

 

バゴッ!!!

 

フリュネの踏み抜いた地面が壮絶な音と共に砕け、爆発的な加速力でアイズに向かって行った。正しく砲弾のように打ち出された戦斧が、アイズの『デスペレート』と激しくぶつかり合う。

 

「ゲゲゲゲゲッ!!何時までもお前を上に置いている訳ないだろォ~~~ッ!!!!」

 

「クッ!!」

 

始めてアイズの顔が苦悶に歪んだ。その攻撃は激しく、鋭く、アイズと同じ頂きに至っている事が如実に現れていた。フリュネ・ジャミールはLv.6になったのだ、その贅力を持ってアイズ・ヴァレンシュタインを後方に吹き飛ばす。

 

「行ける、行けますよフリュネ師匠!!俺とベルと師匠の三人ならアイツを」

 

「逃げな馬鹿弟子ィィイイイイ!!!!」

 

「は?」

 

フリュネは頬をひきつらせる。化物が、決して口には出さない言葉を心のなかで呟いた、後方に吹き飛ばしたんじゃない、自ら後ろに跳んだのだ、その理由は―――

 

「リル・ラファーガ」

 

確実に仕留める(必殺技を打つ)ため

 

「クッオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

暴風がフリュネ・ジャミールの巨体を吹き飛ばした。紙屑のように後ろに飛んで行く師匠を見送った色は、急いで駆け寄ろうとして

 

「速く行けッつってんだよ!!!馬鹿弟子ィ!!」

 

「ッ!?」

 

突き刺さるような鋭い声に止められた。見ると、一撃でボロボロになったフリュネは鎧を貫通した切っ先に脇腹を血まみれにされながらも、しっかりとアイズの腕を掴み、一緒に吹き飛んでいたのだ。これにより、色とアイズの居場所が逆転し、漸く活路が開けた。

 

「離……してッ!!!」

 

「くっこのっ!!大人しくしなァ!!!」

 

「し、師匠!!!」

 

「速く行けぇえええええええええええ!!!!」

 

「…………ぅ」

 

黒鐘 色は決断する

 

「ゥオオオオオオオオオおおおおおおお!!!!!」

 

腕を掴みながらボコボコにされてる師匠(フリュネ)

 

「おおおおおおおおおおおおお!!!」

 

フラフラになりながらも何とか立ち上がろうとしている団長(ベル)

 

「おおおぉ………ゥオオオオオオオオオおおおお!!!」

 

二人を見捨てることを

 

「行かせないッ!!!」

 

「それは!!」

 

「こっちの台詞(セリフ)さァ!!!」

 

フリュネの拘束を解いたアイズが逃げる色を追おうとするが、立ちふさがったベルの渾身の一撃で更に後ろまで後退し、フリュネがその前に陣取った

 

「いい動きだァ。だけどこっからは死ぬ覚悟をしなァベル・クラネル」

 

「そんなもの、とっくの昔に出来てますよフリュネさん」

 

「くくっ、上等だねぇ」

 

「ははっ、ありがとうございます」

 

「くくくくっ」

 

「ははははっ」

 

二人は笑った、今まで味わった事が無いほどの強烈な殺気を飛ばしてくる【戦姫】に笑うしかなくなった。しかしそんな物はダンジョンでは日常茶飯事だ、だからこの震えは恐怖ではなく武者震い

 

「【ヘスティア・ファミリア】団長、ベル・クラネル。ここを死守します」

 

「【イシュタル・ファミリア】団長、フリュネ・ジャミール。潰してやるよォ」

 

己の武器を構える二人の団長と

 

「【ロキ・ファミリア】幹部、アイズ・ヴァレンシュタイン。押し通るッ!!!」

 

都市最強ファミリアの幹部が

 

「いくよぉおおおおおおおおおお!!!!」

 

「ああああああああああああああ!!!!」

 

「シッ!!!」

 

更に激しさを増す雨の中、その矛を交えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)、黄昏の館

 

長く降り注いだ雨もすっかり止んだ夜空の下、高層の塔がいくつも重なってできている邸宅に、一人の男が訪問していた

 

「やぁ、よく来たね。狂った帽子屋(マッドハッター)

 

その男の容姿は一言で言うと黒

 

「いや」

 

黒髪黒目黒い制服に黒い帽子

 

黒鐘 色(くろがね しき)

 

「お待たせしました。フィンさん」

 

色が異端児(ゼノス)達を地上に出してやると宣言した10日まで、残り2日

 

物語は加速する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い少年に駆け寄ろうとした少女は、一人の幼い女の子に腕を捕まれた

 

(………え?)

 

それはいつか幻影した心の中の幼い自分(アイズ)

 

透き通るような金色の髪に、純黒のドレス

 

黒金色の容姿を魅せる少女(アイズ)は、困惑する自分(アイズ)に金色の瞳を向け、小さな口を開いた

 

(試さなきゃ)

 

(試……す?)

 

意味が分からず、自分(アイズ)は聞き返した。幼い少女(アイズ)は真っ直ぐに彼を見つめる

 

(あの人がどれぐらい強いのか、試さなきゃ)

 

(何……を)

 

言っている意味が分からない。試す?彼を?そんなの駄目に決まって―――

 

(どれ程の高みに連れて行ってくれるのか、試さなきゃ)

 

(…………)

 

その時、自分(アイズ)の中の黒い炎が疼くのが分かった。

 

(…………でも)

 

そう、そんな事をしてはいけない。あの人を試すなんてそんな事―――

 

(大丈夫だよ)

 

そんな事

 

(だってあのひとは)

 

そんな

 

(ムテキノエイユウナンダカラ)

 

そん………な?

 

(だから試そう?)

 

(………試…す?)

 

もし、アイズ・ヴァレンシュタインが白い少年とミノタウロスの死闘を見ていたら。自分が幼い時に封印したものを呼び起こされていたら。運命は変わっていたかもしれない

 

(試そう?)

 

(………うん、試してくる)

 

気が付けば、アイズ(自分)アイズ(少女)から手を離し、拳をきつく握り締めていた

 

(さぁ、速く。あの人を(ころ)してきて)

 

金色の瞳の奥で、黒い炎(熱い想い)が燃え上がる

 

 

 

 

 




もう少し答えは先延ばし

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